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アナン事務総長、G8議長に書簡を送付

1999年05月27日

 アナン事務総長はG8議長を務めるシュレーダー独首相に書簡を送り、将来の金融危機に対する予防策の不十分性を警告、また経済成長を促進し、貧しい人々のニーズに応えるよう、主要8カ国に対する要望を提示した。この書簡は5月27日、公表された。

 以下、関連資料を掲載する。

 1 プレスリリース(概要)
 2 アナン事務総長書簡(非公式訳)
 3 ファクトシート1
 4 ファクトシート2

アナン事務総長、G8議長へ書簡を送付

 コフィー・アナン国連事務総長は、主要7カ国及びロシア連邦の首脳に対して、「よりバランスのとれたパターンをもつ高水準の経済成長」に有利な政策を採択し、国際金融システムを不安定から守るための追加的措置を検討し、最貧国の債務を軽減するため迅速に行動し、開発援助を増加するよう求めた。

 アナン事務総長は、G8サミット(6月18-20日)を前に、G8議長を務めるゲルハルト・シュレーダー独首相に書簡を送り、これらの措置を提唱した。(この書簡は5月27日、発表された)

 国連事務総長によれば、このような措置が緊急に必要とされるのは、最近の金融危機がわずか数ヶ月間で、何十年間にわたって積み上げられた経済的・社会的利得を覆し、世界の人口の多くを貧困に逆戻りさせ、経済低成長の時期に何十億もの人々を永続的な悲惨の中に置き去りにする恐れがあるからである。

 開発途上国における貧困撲滅と社会進歩という目標は、国際的に合意を見ているものであるが、世界経済の成長が現在のような重い足取りを続けている限り、全く達成不可能である、と事務総長は述べる。さらに成長の減速は「工業先進国間での貿易不均衡をも悪化させ、ひいては、国際金融システムの安定をも脅かしている」、と指摘する。

 コフィー・アナン事務総長は、国連の提示した国際金融システムの強化案は「真剣な健闘に値する」と述べ、「1997年-1998年の壊滅的な危機の再発を防ぐために」追加的な措置をとることを促している。1999年1月に出された金融構造に関する国連のポジションペーパーは、自国の資本管理と為替相場の政策を決定する開発途上国の権利を守りながらも、金融危機の広がりを押しとどめるために利用できる流動性の拡大、地域的な準備基金の創設、債務据え置きメカニズムの確立とより厳格な資本市場の監督を呼びかけている。

 国連アフリカ経済委員会の主宰の下、5月6日から8日にかけてアジスアベバで開かれたアフリカ諸国の金融・開発担当閣僚会議が採択した声明も同様の観点をもち、金融改革、債務削減、開発援助に関する事務総長の立場を強調した。アフリカ諸国蔵相による声明は、シュレーダー首相およびG8に届けられるべく、経済協力開発機構(OECD)に送付された。

 コフィー・アナン事務総長はその書簡の中で、最貧国の債務負担を緩和するためには大胆な方策を迅速にとることが必要であるというコンセンサスが芽生えつつあることを歓迎しているが、さらなる措置が必要であるとするとともに、このような債務軽減は、政府開発援助(ODA)を犠牲にして実現すべきものではない、と警告している。

 事務総長はまた、ODA減少の流れを反転させ、追加的な開発資金を動員するための革新的方法を探るという誓約も求めている。

 世界の人口の大きな部分が、自由化された今日の世界経済の周縁に取り残され、極貧のなかに生きるようになる深刻な危険性がある、と事務総長は警告している。「このようなことが起きないことを確かなものにするための努力を倍加するのは、私たちすべての責任である」。

 詳細に関しては下記にお問い合わせ下さい。
 Mr. Tim Wall
 Development and Human Rights Section,
 UN Department of Public Information
 Tel:212-963-5851
 E-mail: wallt@un.org.

