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コフィー・アナン国連事務総長による総会演説
(ニューヨーク、2005年3月21日)

プレスリリース 05/033-J 2005年03月31日

議長、
皆様、

皆様からご要請のありました「ミレニアム宣言」5年後の進捗状況報告書を、こうして直接提示できる機会を与えてくださったことに感謝いたします。
  
この報告書で主にお伝えしたいのは、宣言のねらいは達成可能ではあるものの、そのためには加盟国である皆様方に今年、一連の特定的かつ具体的な決定を下す用意がなければならない、というメッセージです。
  
こうした決定の中には、首脳レベルで下すべき重要性を備えているものもあります。この意味で、各国首脳の合意により、9月に国連本部でサミットが開催されることは、極めて幸運といえます。このサミットまでにはまだ6カ月の期間があるため、各国政府が私の報告書を検討する時間は十分にあると思います。世界の指導者が9月にここに到着する頃には、彼らが必要な決定を下す用意ができていることを期待します。
  
そして、これらの決定が一括して採択されることも期待します。
  
どのような提案リストが出来上がるにせよ、その中には、ある国にとって重要な提案がそれ以外の国には重要でないかもしれません。また、多くの国々にとって不可欠と考えられても、一部の国が留保を付すような提案もあるでしょう。ここから、提案を個別に扱い、自分が特に気に入ったものだけを選びたいという誘惑が各国に生まれます。
  
しかし、今回はそのようなやり方が通用しません。私が提案しているのは包括的な戦略です。それは開発、安全保障、人権という、いずれも法の支配による裏づけが必要な国連の三大目的に平等な重みと関心を注ぐものとなっています。一部の国々は、これら目的のいずれかを特に優先すべきと考えるかもしれません。また、それぞれの目的についても、多くの国々には具体的な関心事項があることでしょう。
  
しかし、改めて申し上げるまでもなく、国連は191の加盟国を擁する大所帯です。グローバルな問題の解決にとって、全加盟国の協力が最善の手段であることは分かりきっています。それに加えて、問題解決のためには、共通の戦略の中で、全加盟国の関心に取り組む必要があることも認めなければなりません。
  
報告書では、私たちが直面する脅威は万人に共通の関心事であると論じていますが、それは私の強い確信でもあります。私が報告書に「より大きな自由を求めて」というタイトルを付けたのは、国連憲章にもあるこの言葉こそが、開発、安全保障、そして人権が密接に関連しているという考えを伝えるのにふさわしいと考えたからです。脅威と機会が絡み合うこの世界では、3つの課題すべてに効果的に取り組むことが、各国の国益にもなるのです。各国が手を携えない限り、より大きな自由に向けた進展はありえません。また、各国共通の目的を追求するための実効的な手段として生まれ変わらなければ、国連もそれに貢献することはできないのです。
  
私の考えに納得される方々も、そうでない方々もいらっしゃるでしょう。しかし、いずれにせよ覚えておいていただきたいのは、皆様の目標実現に他国の協力が必要なのであれば、皆様にも他国の目標の実現を助ける用意がなければならないということです。私の提案を包括的に検討していただきたい理由はここにあります。

皆様、

私の提案の内容を、ここで簡単に説明させていただきたいと思います。
  
報告書は大きく分けて4つの部分から構成されています。初めの3つの部分では、開発、安全保障、人権というそれぞれの分野について、優先すべき行動が示してあります。そして最後の部分ではグローバルな機関、これは主に国連自身のことですが、国連はミレニアム宣言でも、これら優先課題を追求する上で「より実効的な手段」となることを要請されています。
  
「貧困からの自由」と題する第1部では、3年前に先進国と途上国がモントレーで交わした約束を履行するための具体的な決定を提案しています。
  
私はあらゆる開発途上国に対し、2015年までにミレニアム開発目標を達成できるような大胆かつ包括的な国家戦略を来年までに採択し、実施に移すとともに、この戦略のためにあらゆる資源を動員するよう求めます。
  
開発途上国には特に、そのガバナンスを改善し、法の支配を堅持し、腐敗と闘い、幅広い参加に基づく開発アプローチを採用することで、市民社会や民間セクターがその役割を十分に果たせるような環境を整備するよう、お願いしたいと思います。開発という課題は、とても政府だけで取り組めるものではないからです。
  
