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「女性2000年」国連特別総会、国連本部で閉幕
1995年北京女性会議目標へのコミットメントを再確認

プレスリリース 00/62 2000年06月29日

政治宣言、「一層の行動とイニシアチブ」採択
総会議長、北京の文言から「何ら後退のない」ことを指摘

 第23回国連特別総会「女性2000年:21世紀に向けた男女平等、開発および平和」は、1995年の第4回世界女性会議で採択された「北京宣言」および「行動綱領」に含まれる諸目標に対するコミットメントを各国政府が再確認し、6月10日、閉幕した。

 政治宣言ならびに「北京宣言および行動綱領を実施するための一層の行動とイニシアチブ」からなる成果文書を採択した各国代表は、前向きの要素が顕著に見られるものの、依然として障害が残っていることで合意し、行動綱領の完全かつ速やかな実施を確保するための一層の行動を取ることを誓約した。

 テオ・ベン=グリラブ総会議長(ナミビア)は閉会の辞において、その成果を賞賛するとともに、最終文書では「北京のいずれの文言に関しても何ら後退がない」ことを指摘し、行動綱領は国内的・国際的行動に十分な有効性を持ちつづけていることを指摘した。さらに、新たな文書は、女性に対する暴力と人身売買、保健、教育、人権、貧困、債務救済とグローバル化、武力紛争、主権、女性の土地所有・相続権、政治参加および意思決定の分野において、北京綱領を更新するものとなっている。総会議長は、政府が必要な政治的意思を実証し、必要な資源を配分すれば、男女平等、開発および平和という目標は、21世紀の極めて早い時期に現実のものとなるであろうと述べた。

 女性に対する暴力の問題に関し、各国政府は、夫婦間のレイプおよび女性と少女の性的虐待を含め、あらゆる形態の家庭内暴力に対処する法律を制定あるいは強化することに同意した。各国代表は、多くの政府が教育、啓発プログラムとともに、この行為を犯罪化する立法措置を導入していることに留意し、女性と少女に対する暴力は人権侵害であることで合意した。他方、多くの国々では、家庭内暴力や児童ポルノを含め、女性と子どもに対する諸形態の暴力を廃絶するための刑事司法措置の多くが弱いものとなっている。予防戦略も依然として場当たり的で、後手に回っている。

 成果文書が定める女性の教育に関する目標の中には、2015年までに成人の識字率を50%上昇させ、少女にも、少年にも、無償の初等義務教育を確保するという、期限付き目標が含まれている。また、各国政府は、職場における分業の根本原因の一つとなっている男女の固定観念化に取り組むため、ジェンダーを考慮したカリキュラムを開発することで合意した。

 各国政府はさらに、女性器切除、早期の強制結婚およびいわゆる名誉犯罪を含め、有害な慣習あるいは伝統的慣行を廃絶する法律、政策および教育プログラムを開発し、これを完全実施することで合意した。また、商業的な性的搾取、および、女性と子どもの人身売買と女児殺害をはじめとする経済的搾取の廃絶を図るという合意も得られた。

 女性と武力紛争に関しては、平和建設、平和創造および紛争解決への女性の貢献がますます認識されていること、ならびに、女性難民保護のための指針を普及・実施する上で進展が見られているという点で合意がなされた。また、労働市場への女性の参加が進んでいること、および、仕事と家庭を両立させる必要性に対する認識が高まっていることについても、合意が見られた。

 女性の健康に関しては、妊産婦の罹病率と死亡率の低減が優先課題であり、女性は不可欠な産前・産後および母子ケアに容易にアクセスできるべきだという決定がなされた。乳がん、子宮頚がん、子宮がん、骨粗鬆症、および、HIV/エイズを含む性感染症の予防、発見および治療、ならびに、望まない妊娠の予防と安全でない中絶の健康に対する影響については、特に注意を向けるべきである。中絶の必要性をなくすため、あらゆる努力を試みるべきである。

 国際レベルで、成果文書は、紛争の防止と解決、紛争後の復興、平和創造、平和維持および平和建設を含め、開発活動と和平プロセスへの女性の参加を確保・支援するとともに、女性団体とコミュニティー団体の関与を支援する必要性を強調している。女性はまた、これらの問題に関する事務総長の特使および特別代表にも起用されるべきである。

 総会はまた、女性と環境、メディア、女性の地位向上のための制度的機構、および、女性の人権を律する問題についても、合意に達した。総会はさらに、国内レベルで政府が、国際レベルで政府、地域機関および国連を含む国際機関、ならびに、国際金融機関その他の主体が取るべき行動についても、勧告を行った。

