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太平洋島嶼国のリーダーら、新型コロナウイルス感染症と気候変動との闘いに連帯を呼びかけ(UN News 記事・日本語訳)

2021年10月19日

©UNDP Tuvalu/Aurélia Rusek

2021年9月25日-太平洋島嶼国の首脳たちは、本日行われた国連総会の一般討論演説において、持続可能な開発を脅かす2つの危機である新型コロナウイルス感染症(COVID-19)と気候変動に対処するには、グローバルな連帯、コミットメント、行動が必要であると強調しました。

フィジー共和国のジョサイア・V・バイニマラマ首相は、アントニオ・グテーレス国連事務総長が最近発表した、すべての人にとって、より良い、より環境に配慮した、より安全な未来に向けた報告書『私たちの共通の課題(Our Common Agenda)』に言及し、このビジョンがフィジーにとって何を意味するかを述べました。

「私たちが望んでいるのは、人々が自然に逆らうのではなく、自然に寄り添いながら生活する島です。クリーン・エネルギーを原動力とし、気候変動の影響から守られた持続可能な経済成長です。そして、堅固でリジリエントな(強靭な)保健システム、グリーン経済やブルー・エコノミーに支えられた良質の雇用と所得を望んでいるのです」

フィジー:「協力の新たな地平」

しかし、世界はそうした未来をさらに遠ざける方向へと進んでいるのです、とバイニマラマ首相は警鐘を鳴らしました。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が「山火事のように人間性を焼き尽くし、不平等がその炎を煽っている」と同時に、洪水や熱波、火災、サイクロンなどの気候変動に起因した破壊的状況が、今年だけでも何百万もの人々の命を奪い、甚大な被害をもたらしています。

「将来起こるであろう感染症のパンデミックを回避する、あるいは気候変動の最悪の事態を回避する見込みが少しでもあるのなら、私たちは協力の新たな地平を見いださなければなりません」と、首相は事前に録音した演説の中で語りました。

「小島嶼国が、よりグリーンでブルーな、より良い復興を実現するには、私たちの未来を左右する決断について平等な声を持ちに発言し、投票する必要があります。小島嶼国は、自分たちの利害について他国が耳を傾け、理解し、行動してもらう必要があるのです」

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バヌアツ:雇用が危機に瀕している

2020年3月にCOVID-19のパンデミックが宣言されてからわずか数週間後に、熱帯サイクロン「ハロルド」がバヌアツを襲い、甚大な被害をもたらし、その後ソロモン諸島、フィジー、トンガをも襲いました。

多くの太平洋島嶼国と同様に、バヌアツは迅速に都市封鎖(ロックダウン)を実施してCOVID-19の侵入を水際で食い止めることができましたが、こうした措置が地域経済を「麻痺させて」いると、ボブ・ロウマン首相は事前録音の演説で述べました。

迅速に国境を封鎖したことは「健康上の脅威から経済上の緊急事態へと移行したことを意味し」、多くの事業、特に観光に依存している事業は事実上の休業に追い込まれた、と首相は語りました。

「観光客が来なくなり、コミュニティーの居住者が減ったことで、接客業や建設業が直接的な影響を受け、少なくとも8,000人の正規雇用が危機に瀕し、インフォーマルセクターで働く何万人もの人々の生活に影響が出ています。1,000人を超える有資格の手工芸品職人の収入は、ほぼゼロになってしまいました」

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トンガ:海面上昇を懸念

今でもCOVID-19の感染者が出ていないトンガは、マルチラテラリズム(多国間主義)への強いコミットメントを強調しました。ポヒヴァ・トゥイオネトア首相は、COVID-19によって人民を失い、さらに「未曾有の自然災害やその他の悲劇」にも直面しているすべての国々に哀悼の意と連帯を表しました。

人口約10万5千人のトンガは、グローバルな連帯の枠組みであるCOVAXファシリティーを通じてワクチンを受け取りました。これまでに人口の約3分の1がワクチンを接種し、来年末までに70%の接種完了を目指しています。

しかし、サイクロンや洪水、海面上昇などの自然災害に関していえば、トンガは世界で2番目に危機に瀕している国に位置づけられていると、トゥイオネトア首相は指摘しました。そのため、トンガの温室効果ガス排出量に対する寄与度は取るに足らないものであっても、世界の気温上昇を産業革命以前と比べて1.5℃に抑える努力を追及するという、気候変動に関するパリ協定の目標の達成は、優先すべき事項なのです。

「各国が温室効果ガス排出を削減できずに、高排出シナリオがもたらされた場合、平均海面上昇は低排出シナリオの5倍に相当する可能性が高くなります。特に、トンガや太平洋およびその他の地域にある海抜の低い小島嶼国にとって、そのような状況は到底受け入れられるものではありません」と述べました。

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サモア:COP26を「議論だけ」で終わらせてはならない

サモアのフィアメ・ナオミ・マタアファ首相兼外務貿易大臣は、太平洋地域のコミュニティーにとって真の課題は、より多くの科学的根拠を確保することでも、新たなグローバル目標を設定することでも、さらに議論の場を設けることでもないと述べました。

「真の課題は、生き残るために行動を起こすことです。そして、私たち皆が責任を負い、それぞれの役割を果たす必要があります。環境を汚染し、温室効果ガスを多く排出する国々は、より多くのコミットメントとリーダーシップを示さなければなりません」

