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国連事務総長、誤情報の阻止を目指し、新時代の「ソーシャルメディアの誠実性」を呼びかけ(UN News 記事・日本語訳)

2023年07月13日

昨年のTwitter社の買収以降、Twitter上でのヘイトスピーチが急増 © Unsplash

2023年6月12日-オンライン上での憎悪と嘘の拡散によって引き起こされる「深刻な世界規模の害悪」に、各国は対処しなければならない ― アントニオ・グテーレス国連事務総長はこのように述べ、デジタル・プラットフォーム上の情報の誠実性を強化すべく策定した、重要な報告書を本日発表しました。

生成AIの急速な発展がもたらす潜在的脅威についての警鐘によって、オンライン上でのヘイトスピーチや誤情報・偽情報の拡散を可能にするデジタル技術によってすでに生じている損害が見過ごされることがあってはならない、と事務総長は述べました。

本日発表された政策概要は、ユーザーによって共有される情報の正確性、一貫性、信頼性を維持する上で、デジタル・プラットフォームが不可欠なプレーヤーであるべきだと主張しています。

「報告書が、情報の誠実性を強化するための行動を導く世界標準を提供することを願っている」事務総長は、報告書の導入部分でこのように述べています。

つなぐこと、分断すること

ソーシャルメディア・チャンネル、検索エンジン、メッセージング・アプリなどの「デジタル・プラットフォーム」は、地球上の何十億もの人々をつなぎ、Facebookだけでも約30億人のユーザーがいます。

デジタル・プラットフォームは、危機や困難に直面するコミュニティーの支援から、人種間の公正とジェンダー平等のための世界的なムーブメントの動員への支援まで、多くの利点をもたらしています。国連でも、健全な地球で平和、尊厳、人権の追求に世界中の人々の参画を促すためにデジタル・プラットフォームを活用しています。

しかし、その同じデジタル・プラットフォームが、科学を覆し、偽情報と憎悪を拡散するために悪用され、紛争に拍車をかけ、民主主義と人権を脅かし、公衆衛生と気候変動対策を弱体化させています。

「国連の平和維持活動と人道支援活動の一部が標的にされ、その活動がさらに危険なものになっている」事務総長はこのように述べています

詐欺に満ち、危険で、致命的

誤情報、偽情報、ヘイトスピーチには関連があり、重なる部分もあるものの、これらは区別できる事象です。

「ヘイトスピーチ」とは、人種、肌の色、宗教、民族、国籍、またはこれらに類似する要素のみを理由に、集団や個人に向けられる虐待的または脅迫的な言葉を指します。

「誤情報」と「偽情報」の違いを判断することは難しい場合もありますが、その違いは、意図にあります。一般に、誤情報は、不正確な情報が意図せず拡散されたものを言い、偽情報は、不正確であるだけでなく欺くことを意図しています。

いずれにしても、これらはすべて危険であり、致命的でさえあることがわかっています。

「従来型メディアが、紛争地域において多くの人々にとって重要な情報源であり続ける一方、デジタル・プラットフォーム上では拡散された憎悪が暴力に拍車をかけ、油を注いでいます。一部のデジタル・プラットフォームは、ウクライナで継続中の戦争も含め、紛争下で果たす役割をめぐり、批判に直面しています」報告書はこのように述べています。

シリアのザータリ難民キャンプで携帯電話やタブレットを使う少女たち (file) © UNICEF/UN051302/Herwig

より安全なデジタル空間へ

こうした脅威をふまえ、事務総長はデジタル空間を、人権を保護しながらより安全かつ包摂的な場所にするための国際的な協調行動を呼びかけました。

建設的な対応は、大きく不足しています。一部のテクノロジー企業では、自社のプラットフォームが暴力と嫌悪の拡散に寄与しないよう防ぐことが極めて不足している一方で、時には国の政府がインターネットの閉鎖や禁止といった強硬策を講じることもありますが、それには法的根拠がなく、人権を侵害するものです。

行動規範

同報告書は、デジタル・プラットフォーム上の情報の誠実性に対する行動規範を通じた世界的な行動の枠組みを提案しており、その枠組みは、表現の自由と情報に対する権利を保護しながら、可能な防護柵の概要をまとめたものです。

この枠組みは、人権の尊重、独立系メディアへの支援、透明性の向上、ユーザーのエンパワーメント、研究やデータへのアクセスの強化といった原則に立脚するものとなります。

事務総長はまた、この行動規範に影響しうる勧告も行いました。

その勧告には、あらゆる目的での偽情報とヘイトスピーチの利用、支持、または増幅の自粛を求める、各国政府、テクノロジー企業、その他の利害関係者への要請が含まれています。

各国政府はまた、ジャーナリストを強力に保護する、自由で、実行可能で、かつ独立した選択肢のあるメディア環境を保証する必要があります。

他方、各デジタル・プラットフォームは、国や言語をまたがって政策や資源を一貫して適用すると同時に、すべてのプロダクトの設計から安全とプライバシーを確保する必要があります。

「すべての利害関係者は、あらゆるAIアプリケーションが、安心かつ安全で、信頼でき、倫理的で、人権上の義務に適合していることを保証するため、緊急かつ早急な対策を講じる必要がある」事務総長は、このように付け加えました。

広告主とデジタル・プラットフォームは、広告がオンライン上の誤情報・偽情報やヘイトスピーチの隣には表示されないように、また、偽情報を含む広告が宣伝されないようにする必要があります。

私たちの共通の未来

この政策概要は、未来のグローバル協力と多国間行動のビジョンを概説した2021年の事務総長報告『私たちの共通の課題(Our Common Agenda)』に含まれる11編からなる報告書のうちの一つです。

これらは、2030年までの持続可能な開発目標SDGsの達成に向けた中間点として今年9月に開催される「SDGサミット」、並びにそれに関連して来年開催される「未来サミット」を前に、議論に情報をインプットすることを目的としています。

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原文(English)はこちらをご覧ください。