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国連ミレニアム開発目標(MDGs)報告2009

プレスリリース 09-031-J 2009年07月13日

国連報告書:経済・食料危機で貧困と飢餓の根絶に向けた最近の前進は危機に

国連事務総長、貧富を問わず各国に取り組みの強化と援助公約の履行を呼びかけ

7月6日、ジュネーブ-国連はミレニアム開発目標(MDGs)に関する進捗状況報告書で、達成期限の2015年に向けて折り返し点を過ぎた現在、貧困・飢餓対策で見られた大きな進展は、世界的な経済・食料危機により減速、さらには後退を始めているとの調査結果を明らかにしました。

潘基文(パン・ギムン)国連事務総長が7月6日、ジュネーブで発表した報告書は、多くの成果にもかかわらず、ほとんどの目標に向けた歩みは全体としてあまりにも遅く、2015年までに達成できるめどが立っていないことを警告しています。

「2000年の公約が守れないことを、不景気のせいにしてはなりません」潘事務総長は「ミレニアム開発目標報告2009」の序言でこのように述べ、さらに次のように付け加えています。「国際社会が貧しい人々、弱い人々に背を向けることはできません。今こそMDGsに向けた前進を加速する時です。目標は手の届く範囲にあり、もっとも貧しい国々でさえ、強い政治的な決意と十分かつ持続的な資金供与があれば、達成は可能です」

全世界での動きはまちまち

l1990年代初頭以降、貧困根絶に向けた取り組みが功を奏し、飢餓に苦しむ人々の割合は1990~92年の20%から2004~06年の16%へと低下していましたが、2008年には食料価格の高騰もあり、この動きが逆転しました。2008年後半には国際的に食料価格が下落に転じたものの、全世界のほとんどの人々にとって、食料は依然として手に入りにくい状況が続いています。

l1990年から2005年にかけ、1日1ドル25セント未満で暮らす人々の数は18億人から14億人へと減少しました(経済危機と食料価格高騰以前)。最近の景気後退による影響の全貌を示すデータはまだないものの、指標を見る限りでは、極度の貧困との闘いは停滞を余儀なくされるおそれが高まっています。2009年に極度の貧困の中で暮らす人々の数は、危機前の予測よりも5,500万人から9,000万人多くなると見られます。

l開発途上地域に暮らす子どもの4分の1以上は、年相応の体重に達していません。1990年から2007年にかけ、子どもの栄養状態はわずかに改善したものの、2015年の目標達成には不十分です。この改善も食料価格の高騰と経済の混乱で、さらに鈍化するおそれが強まっています。

l2009年の世界全体の失業率は、男性が6.1~7.0%、女性が6.5~7.4%にも達する可能性がありますが、女性の中には不安定で、しばしば無給の仕事に縛られている人々が多く、男女平等に向けた前進が妨げられています。

さらに報告書によれば、世界的な改善は東アジアでの貧困の激減に負うところが大きく、それ以外の地域ではさほど大きな前進が見られていません。サハラ以南アフリカでは、極度の貧困に苦しむ人々が1990年から2005年にかけて1億人増加しており、貧困率も50%を超える状態が続いています。

MDG報告はまた、妊産婦の健康状態改善(目標5)に必要なプログラムの資金不足が目立ち、この分野での前進がもっとも遅れているとしています。このようなプログラムが母子保健に貢献していることは紛れもない事実ですが、ほとんどの開発途上国では1990年半ば以来、ドナーからの家族計画に対する女性一人当たりの資金援助額が大きく落ち込んでいます。

各国自身が開発プログラムの資金を調達する能力も、危機に瀕しているおそれがあります。 高所得国経済の金融崩壊が波及しはじめる中で、開発途上国の輸出収入は2008年第4四半期に減少へと転じました。開発途上国の輸出に占める債務返済額の割合はさらに上昇する公算が高く、ここ数年来、輸出収入を増大させてきた国々への影響は特に大きいと見られます。

2005年のG8グレンイーグルス・サミットと、これに続き同年開催された国連総会世界サミットで、ドナーはその援助額の積み増しを約束しました。こうした公約の大部分は今も有効ですが、公約額は国民所得に対する割合として提示されているため、2009年に入り、グローバル経済が予想どおりの収縮を見せる中で、その絶対額は減少するものと見られます。MDG報告書によれば、多くの開発途上国にとって、援助の減少はさらなる前進を阻むだけでなく、すでに達成された前進を後退させることにもなりかねません。

経済危機までの大きな前進

報告書では、2008年に経済情勢が一変するまで、多くの国々や地域が遂げてきた顕著な前進も紹介しています。

l開発途上地域では、初等教育就学率が2000年の83%から2007年には88%にまで達しました。サハラ以南アフリカと南アジアでは、就学率が2000年から2007年にかけ、それぞれ15ポイントと11ポイントの上昇を遂げました。

l5歳未満の子どもの死者は、人口増大にもかかわらず、全世界で1990年の1,260万人から2007年の900万人へと着実に減少しました。幼児死亡率はサハラ以南アフリカで依然としてもっとも高いものの、子どもの大きな死因となっているマラリアの予防を目的とした殺虫剤処理済みの蚊帳配給など、重要な対策で大きな改善が見られています。また、2回目の予防接種により、はしか対策も劇的に進展しました。

l全世界のHIV新規感染者数は1996年をピークに減少し、2007年には270万人となりました。比較的貧しい国々で抗レトロウイルス薬が使えるようになったこともあり、エイズによる推定死者数も2005年に220万人でピークに達した後、2007年には200万人へと減少した模様です。しかし、主としてウイルス感染者の寿命が延びていることから、全世界のHIV感染者数は2007年に330万人と、さらに増大を続けています。

課題

報告書は政府とあらゆる利害関係者に対し、女性や若者をはじめ、あらゆる人々に生産的で人間らしい雇用を提供するための取り組みを活性化させるよう呼びかけています。また、南アジアや北アフリカ、西アジアでは、女性の雇用機会が依然としてきわめて少ないことも指摘しています。

2005年までに初等・中等教育での男女格差を解消するという目標は、達成できませんでした。報告書は政府に対し、農村部に暮らす子どもをはじめ、すべての子どもたちを学校に通わせるための取り組みを強化するとともに、ジェンダーや民族による教育格差をなくすよう求めています。

報告書によると、特にサハラ以南アフリカと南アジアで妊産婦死亡率を下げるためには、政治的な意志をさらに結集しなければなりません。また、改良型衛生施設(トイレ)を新たに14億人に普及させない限り、2015年までに衛生目標を達成することはできません。スラムの改善も、開発途上国での都市の急成長にほとんど追いつけていないのが現状です。

国連の沙祖康(シャ・ズカン)経済社会問題担当事務次長はこの報告書を評して、これまででもっとも包括的かつグローバルなMDG評価だと述べています。沙事務次長によると、報告書は世界銀行や経済協力開発機構(OECD)をはじめ、国連システム内外の20以上の機関が作成した一連のデータに基づいています。

メディアのお問合せ先:

Newton Kanhema, UN Department of Public Information
Tel: +1 646 207 1950, e-mail: kanhema@un.org

Olav Huslid, United Nations Information Service at Geneva
Tel: +41 22 9172326, e-mail: ohuslid@unog.ch

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Issued by the UN Department of Public Information – DPI/2539B – July 2009