*出典:ポジション・ペーバー「新しい国際金融構造を目指して(Towards a new international financial architecture)」はウェブ・サイトwww.un.org/esa/coordination/ifa.htmに掲載されている。

Published by the United Nations of Public Information – May 1999

 

シュレーダー独首相(G8議長)に宛てた、国連事務総長の書簡(非公式訳)

(以下は、コフィー・アナン国連事務総長がシュレーダー独首相に宛てた書簡全文の非公式訳である。この書簡は5月27日、発表された)

 どうぞ、この書簡を、来月にケルンで開催される主要8カ国首脳会議(G8サミット)の議長の資格において、お読みください。

 閣下及び他の各国首脳の皆様が、自国国民の安寧に対する責任だけでなく、サミットでの決定が世界経済全体に及ぼす影響力についても切実に認識しておられることを承知しております。世界的な景気後退の懸念が退くにつれて、現在多くの諸国を苦しめている以前からの経済危機が看過される危険性があります。そこで私はこの機会に、高い優先順位を与えられるべきであると確信するいくつかの懸念に閣下の注目を引きたいと思います。

最貧国のニーズに応える

 国際社会は、世界の貧困を緩和するという約束を幾度となく確認してきました。しかし、なお、そのほとんどが開発途上国に居住する約30億人の人々は、いまだに命をつなぐのがやっとの生活をし、子どもたちにより良い生活をさせる希望をほとんど持てずにいます。最貧国は民間の資本市場にアクセスすることができず、貿易面での間断ない後退と政府開発援助(ODA)の流入の継続的な減少によって、その成長見通しは制約されています。

 こうした背景の下、私はアジスアベバで最近開かれたアフリカ金融経済担当閣僚会議が出し、アフリカ経済委員会事務局長によって閣下に送付された声明を強く推賞します。世界は、貧困緩和の約束を具体的かつ効果的な行動に変えるために、さらに多くのことを行なうことが可能であり、またそうしなければならないのです。

 国連は、最貧国の債務負担を軽減するため大胆な措置を講じるよう促してきました。いまでは数多くの政府がこの問題に対処するために自発的な措置を行っていることを喜ばしく思っていますが、さらなる行動が必要です。債務返済義務によって、これ以上貧しい人々の生活水準を圧迫しないようにするため、より迅速に、より多くの国々に対して債務の軽減をはからねばならないというコンセンサスが芽生えつつあることを歓迎しています。しかし債務軽減は、ODAを犠牲にして実現すべきものではありません。

 ODAの流れは、その額が援助国の国民総生産(GNP)の0.52%に達した1960年以来、着実に減少しています。現在、その割合は0.22パーセントに過ぎません。その上1990年以降、最も貧しい開発途上国はこのわずかな開発援助資金をめぐって、市場経済移行国や、人道援助に対する大幅な需要増加と競合しなければなりませんでした。このため、最貧国における公共投資水準の上昇を賄う資金はごくわずかしか残りませんでした。閣下ならびに他の首脳の皆様がケルンにおいて、ODA減少の流れを反転させ、開発資源を動員するための新たな方法の模索を誓約することを期待しています。

世界経済のよりバランスのとれた高成長の必要性

 東アジア、ロシア連邦とブラジルに吹き荒れた金融危機はわずか数ヶ月の間に、何十年間にもわたって得た経済的・社会的利得を覆し、これらの国々の多くが乗り出していた政治・経済改革を危ういものにしました。最も被害の大きかったアジア諸国の経済においては、総合的な生活水準が大幅に低下しました。ラテンアメリカは景気後退を経験し、アフリカはすでに低い所得水準を維持するのがやっとであり、市場経済へと移行中の諸国経済の多くにとって、その見通しは厳しいものとなっています。

 開発途上国における貧困撲滅と社会進歩という目標は、国際的に合意を見ているものですが、世界経済の成長が現在のような重い足取りを続けている限り、全く達成不可能です。このことは、いまなお大部分の開発途上国、中でも特に最貧国にとっての主な輸出収入源である一次産品の価格に重石をのせる結果となっています。
 世界的な成長の減速は、工業先進国間での貿易不均衡をも悪化させ、ひいては、国際金融システムの安定をも脅かしています。私は、よりバランスのとれたパターンをもつ高水準の世界経済をもたらすのに役立ち得る措置をとり、そのことによって、開発途上国が自国の景気回復のために必要とする輸出市場の拡大を提供することを、工業先進国各国の政府に求めます。