 最終文書の採択に先立ち、金曜日の午後から夜にかけて、50人が演壇に立ち、北京会議再検討プロセスの重要性を強調するとともに、男女同権の達成に関する状況改善は、極めて重要な普遍的課題であると主張した。特別総会の価値ある貢献としては男女平等の促進につながるような環境整備をしていくことであるが、北京行動綱領の実施には、新たなパートナーシップが必要だとする発言者も多かった。

 午後の会合ではモーリシャス、ニジェール、インドネシア、シエラレオネ、中央アフリカ共和国、ペルー、カメルーン、モロッコ、サントメプリンシペおよびチャドの大臣のほか、セーシェルの社会問題・人材開発省総局長、バヌアツの女性問題局長、ベネズエラとコンゴ民主共和国の副大臣、バーレーンの労働・社会問題省次官、サモアの女性問題省次官補、イエメンの国家女性委員会議長、ならびに、セントビンセントおよびグレナディーン諸島、アフガニスタン、ボスニア・ヘルツェゴビナ、マーシャル諸島およびナウルの代表が発言を行った。

 また、オブザーバーとして、スイスの連邦男女平等事務所長、クック諸島の内務大臣、国際フランス語圏機関の女性の地位向上担当官、英連邦のジェンダー問題担当主任、赤十字国際委員会副議長、欧州共同体の雇用・社会問題担当局長(欧州委員会を代表)、欧州理事会の男女平等に関する運営委員会事務局長、国際赤十字・赤三日月社連盟副議長、経済協力開発機構(OECD)事務次長、欧州安全保障協力機構(OSCE)議員会議議長、アフリカ統一機構事務次長、ならびに、バチカン、イスラム会議機構、国際移住機関、マルタの独立軍事司令部、アラブ連盟、国際自然・天然資源保全連合およびアフリカ開発銀行の代表も演壇に立った。

 また、国連の代表として、女子差別撤廃委員会議長、国連人口基金(UNFPA)事務局長、国連児童基金(UNICEF)事務局長、国連婦人開発基金(UNIFEM)事務局長および国連開発計画(UNDP)総裁も発言を行った。

 非政府機関(NGO)の代表としては、「アフリカの法と開発における女性」議長、「マヒラ・ダクシャタ・サミティ」副議長、カナダ女性の地位向上研究所の代表、ペルー女性センター「フローラ・トリスタン」議長およびアラブ女性同盟議長が演壇に立った。

 また、午後の会合で、各国代表は、ボスニア・ヘルツェゴビナが国連憲章第19条の規定に従い、その分担金滞納額を減らしたとの連絡を受けた。(第19条は、国連に対する分担金を2年間滞納した加盟国は、総会における投票権を失うと規定している。)

 最終文書に関する交渉を完結するための長い休会を経て、土曜日に再開された会合では、ホンジュラス、カタール、ポーランド、南アフリカ、スリナム(カリブ共同体を代表)、ニカラグア、ナイジェリア(開発途上国および中国で構成される「グループ77」を代表)、マルタ、 アルゼンチン(南部共同市場を代表)、ルワンダ、米国、ガボン(アフリカ・グループを代表)、セネガル、コロンビア(ラテンアメリカ数カ国を代表)、サウジアラビア、クウェート、アラブ首長国連合、パキスタン、リビア、バーレーン、エルサルバドル、ケニア、スーダン、インドネシア、キューバ、アルジェリア(アラブ・グループを代表)、モロッコ、チュニジア、エジプト、フィリピン、ポルトガル(欧州連合と加盟申請国を代表)、カナダ、ニュージーランド、オマーン、モーリタニア、イラク、ノルウェー、イラン、ヨルダン、シリアおよびロシア連邦の代表、ならびに、バチカンのオブザーバーが、それぞれの立場を説明する発言を行った。

 会議再開に当たり、議長はシリア国民に対し、同国大統領の死去に対する哀悼の意を表明した。同人を偲び、総会は1分間の黙とうを捧げた。発言者はすべて、同人の逝去に哀悼の意を表し、シリア代表は弔意を表明した人々に感謝した。

総括

 「女性2000年:21世紀に向けた男女平等、開発および平和」と題する特別総会は、行動綱領実施における進歩を再検討・評価するとともに、現時点での課題を明らかにした。北京会議の最終文書は、特別総会の名称にも反映された目標を定めるとともに、女性のエンパワーメントに向けた検討事項を示していた。行動綱領の誓約が完全に履行されていないという認識の下、参加者は地方、国内、地域および国際レベルで、実施を加速させるための一層の行動とイニシアチブに合意した。

