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寄稿文:「普遍的な気候変動合意は必要、かつ可能」 UNFCCC事務局長

2012年12月27日

気候変動について話し合う国連会議が2012年11月26日から12月8日にかけて、中東カタールの首都ドーハで開催されました。COP18で何が話し合われ、何が課題となっているのか。気候変動をめぐる国際交渉の最新情勢を、国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)クリスティーナ・フィゲレス事務局長が報告します。

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普遍的な気候変動合意は必要、かつ可能

2012年12月8日、カタールのドーハで閉幕した国連気候変動会議は、国際交渉が徐々に正しい方向に進んではいるものの、その歩みは驚くほど遅いことを再び印象づける結果となりました。

この交渉の焦点はまさに、世界がこれまで直面したことのない多難なエネルギー転換にあります。エネルギー転換はこれまで、長い時間を要してきました。人類最初のエネルギー源である薪が石炭へと転換を遂げたのは、18世紀になってからのことでした。その後の技術進歩の加速により、世界最大のエネルギー源が石炭から石油へと変わるまでに、さらに1世紀を要しました。気候変動は、より再生可能なエネルギーへの転換とエネルギー効率の向上を促す唯一の動機ではありませんが、こうした通常の進化の過程に緊急性を与えていることは明白です。

既存のエネルギー・システムにおける資本金の運用という明らかな課題はあるものの、時間的な猶予はありません。科学者によれば、この10年のうちに全世界の温室ガス排出量はピークに達さなければならず、その後急減せねばなりません。さらに重要なのは、人的コストを減らすためには、すぐにでも排出量の増大に歯止めをかけなければならないという点です。世界各地で発生している異常気象は、人的コスト、特に最も脆弱な立場にある人々が払うことになる犠牲を十分に証明しています。

国連は、国の大小にかかわらず、すべての国がグローバルな意思決定に参加できるただ一つの場です。低炭素社会への転換には全世界の参加が必要です。なぜなら、どの国もすでに気候変動の影響を受けており、また、グローバルな転換の加速を慎重に主導していく必要もあるからです。また、経済開発の規模とペースが、テクノロジーと資本の自由な移動によって牽引されていることも、全世界的な参加が不可欠な理由です。現時点で一人当たりの排出量が少ない経済規模の国家でも、自らクリーン・エネルギーの未来を切り開くのに十分な支援と促進を受けられなければ、かつてないスピードで高排出量経済へと変貌を遂げるおそれがあり、また、実際そうなってしまうでしょう。

過去2年間にカンクンとダーバンで大きな前進が見られたことを受け、ドーハでは37カ国(EU全加盟国、オーストラリア、ベラルーシ、クロアチア、アイスランド、カザフスタン、ノルウェー、スイス、ウクライナ)が一つのグループとして、今後8年間で1990年の基準値から18%の排出量削減を達成するという法的拘束力のある目標値を採択しました。この目標は、より厳しい会計ルールにより裏づけられており、2014年にはさらに強化される可能性も残されています。

また、ドーハではすべての参加国が最新科学に基づき、2015年12月までにすべての国に適用できる合意に達する決意を確認しました。各国政府が世界を大きな変革に導こうとしていることは明らかですが、その意図がこれまでの約束を厳格かつ迅速な実施によって証明するには至っていません。政府には、利他的な理由からではなく、その国益に基づき、気候変動への対応を加速する義務と能力があるはずです。

国連はグローバルな政策決定の場ではありますが、国内的な決定を推進する立場にはありません。資源の持続可能性、安定性および競争力への国内的な関心こそが、気候変動対策の強力な推進力となります。国連のプロセスは国際的な取り組みの中心ではありますが、気候変動対策がこの場だけで決定されるわけではありません。国際交渉のゆっくりとした、しかし着実な前進を受け、また、新しい低炭素経済を活用するため、33の国と18の地方自治体が2013年に炭素プライシングを導入することを予定しており、その対象範囲はグローバル経済の30%、全排出量の20%に及びます。2011年までに気候変動関連法または再生可能エネルギー目標を導入した国は118カ国と、2005年から2倍以上に増えています。国連の枠組みの対象となっていない森林破壊や排出物を削減するための地域的、自主的な取り組みも増えてきています。全世界の電力に占める再生可能エネルギーの割合は、2006年の3.4%から2010年には20.3%へと上昇しました。クリーン・エネルギーへの投資額は1兆米ドルを超え、さらに年間約4,000億ドルの増大が見込まれています。

低炭素化の兆候は各所にみられるものの、取り組みはまだ十分とはいえません。低炭素はもう珍しいことではなく、当たり前のことと考えなければならないからです。各国政府は道のりを示しているものの、その歩みは遅く、どの国でも潜在的な力を出し切れていません。しかし、これは政府に限ったことではありません。民間もさらに強い決意で臨む力を持っており、またそうすべきです。金融機関もさらに積極的な投資が可能であり、またそうすべきです。テクノロジーの進歩をさらに加速する能力と義務もあります。問題解決に貢献するにあたり、その責任を免れる人もいなければ、その機会を活用できない人もいないのです。

あらゆる人が最大限にの努力することが必要です。誰かが得をすれば誰かが損をするというゼロサム的な考え方を超越し、共通の緊急課題の解決に向け、協力しなければなりません。低排出経済に向けた勢いをさらに強めるためには、相互に補強し合う取り組みを進める必要があります。私たちが力を合わせれば、政治の姿を非難の応酬から機会の活用へと変貌させることができるのです。

2015年に成立させるべき合意は、すべての国々の公平な参加を確保するとともに、科学の要請にも対応できるものとしなければなりません。そして何よりも、私たちの世代が行動を起こすという決意のあかしでなければなりません。究極的にいえば、最悪の気候変動を避けるために十分な温室効果ガスの削減を達成できたかどうかによって、歴史は私たちを裁くことになるでしょう。今すぐに行動すれば、あらゆる人の経済の持続可能性を高めつつ、気候変動の悪影響を最も受けやすい人々を守る形で、この目標を実現できることは紛れもない事実です。そして、普遍的な合意が必要かつ可能な理由もここにあるのです。

ボン、2012年12月14日
国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)事務局長
クリスティーナ・フィゲレス

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クリスティーナ・フィゲレスUNFCCC事務局長©UN Photo/JC Mcllwaine
人類最初のエネルギー源である薪が石炭へと転換を遂げたのは、18世紀になってからのことだった©UN Photo
技術進歩の加速によりエネルギー源が石炭から石油へと変わるまでに、さらに1世紀を要した©UN Photo/Bibic
気候変動は、より再生可能なエネルギーへの転換とエネルギー効率の向上を人類に促している©UN Photo/Pasqual Gorriz
国連気候変動枠組み条約第18回締約国会議(COP18)は、中東カタールの首都ドーハで開催された©UN Photo/Mark Garten
高さ7メートルを超える巨大な風船がニューヨークの国連本部ビル前に出現。気候変動問題への関心を高めようと、二酸化炭素(CO2)の排出量1トン分を目に見える形で表した©UN Photo/Mark Garten
2015年に成立させるべき合意は、すべての国々の公平な参加を確保するとともに、科学の要請にも対応できるものとしなければならない©UN Photo/Logan Abassi