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*日本語訳(非公式)ができましたのでお知らせします
第62回国連総会における 潘基文国連事務総長演説
(ニューヨーク、2007年9月25日)
― より強く柔軟、効率的かつ責任ある国連のビジョンを披露 ―

プレスリリース 07/090-J 2007年11月01日

以下は、潘基文国連事務総長が925日、ニューヨークで開かれた国連総会で行った演説「よりよい世界のために、より強い国連を(A Stronger United Nations for a Better World)」の本文です。


新議長の選出をお祝いいたします。そして皆様、素晴らしい秋を迎えたニューヨークへようこそ。

第62回総会一般討議の開幕にあたり、皆様と同席できますことは、私にとって喜びであるとともに、名誉でもあります。これからの1年間は、国連史上 でも有数の多難な年になると思われます。そして私は、皆様とともに、この1年を史上まれに見る実りある年にできると確信しています。

私たちは幸先のよいスタートを切りました。先週、私たちはミレニアム開発目標(MDGs)に関するアフリカ運営グループ(Africa Steering Group)のハイレベル会合を開催し、この問題が重要な優先課題であることを印象づけました。世界の指導者たちは、中東やアフガニスタン、ダルフール、 イラクについても、今後の対応について話し合いました。昨日は気候変動に関する会合が大きな成功を収めて閉幕しました。

その目標は、私たちの取り組みを強化するとともに、地球温暖化の問題に一丸となって取り組めるよう、私たちの作業を国連というひとつの屋根の下で調 整することにありました。会合はそれ自体、特筆すべき成果でした。それはまた、私が思い描く将来的な協力のモデルでもありました。

これからの1年間、さらにそれ以降に目を向けると、気の遠くなるような課題が山積していることがわかります。こうした問題に国境はなく、大国であれ小国であれ、豊かな国であれ貧しい国であれ、これを独力で解決できる国はありません。

私たちはこれまで以上に集団行動の時代を迎えています。国連に何もかもを望むような雰囲気もしばしば見られます。もちろん、私たちは何もかもできるわけではありませんが、だからといって、それを何もしない言い訳とすることはできません。

そこで私は、「よりよい世界のために、より強い国連を」というテーマでお話しさせていただくことにしました。

激動の世界にはより強い国連が必要です。私たちは誰もが、強くて頑丈な権威ある事務局の重要性を理解しています。成果を重視する事務局というのが、 私のビジョンです。それは効率的で方向性を有し、現実的で責任を備え、卓越性、誠実性、そして世界に奉仕する誇りを体現する事務局の姿に他なりません。

このビジョンを実現するためには、国連自体を近代化しなければなりません。国連内部での「気候変動」が必要なのです。私たちには国連の作業方法を一から考え直す必要があります。簡素化、合理化そして権限委譲を私たちのメインテーマとすべきです。

世界の国連に対する大きな期待に応えるためには、私たちの作業のスピード、柔軟性、機動性をいずれも高める必要があります。言葉から結果、つまり目的の達成へと関心を移すことが必要なのです。

私は透明性、責任感、そして効率を高めるために皆様が承認済みの管理改革の遂行を重点的な優先課題と考えています。これまでの9カ月間、国連の予算 作成過程の合理化、資本基本計画(Capital Master Plan)の策定、財政の再建について見られた進展を、私は歓迎します。特に、年次分担金を全額拠出した102カ国の政府に感謝いたします。

私たちはともに、平和維持活動の展開で成功を収めました。18件の多国籍ミッションには10万人を超える国連フィールド要員が派遣されています。私 は政治局の強化により、この取り組みを続けてゆく予定です。危機への対応はさらに積極化しなければなりません。予防外交を慎重に計画、実施すれば、多くの 人命を救い、多くの悲劇を未然に食い止めることができます。それは国連憲章に謳われた、私たちの重要な責任でもあります。

ダルフールの悲劇に終止符を打つため、私はあらゆる策を講じていきます。スーダン政府は、包括的和平交渉に加わり、停戦を実現するという約束を守ら なければなりません。また、長く続いたスーダン南北間の内戦を終息させた合意をさらに進展させるとともに、2009年の選挙に向けた準備も整えなければな りません。

ダルフール危機には多くの原因があります。これを恒久的に解決するためには、治安、政治、資源、水、人道、開発の問題など、原因のすべてに取り組ま なければなりません。いかに困難で複雑なものであっても、紛争の根本的原因に対処しなければならないという点では、ダルフールと他の紛争には差異はないと 言えるでしょう。

中東和平は、地域のみならず、世界の安定にとっても欠かせません。そのために何が必要なのかはわかっています。それは暴力と占領を終わらせること、 内部関係においても、イスラエルとの関係においても平穏なパレスチナ国家を作り上げること、そしてイスラエルとアラブ世界との包括的な地域和平を実現する ことに他なりません。アラブ世界と米国による新たなリーダーシップに、4者協議のトニー・ブレア代表による取り組みが加わった今、新たな和平に向けた地歩 は固まりつつあると言えましょう。

私たちはまた、レバノンの人々が国民和解を通じ、憲法上の手続きに従って新大統領を選出することにより、政治的、社会的安定を回復できることを心から願っています。

イラク問題は全世界的な課題となっています。安全保障理事会が新たに決議1770(2007)を採択したことで、国連はイラク国民への人道援助に加 え、政治的交渉と国民和解の促進においても重要な役割を担うようになりました。しかし私たちは、国連職員の安全確保が至上命令であることを認識していま す。

