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IAEA事務局長、理事会で2017年の優先課題を明らかに

2016年11月17日

IAEA理事会に出席する天野之弥(あまの・ゆきや)事務局長©IAEA/A. Nitzsche

国連の原子力担当機関の最高責任者は2016年11月17日、原子力の安全と安心、健康と栄養、そして食料と農業が2017年の主要な技術プログラムとなることを理事会で表明しました。

天野之弥(あまの・ゆきや)国際原子力機関(IAEA)事務局長は理事会に対し、イランにおけるIAEAの検証・モニテリング活動や、朝鮮民主主義人民共和国(DPRK)とシリアの問題に関する報告も行いました。

天野事務局長は、オーストリアの首都ウィーンで開催された理事会会合で「これら(3つの分野)を合わせると、2017年のコア・プログラム予算の71%を占めることになります」と述べました。

事務局長はさらに、各国のジカ・ウイルス対策へのIAEAの援助と、より幅広い活動、さらには管理問題についても報告しました。

「ジカ熱を媒介するヤブカに対する不妊虫放飼法技術(SIT)の一層の開発方法に関する私たちの研究は、本格化しています」と事務局長は述べ、IAEAの西半球諸国との協力について触れました。

IAEAは2015年、ドミニカ共和国でのチチュウカイミバエによる被害への対策支援としてSITを活用し、成功を収めています。

天野事務局長はまた、ウィーン近郊に設置されたIAEA核応用試験場の近代化や、新たな害虫防除試験場と柔軟なモジュール型試験場の建設に関する進捗状況も報告しました。

事務総長はさらに、マラケシュで開催された国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)第22回締約国会議(COP22)へのIAEAの参加についても触れ、原子力が極めて少ない温室効果ガスの排出で、着実なベースロード発電を行えることを説明しました。

オーストリアのウィーンで、IAEA理事会会合に集まった理事国と加盟国の代表ら©IAEA/Dean Calma (file)

事務局長は、原子力がすでに、二酸化炭素排出の回避に大きく貢献していることを明らかにしました。

「原子力と再生可能エネルギーは、相互補完的な関係にあります」と付け加え、現在30カ国で450基の原子炉が稼働中であるほか、さらに60基が建設中であることを指摘しました。

事務局長はこれに続き、原子力の安全のほか、保健医療部門に関するプログラムについても、IAEA理事会に情報提供を行いました。例えば、ペルーに対する支援では、重症の火傷や皮膚に損傷を負った患者の生活の質を改善するため、核技術が活用されています。

イランでの検証とモニタリング

天野事務局長は、IAEAが、包括的共同作業計画(JCPOA)に基づくイランの核関連公約履行の検証とモニタリングを続けていることも明らかにしました。

「イランの重水貯蔵量は130メートルトンを超えていますが、これはJCPOAの実施が始まって以来2度目となります」と事務局長は述べています。

また、事務局長は「イランはその後、IAEAの検証とモニタリングの下、一定量の重水の国外搬出に向けた準備を行っています。搬出が完了すれば、イランの重水貯蔵量は130メートルトンを下回ることになります。イランにおける核の検証に向けた明らかな前進と言えるJCPOAの実施に対する国際的な信頼を維持するためには、このような事態が今後、二度と起きないようにすることが重要です」と付け加えました。

北朝鮮の核開発計画に対する懸念

今年になって2度の核実験を行っている朝鮮民主主義人民共和国(DPRK)の核開発計画について事務局長は深刻な懸念を改めて表明し、同国に対し、関連の国連安全保障理事会決議に基づく義務を全面的に履行するとともに、2009年以来、IAEA査察官の立ち入りがない中で生じたものを含め、懸案となっている問題をすべて解決するよう呼びかけました。

事務局長は「IAEAは引き続き、DPRKの核開発計画の検証で不可欠な役割を果たす態勢を整えています」と指摘しました。

シリアにおけるセーフガードの実施

天野事務局長は、シリアでのセーフガード(保障措置)協定の履行について触れ、IAEAの評価結果として、2007年に破壊されたデイル・エッゾールの施設が、シリアが協定に基づきIAEAに申告すべきであった原子炉に相当する「公算は極めて高い」と述べました。

「その他3カ所の施設につき、IAEAは依然として、その性質や稼働状況に関する評価を行うことができていません」事務局長はこのように述べ、シリアに対し「すべての未解決の課題に関し、IAEAと全面的に協力」するよう強く訴えました。

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