 国連本部で今週、開催された特別総会への参加者は多数に上り、10回の全体会合での発言者の数は、178の加盟国、3つの非加盟国、16のオブザーバー、4つの国連プログラム・専門機関の長、1つの国連委員会および5つの非政府機関(NGO)を含め、207人に及んだ。その77%は女性であった。

 各国の常駐代表部の職員に加え、2,300人の代表がニューヨークの会合に参加した。特別総会においても北京会議と同様、多くのNGOが参加があり、1,036の認定NGOから参加した代表は2,043人に上った。今週の特別行事とパネル討論では、ジェンダーの主流におけるよい実践、女性の訓練、少額融資プログラム、国内避難民の女性と少女の保護、性と生殖に関する健康、女性に影響する緊急事態、さまざまな国際活動におけるジェンダーの観点およびジェンダーの認識を含め、男女平等に関連する具体的な問題が多く取り扱われた。

 一般討議での発言者は、北京会議の成果実施の再検討と評価が、急激に変化しつつあるグローバルな文脈の中で行われていることを強調した。これら文書の完全実施に対する新たな挑戦として、これらの人々は、国家間の相互依存関係の増大とともに、グローバル化、および、国家間と国内の経済状況における不均衡の拡大をあげた。構造調整プログラムと対外債務返済の大きな負担は、多くの開発途上国の状況を悪化させている。女性と少女が国内的、地域的および国際的な労働移住に関わることが多くなっている。技術進歩は女性の地位に影響を及ぼす可能性があるほか、武力紛争の女性に対する影響も無視できないことが指摘された。

 開会にあたり、コフィー・アナン事務総長は、「地球の将来が女性の肩にかかっている」ことを、国際社会が世界に知らしめるべきだと述べた。事務総長は、教育の重要性を重視し、それがグローバル経済への入口であると同時に、その落とし穴に対する最善の防衛策でもあることを強調した。男女を問わず、社会全体にもっとも役立つ開発戦略は、女性が中心的な役割を果たすものをおいて他にない、と事務総長は述べている。

 女性が男性よりも劣っているという伝統的な固定観念を克服することにより、加盟国は女性という膨大な人的資源を十分に活用すべきである、という点で多くの発言者は合意した。また、女性を社会で権力のある地位に置くことは、国家経済の利益となること、および、女性に対するあらゆる形態の暴力の廃絶が不可欠であることについても、合意が見られた。今後、女性の人身売買の拡大と闘っていく手段として、「人身売買に関する国際越境組織犯罪条約」追加議定書の交渉を迅速に完了する必要性も強調された。発言者の中には、HIV/エイズの蔓延により、多くの女性が犠牲になっていることを強調する者もいた。

 各国の行動プログラムを説明する際、多くの国々の代表は、男女平等を確保するための政府による立法面での努力、および、地方選挙における女性枠の義務づけを含め、女性のエンパワーメントを図る措置の概要を示した。各国によって実施された経済的措置として、少額融資プログラム、および、職場での平等を達成するための労働基準の作成に対する言及があった。各国政府は、女性を意思決定過程に関与させ、その人権を推進することを誓約した。

特別総会成果文書の概要

 この文書は、「序文」、「行動綱領の12の重要分野実施における成果と障害」、「北京宣言および行動綱領の完全実施に影響を及ぼしている現在の課題」および、「障害を乗り越え、北京行動綱領を完全かつ迅速に実施するための行動とイニシアチブ」の4部構成となっている(文書A/S-23/AC.1/L.1/Adds.1~42とCorr.1~Add.16によって修正された文書A/S-23/2/Addendum 2(Parts I-IV)およびCorr.1~Part IV参照)。

 1995年の行動綱領で明らかにされた女性の地位向上に重要な12の分野における目標達成に向けた成果と障害を評価した上で、成果文書は顕著に前向きの進展があったとしつつも、北京で定められた目標と誓約の完全実施には未だ障害が残っていることを指摘している。

 北京綱領で明らかにされた12の重要分野とは、女性と貧困、教育、保健、暴力、武力紛争、経済、権力と意思決定、人権、環境、メディア、女児、および、女性の地位向上に向けた制度的機構である。

 文書によれば、貧困におけるジェンダー的側面に対する認識は高まっているが、男女間の経済的な不平等は拡大している。これに対処するため、各国政府は、あらゆる予算プロセスの設計、開発、採用および実施にジェンダーの観点を組み入れるとともに、持続可能な開発を促進し、女性向けの特別な貧困撲滅プログラムの策定を促進する社会経済政策を実施するよう要請されている。

