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気候変動:人類の福祉と地球の健康に対する脅威 ― いま行動すれば、未来を守ることができる(2022年2月28日付 IPCC プレスリリース・日本語訳)

プレスリリース 21-010-J 2022年03月17日

ベルリン、2022年2月28日 – 本日発表された気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の最新報告書によると、科学者たちは、人為起源の気候変動が自然界に危険で広範な混乱を引き起こしており、リスクを軽減する取り組みが行われているにもかかわらず、世界中で数十億もの人々の生活に影響を与えており、最も対応が困難な人々や生態系が最も被害を受けていると指摘しています。

「本報告書は、行動を取らないことがもたらす結果についての緊急の警告です。気候変動が私たちの福祉と地球の健康にとって、深刻で増大している脅威であることを示しています。今日の私たちの行動が、気候リスクの増大に対して人類がどのように適応し、自然がどのように反応するかを形作ることになります」李会晟(イ・フェソン)IPCC議長はこのように語っています。

1.5°C(2.7°F)の地球温暖化により、世界が今後20年にわたって複合的な気候ハザードに直面することは避けられません。この温暖化の水準を一時的に超過するだけでもさらに深刻な影響が追加して生じることになり、その一部は不可逆的なものとなります。インフラや海抜の低い沿岸居住地を含め、社会へのリスクが増大するのです。

IPCC第2作業部会報告書『気候変動2022:影響・適応・脆弱性』の政策決定者向け要約は、2022年2月14日から2週間にわたってオンラインで開かれた承認セッションにおいて、2月27日に195のIPCC加盟政府による承認を受けました。

リスクの増大に対応するには、緊急の行動が必要

熱波や干ばつ、洪水の増加は、動植物が耐えられる閾値(いきち)をすでに超え、樹木やサンゴなどの種が大量に消滅しています。これらの異常気象は同時に発生しており、影響は連鎖的に拡大し、管理することが一層困難になっています。特にアフリカ、アジア、中南米、小島嶼国や北極圏では、異常気象により何百万もの人々が深刻な食料不安と水不足に見舞われています。

生命や生物多様性、そしてインフラの損失が拡大するのを防ぐには、温室効果ガス排出量を急速かつ大幅に削減すると同時に、気候変動に適応するための野心的な行動を加速する必要があります。今回の報告書によると、これまでのところ、適応に関する前進はむらがあり、取られた行動と、リスクの増大に対応するために必要とされることとの間の乖離が広がっています。この乖離は、所得の低い人々の間で最も大きくなっています。

第2作業部会報告書は、今年完成予定であるIPCCの第6次評価報告書(AR6)の第2回分にあたります。

李会晟議長は、以下のように述べています。「本報告書は、気候、生物多様性、そして人類の相互依存性を示し、これまでのIPCCによる評価よりも自然科学、社会科学、経済科学の統合を強化しています。そして、気候リスクに対処するために、即時の、かつより野心的な行動の緊急性を強調しています。中途半端な措置は、もはや選択肢にはないのです」

自然を保護し、強化することが居住可能な未来を守る鍵

気候変動への適応には、複数の選択肢があります。本報告書は、気候リスクを軽減するだけでなく、人々の生活を改善する自然の可能性について、新たな知見を提供しています。

「健全な生態系は気候変動に対してよりレジリエント(強靱)であり、食料や安全な水など、人命に関わるサービスを提供してくれます。破壊された生態系を回復して、地球上の陸地、淡水と海洋の生息地の30%から50%を効果的かつ公平に保全することで、社会は自然の炭素吸収・貯留能力の恩恵を受けることができ、私たちは持続可能な開発に向けた前進を加速することができるのです。しかし、十分な資金と政治的支援が不可欠です」ハンス=オットー・ポートナーIPCC第2作業部会共同議長はこのように語っています。

気候変動は、天然資源の持続不可能な利用や都市化の進展、社会の不平等、異常気象や世界的大流行(パンデミック)による損失や被害といった世界的な動向と相まって、未来の発展を危うくしていると、科学者たちは指摘しています。

デブラ・ロバーツIPCC第2作業部会共同議長は、以下のように述べています。「この評価報告から明らかなのは、これらのさまざまな課題全てに対処するには、政府、民間セクター、市民社会の誰もが協力し、意思決定と投資において、リスク軽減と公平性および公正さを優先させる必要があるということです」

