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ウクライナ:世界は、ロシアによる「国際法違反」を前に団結しなければならない(UN News 記事・日本語訳)

2022年03月24日

7歳の息子をなだめながら交通手段を待ちわびるウクライナ人の母親(ルーマニアのイサクチャにて)© UNICEF/Adrian Câtu

 

2022年3月10日 ― アントニオ・グテーレス国連事務総長は本日国連総会で演説し、ロシアによるウクライナ侵攻によって被害を受けたすべての人々を支援し、「この国際法違反を乗り越えるため」に国連加盟国が「協力と連帯」の下で団結することが求められていると述べました。

 

事務総長は、今後のマルチラテラリズム(多国間主義)と一致団結した行動のための画期的な青写真である『私たちの共通の課題(Our Common Agenda)』の一環として開催された、国際協力の強化に関する会合で発言しました。

同会合は、総会主導の協議としては5回目で最後となる会合で、グテーレス事務総長はテーマ別の議論に貢献したその他のすべてのステークホルダーと共に、「建設的かつ積極的に関与」した全加盟国に謝意を表明しました。

平和 ― 主要な「グローバル公共財」

「平和は、最も重要なグローバル公共財であり、国連は平和を実現するために創設されました」事務総長はこのように述べ、同会合がロシアによるウクライナ侵攻という状況下で行われていることを指摘しました。「戦争は、私たちが直面する大きな世界的課題をこれ以上新たに受け入れる余地がない時に、死と人々の苦難、そして想像を絶する破壊をもたらします」

私たちはまた、この紛争によって被害を受けたあらゆる人々を支援し、この国際法違反を乗り越えるために、協力と連帯の下で団結することが求められています」と事務総長は述べました。

グテーレス事務総長は、「欠乏と恐怖のない世界、潜在能力を発揮する機会にあふれた世界」を後世に残すためには、「私たちは多国間システムの基礎を構築・強化することに、今すぐ集中しなければなりません」と語りました。

解決策は「不可欠であり、緊急」

「最大級の警戒を呼びかけるほどの火災」が世界を分裂させようとする中、総会議場に集まった各国は、団結という「歴史的に重大な責任を果たす」べく、立ち上がらなければなりません。

事務総長は、『私たちの共通の課題』が解決策を見いだす上での一助となっているものの、その提案を前に進めるか否かは、今や各加盟国に委ねられていると述べました。

「しかし、確実なことは、解決策は不可欠であり、緊急であるということです。私たちは、前進をもたらす難しい決断を下さなければなりません

「核の深淵」をのぞき込む

ウクライナが絶望的窮地に立たされている中、多国間協力の状況が一層重要になっているとグテーレス事務総長は語ります。

私たちは、後世を戦争の惨禍から守るという、国連憲章の基礎となる約束に引き戻されたのです。世界中の多くの人々が、この21世紀に、どうしてこのようなことが起こり得たのかと問いかけています」

何百万もの人々が国境を越えて避難し、国際法の最も基本的な原則が踏みにじられている時に、私たちはどうしていまだに核の深淵をのぞき込んでいられるでしょうか

事務総長は、紛争により「いくつかの分野で深刻な世界的影響」が引き起こされている中、グローバル・ガバナンス・システムを緊急に見直す必要があると述べました。

ウクライナ侵攻の影響

「第一に、ウクライナ侵攻によって人道資金がさらに不足し、最も脆弱な立場に置かれた多くの人々の苦難が深刻化します」

「第二に、間接的に世界の飢餓を悪化させる可能性があります。ウクライナは世界最大の穀物生産国の1つであり、ロシア連邦は2番目です。紛争により、価格が急騰するおそれがあります」

「第三に、この紛争は気候危機と密接に関連しており、私たちが化石燃料に依存し続けることで、世界経済とエネルギー安全保障が地政学的ショックにより翻弄されることを証明しています」と事務総長は付け加えました。

事務総長は、パンデミックの余波とインフレ率の上昇に金利上昇が重なり発展がすでに妨げられている中で、エネルギー価格と食料価格の上昇は開発途上国に最も大きな打撃を与えるだろうと述べました。

国際協力を改善するには、サイバー戦争、偽情報キャンペーン、大量破壊兵器の脅威などと共に、あらゆる非伝統的な脅威に目を向けなければなりません」事務総長はこのように述べました。

ウクライナでの戦争から逃れた難民家族の滞在のために調整された学校の体育館の隅で遊ぶ子どもたち(2022年3月9日、ポーランド南東部メディカにて)© UNICEF/Joe English

「警告」

報告書『私たちの共通の課題』は「直面するリスクに対する警告であると共に、現状維持が実現可能な選択肢だという危険な作り話に対する警告なのです。しかし、目を覚ますために私の報告書を読む必要はありません。ただ、周りを見渡すだけでよいのです」事務総長はこのように述べました。

「気候危機は、後戻りできない段階へときています。多くの警告を受け、もっと早くに行動できたにもかかわらずです。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックによる影響の多くは、防止や緩和ができたはずです。しかしながら、何百万もの人々が亡くなり、飢餓や貧困が深刻化し、パンデミックの経済的影響は依然として続いています」

