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コフィー・アナン国連事務総長
2005年世界サミットでの演説

プレスリリース 05/080-J 2005年09月21日

(ニューヨーク、2005年9月14日)

共同議長
陛下
各国首脳の方々
各国代表の方々
皆様

2年前、私はこの場で、国連が岐路に立っていると申し上げました。

今年、創設60周年を迎える国連が、存亡の危機にあると言うつもりはありません。国連は引き続き、全世界での紛争解決、平和維持、人道援助、人権擁護、そして開発に全力を尽くしています。

私が申し上げたいのは、加盟国間の深い亀裂、また、国連諸機関全体の機能不全により、私たちが一致団結して今日の脅威に取り組み、機会をとらえることができなくなっているということです。

あらゆる国々が自助努力に頼る傾向を強めることは、明らかに危険です。分裂や不安定、危機をもたらすような場当たり的対応が増えてゆくからです。

加盟国である皆様が、より希望を持てる未来図を描けるようにするため、私はハイレベルパネルを任命し、「ミレニアム・プロジェクト」を委託しました。その報告書は改革に向けた課題を示しています。

こうした報告書や、当初の加盟国からの反応を受け、かつ、国連の活動は人権の尊重を基盤としなければならないという私自身の信念に従いながら、私は6ヵ月前、今回のサミットで下すべき一連の決定案を、バランスの取れた形で提示しました。

提案は大胆なものでした。それでも私は、危険と期待が隣り合わせに同居する現状を考え、こうした提案が必要だと判断しました。政治的意志さえあれば、達成は可能だと考えたのです。

それ以来、ピン総会議長の卓越した指導力のもと、各国代表は今次サミットの最終文書の交渉に当たってきました。土壇場までぎりぎりの交渉が続けられた結果、きのう成立したのが、皆様のお手元にある文書です。

今回のサミットは、この作業の完了を待たずして、重要課題に関する前進のきっかけとなりました。ここ数ヵ月の間に、「民主化基金(Democracy Fund)」が創設され、核テロ対策条約の最終案文も出来上がりました。

なかでも、2010年までの貧困対策として、さらに年間500億ドルの資金が確保されたことは、最も重要な動きといえます。GNPの0.7%を開発援助に向けるという目標は改めて支持されました。革新的な資金源も実現に近づいています。債務救済についても進展が見られました。

皆様が最終文書に合意したことで、こうした成果は確定しました。そして、開発援助面での前進に見合うものとして、よいガバナンスと、2015年までにミレニアム開発目標の達成を図る国内計画の策定が約束されたのです。

数百万人の生命、そして数十億人の希望は、これらを含め、貧困や病気、非識字、不平等と闘うための約束と、開発を中心に据えた今後の貿易交渉にかかっています。

皆様が最終文書を採択されれば、これ以外の分野でも実質的な突破口が生まれるでしょう。

誰がどこで、どのような目的で実行しようとも、皆様はあらゆる形態のテロを非難することになります。皆様は来年中、包括的なテロ対策条約への合意に努めることを約束します。そして皆様は、国際社会を強くし、テロリストを弱くするという、テロ対策を確保する戦略への支持を表明します。その逆はあってはなりません。

皆様は初めて、ジェノサイド、戦争犯罪、民族浄化、人道に対する罪から国民を守る集団的責任があることを、はっきりと無条件で認めることになります。そして、平和的手段では不十分なことが判明し、かつ、国内当局が明らかに国民の保護を怠っている場合、安全保障理事会を通じ、この責任を全うするために、時宜に応じて断固とした集団行動を取る用意があることを表明します。各国代表の皆様は、ルワンダの悲劇を繰り返さないという義務を負うことになるのです。

また、支援室と基金を備えた「平和構築委員会」の設置にも合意することになります。これにより、国際の平和と安全に対する国連の貢献が、重要な側面で戦略的重要性を認められるのです。さらに皆様は、新たな警察要員を常備し、国連平和維持活動に用いることにも合意します。

国連人権高等弁務官事務所の予算倍増と強化についても、合意が生まれます。また、人権委員会の失敗を踏まえ、新たな「人権理事会」を設立することも合意されます。理事会の詳細は、第60回総会で検討しなければなりません。

皆様は、人道危機の早期対応資金を増額し、目立たない緊急事態が忘れ去られないようにすることにも合意します。このようなケースは特にアフリカで、当たり前のようになっているからです。

さらに皆様は、抜本的な事務局改革と管理改革のための枠組み設置にも合意します。この合意には、フォローアップと実施が必要となります。独立の監督委員会と倫理室を設置すれば、説明責任と誠実性を確保できるでしょう。その詳細は私から近々、皆様にご連絡します。同時に、古くからの活動を審査し、予算と人事に関する規則を徹底的に見直し、職員について一時的な早期退職勧奨制度を導入すれば、21世紀の国連の課題にふさわしい事務局を作り上げる一助となるでしょう。