また、私は各先進国に対し、開発や債務軽減に充当する金額を増やし、世界貿易での平等な競争条件確保のためにあらゆる取り組みを行うことにより、これら途上国の戦略を支援するよう求めます。
  
先進国には特に、2006年までにドーハ貿易交渉ラウンド完了させることを今年中に確約するとともに、その第一歩として、後発開発途上国からの輸出品に対し、直ちに無税かつ無制限の市場アクセスを認めるよう、お願いしたいと思います。
  
先進国にはまた、GNIの0.7%をODAに当てるという目標を2015年までに達成することを確約するよう求めます。この援助の増額は、国際金融ファシリティーを通じて「前倒し」しなければなりません。2015年までに諸目標を達成するためには、直ちに支出額を増やす必要があるからです。より長期的には、他の革新的な資金源も検討しなければなりません。
  
すべての政府は、その国民に対しても、お互いに対しても、自らの約束実行に説明責任を負わなければなりません。
  
私は、開発を持続可能なものとしなければならないことを強調します。いくら取り組みを行っても、その成果が継続的な環境破壊や天然資源の枯渇によって後退してしまったのでは、何にもなりません。
  
ミレニアム宣言が定めた期限よりも3年遅れたものの、京都議定書が発効したことは喜ばしい限りです。しかし、議定書の有効期間が2012年までにすぎず、大量の炭素排出国の一部がこれを批准していないことも指摘しなければなりません。私はすべての国々に対し、今こそ科学の進歩と技術革新を動員し、気候変動の緩和を図るツールを開発する時であること、また、すべての大量排出国と先進国、途上国のさらに幅広い参加により、2012年以降も温室効果ガスの排出を安定化させるため、より裾野の広い国際的枠組みを開発しなければならないことに合意するよう求めます。
  
また、私は加盟国に対し、天災であれ人災であれ、突然の災害に見舞われた犠牲者に迅速かつ効果的な援助を提供できるようにするため、国連の明らかな利点の一つを生かし、10億ドルの自発的基金の設置を検討するよう勧告します。最近の津波災害では、援助機関の迅速な対応で援助が可能になりましたが、緊急事態がいつどこで起こっても対応できるようにしておくべきです。
  
「恐怖からの自由」と題する報告書の第2部で、私はあらゆる国々に対し、いずれかの国に対する脅威はすべての国々に対する脅威と見なすという、新たな安全保障上のコンセンサスに合意し、大惨事をもたらすテロの防止や武器の拡散禁止、内戦の終結、戦災国における恒久的平和の構築に協力するよう求めています。
  
この分野での具体的提案の一つとして、私はすべての国々に対し、合意による明確な定義に基づく包括的テロ防止条約に加え、核テロ防止条約と核分裂物質生産禁止条約の策定、署名および実施を求めています。私はまた、国連に「平和構築委員会」を設け、各国の戦争から恒久的平和への移行を助けることにも合意するよう、すべての国々に求めます。
  
「尊厳をもって生きる自由」と題する報告書第3部では、すべての国々に対し、法の支配、人権、民主主義を具体的な方法で強化することに合意するよう求めています。
  
私は特に、ジェノサイド、民族浄化、人道に対する罪に対処する集団的行動の基盤として、「保護する責任」という原則を標榜するよう求めます。この責任は何よりもまず、それぞれの国が担うべきものですが、国家当局に国民を保護する能力や意思がない場合、責任の所在は国際社会へと移ります。そして最後の手段として、安全保障理事会が国連憲章に従い、法執行措置を講じることができるのです。
  
さまざまな措置の中でも特に、私はすべての加盟国に対し、民間人保護に関する全条約を批准、実施するとともに、民主主義の確立や強化を望む国々に資金と技術援助を提供する「民主化基金」を国連に創設することに合意し、それぞれの財力に応じて拠出を行うよう求めます。
  