 また、同文書によれば、グローバル化は一部の女性に対し、より大きな経済的な機会と自立をもたらしたが、その一方でグローバル化により、一層疎外された女性もいる。労働市場への女性の参加は進んでいるものの、多くの女性は依然として、最低限の生活生産者として農村部やインフォーマル経済で、また、低い所得と雇用状態の不安定なサービス部門で働いている。各国政府はこの点にかんがみ、社会保障制度への平等なアクセスを確立・確保すること、および、グローバル化に伴う労働条件の不透明性と変化に対する保障措置を提供し、新たに生まれつつある柔軟な労働形態が社会保障によって十分にカバーされるよう努めることで合意した。

 グローバル化の挑戦に対処する上で、各国政府は女性、特に開発途上国の女性のマクロ経済の意思決定過程に対する平等な参加を保障するため、開発途上国の国際経済における政策決定過程への実効的な参加拡大を含め、効果的な措置を講じることで合意した。

 また、国内レベルでも国際レベルでも、国際法および国連憲章に反し、当該国の国民による経済・社会開発の完全な実現を阻む一方的な措置を回避するとともに、経済制裁の女性と子どもに対する悪影響を緩和する措置を講ずることでも、合意が見られた。各国政府はとりわけ、ジェンダー観点から構造調整プログラムの分析を行い、マクロ経済的・社会的政策およびプログラムの見直しと実施を図る措置を講じるべきである。

 意思決定と権力への女性の完全な参加が、社会のすべてのレベルにおいて重要であるという認識は、幅広く受け入れられるようになっている。しかし、こうした認識にもかかわらず、法律上の平等と現実の平等の間には、依然として開きがある。成果文書は、国会およびその他立法機関の選挙における政党を通じた女性候補の指名、女性枠あるいはその他の適切な手段を通じ、公共政策策定における女性の役割と貢献を増大させることにより、女性の政界進出を奨励する条件を整備するよう求めている。

 国際レベルでは、開発活動と和平プロセス(紛争の予防と解決、紛争後の復興、平和創設、平和維持および平和建設を含む)への女性の参加を確保・支援すること、ならびに、女性団体とコミュニティー団体の関与を支援することが合意された。女性はまた、これらの問題に関する国連事務総長の特使および特別代表としても起用されるべきである。

 成果文書が定める女性教育に関する目標の中には、2015年までに成人の識字率を50%上昇させ、少女にも、少年にも、無償の初等義務教育を確保するという、期限付き目標が含まれている。また、各国政府は、職場における分業の根本原因の一つとなっている男女の固定観念化に取り組むため、ジェンダーを考慮したカリキュラムを開発することで合意した。

 女性と少女に対する暴力は、公私に関わらず、人権侵害にあたることを認めた上で、各国政府は優先課題として、女性に対する暴力に関する実効的な法律につき、適切な見直しと導入を行うこと、および、すべての女性と少女が保護され、司法に訴えることができるようにするため、必要な措置を講じることで合意した。各国政府はまた、すべての年齢の女性と少女に対するあらゆる形態の暴力を、法律で処罰できる犯罪として取り扱うことを決定した。

 各国政府はさらに、女性器切除、早期の強制結婚およびいわゆる名誉犯罪を含め、有害な慣習あるいは伝統的慣行を廃絶する法律、ならびに、政策および教育プログラムなどの措置を開発し、これを完全実施することで合意した。また、商業による性的搾取、ならびに、女性と子どもの人身売買、女児殺害、名誉あるいは情熱の名の下に実行される犯罪、人種的動機に基づく犯罪、子どもの誘拐と売買、および、持参金に絡む暴力と殺人など、経済的搾取の廃絶を図るという合意も得られた。

 各国政府は、夫婦間のレイプおよび女性と少女の性的虐待を含め、あらゆる形態の家庭内暴力に対処する法律を制定あるいは強化することで合意した。

 女性の健康に関しては、妊産婦の罹病率と死亡率の低減が優先課題であり、女性は不可欠な産前・産後および母子ケア、ならびに、より高次のケアへの効果的な紹介および移送に容易にアクセスできるべきだという決定がなされた。乳がん、子宮頚がん、子宮がん、骨粗鬆症、および、HIV/エイズを含む性感染症の予防、発見および治療、ならびに、望まない妊娠の予防と安全でない中絶の健康に対する影響については、特に注意を向けるべきである。中絶の必要性をなくすためには、あらゆる努力が試みられるべきである。ヘルス・ケア関連の社会サービスには教育、清潔な水と安全な衛生設備、栄養、食糧安全保障および保健教育プログラムが含まれるが、生涯を通じて男性も女性も普遍的かつ平等にこれらのサービスを利用できるよう、保証されるべきである。