本文へスキップします。

  • プリント

ここから本文です。

すべての人のための人権は、いまだ「道半ば」 ― ターク国連人権高等弁務官が警鐘(UN News 記事・日本語訳)

2023年06月26日

国連ウィーン事務局で開催された若者の人権擁護活動家のための会議で演説するヴォルカー・ターク国連人権高等弁務官 ©UNIS Vienna

2023年6月6日-すべての人のための人権の完全な実現は「道半ば」にあり、現在の「劇的な後退」に対応するために、世界はその考えを適応させ、改めなければならない ― ヴォルカー・ターク人権高等弁務官は本日、国連人権高等弁務官事務所の設立とその設立のための国際合意の30周年にあたり、このように述べました。

国連人権高等弁務官事務所とそのマンデートは、変化、前進、尊厳、そして正義のための強力な手段となっているものの、「今日の課題に立ち向かうには、とても十分とは言えない」ヴォルカー・ターク国連人権高等弁務官は、「+30シンポジウム、ウィーン世界会議:30年後 ― 私たちの権利・私たちの未来」の基調演説でこのように述べました。

共通言語

画期的なウィーン宣言および行動計画の採択30周年に合わせて開催されたシンポジウムのねらいは、成果を強調するとともに、今後の課題についての概要を示すことにあります。

「ウィーン宣言以降、人権には非常に大きな進展がありましたが、今日、世界中で劇的な後退が見られます。人権という共通言語は、私たちを前進へと導く私たちの羅針盤である」ターク高等弁務官はこのように語りました。

高等弁務官はまた、国際合意は「私たちの野心において私たちを導く生きた文書」であり続けていると述べました。

人権の後退

高等弁務官は、アフガニスタンからウクライナに至るまで、世界で人権への抵抗が起き、ヘイトスピーチが台頭し、シビック・スペースが縮小していると述べ、地政学的情勢の変化によって国内的・国際的に分断が深まる憂慮すべき傾向が顕在化し、国の一体性が脅かされていると警鐘を鳴らしました。

高等弁務官はさらに、21世紀に入り、世界を急速に変えつつある気候変動、生物多様性の喪失、汚染という地球における三重の危機は、人工知能(AI)の発展などのデジタルへの移行とともに、「それらの危険から私たちを守ってくれる、入念な人権保護措置を計画すべき規制当局よりも速く進んでいる」と語りました。

人権の基礎

「今日の新たな人権の課題は、今後も私たちを試し続けるでしょう。私たちがこうしたすべての試練を乗り越えられると言うのは浅はかでしょうが、その挑戦をやめることは、危険であり、非生産的である」高等弁務官は、このように述べました。

第二次世界大戦後のオーストリアでの青年時代を振り返りながら、高等弁務官は「トラウマと重大な人権侵害の影響は明らかだった」と語りました。

今年75周年を迎えた世界人権宣言は、社会正義、フェミニズム、LGBTIの権利、反アパルトヘイト、脱植民地化、環境保護に向けたダイナミックな運動が展開されていた重大な社会変化の時代において、「平等、社会の前進、正義、そして尊重へと向かう強力な求心力」であったと高等弁務官は述べました。

また、1993年に国連加盟国がウィーン宣言を採択した時に、その合意によって「社会的・経済的・文化的権利は市民的・政治的権利よりも価値が低い」という長年にわたる誤った考えが打ち砕かれたのだと語りました。

この画期的な合意もまた、人権は普遍的であり、不可分であり、相互に依存し、相互に関連するという強い信念を確認するとともに、特定の人権は任意のものとみなされ得るという見解を大胆に退ける一方で、国際刑事裁判所の設立から、女性、子ども、先住民の権利に関する歴史的な進展に至る、他の数多くの突破口を開きました。

過ちから学ぶ

「記念日や周年祭は、私たちがその成果を振り返り、過ちから学び、前進と変革に向けた大胆な措置を講じるための意義ある機会として捉えない限り、意味がない」高等弁務官は、このように述べました。

「今日、今年、そして未来に私たち全員が直面する課題は、世界人権宣言の先見性のある文言を、私たちの現在の世界的な課題に適用することである」高等弁務官はこのように語り、すべての参加者に向けて、誓約とともにプラスの影響を及ぼすストーリーを携えて、シンポジウムに建設的に参加するよう要請しました。

「世界が深刻な混乱に見舞われている時に、人権への信頼と確信を回復することが今回のシンポジウムの重点であり、それを私たちの未来の重点としなければならない」高等弁務官はこのように付け加えました。

国連による行動呼びかけ

ウィーン宣言および行動計画採択30周年を祝うビデオメッセージの中で、アントニオ・グテーレス国連事務総長は、自身の「行動呼びかけ」が、世界で最も急を要する現代的な課題に対処する上で、人権が果たす中心的役割について詳細に説明していると述べました。

行動呼びかけはまた、国連の「総力」を結集し、あらゆる場所のすべての人々が人権を享受できるようにすることを目的としている、と事務総長は強調しました。

「ウィーン宣言と行動計画のために尽力してきた人々を思い起こす中、すべての人々にとっての自由、正義、平等を保証するために、私たちは人権を、国連の業務、そして私たちの世界の中核に据える闘いを続けることを誓う」事務総長は、このように語りました。

* *** *

原文(English)はこちらからご覧ください。