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【GCRG 概要 #2】ウクライナでの戦争が、世界的な飢餓と窮乏の「かつてない波」を引き起こす恐れ、と国連事務総長が警告(2022年6月8日付プレスリリース・日本語訳)

プレスリリース 22-031-J 2022年07月06日

国連のグローバル危機対応グループ、世界各地での物価上昇の悪循環を断つべく、
世界の食料・エネルギー市場の安定化を要請

ニューヨーク、6月8日 — ウクライナでの戦争が始まって3カ月余りが経過し、すでに新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックや気候変動に見舞われているこの世界で、人々は食料、エネルギー、肥料の世界市場における価格上昇というショックにより、一世代以上も経験したことのない生活費の危機に直面しています。

アントニオ・グテーレス国連事務総長が立ち上げた食料、エネルギー、資金システムに関するグローバル危機対応グループ(GCRG)の最新の報告によると、94カ国で16億人が食料、エネルギー、資金の3方面での生活費の危機の少なくとも1つにさらされており、そのうち約12億人が3方面すべてにおいて著しく脆弱な“究極の嵐”の中にある国々で暮らしていると推定されます。

「戦地の人々にとっては、毎日が新たな流血と苦難の日々です。そして世界中の人々にとって、この戦争は、その他の危機と相まって飢餓と窮乏のかつてない波を引き起こし、その後の社会的・経済的混沌を招く恐れがあります」GCRGによる最新の概要の発表にあたり、事務総長はこのように警鐘を鳴らしました

「脆弱な立場に置かれた人々や国々は、すでに深刻な打撃を受けています。しかし確実なのは、いかなる国やコミュニティーも、この生活費の危機の影響を受けずにはいられないということです」

起こりうる悪循環

世界的な課題が次々と発生している中、各国が逆境に対応する能力は低下し続けています。この危機に対処するためには、多国間のコミュニティーにわたる強力な政治的意思と包括的なアプローチが何よりも先に必要となります。この危機が生み出す悪循環は、3つの危機のどの方面においても単独では解決できないことを示しています。

「単独の側面に対処するだけでは、私たちが置かれている世界的な危機を解決することはできません」国連貿易開発会議(UNCTAD)のレベッカ・グリンスパン事務局長は、概要の発表にあたってこのように述べ、グテーレス事務総長に同調しました。

「収入が圧迫され、家庭は縮小する家計をどうやりくりするかの判断を強いられています。そして、こうした状況の中で、COVID-19と気候危機に加えて、さらに別の世界的危機にも対処するための国家や家庭の対応力が弱まった結果、社会不安が政情不安につながるというもう一つの悪循環が始まるのです」

アクセスの危機

今日、世界の労働者の約60%は、パンデミック前よりも収入が減少したと推定されています。世界の最貧国の半数以上は、過剰債務を抱えているか、そのリスクが高い状態にいます。

本日発表の概要によると、戦争が始まって以降の飢餓の増加はより大きく、より広範囲にわたる可能性があります。世界食糧計画(国連WFP)の推計によると、深刻な食料不安を抱える人々の数はわずか2年余りで、パンデミック前の1億3,500万人から2億7,600万人へと倍増しました。しかし、ウクライナでの戦争の連鎖反応により、2022年には3億2,300万人に増加すると予想されています。

国連食糧農業機関(FAO)の最新の食料価格指数は、すでに戦争が始まる前の2022年2月時点で過去最高に達していましたが、それ以降の月あたりの上昇ポイント数が過去最大となり、2022年3月に最高値を記録しました。

「今年の食料危機は食料へのアクセスの欠如に関するものですが、来年の危機は食料不足に関するものとなる恐れがあります。私たちは、世界の食料・エネルギー市場を安定化させることで物価上昇の悪循環を断ち、開発途上国を救援する必要があります。戦争にかかわらず、ウクライナで生産された食料とロシアで生産された食料や肥料を世界市場へ戻さねばなりません」グテーレス国連事務総長はこのように語りました。

事務総長はまた、グリンスパンUNCTAD事務局長と、人道問題担当のマーティン・グリフィス国連事務次長に対し、2つのタスクフォースが連携して「ウクライナ産食料の黒海経由での安全かつ確実な輸出」を可能にし、「ロシア産食料と肥料の世界市場へのスムーズなアクセス」を確保するように指示したことを発表しました。

地域ごとの影響

概要では、一部の国々とコミュニティーが他の国々やコミュニティーよりも脆弱であり、緊急の支援を必要としているという事実を強調し、今回の危機の影響は広範でありながらも、すべての地域と小地域が同様に影響を受けるわけではないと指摘します。

例えば、サハラ以南のアフリカ諸国は依然として非常に脆弱なままであり、同地域のアフリカの人々の2人に1人が今回の危機の3方面すべてにさらされています。ラテンアメリカ・カリブ海地域は、20カ国近くが深刻な影響を受けており、生活費の危機に直面している2番目に大きなグループです。

中東・北アフリカでは、極度の貧困により、280万人の生命と生活が脅かされる恐れがあります。現在壊滅的な熱波に見舞われている南アジアでは、5億人が食料と資金の深刻な危機にさらされています。東ヨーロッパと中央アジアの各国は、ロシアからの送金とエネルギー輸出の重要性を踏まえると、エネルギーと資金の面で厳しい事態にさらされています。

概要では、生活費の危機に対処するための政策を提言し、2つの重要な側面において、今すぐ行動を起こすことを強調しています。1つは世界の食料、エネルギー市場を安定化させて物価上昇の悪循環を緊急に断つ必要性、もう1つは開発途上国を救救援する責務で、最貧国とコミュニティーを支援するために直ちに資源を入手可能にするよう呼びかけています。

「開発途上地域での経済危機を解決せずに、この世界的な危機を解決する方法はありません。世界の金融システムはその欠点を克服し、柔軟にかつ理解をもってあらゆる手段を活用し、脆弱な立場に置かれた国々と人々を支援しなければなりません」グテーレス事務総長はこのように強調しました。

「本日の報告のメッセージは、明確かつ断固たるものです。私たちは、これからの年月にわたり生命と生活を守るために、今行動しなければなりません。この世界的な危機を解決するには、世界的な行動が必要なのです」

報道関係者のお問い合わせ先:

国連貿易開発会議(UNCTAD)
Amalia Navarro
amalia.navarro@un.org

国連グローバル・コミュニケーション局(UN DGC)
Devi Palanivelu
palanivelu@un.org

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プレスリリースの原文(English)はこちらからご覧ください。

概要の全文はこちらからご覧ください。