「そうすることで、さまざまな利害、価値観、世界観を調和させることができます。科学技術のノウハウと、先住民と地域住民の知識を結集することで、解決策はより効果的なものとなります。気候変動にレジリエントで持続可能な開発を実現できなければ、人々と自然にとって最適とは言えない未来が待っています」

都市:影響とリスクの温床であるものの、解決策に不可欠な要素

本報告書は、世界人口の半数以上が居住する都市における気候変動の影響、リスク、適応について詳細な評価を行っています。人々の健康、生命、生活、ならびに繁栄やエネルギー・輸送システムなどの重要なインフラは、熱波、暴風雨、干ばつ、洪水のほか、海面上昇などの遅発性の変化を原因とするハザードの悪影響を、ますます受けるようになっています。

「都市化の進展と気候変動が相まって、複雑なリスクを生み出しています。不十分な計画による都市の成長、高い貧困率や失業率、そして基本的サービスの不足をすでに経験している都市にとってはなおさらです」デブラ・ロバーツ共同議長は、このように語っています。

「しかし、都市は気候行動の機会ももたらします。環境に配慮した建物、安全な水と再生可能エネルギーの安定供給、そして都市部と農村部を結ぶ持続可能な輸送システム、これらはいずれも、より包摂的で公平な社会につながります」

自然を破壊し、人々の生命を危険にさらし、温室効果ガス排出量を増加させるなど、予期せぬ影響を引き起こした適応があることを示す証拠が増えています。あらゆる人々を計画に関与させ、公平性と公正さに留意し、先住民と地域住民の知識を活用することで、これを回避することができるのです。

狭まりつつある行動の機会

気候変動は現地における解決策を必要とする世界的な課題であるからこそ、IPCC第6次評価報告書(AR6)への第2作業部会からの報告は、気候変動にレジリエントな開発を可能にする、広範な地域的情報を提供しています。

本報告書は、現在の温暖化の水準では、気候変動にレジリエントな開発はすでに困難であると明言しています。地球温暖化が1.5°C(2.7°F)を超えれば、さらに制約されます。一部の地域では、地球温暖化が2°C(3.6°F)を超えた場合、気候変動にレジリエントな開発が不可能になります。この主要な調査結果は、公平性と公正さに重点を置いた気候行動の緊急性を強調しています。十分な資金提供、技術移転、政治的コミットメント、そしてパートナーシップにより、気候変動への適応と排出削減はより効果的なものとなります。

ハンス=オットー・ポートナー共同議長は、以下のように述べています。「科学的根拠は明白です。気候変動は、人類の福祉と地球の健康に対する脅威です。グローバルな協調的行動がこれ以上少しでも遅れると、居住可能な未来を守るための、短く、そして急速に閉ざされつつある機会を逃してしまうことになります」

さらに詳しい情報については、下記にお問い合わせください。

IPCC Press Office
メール:ipcc-media@wmo.int

IPCC第2作業部会
Sina Löschke、Komila Nabiyeva
メール:comms@ipcc-wg2.awi.de

Facebook、Twitter、LinkedIn、InstagramでIPCCをフォローしてください。

編集者向け注記

『気候変動2022:影響・適応・脆弱性』- 気候変動に関する政府間パネル第6次評価報告書への第2作業部会からの報告

第2作業部会の報告書は、気候変動が世界各地の自然と人々に及ぼす影響を検証します。異なる水準の温暖化がもたらす将来的な影響とそれに伴うリスクについて検討し、現在進行中の気候変動に対する自然と社会のレジリエンスを強化し、飢餓、貧困、不平等と闘い、地球を現在と将来の世代が居住可能な場所に保つための選択肢を提示しています。

第2作業部会は、最新の報告書において新たな内容を複数導入しています。1つは、沿岸の都市と居住地、熱帯雨林、山岳地域、生物多様性の豊かな地域、乾燥地と砂漠、地中海地域、極地に関する気候変動による影響、リスク、行動の選択肢についての特集です。もう1つは、気候変動による影響とリスクの観測結果と予測に関するデータと調査結果を世界規模から地域規模にわたって示した地図であり、これにより政策決定者に一層多くの知見を提供しています。

第6次評価報告書(AR6)への第2作業部会からの報告の政策決定者向け要約と追加的資料・情報は、https://www.ipcc.ch/report/ar6/wg2/でご覧になれます。

注記:報告書は当初、2021年9月に発表予定でしたが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックにより、IPCCを含む科学界における作業がオンラインに移行したため、数カ月の遅れが生じました。IPCCがその報告書の1つについてオンラインによる承認セッションを開催したのは、今回が2回目です。

