本文へスキップします。

  • プリント

ここから本文です。

国連、後発開発途上国を計画、投資、行動において優先(UN News 記事・日本語訳)

2022年04月22日

放課後に手をつないで歩くネパールの農村地域の小学生たち© World Bank/Aisha Faquir

 

2022年3月17日-後発開発途上国(LDCs)の脆弱性は、国連がこの分類を設けた50年前と現在とでは異なるかもしれないが、放置されたままであるため、脆弱であることには変わりがない ― アントニオ・グテーレス国連事務総長は本日行われた専門会議でこのように述べました。

「不平等。飢餓。貧困。脆弱なインフラ。減少する資源をめぐる競争。不安と紛争」グテーレス事務総長は総会議場で開かれた第5回LDC会議(LDC5)における声明の中で、LDCsが直面する困難をこのように挙げました。

事務総長は「人類の8分の1を占める人々の、希望、夢、生命、そして暮らしは、ドーハ行動計画(DPoA)にかかっています」とも述べ、短期的にはLDCsの復興を支援し、中期的には持続可能な開発目標(SDGs)を達成し、長期的には「発展と繁栄」を実現するために同計画が提供する「ライフライン」に焦点を当てました。

グローバル金融システムの再構築

事務総長は、開発途上国が雇用創出、社会的保護、食料安全保障、ユニバーサル・ヘルスケア、質の高い教育、デジタル接続性など、貧困を削減し、レジリエンス(強靭性)を高める分野に投資する必要があると述べました。

しかし同時に、LDCsは、富裕層と権力者が自ら利益を得るために設計した、開発を促進しないどころか不平等を持続させる「道徳的に破綻した世界金融システム」に突き当たっている、とも付け加えました。

事務総長は、LDCsには「場合によっては、緊急の債務救済、再編、または免除」が必要であることを指摘し、「この状況を変えなければならない」と訴えました。

LDCsは、低コストで借り入れができ、危機に際して保護され、より多くの流動性を得られるべきだと、事務総長は述べました。

「そして私たちは、公正な税制をつくり、違法な資金の流れと闘うことで、世界の巨大な富の一部を、それを最も必要としている人々や国々に再投資する必要があるのです」と強調しました。

構造の転換

グテーレス事務総長は、LDCsの経済成長のほとんどが、短期的に非常に不安定で、変動する商品価格や市場の気まぐれ、気候変動の影響に対して脆弱な天然資源や採掘産業と結び付いていると説明しています。

しかも、これらの国々は、不十分な労働者向けの教育と訓練機会、脆弱な物理的インフラ、生産性を向上する技術へのアクセスの欠如によって成長が妨げられており、しかも、それらすべてが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によってさらに悪化しています。

「LDCsは構造転換に対する支援を今すぐ必要としています」と事務総長は強調しました。「LDCsは今すぐにグローバルなバリュー・チェーンへの参加を拡大するための支援を必要としているのです」

これは、経済成長の原動力となる、健康で教育を受け、スキルを持つ労働者の育成に投資し、インフラと輸送網を近代化し、採取分野を転換してより環境に配慮した仕事を創出し、「開かれた公正な貿易ルールを推進することで、すべての国が公平に競争できるようにする」ことを意味すると事務総長は説明しました。

気候変動対策

気候危機を引き起こしていないにもかかわらず、LDCsはその最悪の影響を受けています。

事務総長は、最も脆弱な立場に置かれた国々や地域では、洪水、干ばつ、暴風雨による死者が15倍であることを示した、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の最新の報告書に言及しました。

「36億人が暮らす脆弱性が高い世界各地の地域においては、今後100を超える気候リスクが深刻化し、中には不可逆的になるでしょう」と述べました。

約束を現実に

LDCsは、再生可能エネルギーとグリーン・ジョブへの公正な移行や「すでに受けている影響に対するレジリエンスの構築」のために、技術面と資金面で「大規模な支援」を必要としているとグテーレス事務総長は続けました。そして、開発銀行に対して各国政府と早急に協力して「融資可能なプロジェクトを設計して遂行」するよう要請しました。

「私たちは、気候変動対策資金の50%を適応に充て、脆弱な国々が資金を利用できるように資格制度を刷新する必要があります」と事務総長は主張しました。「そして、先進国は今年、途上国に対する1,000億ドルの気候変動対策資金の約束を果たさなければなりません」

「約束は果たされなければならないのです」

平和と安全

今日の世界は、1945年以降最多の暴力的紛争に直面しており、「そうした紛争地帯の最も大きな割合」をLDCsが占めていると、事務総長は指摘しました。

「平和と安全が、開発なくして実現できることはありません。また、平和と安全なくして開発が実現できることもありません」と説明しました。

歴史的な不公正、不平等、組織的な抑圧を永続させている国々や、保健、教育、安全、司法などの基本的サービスが欠如している国々にもそれは存在し得ません。

「私が提案する『新たな平和への課題』は、国際社会が一丸となって(中略)開発に投資することにより、暴力的紛争の根源に取り組むよう呼びかけるもの」であり、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)、社会的保護、教育と訓練、そして誰もが利用できる包摂的な制度と司法制度を網羅する新しい社会契約が含まれると、事務総長は述べました。

約束された忠誠

そして、これらのライフラインとドーハ行動計画(DPoA)全体にわたり、LDCsは「国連システム全体の完全なコミットメント」を期待できると、事務総長は約束しました。

「後発開発途上国のニーズを、本来あるべき位置に据え、皆さんと共に歩みを進められることを誇りに思います」と述べました。

「国連の計画において第一に、国連の投資において第一に、そして国連の行動において常に第一に」

LDC5について

LDC5は2部構成で開催されます。第1部は2022年3月17日にニューヨークの国連本部で行われ、ドーハ行動計画の採択が検討されます。

第2部は2023年3月5日から9日までドーハにて行われ、世界のリーダーたちが市民社会、民間セクター、若者などと共に集まり、今後10年間にわたりDPoAを遂行するための新しい計画とパートナーシップを構築する予定です。

バングラデシュのダッカでシャツ作りの訓練を受ける若い女性たち© World Bank/Dominic Chavez

 

原文(English)はこちらからご覧ください。