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国際連合人道問題調整事務所(OCHA)ニューヨーク本部 人事担当官 澤田 泰子さん

voice11-1澤田 泰子(さわだ やすこ)
国際連合人道問題調整事務所(OCHA)ニューヨーク本部
人事担当官

東京都出身。シラキュース大学大学院国際関係論学科卒業後、1998年にJPO制度で国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)在グルジア事務所に派遣され、翌年、国連競争試験を通じて国連人道問題調整事務所(OCHA)欧州本部(ジュネーブ)へ人道問題担当官として異動。その後在インドネシア事務所勤務を経て、2005~2008年OCHA欧州本部管理部フィールド支援担当官。2009年より現職。2014年5月から休職し、株式会社ウエイクアップ勤務。米国Coaches Training Institute認定プロフェッショナル・コーアクティブ・コーチ(CPCC)、国際コーチ連盟認定アソシエート・コーチ(ACC)、ザ・リーダーシップ・サークル認定プラクティショナー。

職員の採用にもスピードが求められる職場

2009年1月より、国連人道問題調整事務所(OCHA) ニューヨーク本部の調整対応部(Coordination and Response Division)で人事担当官として働いています。OCHAは国連事務局に属し、紛争や自然災害の被災者のための人道援助の調整を目的としています。7名からなるチームのリーダーとして、私の仕事は本部と50カ所以上の現地事務所で働く約2,000名の職員のうち、約450ある国際職員ポストの採用、とくに現地事務所のための採用が中心で、OCHAの内部選抜と公募を通じて年間に150ポストほど採用しています。

緊急援助活動の調整を行うOCHAでは、採用にもスピードが求められており、いかに迅速に、必要な能力と経験を持った人を現地に派遣するかが課題となっています。

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2013年のフィリピン台風被害のあと、現地に設営されたOCHAのオペレーション・センター ©OCHA

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内戦や洪水の被害を受けたスリランカで、人道支援を必要としている人々の声に耳を傾けるOCHAスタッフ
© OCHA/W.A.K Sanjeewa

昨年のフィリピンでの台風被害、中央アフリカ共和国の紛争などのように、突発的な自然災害や急激な情勢の悪化にともなう増員要請があることもあります。あらかじめ実施する採用試験の合格者を登録し、空席が出たときにすぐ派遣できるロスター制度を利用しているのですが、登録者が必ずしも空席広告の条件に合わなかったり、登録者の希望とポストが合致しなかったりすることもあり、現地のニーズと人をマッチングするのはなかなか大変です。特にOCHAの職員を新しいポストに異動させる場合は、元のポストが空くことになるので、オペレーション上はもちろん、事務的な立場からも「空席率をいかに低く維持するか」というのも重要な課題です。

職員のワーク・ライフ・バランスを包括的にサポート

採用の仕事は、空きポストにベストの候補者を採用するだけで終わりではありません。現在の国連システムでは、職員は自分でキャリア・プランを考え、次のポストに応募してなければなりません。「危険な現場の次は本部ポストを」と希望しても、その通りに異動できる場合とそうでない場合があります。また、度重なる現場ポスト間の異動や様々なストレスによって、知らないうちに体調を崩してしまうこともあります。世界各地のスタッフと連絡を取るなかで、キャリアの相談をされることも多く、もっと専門的にサポートすることはできないものだろうか、という考えから、私は2012年よりコーチングの勉強を始め、資格を取得し、職員のキャリアだけでなくワーク・ライフ・バランスなども含めた包括的なコーチングをOCHAの職員向けに試験的に提供しています。

キャリアは人生のポートフォリオの中の重要な要素ではあるけれど、全てではありません。コーチングを通じて「その人がどういう人生を送りたいのか、大事にしている価値観は何なのか」を明確にしていくことで、一人ひとりの職員が生き生きと働いていけるようなサポート体制を作っていく必要性を感じています。休職中の現在も国連職員向けのコーチングは続けており、現在所属している、リーダー・人材育成・チーム・組織開発を目指す会社での経験とあわせて、今後も日本国内外で活躍するリーダーの育成への活動に活かしていきたい、と考えています。

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OCHA調整対応部のチームメンバーと(写真中央が筆者)

学びに対する同僚の向上心の高さが刺激に

子どもの頃から人種差別について問題意識があり、学生時代に旧ソビエト圏の崩壊など世界地図が書き変えられていく様子を目の当たりにするなかで、難民問題、人道援助に関わる仕事をしたいと思うようになりました。

大学院卒業後、まずJPO派遣制度により、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)在グルジア事務所で、国内避難民・帰還民支援に携わりました。初めてのフィールド勤務で、現場で避難民・帰還民、政府関係者、NGO、国連組織と話し合いながら援助計画を立案し実施していく経験を積みました。その後、政治職で国連競争試験(現・YPP試験)に合格してOCHAでポストを得て、ジュネーブと在インドネシア事務所では、自然災害・紛争の被災者のための援助の調整、資金調達、援助計画の立案、実施、モニタリングなどを経験しました。

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緊急援助活動を円滑に行うためには、スタッフ間のコミュニケーションが欠かせない
© OCHA/Dan DeLorenzo

このように、2005年にジュネーブ欧州本部の管理部(Administrative Office)に異動するまで、人事・管理関係の仕事とは全く縁がありませんでした。私のようにキャリアの途中で職種が代わることは、それほど珍しいことではありません。同じオフィス内ではラテラル・トランスファーといって、同レベルのポストへ移ることがありますし、職種が違っていても、たとえば人道担当官と政務担当官、人権担当官などは求められる経験や能力が似ているため、事務局内の部署の枠を超えて異動することもあります。私の場合、人事の経験がなく、当時は国連内で受けられる研修の機会もあまりなかったので、勤務時間後や週末にニューヨーク大学で開講されているコースを受講し、人事・管理の基礎について学びました。国連には、国連内の語学などの研修だけでなく自分の仕事に必要な分野の理解を深めるために、外部の学校に通って資格や学位を取得する職員も多く、彼らの向上心の高さは刺激になります。自分でポストを探しながらキャリアを築いていかなければならないからこそ、常にアンテナを張って、自分の専門性を深めたり、知識や経験の幅を広げていく必要があると思います。

視野が広がり、世界観が変わる国連での仕事

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中央アフリカ共和国の紛争の影響で、難民となった人々 © UNHCR/B. Sokol

国連事務局の人的資源管理部(OHRM)は加盟国諸国の政府と連携して、望ましい職員数を下回っている国を対象にアウトリーチ(情報共有・理解促進活動)ミッションを行っており、昨年私も日本でのミッションに参加しました。参加してくださった方々と話して、学生だけでなく、「今までの職務経験を活かして転職したい」、「短期間でも挑戦してみたい」など様々なニーズを持っている方がいらっしゃると知り、とても嬉しく、頼もしく思いました。

「国連で働きたい」という気持ちの根底にはいろいろなものがあると思いますが、様々な背景を持った方たちとチームを組み、世界的規模の問題の解決を目指す活動に参加する喜びや、自分の視野が広がり、世界観が変わっていく体験はとても魅力的です。国連には短期採用の空席公募もありますし、コンサルタントとして働くというオプションもあります。いろいろな働き方、関わり方がありますので、興味がある方にはぜひチャレンジしていただきたいと思います。

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2013年秋に行われた「国連アウトリーチ・ミッション」の様子