アフガニスタンについては、パートナーとのさらに効果的な協力により、薬物密売やテロ資金への対策を講じなければなりません。

ミャンマーについても、情勢を注意深く見守っているところです。私たちは改めて、ミャンマー当局に対し、できる限り行動を慎み、ミャンマー国民が関 心を寄せる問題について、国民和解プロセスの関係当事者との対話に遅滞なく踏み切るよう求めます。この関連で、私の特別顧問は近日中にミャンマーを訪れる 予定です。

私は事務総長就任当初から、軍縮の重要性を強調してきましたが、総会は最近、私の軍縮室設置提案を支持し、この立場を承認しました。私たちは、大量 破壊兵器と関連技術の拡散に歯止めをかけるとともに、特にこうした物資がテロリストの手に落ちることのないよう、さらに取り組みを本格化させなければなり ません。

私は最近の朝鮮民主主義人民共和国(DPRK)の問題の進展を心強く感じています。来る南北朝鮮首脳会談により、朝鮮半島の和平、安全、そして最終的には平和的統一への歴史的気運が高まることを心から期待します。

イラン・イスラム共和国との関係についても、交渉による解決が可能だと確信しています。私たちの最終的な目標は今も、大量破壊兵器の廃絶にあります。これに失敗すれば、私たちの方がやがて「廃絶」されかねないからです。

私たち国連は、生活と同様、政治についても長期的な視点に立たなければなりません。当面の問題に対処する中でも、将来のことを考えなければならないのです。

私はきのう、現代を特徴づける問題として気候変動を取り上げましたが、これについて異論は出ませんでした。今こそ行動の時です。バリで突破口を開こうではありませんか。

私たちはまた、国連活動の第2の柱である経済開発をないがしろにして、地球温暖化の問題を解決できないことについても合意しました。開発と社会的平等の問題を差し置いて、平和と安全の問題のみを語ることなどできないのです。

今年はミレニアム開発目標(MDGs)の達成期限に向けた折り返し点にあたります。すでにいくつかの成果が見られました。世界中でこれほどの人々が貧困を脱出したことは今までにありません。それでも、グローバル化という波に乗れない人々もいます。

それが最も如実に表れているのはアフリカです。世界銀行のあるエコノミストによれば、ここには世界の貧困層の「最底辺にあたる十億人」が暮らしてい ます。特殊なニーズを抱えるこれら諸国に、私たちは細心の注意を払わなければなりません。無視されることがあまりにも多い世界の最貧層の声に、耳を傾けね ばならないのです。

こうした理由から、私は今月中旬、主要な多国間開発援助機関の指導者を招集し、MDGsアフリカ運営グループの会合を開きました。最貧国が貧困の罠を逃れられるよう、私たちが支援を続ける限り、MDGsの達成は可能だからです。

こうした罠の中には、ガバナンスの悪さに起因するものがあります。また、病気や保健医療の不備に関係するものもあります。HIV/エイズを現代の惨 禍として野放しにしておくことはできません。また、毎年1,000万人もの子どもたちが、ほとんどマラリアなどの予防できる病気で、5歳の誕生日を待たず に命を失っているという現実を放っておくこともできません。全世界の良心がそれを許さないからです。

だからといって、当事国が自らすべきこと、また、できることを私たちが代わりにするというわけではありません。アジアの奇跡は、開発の成否が、賢明な選択と徹底的な遂行によるものであることを示しています。

私たちとしては、多国間開発プログラムの実効性と一貫性を高め、保健や教育、農業、インフラ整備への取り組みをよりよく統合することで、成果の改善に努めなければなりません。

一方、ドナー国の側は、援助や債務救済、市場アクセスの約束を果たすべく、努力を重ねなければなりません。開放的で公正かつ差別のない貿易・金融シ ステムは、アフリカ内外を問わず、あらゆる開発途上国の将来に欠かせません。開発と「貿易のための援助」に重点を置きつつ、ドーハ開発アジェンダの前進に 全力を尽くさねばならない理由はここにあります。

国連の第3の柱である人権を法制化した「世界人権宣言」は2008年、採択60周年を迎えます。

人権理事会は、全世界で一律かつ公平に、人権の擁護者としての責任を全うしなければなりません。私は「保護の責任」という理念を言葉から行動へ移 し、時宜にかなった対策を確保することで、人々がジェノサイドや民族浄化、人道に対する罪と対峙しないで済むよう努めてゆきます。

国連の国際裁判所はルワンダからシエラレオネへ、さらに近々レバノンへと活動の幅を広げています。犯罪が見逃される時代は過ぎ去ったのです。

こうした中でも、国連の勇敢で使命感にあふれる人道援助要員は、人命の救助に全力を尽くしています。民間人を武装民兵の略奪行為から、子どもを飢餓から、そして女性を深刻な暴力から守ることに貢献しているのです。

この1年間、2004年の津波に匹敵する自然災害は発生しませんでした。しかし、気候変動の影響もあってか、洪水や干ばつなどの異常気象がさらに激 しさを増し、数百万の人々がその被害に苦しんでいます。国連の活動の最前線はここにあります。私たちは自助のできない人々を助けるために奮闘を続けている からです。

目前にある課題の大きさを考えれば、私は謙虚にならざるを得ません。国連に対する期待はそれほど大きいのです。こうした期待に誠実かつ実質的に応えるためには、相当の努力と規律が必要となるでしょう。

国連のやり方を一変させ、官僚的な事務手続きから成果へと重心を移す上で欠かせないのは、忍耐力と根気、そして勇気です。

歴史の振り子は今、私たちのほうに向かって動いています。多国間主義は息を吹き返しました。相互依存を強める世界は、将来の課題に取り組む最善の場が国連であることを認識しています。事実、このような場は国連以外に考えられないのです。

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SG/SM/11182
GA/10622