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COVID-19はジャーナリストにとって未曽有の題材に(COVID-19関連記事・日本語訳)

2020年12月28日

ロッテルダムのエラスムス大学医療センターからリポートするオランダ放送協会(NOS)記者のキシア・ヘクスター氏 ©NOS/Stefan Heijdendael

全世界のジャーナリストにとって、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行(パンデミック)は、未曽有の題材となっています。とめどのないニュースの流れ、デマによる「インフォデミック」、そしてもちろん、私たち一人ひとりにパンデミックが突きつける個人的な課題によって、COVID-19パンデミックは記者が語ることのできる中で、最も独自性の高いストーリーの一つとなっています。

「ジャーナリストの観点から見て、COVID-19パンデミックはおそらく、私が取材して伝える最大の出来事の一つとなるでしょう」オランダ放送協会(NOS)の記者、キシア・ヘクスターさんはこう語っています。

パンデミックを受けて、何千人もの勤労者が在宅勤務となる一方で、多くのジャーナリストはスタジオやニュース編集室、さらには現場に向かわざるを得ない状況にあります。

「都市封鎖(ロックダウン)以来、ずっと働いています。ジャーナリストの仕事はもちろん、重大な出来事を報道することにありますが、そのためには働きに出なければならないからです」ベルギーのフランス語ラジオ局「ノスタルジー」の司会者、レスリー・ライメナムスさんは、こう説明します。

ロイターでベネルクス担当の主任フォトグラファーとして働くイヴ・ハーマンさんは数カ月間、全身を防護服で覆いながら、病院や高齢者入居施設、葬儀場、死体安置所からほぼ毎日、COVID-19パンデミックの様子を伝え続けています。

「危険はありますが、この事柄について伝えることが本当に大事だと感じていました。私が知る限り、おそらく第2次世界大戦を除き、世界のあらゆる人に影響する数少ないストーリーの一つだからです」ハーマンさんは国連地域広報センター(UNRIC)に対し、こう語っています。

ロイターのベネルクス担当主任カメラマン、イヴ・ハーマンさん ©PHOTONEWS/Vincent Kalut

 

インフォデミックと攻撃

ウイルスに関する集中的な報道に加え、ジャーナリストは世界保健機関(WHO)が言うところの「インフォデミック」にも取り組まねばなりません。保健緊急事態のさなかでは、デマや誤報、噂話が速く、広く蔓延するからです。

「インターネットにはありとあらゆる情報があります。ソーシャルメディアでは、人々が最後まで読む前に情報をシェアしています」こう語るのは、ルクセンブルクで発行されている英語誌・オンライン出版社Delanoで記者を務めるコルドゥラ・シュヌアさんです。「信頼できる情報源や報道機関を見つけることが重要です」

COVID-19パンデミックによって、現場のチームに対する暴力的で攻撃的なふるまいさえも増えていることを伝える報道機関もあります。NOSは、新型コロナウイルスが作り話であり、NOSを「フェイクニュース」だと信じる集団から暴力的行動の被害を受け、衛星中継車からロゴを取り外すことを余儀なくされました。

ヘクスターさんは「これは報道の自由、独立系ジャーナリズムの自由、さらには民主主義にとっても、非常に大きな脅威です。許容するわけにはいきません」と語ります。

プラスチック板の壁越しにハグするベルギーのある介護施設の入居者©Reuters/Yves Herman

 

希望の兆し

ますます多くの人々が新型コロナウイルスに関する情報を探し求めるようになる中で、NOSのようなメディアの視聴者は急増しています。しかし、一般市民の中には、情報過多に陥りかねない人々も多くいます。

「無力感にさいなまれてしまうため、ニュースを見なくなっている人がいるという話も、身近で耳にしています」ヘクスターさんはこう語ります。

このような状況の中で、潜在的な解決策(ソリューション)を明らかにしたり、希望の兆しを与えたりするストーリーは、人々を元気づけることに役立つ可能性があります。

イヴ・ハーマンさんは、自分の庭でマラソンと同じ距離を歩き、募金活動を行った103歳の元医師の写真を撮りました。また、ベルギーのある高齢者入居施設の入居者たちが「ハグ・カーテン」を使って大切な人たちと抱きしめ合うことにより、ソーシャルディスタンス措置のつらさを和らげている様子も紹介しています。このプラスチック板により、家族が数カ月ぶりに抱き合えるようになりました。

「感動的な光景でした」イヴ・ハーマンさんはこう語っています。「涙を流す人もいました。それが大切な人とのスキンシップを図れる唯一の方法だったからです」

ベルギーに暮らすアルフォンス・レンポールさん(103歳)はもと一般開業医。COVID-19の研究を行う科学者のために、自分の庭を歩いて募金活動を行った©Reuters/Yves Herman

 

建設的ジャーナリズム

情報を伝えることはジャーナリストの最優先課題ですが、文脈や見通し、潜在的解決策(ソリューション)を提供する場合には、建設的に語れるチャンスもあります。

「不安を掻き立てるようなニュースでも、私たちには話の層をもう一つ付け加えたり、落ち着きを保ったりする力があります」こう説明する司会者のレスリー・ライメナムスさんは、メディア専門家の間で建設的ジャーナリズムを推進するベルギーの団体New6sの共同創設者でもあります。

ライメナムスさんは、新型コロナウイルスのリスクを過小評価すべきではないとしながらも、建設的ジャーナリズムが状況の過酷さを和らげるための代替的な道のりを示せる可能性があると述べ、次のように付け加えました。

「一般市民を主役にし、希望を与え、自分たちが解決策(ソリューション)の一部であることを理解してもらえれば、私たちは力を合わせ、このウイルスを克服することができるでしょう」

 

執筆者について

ブリュッセルUNRIC
国連グローバルコミュニケーション局(DGC)は、世界各地の国連広報センター(UNIC)のネットワークを通じ、国連活動の世界的な認知と理解を促進します。ブリュッセルの国連地域広報センター(UNRIC)は21カ国のほか、教皇庁や欧州機関とも連携しています。

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原文(English)はこちらからご覧ください。