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ヘイトスピーチを理解する:よくある質問

2023年06月16日

関連する問題:よくある質問

 

表現の自由とは何ですか?

世界人権宣言の第19条に定められている「意見及び表現の自由に対する権利」には、誰もが「干渉を受けることなく自己の意見をもつ自由並びにあらゆる手段により、また、国境を越えると否とにかかわりなく、情報及び思想を求め、受け、及び伝える自由」が含まれます。この基本的人権は、いくつかの国際的・地域的人権条約によって保護されています。

 

誤情報、偽情報、悪意のある情報の違いは何ですか?

国連教育科学文化機関(UNESCO)によると、誤情報(misinformation)とは、害をもたらす意図のない誤った情報を指し、写真に添えるキャプションの誤りなどがこれに当たります。偽情報(disinformation)は、個人、社会集団、組織、国に害をもたらす目的で意図的に作られた、誤った情報です。偽情報の例としては、陰謀論や有害な噂など、捏造または操作されたコンテンツが挙げられます。

悪意のある情報(mal-information)は、より限定的に、ある人の性的志向を明かすなど、実際に真実に基づいてはいるものの、公共の利益の観点からは正当化できない、個人、社会集団、組織、国の評判を損なう害をもたらす目的で使用される情報を指します。

 

インフォデミックとディスインフォデミックの違いは何ですか?

世界保健機関(WHO)が指摘しているように、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックの発生に伴い、「大規模なインフォデミック(infodemic)」、すなわち「正確な情報と不正確な情報が入り乱れ、人々が必要とするときに信用に足る情報源や頼りになるガイダンスを見つけることが困難になる情報の氾濫」が生じました。インフォデミックは「噂やゴシップ、信頼できない情報を含む、あらゆる情報が急速に広まること」であり、「混乱や不安、そして重大な感染症の発生時にはパニックさえも」引き起こすと表現されます。インフォデミックの世界的な広がりは、デジタル・メディアや従来型メディアを通じてさらに拡大します。

こうした背景からUNESCOは、「ディスインフォデミック(disinfodemic)」という特定の言葉を造語し、故意に「パンデミックを煽るような欺瞞」とその「命に関わる可能性のある偽情報の大量拡散を表現しました。ディスインフォデミックは、人々が公衆衛生対策の受け入れを忌避する事態を広範囲で引き起こし、不可欠な対応に遅れが生じかねないため、特に危険です。

 

ネットいじめとは何ですか?

ネットいじめ、またはサイバー・ハラスメントは、デジタル・テクノロジーを使ったいじめを引き起こします。これはソーシャルメディア、メッセージ・プラットフォーム、ゲーミング・プラットフォーム、携帯電話上で起こり得ます。これは、標的となった人に恐怖、怒り、恥辱を感じさせることを狙いとして繰り返される行為です。オンライン上の暴力には他の形式も多くありますが、標的にされる個人または集団が実際に持つ、あるいはそう受け取られている、そう噂されている、またはそう決めつけられているアイデンティティー要素(宗教、民族、国籍、人種、肌の色、血統、ジェンダーなど)について嫌がらせが行われる場合、ネットいじめはオンライン上のヘイトスピーチを含むことがあります。サイバー・ハラスメントは、自傷行為や自殺を誘発することもあります。

 

扇動とは何ですか?

ヘイトスピーチの定義についてのコンセンサスはまだありませんが、憎悪の扇動という概念は、国際人権法で十分に確立されています。市民的及び政治的権利に関する国際規約(ICCPR)の第20条第2項は「差別、敵意又は暴力の扇動となる国民的、人種的又は宗教的憎悪の唱導は、法律で禁止する」と定めています。したがって「扇動」は、国家、人種、または宗教的な集団に関する発言で、それらの集団に属する人々に対する差別、敵意、暴力という差し迫ったリスクをもたらすものを指します。ICCPRが定義する「唱道」には、標的である集団に対する憎悪を公然と助長する意図が要件に含まれています。ヘイトスピーチに関する国連戦略・行動計画に述べられているように、「扇動は、テロリズムまたは残虐な犯罪を誘発する、または伴うこともある差別、敵意、暴力を引き起こすことを、明示的かつ意図的に狙うものであり、非常に危険なスピーチ形態です」

 

残虐な犯罪とは何ですか?

残虐な犯罪の国連分析枠組みによると、「残虐な犯罪」という用語は、法律で定義されている3つの国際犯罪である、ジェノサイド人道に対する罪戦争犯罪を指します。

国連加盟国は2005年に、「保護する責任」と呼ばれる原則である、ジェノサイド、戦争犯罪、民族浄化、および人道に対する罪から人々を保護するための誓約をしました。それ以来、「残虐な犯罪」という用語の意味が拡大され、「民族浄化」が含まれるようになりました。国際法では民族浄化を独立した犯罪としては定義していませんが、民族浄化は、それ自体が認知された3つの残虐な犯罪の1つ、特に人道に対する罪に相当する可能性のある、国際人権法と国際人道法の重大な違反に関わっています。

残虐な犯罪は人類に対する最も重大な犯罪と考えられています。国際犯罪としての位置づけは、これらの行為が人の根幹である尊厳に影響を及ぼすという考えに基づいています。

 

カウンタースピーチとは何ですか?

法的対応は重要であるものの、言論の自由を制限する立法は、私たちの社会において多数に及ぶヘイトスピーチの影響を防止または緩和する方法の一つに過ぎません。表現の自由の生産的な活用を支える政策は、「多様性の中の調和」の力を強くすることができます。これらの政策は、団結した社会の礎を築き、憎悪を弱めることに寄与します。
カウンタースピーチとは、表現の自由を制限するのとは対照的に、建設的な対抗ナラティブによってヘイトスピーチに対処する取り組みを指します。国連の方針である「ヘイトスピーチに対処する重要な方策は、スピーチを減らすのでなく、増やす」に沿って、対抗メッセージと代替ナラティブを作成し促進することは、憎悪のレトリックを阻止・対応するための国連の重点領域の一つです。そのため、各国が包摂性のある建設的なメッセージでヘイトスピーチに対抗し、残虐な犯罪につながる可能性のある暴力の扇動を阻止・対応する方法として、建設的で代替的なスピーチの使用を促進することが奨励されます。

 

メディア・情報リテラシーとは何ですか?

メディア・情報リテラシーとは、人が情報やメディアのチャンネルと有意義に関わることを可能にする一連の能力を指します。これには、情報源の利用者として解釈したり、情報に基づいて判断したりすることや、自分自身が情報の生産者となることを含めることができます。デジタル世界にいる人がメディア・情報リテラシーを備えるためには、デジタル・メディアを含む情報・通信テクノロジーと、情報にアクセスしたり情報を生み出したりするアプリケーションを利用するスキルを持つことが求められます。

この種のリテラシーは、市民がコンテンツを批判的に評価し、メディアや他の情報提供者の役割を理解して情報の使用者および発信者として確かな情報に基づいて判断する力を与えます。そのため、メディア・情報リテラシーは、表現と情報の自由の中核をなしています。メディア・情報リテラシーにより、すべての人々が情報を求め、受け取り、伝える権利を実現できるのです。

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原文(English)はこちらをご覧ください。

ヘイトスピーチとは何か

ヘイトスピーチと言論の自由

ヘイトスピーチとその実害