最終合意は全体的として、抜本的な変革のパッケージととらえることができます。しかし私たちは、お互いはもとより、国連の人民に対しても誠実でなければなりません。私を含め、多くの人々が必要と感じている全面的で根本的な改革が、これで達成されたわけではないからです。事実、これまでは深刻な対立が改革の達成を妨げてきました。このようなはっきりとした相違点のなかには、本質的で道理にかなったものもあります。

私たちにとっての最大の課題、そして最大の落ち度は、核不拡散と軍縮の分野にあります。今年だけでも、核不拡散条約再検討会議と今回のサミットの2度にわたり、成果を台無しにするような言動が見られました。これは許し難いことです。特に、グローバルな野望を抱き、自制を知らないテロリストが世界を脅かす中で、大量破壊兵器は私たちすべてに膨大な危険をもたらしています。私たちは事態を収拾し、この死活的問題に関する交渉を再開しなければなりません。また、その下準備に向けたノルウェーの取り組みを支援すべきです。

同様に、誰もが必要性を強く感じながらも、これまで手のつけられていない課題として、安全保障理事会の改革があります。

これらを含む問題に関し、皆様が合意できなかったからといって、その緊急性が低下していることにはなりません。

その意味で、変革パッケージは絶好の出発点といえます。問題によっては、実質的な突破口が生まれました。対立の溝が縮まり、進展が見られた問題もあります。その一方で、対立解消に不安が残る問題もあります。

私たちはここから、改革プロセスの次なる段階に進まなければなりません。

第1に、合意内容を実施に移さなければなりません。今回の国連総会は極めて重要な鍵を握ります。私たちはエリアソン新総会議長を支援しなければなりません。また、「平和構築委員会」と「人権理事会」を確立し、包括的なテロ対策条約を締結するとともに、「民主化基金」の実効的な発足を図らなければなりません。さらに、2015年までに極端な貧困を半減し、ジェノサイドの兆しがあれば速やかに対応し、戦後の平和構築の成功率を高めるという私たちの決意は今後数年間、試練の時を迎えることでしょう。

これらはまさに、将来を左右する試練といえます。

第2に、急務でありながらも進展が見られていない困難な課題に関し、断固とした取り組みを続けなければなりません。2年前から続くこのプロセスでは、1つのことがすでに明らかになっています。それはつまり、対立がどのようなものであれ、相互依存関係にある現代世界で、私たちは運命を共にしているのだ、ということです。

平和創造であれ、国家建設であれ、民主化であれ、さらには天災や人災への対応であれ、いかなる強国でも単独では課題を克服できないことを、私たちは目の当たりにしてきました。

同時に、貧困と闘うこと、病気の蔓延を食い止めること、大量虐殺から罪のない人々の命を救うこと、そのいずれを取っても、強国のリーダーシップとあらゆる国々の積極的参加がなければ、私たちの任務は達成できないことがわかっています。

そして、単なる都合のために民主主義、人権、法の支配といった基本原則を無視すれば、万人にとってより自由、公正かつ安全な世界を作り上げるという使命を担った集団的機構への信頼は、根底から揺らいでしまうのです。私たちはこれを嫌というほど痛感してきたはずです。

健全で有効な国連が非常に重要な理由はここにあります。国連を適切に活用すれば、権力と原則が融合し、全世界の諸民族への奉仕が可能になるでしょう。

そして、このことこそが、国連改革のプロセスを重視、継続しなければならない理由でもあります。いら立ちがどれほど大きくても、また、合意がどれほど困難でも、現状の課題の克服には行動あるのみ、という事実は変わりません。しかも今日では、集団的行動を取らなければ効果が期待できなくなっているのです。

私としては、積み残された課題について、合意内容の実施について、さらには、事務局の風習と慣行の改革継続について、皆様との協調を図ってゆく所存です。まじめな努力を続けている職員のためにも、また、国連の支援を待ち続ける全世界の貧困層のためにも、国連の誠実性、中立性、そして実行力に対する信頼を回復しなければなりません。

国連改革は皆様でも私でもなく、このような貧しい人々にとっての死活問題といえます。私たちが現状の課題に対し、有効な集団的対応策を見つけなければならないのは、これらの人々の生命を救い、権利を守り、安全と自由を保障するためなのです。

世界の指導者である皆様に対し、私は個人的にも全体的にも、この改革課題に対する取り組みを続けていただくこと、そして、粘り強く交渉を続ける忍耐力と、本質的な合意形成に必要なビジョンを示していただくことをお願いしたいと思います。

フランクリン・ルーズベルト大統領の言葉を借りれば、私たちは「世界が理想とは程遠いとわかっていても、自分たちの責任を全うする勇気」を持たなければなりません。今まで、これが実行できていたかどうかは定かでありません。しかし、私たちは今この時、その必要性を実感しているのではないでしょうか。国連が必要なのは、まさに世界が理想とは程遠いためなのですから。

ご清聴ありがとうございました。