国際金融システムの強化

 金融危機が最も繁栄している諸国さえも脅かしているかに見えた昨年、複雑で技術的に進んだ今日の世界経済のニーズにより良く対応する「新しいグローバルな金融構造」の必要性について、広範な合意が見られました。以来、国際金融システムの強化においては、大幅な進歩が得られました。しかし、これまでに合意された措置では、民間資本市場における不安定を緩和するには不十分である可能性があります。国連は、真剣な健闘に値するいくつかの改革案を提示してきました。私は、1997年-1998年の壊滅的な危機の再発を防ぐために、各国政府がさらなる国際金融システムの強化策をとることを期待しています。

 国際金融システムの統治の問題も、大いに重要です。国連は久しい以前から、国家レベルにおける民主主義と良質な統治の必要性を力説してきました。私たちは、国際的なレベルにおいても、同じ原則が適用されることを確実なものとしなければなりません。グローバル・コミュニティーのすべての成員の多様なニーズと利益が適切に代表されることを保証するために、国際金融システムの改革についての合意に達するプロセスは、すべての国々を巻き込んだ幅広い議論と、包括的なアジェンダを基本とするものでなければなりません。私は工業先進諸国に対して、開発途上国と市場経済移行国の代表を新たな国際金融システムの設計と管理に関する審議に参加させる方法を見つけ出すよう求めます。

 世界の人口の大きな部分が、自由化された今日の世界経済の周縁に取り残され、極貧のなかに生きるようになる深刻な危険性があります。私たちすべてが、このようなことが起きないことを確実にするための努力を倍加しなければならないのです。

 どうぞ閣下に対する私の心よりの敬意をご確信くださるとともに、各国首脳の皆様に対しても、私の敬意をお伝えくだされば幸いです。

 

ファクトシートNo.1

世界的な金融改革に関する国連の立場

 国連の新しいポジション・ペーパーにおいて、自国の資本管理と為替の政策を決定する発展途上国の権利を守りながらも、世界的な経済悪化の広がりを押しとどめるために流動性を高め、地域的な準備基金を設け、金融市場に対する規制を強化することを提案する。「新たな国際金融構造へ向けて」(Towards a new international architecture)と題された国連報告書は、第二次世界大戦の終結時にブレトンウッズ体制が定められてからというもの、金融界がはなはだしく成長し、ますます高度化して変化の激しい特性をもつようになったことが、市場とそれを規制する構造の間に矛盾をもたらしたことを指摘している。

 その結果、「現行の国際金融システムでは、きわめて強力で頻繁、かつ壊滅的な効果をもつ金融危機から世界経済を守ることはできないのである」。

 5つの地域経済委員会、ジュネーブに本拠を置く国連貿易開発会議(UNCTAD)と国連経済社会問題局で構成する国連の作業部会が1月下旬に出した報告書は、追加的な緊急事態準備基金を国際金融システムの中心に恒久設置する必要があることを指摘。国際通貨基金(IMF)の裁量で処理できる財源を拡大し、加盟国における金融危機に備えて特別引出権(SDR)を発行する権限をIMFに与えることを提言している。

 「グローバル化した世界にふさわしい国際通貨としてSDRの利用を進めることを目指す広範なプロセスの一環として、金融サイクルを管理するためにSDRを反循環的に利用すべきである」と同報告書は述べている。

 流動性が高まれば、通貨及び株式市場の急激な変動に対して、IMFがより早期に、より効果的に介入することが可能になり、IMFが債務据え置き協定をまとめるのにも役立つ。金融危機の際に債務国が債権国と新たな返済スケジュールを交渉するための猶予期間を可能にする様々な債務据え置き案は、UNCTADと、経社理下の開発計画委員会から出されたものであるが、作業部会の提言の一部ともなっている。
 作業部会は、貸し付け金融機関と借り入れ金融機関の双方における透明性の向上、特に開発途上国内部におけるバンキングシステムの資本状況の強化と改善、オフショア投資資金と梃率の高いヘッジファンドに対する規制を呼びかけている。同様の提言は、主要7カ国(G7)とIMFそのものからもすでになされている。

 IMFの役割強化の促進は、地域やサブ地域のレベルにおいて緊急事態準備基金を設けるという提言と対をなしている。IMFとその主要貢献国である米国はこれまでこの提案に反対しているが、日本はアジア通貨基金の設置案を出している。

