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クリーンで健康な環境へのアクセスは普遍的人権である、と国連総会が宣言(UN News 記事・日本語訳)

2022年07月28日

チリの山岳地帯をトレッキングする2人のハイカーたち© Unsplash/Toomas Tartes

 

2022年7月28日 - 国連総会は本日、クリーンで健康、かつ持続可能な環境へのアクセスは普遍的人権であると宣言する歴史的な決議を、賛成161、棄権8*で採択しました。

国連人権理事会昨年採択された類似の決議案に基づくこの決議は、すべての人にとって健康な環境を守るための取り組みを拡大するよう、各国政府、国際機関、企業に求めています。

アントニオ・グテーレス国連事務総長はこの「歴史的」な決定を歓迎し、この重要な進展は気候変動、生物多様性の喪失、汚染という地球の三重の危機に対する団結した闘いにおいて、国連加盟国が力を合わせることができることを示していると述べました。

「今回の決議は、環境に関する不公正を軽減し、保護の格差を埋め、人々、特に環境に対する人権擁護者や子ども、若者、女性、先住民といった脆弱な立場に置かれた人々をエンパワーメントする一助となるでしょう」グテーレス事務総長は国連事務総長報道官室が発表した声明の中でこのように述べました。

事務総長はまた、今回の決定は各国政府が環境権と人権に対する義務と誓約の実施を加速する助けにもなるだろうと付け加え、次のように述べました。

「国際社会がこの権利を普遍的に認めたことで、私たちは、すべての人に対するこの権利の実現に一歩近づきました」

その一方で事務総長は、この決議の採択は「始まりに過ぎない」ことを強調し、この新たに認められた権利を「あらゆる場所のあらゆる人々に対し実現する」よう各国に要請しました。

スコットランドのグラスゴーで開催されたCOP26気候会議でデモに参加する若い気候活動家たち© UN News/Laura Quiñones

緊急行動が必要

ミチェル・バチェレ国連人権高等弁務官も声明を発表して総会のこの決定を称え、決議を実行に移すための緊急行動を求める事務総長の呼びかけに同調しました

「今日、歴史的な瞬間を迎えましたが、健康な環境に対する私たちの権利を確認しただけでは不十分です。総会決議は、各国政府が国際的な誓約を実行に移し、それを実現するための取り組みを拡大しなければならないことを明確に述べています。今すぐ力を合わせて環境危機を共同で回避しなければ、私たち全員が環境危機によるさらに深刻な影響を被ることになるでしょう」とバチェレ氏は述べました。

人権に関する義務に基づく環境行動は、経済政策とビジネスモデルに対する極めて重要なガードレールになる、とバチェレ氏は説明し、次のように付け加えました。

「そのような環境行動は、単なる任意の政策ではなく、法的義務に基づく行動であることを強調します。それはより実効性、正当性を有し、持続可能でもあります」

地球全体のための決議

昨年6月にコスタリカ、モルディブ、モロッコ、スロベニア、スイスによって最初に提示され、現在は100を超える国々が共同提案している決議案は、健康な環境に対する権利が現行の国際法と関連していることを指摘するとともに、環境権を促進するためには環境に関する多国間協定の完全な実施が必要であることを確認しています。

決議案はまた、気候変動の影響、天然資源の持続不可能な管理と利用、大気、土壌および水の汚染、化学物質と廃棄物の不適切な管理、その結果もたらされる生物多様性の喪失が環境権の享受を妨げるとともに、環境被害がすべての人権の実質的な享受に直接的、間接的にマイナスの影響を与えることも示しています。

人権と環境に関する国連特別報告者であるデビッド・ボイド氏によると、総会の決定は、国際人権法の性質そのものを変えることになります。

「各国政府は、環境を浄化して気候緊急事態に対処することを数十年にわたって約束してきましたが、健康な環境に対する権利を有するようになったことで、人々の視点は政府に『懇願する』ことから、要求することに変わっています」と、ボイド氏は最近、UN Newsに語りました。

アイスランドのヨークルスアゥルロゥン氷河潟湖は、融解した氷河の水で自然に形成されており、縮小する氷河から大きな氷塊が崩れるにつれて常に拡大し続けている ©UN News/Laura Quiñones

 

50年越しの勝利

1972年にストックホルムで開催され、歴史的宣言をもって閉幕した国連環境会議は、環境問題を国際的な関心事項として前面に押し出し、経済成長、大気・水・海洋の汚染、そして世界中の人々の福祉の結びつきについて先進工業国と開発途上国間の対話が始まったことを示す最初の会議でした。

当時の国連加盟国は、人々が「尊厳と福祉を保つに足る環境」に対する基本的な権利を有していると宣言し、具体的行動とその権利の承認を求めました。

昨年10月、モルディブ群島など、気候変動の最前線に立たされた国々と1,000以上の市民社会団体による数十年の作業を経て、人権理事会はついにこの権利を認め、国連総会にも承認を求めました。

「環境権は、1972年のストックホルム宣言を出発点として、憲法、国内法、地域協定に組み込まれてきました。本日の決定は、この権利を本来の姿、すなわち普遍的な承認まで高めるものです」国連環境計画(UNEP)のインガー・アンダーセン事務局長は、7月28日に発表された声明でこのように説明しました。

これらの国連機関が健康な環境への権利を認めたことに法的拘束力はなく、つまり各国はこれに従う法的義務はないものの、これが行動を促すきっかけとなり、一般の人々が自国政府に責任を問うことが可能になると期待されています。

「したがって、環境権が承認されたことは、私たちが祝うべき勝利なのです。私は、加盟国、数千の市民社会団体、先住民団体、そしてこの権利を求めて絶えず訴えてきた数万人の若者たちに感謝したいと思います。ですが、今後はこの勝利を足掛かりにして権利を行使しなければなりません」とアンダーセン氏は付け加えました。

自然の生息地を回復することは、気候と生物多様性の危機に対処する一助となる© CIFOR/Terry Sunderland

三重の危機への対応

国連事務総長が言及した通り、新たに認められた権利は地球の三重の危機に取り組む上で極めて重要なものです。

これは、気候変動、環境汚染、生物多様性の喪失という、いずれも決議案で言及された、人類が現在直面している相互に関連した環境への3つの主な脅威を指しています。

3つの問題にはそれぞれ固有の原因と結果がありますが、私たちが地球上で存続可能な未来を描こうとするなら解決する必要があります。

気候変動の影響は、激しさと深刻さを増す干ばつ、水不足、森林火災、海面上昇、洪水、極氷の融解、壊滅的な暴風雨、生物多様性の低下を通じて、ますます明らかになりつつあります。

一方、世界保健機関(WHO)によると、大気汚染が世界中の疾病と若年死の最大の原因となっており、汚染により毎年700万を超える人々が早すぎる死を迎えています。

最後に、動物や植物、生態系を含む生物学的多様性の低下や消失は、食料供給、安全な水へのアクセス、そして私たちが当然のものと考える生活様式に影響を及ぼしています。

*棄権した国:中国、ロシア連邦、ベラルーシ、カンボジア、イラン、シリア、キルギスタン、エチオピア

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原文(English)はこちらをご覧ください。