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国連事務総長、原発への攻撃は「自殺行為」と日本の記者団に語る(2022年8月8日付 UN News 記事・日本語訳)

2022年08月18日

東京の日本記者クラブで発言するアントニオ・グテーレス国連事務総長 © UN Photo

 

202288日-訪日中のアントニオ・グテーレス国連事務総長は88日、日本記者クラブ(東京)での記者会見で、数日前に起きたウクライナ南部の原子力発電所に対する攻撃について非難しました。

「原子力発電所に対する攻撃は、いかなるものであれ(中略)自殺行為だ」と述べ、国連の国際原子力機関(IAEA)が査察のために同原発にアクセスできるよう望むとしました。

ロシアとウクライナの両政府は、共に先週末のザポリージャ原子力発電所の攻撃に対する責任を否定しています。

ヨーロッパで最大級の同原子力発電所は、戦争当初からロシアが支配している一方で、今もウクライナの技術者たちが稼働させています。

核惨事は「現実的リスク」

ウクライナの原発事業者であるエネルゴアトムによると、ロシア側の砲撃によって使用済み核燃料の貯蔵施設周辺にある放射線モニタリング装置3基が破損し、作業員1人が負傷しました。

砲撃を受けて、IAEAのラファエル・グロッシー事務局長は、ザポリージャ原発の稼働状況は、周辺での戦闘と相まって、「非常に現実的な核惨事のリスク」をもたらしていると警告しました。

その後、国連の原子力監視の専門家による初期評価では、(グロッシー事務局長が示したIAEA枠組の7つの柱のうち)いくつかに違反がみられるものの、原子力安全と核セキュリティの状況は安定しており、差し迫った脅威はないとしています。

「同原発の安定化に向けて状況を整える上で、私たちはIAEAの取り組みを支援します」グテーレス事務総長はこのように述べ、IAEAが同原発にアクセスできるよう望むとしました。

ウクライナとロシア間の和平協定

ウクライナとロシア間の和平協定がいまだ実現しない理由について記者に問われたグテーレス事務総長は、両国がトルコと緊密に連携しており、トルコが「和平交渉開始につながる可能性のある新たなイニシアティブを立ち上げた」と語りました。

しかし事務総長は、ウクライナは「自国の領土が他国に占領される」状況を受け入れられず、ロシアは占領地域を「自国に併合したり、新たな独立国家に移行させたりしない」ことについて「受け入れる準備はできていないようだ」と説明しました。

逆戻りしている世界

グテーレス事務総長の発言は、先週末の広島訪問を受けたものです。街を壊滅させて14万もの人々を死に至らしめた、1945年8月6日の世界初の核攻撃から77年となるこの日を、事務総長は広島で迎えました。

2月のウクライナへの侵攻以来、ロシアによる核攻撃の脅威が存在する中で、3度目となる原爆投下への懸念が高まっています。

グテーレス事務総長は8日の記者会見で、核兵器の使用について改めて警鐘を鳴らし、もし使用されることがあれば、「私たち皆がここに存在しないかもしれない」ため、国連はおそらく対応できないであろうと述べました。

世界に現在約1万3,000発の核爆弾が存在し、核兵器の近代化に多額の資金が投じ続けられている中、事務総長は、数十年にわたる核軍縮の取り組みを踏まえ、世界は「逆戻りしつつある」と警告しました。

事務総長はこの流れを「停止せよ」と訴えた上で、軍拡競争に費やされている莫大な資金は、「気候変動との闘い、貧困との闘い、そして国際社会のニーズに応える」ために使う必要がある、と強調しました。

事務総長の次の訪問地はモンゴルと韓国で、北朝鮮の核開発への対応方法について協議する予定です。

東京の日本記者クラブで発言するアントニオ・グテーレス国連事務総長 © UN Photo

「常識」に基づく自制

中国による台湾周辺での大規模な軍事演習について質問を受けたグテーレス事務総長は、国連は「いわゆる『一つの中国』政策をめぐる国連総会決議に準拠する」と語りました。

対立のきっかけとなったのは、ナンシー・ペロシ米国下院議長が先週台湾を訪問したことでした。

グテーレス事務総長は、「私たちは皆、同決議が平和な環境につながることを望んでいます」と述べ、常識と自制によって「極めて重要な」緊張緩和を実現するよう呼びかけました。

記者会見はこちらからご覧ください。

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原文(English)はこちらをご覧ください。

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