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各国政府と企業、投資家が野心を高める中、気候変動対策の潮流は変わりつつある、と国連事務総長の円卓会議が明らかに(プレスリリース・日本語訳)

プレスリリース 20-074-J 2020年10月02日

政府と民間セクターのリーダーは、民間の気候ファイナンスが「転換点」を迎えている
ことを宣言し、さらに野心的な約束を呼びかけ

 

ニューヨーク、9月24日 — アントニオ・グテーレス国連事務総長はきょう、世界のあらゆる政府と企業、民間団体、国際機関に対し、正味ゼロ・エミッションの実現に向けた移行計画を策定するとともに、排出量削減に匹敵する優先課題として、また、地球温暖化を1.5℃に食い止めるための唯一の方法として、資金確保と適応の野心を高めるよう求めました。

アントニオ・グテーレス国連事務総長がきょう招集した「気候変動円卓会議」で、全世界のリーダーは、大胆な気候変動対策に向けた野心と差し迫った必要性について発言しました。これに先立つ1週間には、すでに中国やEU、多くのグローバル企業などから、気候変動対策の潮流が変わりつつある兆候を示す重要な発表も行われています。

「各国政府や都市、企業、NGO、国際機関など、あらゆるアクターが2050年までに正味ゼロ・エミッションを達成するため、独自の移行計画を策定する必要があります」事務総長はこのように述べました。

機運の高まりを活用するため、円卓会議では、パリ協定採択5周年にあたる12月12日、オンラインで気候変動サミットを開催するという発表もありました。

「政府や企業、市民社会のリーダーが集う2020年12月12日のパリ協定5周年記念行事は、気候変動対策に向けた野心を引き続き高めるうえで、重要な機会となるでしょう。私はこのイベントで、チリや英国、フランスその他のリーダーと密接に連携し、現実に野心を高められることを楽しみにしています」事務総長はこのように語っています。

 

グローバル投資家にとっても「転換点」

気候変動対策・ファイナンス担当事務総長特使を務めるマーク・カーニー氏は、民間の資金拠出について「単なる動きではなく、急速な動きが見られる」と語っています。

「民間の金融部門が動いています。私たちは転換点を迎えています。機運の高まりだけでは片づけられない動きです。皆さんの断固とした気候変動対策と『自国が決定する貢献(NDCs)』、そして皆さんが来年中に起こす断固とした行動により、民間セクターはこの転換を拡大し、牽引することで、好循環を作れるでしょう。そして、私たちの目標達成を後押ししてくれます」

カーニー特使は、あらゆる大手銀行のほか、世界最大の保険会社や年金基金、有数の資産管理会社からも、気候関連の財務情報開示を求める声が起きていることも明らかにしました。そして、この支持はほぼ60カ国から上がっている真にグローバルなものであり、関係企業の時価総額は13兆米ドル近く、金融機関の資産運用額は150兆ポンドにも上ると述べました。

 

主要経済の動き

欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は、2030年までに温室効果ガスの排出量を、対1990年比で40%削減から55%削減にするという、今週発表された野心の高いEC案が「達成可能」だとしつつ、そのためには追加的な投資も必要になると述べました。「私たちは必要な資金を確保します」委員長は、2,000億ユーロのグリーンボンドを発行するというEC案についてこう語るとともに、域外諸国や非政府アクターとのEUの協力拡充も強調しました。

円卓会議に参加したリーダーの中には、中国が今週になって、2060年までにカーボンニュートラルを実現するとの発表を行うとともに、この目標を達成するために、具体的な計画や政策を進める旨示唆したことを、心強く感じる向きもありました。

チリのセバスティアン・ピニェラ大統領は、同国が2040年までに、石炭火力発電所を段階的に廃止し、公共交通をすべて電化すると述べました。ピニェラ大統領はまた、チリが副議長を務めることになった 「気候変動対策のための財務大臣連合」の重要性も強調しました。

次期G20議長国であるイタリアのジュゼッペ・コンテ首相は、投資家に対し、化石燃料から投資を引き揚げるよう呼びかけました。コンテ首相のほか、カナダのジャスティン・トルドー首相、英国のボリス・ジョンソン首相を含むリーダーは、気候変動対策とグリーン・ジョブを新型コロナ感染症復興計画の中心に据える必要性を強調しました。

事務総長は2020年から、雇用とグリーン・ビジネスに投資すること、汚染産業を救済しないこと、化石燃料への補助金を廃止すること、あらゆる決定と政策立案で気候リスクを考慮すること、協力を図ること、そして誰一人取り残さないことという6つの対策で、気候に配慮しつつ、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的大流行(パンデミック)からより良い復興を遂げるよう、すべての政府に強く促してきました。

 