首相は続けて、自然災害や環境上の脅威の増加とその頻度は悪化の一途をたどっているようだと述べました。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の最新の報告書では、世界の平均気温の上昇を1.5℃に抑えるという目標を手の届く範囲に留めておくには、世界の温室効果ガス排出量を今後10年間で半減させ、今世紀半ばまでに正味ゼロにしなければならないことが示されました。

「グラスゴーで近日開催される国連気候変動枠組条約締約国会議(COP26)は、私たちにとって、後戻りできない分岐点となります。そこから先の私たちのコミットメントが、地球の未来の軌道を決めるのです。私たちの子どもたちが生きている間に、私たちは気候変動による大惨事を回避できるでしょうか?」

国連は小島嶼国の独自の文化や多様性を理解し尊重する必要があり、「違いを受け入れた上で、私たちが直面する多くの脅威に対する最善の対応策であるパートナーシップやマルチラテラリズム、結束した国際協力を通じて、私たちが望む未来の構築を支援する必要があります」と、マタアファ首相は述べました。課題のすべてが存亡にかかわる脅威であっても、サモアは「国連加盟国が団結すれば、まだ望みはある」と確信している、とも述べました。

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ツバル:次のサイクロンの強さはどのくらいですか?

ツバルのカウセア・ナタノ首相は、議場を前にして、次のように問いかけました。「次の熱帯サイクロンの強さはどのくらいでしょうか?ツバルの伝統文化や遺産についてどうお考えですか?私たちはどうなるのでしょう?私たちの人権はどうなるのでしょうか?ツバルがいよいよ海に沈んでも、国連の加盟国でいられるのでしょうか?誰がツバルを助けられますか?助けてはもらえるのですか?」

こうした問いは海抜の低い沿岸部に住む何百万人もの人々が直面している、正当な、しかし道徳や政治に関わる難しい課題です。「答えが出ない限り、私たちにとって持続可能な開発とは希望的観測に過ぎず、いつ破綻してもおかしくない短期的目標に過ぎません。目標の達成は現実味のないものです」とナタノ首相は述べました。

しかし、すべての望みが失われたわけではない、とナタノ首相は言います。「ツバルは対処し、適応します。ツバルにとって、国を失うという選択肢はありません。それは今日ここにいるすべての参加者にとってもありえないことだと私は確信しています」首相はこのように宣言しました。

国際社会は、今こそ気候変動のさまざまな影響を受けている人々の権利を保護し、気候変動によって大量の人々が移住を余儀なくされる制御不能な状況に対する無秩序な対応を回避するための解決策を検討しなければなりません。

「実際のところ、熱帯サイクロンに襲われるたびに必要となる復興コストの連続や、海面上昇に適応するために必要なコストが原因で、持続可能な開発目標(SDGs)への投資に当てる財政的余裕はほとんどありません。そのため、私たちが取り組むべきグローバルな気候変動対策は、コストのかかる再建の連続サイクルを断ち切るために気候変動の根本原因に焦点を当てられるべきです、」首相はこのように説明し、さらに、明確に持続可能な解決の一つは、地球の気温上昇を止め、反転させることだと付け加えました。

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ソロモン諸島:私たちを分断するものよりも、結びつけるものの方が多い

ソロモン諸島のマナセ・ソガバレ首相は、「私たちは、パリ協定に対する私たちのコミットメントの遅れに深い懸念を抱いています」と述べ、温室効果ガスのすべての主要排出国に対して、世界全体の気温上昇を1.5℃未満に抑える目標に向かって、より野心的な行動をとるよう強く求めました。

「悲しいことに、最新の動向では、人類は“3℃上昇した世界”へと向かっています。しかし、それは私たちが後世に残したいと望む世界ではないことに、誰もが同意するでしょう」と述べました。そのため、COP26はパリ協定を運用可能にし、パリ協定の「ルールブック(実施指針)」として非公式に知られているパリ協定の実施に向けた詳細なルールや手続きに関する交渉を継続する機会となります。これらの詳細なルールや手続きは、ポーランドのカトヴィツェで2018年に開催されたCOP24において採択されました。

ソガバレ首相は続いて、各国が自国の排出量を削減し、気候変動の影響に適応するための取り組みを具体化する「国が決定する貢献(NDC)」に対して共通の時間枠を設け、さらに、市場および非市場の交渉を終わらせるよう訴えました。「今こそ行動を起こす時です」

ソロモン諸島は、総排他的経済水域が150万平方キロメートルにも及ぶ巨大な海洋国家です。その水域にある21の国と地域を合わせると、海洋の総面積は約4,000万平方キロメートルにも上ります。

ソガバレ首相はそのことを念頭に置いて、ソロモン諸島のマグロ産業は年間約6,000万ドルの収益を上げており、2,000人のソロモン諸島の住人に雇用を提供していると述べました。「私たちは海洋と多面的に関わっており、気候と海洋結びつきを認識しています。私たちの海を守るために、気候変動対策をより強化することを国際社会に求めます」

さらに、プラスチック汚染が脆弱な海洋生態系に壊滅的な影響を与えていることから、こうした海洋汚染を減らすために拘束力のあるグローバルな協定が必要であると強調しました。

「気候変動から地球の健康の悪化、COVID-19のパンデミックに至るまで、世界が直面する問題や課題に立ち向かい続ける中で、私たちは、人々を分断するものよりも、私たちを人類として結びつけるものの方が多いことを忘れてはなりません。私たちは資源を捻出し、友情の手を互いに差し伸べなければなりません。そして、グローバルな課題に立ち向かうための重要なツールとしてマルチラテラリズムを受け入れなければならないのです」首相はこのように述べて演説を締めくくりました。

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