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麻薬統制委員会、1998年次報告書を発表

1999年02月23日

INCB報告(1998年)

 国際麻薬統制委員会(INCB)は2月23日、ウィーンおよび全世界のその他30都市で1998年次報告書を発表。過去1年間の全世界における規制対象薬物の乱用と密売の動向を明らかにした。

 1998報告書で取り上げられた重要問題としては、ベンゾジアゼピン(通称「ベニーズ」)とアンフェタミン型覚醒剤の乱用増大、ならびに、開発途上国でこれらおよびその他の向精神薬を売る街頭市場の急拡大があげられる。ヘロインの喫煙は増大傾向にあるほか、テトラヒドロカンナビノール(THC)の含有量が多い大麻も、特に北米の不正薬物市場に多く出回るようになった。

 ベンゾジアゼピンの乱用が急増しているヨーロッパおよびその他の先進国では、多くの原因のはっきりしない症例について、この薬物を長期間にわたって処方する医師も見られる。ウィーンを本部とするINCBは、世界の薬物乱用と3つの国際薬物条約の遵守を監視するとともに、関連する各国政府に対し、これら薬物の利用には一層の注意を要することを医師に印象づけるよう働きかけている。

 「エクスタシー」をはじめとするアンフェタミン型覚醒剤の乱用は、アルゼンチン、ブラジル、チリ、ウルグアイなどの南米諸国と、旧ソ連および西アジア諸国で広がっている。イスラエルでは、LSDや「エクスタシー」の乱用が広がっているほか、まだ国際的取締りの対象となっていないその他のアンフェタミン系「デザイナードラッグ」の乱用も見られるようになった。

 多動症(ADHD)治療用の覚醒剤、メチルフェニデートの使用は、50カ国以上で倍増した。オーストラリア、ベルギー、カナダ、ドイツ、アイスランド、アイルランド、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、スペイン、英国などの国々におけるこの薬物の乱用は、現在全世界の消費量の85%以上を占める米国のレベルに到達する可能性がある。

 INCBは各国に対し、ADHDの過剰診断の可能性を洗い出し、メチルフェニデートの過度の使用を抑制するよう申し入れている。この薬物による治療を受ける患者は、1990年代初頭には主として男子小学生であったが、最近ではその層がさらに広がり、ますます多くの子ども、青少年および成人がこの治療を受けるようになっている。米国では、1歳の幼児がADHDと診断されたケースもある。

 ダイエット薬としてのアンフェタミン型覚醒剤の使用は、1996年をピークとして減少しているものの、米国では依然として高いレベルにある。こうした薬物によるダイエットは最近、アジア、特に香港、マレーシアおよびシンガポールで広まっており、もっとも乱用の多かったラテンアメリカ諸国のピーク時のレベルに達している。

 開発途上国では、鎮痛薬や精神安定剤などの合法的向精神薬の供給不足により、乱用者と真正の患者の両方が利用できる「ヤミ市場」が出来上がっている。ヤミ市場で売られる薬物には正規の取締りはなく、消費者は医師によるカウンセリングを受けていない。INCBは各国政府に対し、これら薬物が治療目的のために正規の経路を通じて適切に供給されるよう確保するよう促している。

 ほとんどの先進国では、モルヒネの合法的使用量が増加しており、全世界の需要量は25トンを越えるものと見られる。こうした合法的使用は、ガンやエイズといった末期の疾患に冒された患者に対する緩和ケアの増大と、人口の高齢化によって拡大している。

 北米市場では、純度の高い安価なヘロインの登場で、特に若者の間でその喫煙が広がった。こうしたヘロインの多くはコロンビア、メキシコおよびグアテマラで、現地栽培のケシから製造される。多くの西アジア諸国および独立国家共同体(CIS)諸国では、アヘンの乱用が増大しているものと見られる。こうした地域での薬物注射は、エイズを引き起こすヒト免疫不全ウィルス(HIV)蔓延の主因ともなっているため、特に問題が大きい。

 こうして薬物乱用の増大が見られる地域もあるが、報告書は国際薬物条約の適用により、不正薬物取引に利用されかねない精神作用物質の流用に、最近では歯止めがかかっていることを強調している。

 ドイツ当局は最近、ドイツと中国からガーナへ輸出され、さらにガボンに再輸出されることになっていたクロルジアゼポキシド、塩酸エフェドリンおよびジアゼパム(それぞれ1,250キログラム)を大量に摘発した。この量はガボン一国のニーズを大幅に上回っていた。ガボンとガーナは、この積荷に対する輸入許可証が偽造であり、受取人は架空の人物であることを突き止めた。INCBによれば、これらの薬物は数億錠の不正薬物製造に利用できるものだった。

 ハンガリーのある製薬会社は1998年、押収されたと見られるあへんを中央アジア諸国から大量に輸入しようとしたが、報告書の指摘によれば、調査の結果、このように大量の薬物はこれら諸国では発見されていないことが明らかになった。ハンガリー政府はこのあへん輸入に許可を与えなかった。

 報告書によれば、中国は1997年、ある企業に対し、1,800キログラムのジアゼパムの対シンガポール輸出を認めたが、シンガポールの合法的需要量は700キログラムにも満たなかった。シンガポール国内での捜査により、輸入会社は向精神薬の取引免許を持っていないことが明るみに出た。同社は取引の容疑を否定しており、輸出された薬物の行方はまだ判明していない。

 イランは過去1年間、欧米諸国向けに大量のリン酸コデインを輸出した。イランは1979年以来、けしの正規の栽培も大量の生あへん輸入も行っていないところから、INCBは、押収物のあへんなどからリン酸コデインが製造された可能性が高いとしている。INCBは各国政府に対し、押収された薬物から作られる製品の市場取引を認めることにより、合法的需給の不均衡を回避するよう働きかけている。

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