レジリエンスの構築と公正な移行

フィジーのジョサイア・バイニマラマ首相とアンティグア・バーブーダのガストン・ブラウン首相をはじめとする小島嶼国のリーダーは、後発開発国のリーダーとともに、先進国に対し、レジリエンスと適応を強化するための取り組みにさらに力を入れるよう、強く促しました。

ニジェールのイスフ・マハマドゥ・大統領はパートナーに対し、6,700万人に利益をもたらす4,400億ドルのサヘル地域向け気候投資計画を通じ、支援への取り組みにさらに力を入れるよう呼びかけました。

バングラデシュのシェイク・ハシナ首相は「地球と私たち自身を守るために」同国が数千カ所にサイクロン避難所を設けていることを明らかにするとともに、地球温暖化を抑え、脆弱な立場に置かれた国々に約束された資金を届けるための政治的リーダーシップと国際協調を求めました。ハシナ首相は、気候難民の社会復帰がグローバルな責任であることも強調しています。

COVID-19による困難な経済・信用状況にもかかわらず、円卓会議は、パリ協定で約束された気候変動対策資金1,000億米ドルの全額供与などを通じ、先進国が開発途上国を緊急に支援する必要性を改めて確認しました。トルドー首相は、気候変動対策の資金はさらに必要となるため、資本の流れの方向性を大きく変えねばならないと述べました。

気候行動ネットワークのタスニーム・エソップ氏と欧州気候基金のロランス・トゥビアナ氏をはじめとする市民社会の主なリーダーは、気候危機とパンデミック双方からの影響で困窮を極めている最も脆弱な立場に置かれた人々を、政府の復興計画の中心に据えなければならないと述べました。そして、持続可能な開発目標(SDGs)と整合し、医療や教育、水、良い仕事へのアクセスを改善することの重要性を指摘しました。トゥビアナ氏は、長期的な気候戦略が重要であることを強調するとともに、こうした戦略で、持続可能な復興を推進するための長期的設備投資計画を裏づけることもできると指摘しました。

世界気象機関(WMO)科学諮問委員会のウラジミール・カッツォフ氏は、適応努力と政策決定のための強力なツールとしての気候科学の重要性に触れ、各国政府に対し、データ能力改善への取り組みに力を入れるよう強く促しました。

インド・ビハール州のニティシュ・クマール首相は、持続可能な開発に向けた取り組みの強化を含め、カーボンニュートラルの達成に地方自治体が果たす重要な役割を強調しました。

 

民間セクターのリーダーは、政府の取り組み強化をさらに強く要請

民間セクターのリーダーの中には、グレー経済からグリーン経済へのシフトを加速するため、より野心的な政策枠組みを定めるよう、政府に対する要求を強めるとともに、自分たちが模範を示し、リーダーシップを発揮していることを示す向きもありました。

例えば、日本気候リーダーズ・パートナーシップ(JCLP)で共同代表を務める三宅香氏は、総量で48テラワットのエネルギーを使用する日本企業150社が、2050年までに正味ゼロ・エミッションの達成を図っていると述べました。三宅氏はまた、JCLPが日本政府に対し、2030年までに再生可能エネルギーを日本のエネルギー消費量の50%にまで引き上げるよう、要求を強めているとも語りました。

マイクロソフトのブラッド・スミス社長は、気候変動対策とその野心を高めることは、ビジネス的にも理に適っており、環境面・社会面で強力な枠組みを備えた企業は、世界的なCOVID-19パンデミックの中でも、他の企業を上回る業績を上げていると述べました。そして、2030年までにカーボンネガティブを達成するという最近の発表を実現するために、年商1兆ドルを誇る同社が講じている対策について論じました。

イタウ・ウニバンコでCEOを務めるカンディード・ブラシェル氏は、ブラジルの大手民間銀行3行が、違法な森林伐採へと流れる資金を削減するためのプログラムを発足させる予定であるとしたうえで、ブラジルの金融部門には、さらに取り組みを進められる能力と義務があると述べました。

グローバルセメント・コンクリート協会でCEOを務めるダイナ・マクラウト氏は、全世界の排出量の7%を占める部門を代表して発言し、40%の企業がすでに2050年までにコンクリートのカーボンニュートラル化を約束していると述べるとともに、コンクリートは水に次ぎ、世界で最も多く使用される物質であることを指摘しました。そして、コンクリートのリサイクル、その生産過程での代替的燃料の使用その他、移行を推進する行動を促進すべく、産業と政策立案者の協力強化を求めました。

事務総長による開会挨拶はこちらをご覧ください。

気候変動ハイレベル円卓会議に関する詳細はこちらをご覧ください。

さらに詳しい情報については、下記にお問い合わせください。

– Matthew Coghlan, UN Secretary-General’s Climate Action Team, email coghlan@un.org
– Dan Shepard, UN Department of Global Communications, email shepard@un.org

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原文(English)はこちらをご覧ください。