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国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS)・東エクアトリア州調整官・事務所長 平原 弘子さん

平原 弘子(ひらはら ひろこ)
国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS)・
東エクアトリア州調整官・事務所長

大阪の府立高校3年の時に、アメリカ・ミシガン州グランドラピッズの公立高校に1年間留学した後、ミシガン大学アンアーバー校・資源環境学部で環境政策の学士号を取得。日本に帰国後、在日米軍座間キャンプの環境課に6年程勤務。その間、桜美林大学の大学院で国際関係学修士号を取得。翌年外務省主催のアソシエート・エキスパート試験に合格し、2001年から2年間、ジュネーブの国連環境計画バーゼル条約事務局、そして2003年から1年間、ニューヨークのユニセフ本部にある水・衛生関係の部署にJPOとして勤務した後、PKOミッションへ。リベリア、ダルフール、キプロスのミッションを経て現職。

インフォーマルな交流も含め、州政府と良好な関係を築く

国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS)東エクアトリア事務所の一日は朝8時から始まります。現地スタッフを除くほぼ全員が国連敷地内の住居区域で生活しているので、オフィスまでは徒歩で約1分。途中にあるTukul (草ぶき屋根のオープンスペース)で営業しているレストランで朝食をとっているスタッフと「おはよ~」と挨拶を交わしつつ、「さて今日は何から始めますかねぇ」と考えながらオフィスへ。カンボジア人の優秀なアシスタントが、決済待ちの書類を用意しつつ、ばっちりスタンバイしていて「ボス~、今日の一日はこんな感じ」とスケジュールの確認をしてくれます。月曜日を除き毎日、定期的なミーティングが入っている上に、スタッフとの打ち合わせや訪問者との会議などがあるため、アッという間にお昼休みに。

外での仕事兼ランチがないときは、オフィスでコンピューターを眺めつつ食事。その後、会議やUNMISS本部からのメール対応をしているうちに終業時間の4時に。就業時間外でも訪問者は途切れず、各部署から上がってくる状況レポートに目を通し、リポーティングオフィサーがまとめた本日のUNMISS東エクアトリア州リポートを校正して本部に送る頃には夜8時近くになっています。

UNMISSスタッフと国連・ニューヨーク本部から訪れた選挙ニーズ・アセスメントチームとのミーティング風景

赴任当初は、政府関係者とのミーティングもフォーマルに行っていました。しばらくすると、州知事などと込み入った話や今後の方針などを忌憚なく話し合うには、就業時間外のほうが断然効果的であるということに気づき、現在は州政府大臣や知事のアドバイザーなどに交じって、知事公邸でのランチグループの常連になっています。おかげで、最近の南スーダン情勢悪化の中でも州政府との良好な関係を維持できています。

軍部隊の派遣だけではない国連PKOの活動

「平和維持活動」と言うと軍中心というイメージがありますよね。私も「国連PKOで働いています」というと「軍関係の方ですか?」と聞かれることがしばしばです。でも、少数のPKOミッションを除いて、実際は平和構築をベースとしたシビリアン(文民)中心の活動を展開しているんです。ちなみにUNMISS東エクアトリア州事務所では、現地スタッフとサポートスタッフ(IT、車両、エンジニア、航空など)、150人のルワンダ人平和維持部隊、60人の国連警察要員を含む350人が、ガバナンス、人権、法律、ジェンダー分野で州政府・CSO・コミュニティ支援を行っています。東エクアトリア州は南スーダンで唯一、3ヵ国(ケニア、ウガンダ、エチオピア)と国境を接し、首都や紛争地域から国外へ避難する人々の中継地となっています。UNMISSは州都トリットのメインオフィス以外にウガンダ国境のニムレ・放牧民が多く暮らすカポエタに郡オフィスを持っていて、広大な州全体に国連のサービスが行き届くように努力しています。WFP、UNDP、UNICEF、WHO、UNFP、UNHCRなどの国連機関との活動協力も活発です。

平和維持部隊のメンバーと平原所長

仕事と休暇のメリハリを大切に

オフィスにいてばかりでは州全体の状況がわからないですし、州都と郡オフィスでカバーしきれないこともあるので、最低でも月2~3回はフィールドに出ます。主な町・村以外は道路整備ができていない、もしくはそもそも道がないので、州都事務所に1機常駐している国連ヘリを使って僻地を訪れます。そうした時は必ず、知事を含む州政府関係者と一緒に出掛けます。州政府の役人が訪れたこともなかった地域へサービスを広げる契機になることもあり、州政府とコミュニティの両方からとても喜ばれています。今までに警察官・教員・看護師などの派遣の手助けもしました。

政府関係者とフィールドへ

南スーダン・ジュバの陸上自衛隊員たちと一緒に

赴任地で、セキュリティーを含む生活環境がよくない場合、国連は「Rest and Recuperation=R&R」休暇という、年休とは別の休暇を認めています。状況にもよりますが、4~8週間赴任地で過ごす毎に約1週間の休みがもらえるというシステムです。これを利用して、赴任地にいるときは「みっちり」働き、8週間後には「しっかり」休むというサイクルでリフレッシュしています。フィールドワークの間は自然いっぱいの村などに行くことも多いので、仕事の合間のコミュニティ交流の楽しみもあります。

人道支援のみならず人材育成も重要

中学生の頃から漠然と国外で働きたい、人のためになる仕事に就きたいと思っていました。幸い柔軟な両親のもとに育ったので、高校留学やアメリカの大学進学を積極的に応援してくれました。大学卒業後、しばらくは環境保全の仕事に就いていましたが、次第に環境ガバナンスを通した平和構築、さらには復興支援へと興味が広がりました。現在、州調整官・事務所長という仕事を得て、様々な分野を通して国づくりに携わる機会を得ています。今までに培った全ての経験とネットワークをフル活用し、常に私が今できることは何かを考えて行動するようにしています。

2012年1月より、南スーダンには日本の自衛隊から「施設部隊」が派遣され、UNMISS施設や道路補修などコミュニティのインフラ整備を主に行っています。日本政府は、これまでの300名規模から拡大して120名の追加派遣を決め、今年初めから州都トリットでの活動を予定していましたが、昨年末に南スーダンの政府軍と反政府勢力との衝突が発生したことから、一時は派遣見合わせの状態となりました。現在は追加派遣が実施され、トリット派遣はまだ実現していないものの、400名以上の自衛隊員が、昨年末の武力衝突から逃れてUNMISS敷地内に避難している32,000人の住民保護をサポートしています。

首都での仕事の増加で活動範囲拡大が決定していた自衛隊の当州への派遣が遅れているのが残念ですが、いずれ約150人の隊員の方たちが州都トリットで活動するようになれば日本の協力が目に見える形で残っていくと思います。近年、PKOへの参加や支援で日本の存在感が増していますが、人道支援だけではなく、治安が安定している地域での人材育成分野への協力がますます重要になってくると思います。

国連はいろいろな国から多くの人がそれぞれの経験を持ち寄って、目的達成に尽力する組織です。様々な意見・批判等もありますが、私はそのような組織で働けることを誇りに思っていますし、日本の有志の参加に期待を寄せています。