グローバル・ガバナンスを改革する

事務総長は現在、多面的な戦争が「国連憲章に違反するかたちで、ヨーロッパの中心で繰り広げられています」と各国代表に語りました。

私たちは、グローバル・ガバナンスを改善し、リスクを管理し、グローバル・コモンズとグローバル公共財を守るために、真剣に取り組まなければなりません

「このことは、国連や他の機関に限ったことではありません。目的にかなうのであれば既存の体制を通じて、必要な場合は枠組みを新たに設けたり再び活性化させたりすることで、私たちにとって最も重大な問題を解決するために協力するということなのです」

事務総長は、今こそグローバル・ガバナンスを改善するための具体的な勧告を求めるときだと述べ、新たな「グローバル公共財に関するハイレベル諮問委員会」の設置を発表しました。同諮問委員会は、エレン・ジョンソン・サーリーフ元リベリア大統領とステファン・ロヴェーン元スウェーデン首相が率いる予定です。

その他の取り組みを重複して行うことなく、『私たちの共通の課題』に基づき、またUN75プロセスと報告書の作成中の協議に基づいて、および国連総会議長が主催する協議に基づいて、諮問委員会は、2023年9月の開催が提案されている政府間の「未来に関するサミット」につながる「ガバナンスの空白、新たな優先課題と緊急度について検討」すると事務総長は語りました。

「未来のための協定」

事務総長は、同サミットが、「国連憲章に規定された価値観に基づき、多国間協力を通じて私たちがいる危険な道から脱却することを、指導者たちが決意するための機会となるでしょう」と述べました。

「サミットの成果は、2030アジェンダ、パリ協定とアディスアベバ行動計画に勢いを与える“未来のための協定”となる見込みです」

事務総長は、そのような協定に盛り込む内容は加盟国が決めることだと述べながらも、共通の課題に関する報告書では、以下のいくつかの要素が提案されています。

• 第一に、新たな脅威と脆弱性に直面する中、平和と安全保障の共通のビジョンの下に私たちを団結させる「新たな平和への課題」

• 第二に、デジタル技術を人類の福祉、連帯と前進のための推進力とすることを目的としたグローバル・デジタル・コンパクト

• 第三に、宇宙空間の平和的で持続可能な利用に関する主要な原則

• 第四に、グローバルなリスクをより効果的に管理できるようにする緊急プラットフォームに関する協定

• そして第五に、私たちが今日下す決定において将来世代の利益とニーズを考慮することへの約束を規定する宣言と、それを実施するためのメカニズム

事務総長は、どの勧告も「新たな官僚制を生み出すことではありません。加盟国が団結して、ガバナンスの改善が必要な関心事項を明確にするということなのです」と強調しました。

「出発点として、国際法を尊重・順守し、国際法を漸進的に発展させ、既存の制度と枠組みを強化し、すべての人々が関与しなければなりません」

「私たちの取り組みの最終的な目的は、破壊的状況を回避するのみならず、取り残された何十億もの人々の生活と展望をよりよいものとすることです。そうした人々には、何年も学校教育を受けていない子どもたち、不安定な生計手段をも失ってしまった女性たち、危険な移動を余儀なくされた難民や移民が含まれます」

「次のステップは、加盟国である皆さんの決定にかかっているのです」

「歴史の転換点」総会議長

国連総会のアブドッラ・シャーヒド議長は、国連創設75周年の政治宣言にある、「私たちの世界はまだ、創設者が75年前に思い描いた世界ではない。世界は、不平等、貧困、飢餓、武力紛争、テロ、不安定性、気候変動、そしてパンデミックの拡大に苦しめられている」という文言について言及し、今は「歴史の転換点」であると述べました。

総会議長は、「外交と国際協力の原則に基づき、私たちの時代の課題に平和的かつ効果的に対処する上で、強力なマルチラテラリズム(多国間主義)」に戻る道を見いだすのは、この議場にいる各国にかかっていると語りました。

「私たちが方針を変え、マルチラテラリズムの最も崇高な理想に再びコミットし、人類の共通のきずなを再発見するより良い道に舵を切る助けとなる、断固としたリーダーシップが必要です」

総会議長は、国連の強化が非常に重要だと述べました。「私たちの共通の目的を達成するための国際協力を強化する中で、持続可能な開発のための2030アジェンダを、私たちを導く羅針盤とし続けなければなりません」

私たちは、持続可能な開発、平和、人権が相互に連関していることを認識しなければなりません。国連のこの三つの柱を強化することを通じて、平和を支え、繁栄を実現する態勢がより整った、安定したレジリエント(強靱)なコミュニティーを築くことができます」

しかしこれを実現するには、加盟国による「全面的なコミットメント」と、すべてのステークホルダーによるより頻繁な協議と関与が必要だとシャーヒド総会議長は語りました。

「これには、地方・地域政府、議会、民間セクター、地域機関、金融機関、若者、学界、開発機関、そしてその他のさまざまな分野の主要なアクターが含まれるのです」

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原文(English)はこちらからご覧ください。