報告書の最後の部分「国連の強化」では、すべての加盟国がこれまで上記3つの部分で概略を示した戦略に合意し、互いにその実施を支援できる手段として、国連を再編するための提案を提示しています。これは、国連を今日の現実に見合うものとしない限り、その任務は遂行できないという私の長年の考えを反映するものです。国連には、政府だけでなく一般市民にも開かれ、説明責任を負う代表的で効率的な世界機構となる可能性と義務があるのです。
  
私はまず、この総会の活性化を提案しています。ミレニアム宣言でも、総会は国連での討議と政策立案を主に担当する代表的な機関として位置づけられていますが、近年はその威信が低下し、国連の活動に対して行うべき貢献ができていません。
  
私は各加盟国の首脳に対し、第60回総会で包括的な改革パッケージの採択を皆様に指示することにより、また、今日の重要課題を中心的な議題に据える決意を固めることにより、さらには、カルドーゾ報告でも勧告されている通り、皆様が市民社会と十分な組織的関係を保てるようなメカニズムを設けることにより、この低落傾向を逆転させるよう求めています。
  
私はその上で、(a) 国際の平和と安全、(b) 経済・社会問題、(c) 人権をそれぞれ担当する3理事会体制を勧告しています。これは、報告書の先の部分でも指摘された優先課題を反映するもので、幅広い合意が得られるものと信じています。
  
もちろん、最初2つの理事会はすでに存在してはいますが、強化が必要です。第3の理事会については、国連の人権機構を根本的に見直し、向上させる必要があります。
  
まず、私は加盟国に対し、国際社会をより幅広く代表し、かつ、今日の地政学的現実も反映する形で、安全保障理事会を再編するよう求めます。
  
この重要課題は、これまで十二分に議論し尽くされてきました。加盟国はできればコンセンサスにより、また、いずれにせよ少なくとも9月のサミットまでに、ハイレベル・パネル報告書で提示されたいずれかのオプションをたたき台として、これに関する決定に合意すべきだと私は考えています。
  
私はまた、この刷新された安全保障理事会で、武力行使を承認あるいは指示するかどうかを決定する際の指針とすべき原則を、決議で明らかにするよう提案します。
  
私は次に、国連の最重要課題である開発について、明らかに実質的な役割を担う経済社会理事会の権限を強化するとともに、開発に向けた国連の一貫した政策を策定、実施するうえで経社理が主導的な役割を果たせるようにするための提案を行っています。
  
そして第3に、私は加盟国に対し、人権の推進という国連の主要目的の一つを達成すべく、新たな理事会の創設を求めます。この問題については、さらに実効的な取り組みを行う機構が必要だからです。すでに存在する国連人権委員会は、信頼性とプロ意識の低下によって機能不全に陥っているため、この新たな理事会に置き換えられることになります。こうして設置される人権理事会は、現存の委員会よりも規模を小さくし、その理事国は総会の3分の2による多数決で直接に選出すべきだというのが私の提案です。
  
私はまた、加盟国の優先課題のみならず、世界の諸民族の利益にも奉仕するための柔軟性、透明性、説明責任を向上させる観点から、事務局の大々的な改革提案も行っています。さらに、人道的緊急事態への対応や環境問題の取扱いをはじめとして、国連システム全体としての活動の一貫性を高めるための提案もあります。

皆様、

私の発言を詳細で無味乾燥だとお感じになったことでしょう。しかし、詳細についていえば、私の発言内容は氷山の一角にすぎません。皆様はきっと、私の報告書全体に目を通していただけることと思います。そうすれば、ここでお話ししたものよりもはるかに多くの提案にお気づきになられるはずです。
  
私の発言が無味乾燥だったのは、敢えて美辞麗句を避けたからです。この議場ではすでに、数十年先まで残るような高尚な宣言が十分になされてきました。問題の所在についても、達成を約束した目標についても、私たちはしっかりと理解しているはずです。いま必要なのは、さらに宣言や約束を重ねることではなく、すでに行った約束を果たすための行動なのです。
  
私の報告書は、各国の政府が十分に対応できる範囲内で、明確な行動プログラムを提示するものだと信じています。皆様にはその検討を改めてお願いします。そして、各国の首脳に対しては、決定を下す準備を固めた上で、9月にここへお越しになるようお願いしたいと思います。

ご清聴ありがとうございました。