 国連報告書の中心的執筆者であるホセ・アントニオ・オカンポ氏(Jose Antonio Ocampo)氏は1月にニューヨークで行なったプレス・ブリーフィングにおいて、地域基金やサブ地域基金のネットワーク化をはかれば、単体よりも安定したものになろうと語った。同氏はさらに、地域的に緊急事態準備基金を管理し、経済を監視すれば、地域統合の向上に向けた一歩となり、欧州連合が達成したのと同様に有益な効果を得られる可能性があることを指摘した。同氏は国連ラテンアメリカ経済委員会事務局長、またコロンビアの元大蔵大臣である。

 作業部会は、海外投資に対する国家管理の問題についての現行の通説にも異議を呈している。多くの先進国とIMFは、開発途上国に対して資本勘定取引の包括的な自由化政策の推進に従うよう迫ってきた、と報告書は述べている。だが、IMFと先進国が促していることは開発途上国の歴史的経験とは相容れないものであり、その上に最近の金融危機は、「唐突な、または機の熟していない自由化」が市場経済移行国と開発途上国にふさわしいものではないことを示している。

政策協調

 実際に、G7及びIMFは1997年から1998年にかけての金融の大混乱の結果、資本管理に対するいわれなき反対姿勢を緩和した。加えて、金融構造に関する調査書の作成を委託した執行委員会の委員長であるニティン・デサイ国連事務次長は1月に行なったプレス・ブリーフィングにおいて、いまやG7が金融据え置きメカニズムに関する国連の提案に関心を示していることを指摘した。落ち着いた成長を保ち、インフレとデフレいずれに傾くことをも避けるために、主要先進国間でのマクロ経済政策の協調を高めるよう同報告書が奨励したことは、2月下旬のG7閣僚会議における米国の声明を含めて、様々な場面でG7諸国が行ってきた声明と整合性がある。

 G7にとっては、IMFにより大きな権限を与えること、またはグループを拡大して若干の市場経済移行国と開発途上国を加えることによって、経済政策の国際的な一貫性を高めようという同報告書の提案の方が、受け入れがたいものかもしれない。2月のG7のコミュニケは、G7加盟国と国際的な金融機関で構成される「金融安定フォーラム」を創設し、その後、新興市場経済の参加を検討するというドイツのプランを支持した。だがこのフォーラムが集中して行うのは、金融市場の監督と監視であり、国家政策の協調ではない。

 金融構造に関する国連のポジションペーパーは、政治的なリーダーシップをとり、国際的な経済問題についての合意を促すことによって、経社理が役立ち得ることをも示唆している。

出典:United Nations Development Update #24
Published by the United Nations Department of Public Information May 1999

 

ファクトシートNo.2

経済金融トレンド

世界の経済成長の低下

1996 1997 1998* 1999**
世界経済(成長率、%) 3.6 3.4 1.9 1.9
先進国 3.1 2.8 2.0 1.8
市場経済移行国 0.0 2.5 0.5 -0.3
開発途上国 5.7 2.5 1.7 2.5
*推定値  **予測値
資料:国連経済社会局

 

開発援助の減少

1994 1995 1996 1997
政府開発援助(単位:10億米ドル) 60.3 59.8 57.9 49.6
ODAが援助国のGNPに占める割合(%) 0.30 0.27 0.25 0.22
後発開発途上国へのODA(単位:10億米ドル) 11.4 10.9
後発開発途上国へのODAが援助国のGNPに占める割合 0.05 0.05

資料:OECD開発援助委員会の1999年度年次報告書

執拗に続く貧困国の債務

1996 1997 1998
全アフリカの対外債務(単位:10億米ドル) 340.6 344.1 350.1
GDPに占める割合(%) 67.8 64.7 65.5
モノ・サービス貿易に占める割合(%) 293.4 283.9 302.8
債務返済額(単位:10億米ドル) 31.0 33.0 35.7
債務返済額がモノ・サービス輸出に占める割合(%) 29.3 21.3 30.9

資料: 国連アフリカ経済委員会と世界銀行

Published by the United Nations Department of Public Information May 1999

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