スポーツと持続可能な開発(SDGs)
2016年03月31日
過去に類を見なかった「ミレニアム開発目標(MDGs)」が15年間にわたって前進を遂げたのを受け、世界は新たに採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」への移行期間において、その後継となる「持続可能な開発目標」へと関心を移しました。8つのMDGs(貧困の撲滅、初等教育の完全普及、ジェンダーの平等、乳幼児死亡率の削減、妊産婦の健康改善、HIV/エイズその他の疾病への対策、環境の持続可能性、開発のためのグローバル・パートナーシップ)にまつわる成果と残る課題を取りまとめるにあたって、国際社会は国連を先頭に、社会のあらゆる領域との徹底的な協議プロセスを進め、今後15年間に追求すべきものとして、下記の17項目からなる持続可能な開発目標(SDGs)に合意しました。人間と地球をより密接に結び付け、誰も置き去りにしないことを全般的な趣旨とする「持続可能な開発のための2030アジェンダ」は、「開発と平和のためのスポーツ」という分野を含め、全世界で開発に向けたグローバルな行動を鼓舞する独自の機会となるものです。
スポーツは、平和と開発の目標達成に向けて前進するための費用効果的で柔軟なツールとなることが判明しています。2000年のMDGs発足以来、スポーツは8つの目標それぞれを強化するうえで、死活的に重要な役割を果たしてきましたが、この事実は、数多くの総会決議でも認識されました。スポーツが社会の進歩に果たす役割は、持続可能な開発のための2030アジェンダ宣言でも、次のように認識されています。
「スポーツもまた、持続可能な開発における重要な鍵となるものである。我々は、スポーツが寛容性と尊厳を促進することによる、開発および平和への寄与、また、健康、教育、社会包摂的目標への貢献と同様、女性や若者、個人やコミュニティの能力強化に寄与することを認識する。」
この画期的な認識を追い風として、かつ、多くの部門にまたがる「開発と平和のためのスポーツ」活動とプログラムのこれまでの成果を土台に、スポーツは今後も、SDGsのための活動とその実現を支援することで、グローバルな開発を前進させてゆくことでしょう。国連は、SDGsの17項目それぞれの達成に向けた課題に取り組む潜在的能力を備えた重要かつ強力なツールとして、スポーツがその役割を果たすことを期待しています。
スポーツ関連の具体的なターゲットについては、該当する目標をクリックしてください。
スポーツは、幸せや、経済への参加、生産性、レジリエンスへとつながりうる、移転可能な社会面、雇用面、生活面でのスキルを教えたり、実践したりする手段として用いることができます。
栄養と農業に関連するスポーツ・プログラムは、飢餓に取り組む食料プログラムや、この問題に関する教育を補完するうえで、適切な要素となりえます。対象者には、持続可能な食料生産やバランスの取れた食生活に取り組むよう、指導を行うことができます。
運動とスポーツは、アクティブなライフスタイルや精神的な安寧の重要な要素です。非伝染性疾病などのリスク予防に貢献したり、性と生殖その他の健康問題に関する教育ツールとしての役割を果たしたりすることもできます。
体育とスポーツ活動は、就学年齢児童の正規教育システムにおける就学率や出席率、さらには成績を高めることができます。スポーツを中心とするプログラムは、初等・中等教育以後の学習機会や、職場や社会生活でも応用できるスキルの取得に向けた基盤にもなりえます。
スポーツを中心とする取り組みやプログラムが、女性と女児に社会進出を可能にする知識やスキルを身に着けさせる潜在的可能性を備えている場合、ジェンダーの平等と、その実現に向けた規範や意識の変革は、スポーツとの関連で進めることもできます。
スポーツは、水衛生の要件や管理に関するメッセージを発信するための効果的な教育基盤となりえます。スポーツを中心とするプログラムの活動と意図される成果を、水の利用可能性と関連づけることによって、この問題の改善を図ることもできます。
スポーツのプログラムと活動を、省エネの話し合いと推進の場として利用すれば、エネルギー供給システムと、これに対するアクセスの改善をねらいとする取り組みを支援できます。
スポーツ産業・事業の生産、労働市場、職業訓練は、女性や障害者などの社会的弱者集団を含め、雇用可能性の向上と雇用増大の機会を提供します。この枠組みにおいて、スポーツはより幅広いコミュニティを動員し、スポーツ関連の経済活動を成長させる動機にもなります。
レジリエンスと工業化のニーズは、災害後のスポーツ・娯楽用施設の再建など、関連の開発目標の達成をねらいとするスポーツ中心の取り組みによって、一部充足できます。スポーツはこれまで、開発に向けたその他従来型のツールを補完し、開発と平和を推進するための革新的な手段として認識されており、実際にもそのような形で利用されてきました。
開発途上国におけるスポーツの振興と、スポーツを通じた開発は、途上国間および先進国との格差を縮めることに貢献します。スポーツは、その人気と好意度の高さにより、手を差し伸べることが難しい地域や人々の不平等に取り組むのに適したツールといえます。
スポーツにおける包摂と、スポーツを通じた包摂は、「開発と平和のためのスポーツ」の主なターゲットのひとつとなっています。気軽に利用できるスポーツ施設やサービスは、この目標の達成に資するだけでなく、他の方面での施策で包摂的かつレジリエントな手法を採用する際のグッドプラクティスの模範例にもなりえます。
スポーツ用品の生産と提供に持続可能な基準を取り入れれば、その他の産業の消費と生産のパターンで、さらに幅広く持続可能なアプローチを採用することに役立ちます。この目的を有するメッセージやキャンペーンは、スポーツ用品やサービス、イベントを通じて広めることができます。
観光を伴う大型スポーツ・イベントをはじめとするスポーツ活動やプログラム、イベントでは、環境の持続可能性についての認識と知識を高めることをねらいとした要素を組み入れるとともに、気候課題への積極的な対応を進めることができます。また、被災者の間に絆と一体感を生み出すことで、災害後の復興プロセスを促進することも可能です。
水上競技など、スポーツ活動と海洋とのつながりを活用すれば、スポーツだけでなく、その他の分野でも、海洋資源の保全と持続可能な利用を提唱できます。
スポーツは、陸上生態系の保全について教育し、これを提唱する基盤となりえます。屋外スポーツには、陸上生態系の持続可能で環境にやさしい利用を推進するセーフガードや活動、メッセージを取り入れることもできます。
スポーツは復興後の社会再建や分裂したコミュニティの統合、戦争関連のトラウマからの立ち直りにも役立つことがあります。このようなプロセスでは、スポーツ関連のプログラムやイベントが、社会的に隔絶された集団に手を差し伸べ、交流のためのシナリオを提供することで、相互理解や和解、一体性、平和の文化を推進するためのコミュニケーション基盤の役割を果たすことができます。
スポーツは、ターゲットを絞った開発目標に現実味を与え、その実現に向けた具体的前進を達成するための効果的手段としての役割を果たします。スポーツ界は、このような活動の遂行その他を通じ、草の根からプロのレベル、また、民間から公共セクターに至るまで、スポーツを持続可能な開発に活用するという共通の目的を持つ多種多様なパートナーやステークホルダーの強力なネットワークを提供できます。
- 「国連気候変動枠組条約・締約国会議」は気候変動へのグローバルな対応を話し合うための主要な国際的、政府間フォーラムであることを、ここに認識する。