数字で見るAR6第2作業部会

報告書は67カ国の執筆者270人によって作成されました。その内訳は下記のとおりです。
▪ 統括執筆責任者47人
▪ 主執筆者184人
▪ 査読編集者39人

その他に執筆協力者675人が参加しました。

34,000点以上の参考文献が引用されました。

専門家と政府からの査読コメントは計62,418件でした。

(1次ドラフト16,348件、2次ドラフト40,293件、政府に配布した最終ドラフト5,777件)

第6次報告書の詳細についてはこちら(https://www.ipcc.ch/assessment-report/ar6/)をご覧ください。

IPCCについて

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、気候変動に関連する科学的評価を担当する国連機関です。気候変動、その影響とリスクに関する科学的評価を政治指導者に定期的に提供するとともに、適応と緩和の戦略を提案することを目的に、国連環境計画(UNEP)と世界気象機関(WMO)によって1988年に設置されまました。国連総会は同年、WMOとUNEPによるIPCCの共同設立に支持を表明しました。IPCCには195カ国が加盟しています。

世界中から何千もの人々がIPCCの業務に貢献しています。評価報告書については、IPCCの科学者たちがボランティアとして時間を割き、毎年発表される数千点の科学論文を評価し、気候変動の要因について知られていること、その影響と将来のリスク、また適応と緩和によってそれらのリスクを低下できる方法について、包括的な要約を提供しています。

IPCCには3つの作業部会があります。第1作業部会は気候変動の自然科学的根拠を、第2作業部会は影響、適応および脆弱性を、そして第3作業部会は気候変動の緩和をそれぞれ取り扱います。また、排出量と除去量測定の方法論を開発する国別温室効果ガス・インベントリー・タスクフォースも設けられています。気候変動評価のためのデータ支援に関するタスクグループ(TG-Data)は、IPCCの一翼として、IPCCの報告書に関連するデータとシナリオのキュレーション、トレーサビリティ、安定性、可用性、および透明性に対するガイダンスをデータ配布センター(DDC)に提供します。

IPCCによる評価報告書は、あらゆるレベルの政府に対し、気候変動政策を策定するために利用できる科学的情報を提供します。IPCCの評価は、気候変動に取り組むための国際交渉で重要な参考資料となります。IPCCの報告書は数段階に分けて起草、審査されることで、客観性と透明性が保証されています。IPCC評価報告書は、3つの作業部会による報告書と統合報告書から成っています。統合報告書は、3つの作業部会による報告書の調査結果とその評価サイクル内で作成された特別報告書の調査結果を統合したものです。
第6次評価サイクルについて

IPCCは2015年2月の第41会期において、第6次評価報告書(AR6)の作成を決定しました。2015年10月の第42会期では、この報告書と、第6次評価サイクルで作成すべき特別報告書に関する作業を監督する新たなビューローを選出しました。

『1.5℃の地球温暖化』は、気候変動の脅威、持続可能な開発、貧困撲滅へのグローバルな対応を強化する観点での、産業革命以前と比較した1.5℃の地球温暖化の影響、および関連のグローバルな温室効果ガス排出量の動向に関するIPCCの特別報告書であり、2018年10月に発表されました。

『気候変動と土地』は、気候変動、砂漠化、土地劣化、持続可能な土地管理、食料安全保障、および陸上生態系における温室効果ガスの流れに関するIPCC特別報告書であり、2019年8月に発表されました。また、『変化する気候下での海洋・雪氷圏に関する特別報告書』は2019年9月に発表されました。

IPCCは2019年5月、各国政府が温室効果ガスの排出量と除去量を推計するために使用する方法論の改訂版である『2006年国別温室効果ガス・インベントリーに関するIPCCガイドライン2019年精緻化版』 を発表しました。

IPCCは2021年8月、第6次評価報告書 第1作業部会報告書『気候変動2021:自然科学的根拠』を発表しました。

第3作業部会は2022年4月初旬に報告書を発表する予定です。

第6次評価報告書の統合報告書は2022年後半に完成する予定です。

さらに詳しい情報については、www.ipcc.ch をご覧ください。

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原文(English)はこちらをご覧ください。

【関連資料】気候変動に関する政府間パネル(IPCC)報告書の発表に関する記者会見に寄せるアントニオ・グテーレス国連事務総長挨拶(ジュネーブ、2022年2月28日)