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『私たちの共通の課題』についての総会協議に向けたアントニオ・グテーレス国連事務総長発言(ニューヨーク、2023年10月4日)

プレスリリース 23-063-J 2023年10月23日

総会議長、各国代表の方々、皆様、

私たちは、第78回国連総会のハイレベルウィークを終えたところです。

世界の指導者たちは、主要なセッションのみならず、SDGサミット、気候野心サミット、その他数十に及ぶイベントにも出席しました。

私自身も、141回の個別会談を行いました。

この期間中、私は世界の現状を語る様々な声に耳を傾けました。

そして、私たちが途方もない課題に直面している中にあっても勇気づけられる想いがしました。

指導者たちが例外なく、多国間での解決策の重要性について語っていたからです。

同時に、指導者たちは相次いで、現行の多国間制度が成果を上げていないことに触れ、改革を求めました。

グローバル・ガバナンスの制度とこの世界の政治・経済の現実とがミスマッチを起こしていることに対して、強い批判がありました。

私たちが若者や将来世代に残そうとしている地球と気候の状況について、深い懸念がありました。

また、新たなテクノロジーに対して新たな指針と防護柵を設けるように求める声も、繰り返し聞かれました。

端的に言えば、ハイレベルウィークから浮かび上がった共通のテーマは、『私たちの共通の課題(Our Common Agenda)』のテーマと一致しています。

2年前に私が報告書を発表して以降、加盟国はこれらのアイデアについて、50回以上も議論を重ね、討議し、洗練させてきました。

私たちをここまで成功裏に率いてくれた共同進行役、特にドイツとナミビアの尽力に対し、心から感謝します。

私は、皆様が共に措置を講じ、報告書に記した勧告をグローバル・レベルでの実施に導こうとしてくださっていることを歓迎しています。

総会で定義された「未来サミット」のスコープは、今後の有意義かつ重要な決定を行う舞台を整えることです。

私は「SDGサミット政治宣言」が、「未来サミット」を2030アジェンダの実施を加速させる重要な機会として歓迎してくれたことに勇気づけられました。

『私たちの共通の課題』で示した提案やアイデアは、世界の今の有り様と、私たちがこうあるべきだと考える世界との間に存在する、願望のギャップに架ける橋です。

すなわち、国連憲章、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」、パリ協定、そして世界人権宣言で謳われている世界です。

皆様、

『私たちの共通の課題』に示した主要な提案の一部は、来年の「未来サミット」で取り上げる予定です。その中には、「新たな平和への課題」、グローバル金融アーキテクチャの改革、「グローバル・デジタル・コンパクト」が含まれます。

ハイレベルウィーク期間中の閣僚級会合では、各加盟国がこれらの課題に積極的に取り組んでいることが示されました。これは、未来サミットでの有意義な決定に向けた良い兆候です。

多くのアイデアが既存のマンデートに該当しており、加盟国やパートナーと共に、すでに国連システムで実施されています。

これらは4つの主要項目に分類されますが、各分野の詳細をさらに知りたい場合は、更新内容を書面にてご確認ください。

第一に、『私たちの共通の課題』は、人権に根差し、2030アジェンダと持続可能な開発目標(SDGs)に基づいた、社会契約の更新を求めています。

これは、基本的に各国政府の行動によるものですが、公共部門の能力を拡大させ、グリーン・デジタル経済においてディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を創出し、女性と女児に対する暴力を撲滅し、共通のデジタルインフラを構築する等のために私たちが講じている措置を通じて、各国政府が社会契約を強化し、信頼を回復するのを国連は支援しています。

私たちはまた、人権を推進し、強固かつレジリエント(強靱)な制度を構築するための加盟国による取り組みを支援する、実用的なツールも提供しています。

「SDGサミット」で提示されたインパクトの大きな取り組みは、私たちの活動の強化につながります。

第二に、『私たちの共通の課題』は、今日の政策と決定によって恩恵を受ける ― あるいは被害を受ける ― 立場にある若者と将来世代に対する、私たちの責任を認識しています。

この2年間、私たちは、学校からの追放を受け入れることを拒否した女児たちから、私たちの気候と地球を守るために法的措置に踏み切った学生たちに至るまで、世界中の若者たちがその力を発揮する姿を目にしてきました。

国連は、新設した「ユース・オフィス」を通じて、こうした若者たちのエネルギーと創造力を活用したいと考えており、同オフィスは、今年末までに十分な人員を配置し、活動を開始する予定です。

私は、来年の今頃までに、グローバル・ガバナンスが若者と将来世代という2つのグループについて、より一層適切に対応し、説明責任を果たせるようになっていることを期待します。

第三に、『私たちの共通の課題』は、グローバル・ガバナンスの仕組みを改革し、今日のニーズに対応させることの必要性を強調しています。

総会から安全保障理事会、平和構築委員会に至るまで、政府間の意思決定を今日の現実に適応させようとする新たな機運の兆しがみられます。

保健、環境、宇宙空間、デジタル協力等の分野では、グローバル・ガバナンスの強化に向けた議論が進められています。

国際金融アーキテクチャの抜本的な改革を求める私たちの提案は、ブリッジタウンからパリ、ニューデリーまで、そして「SDGサミット」によっても弾みがつきつつあります。

私たちは、マラケシュで開催される「IMF・世銀総会」、「気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)」と、「未来サミット」にて、これらのアイデアを前進させるつもりです。

皆様、

最後に、私たちは国連システム内において、活動のあり方を変革する重要な措置を講じています。

「国連2.0」に関する私の政策概要では、5つの分野にわたって国連の文化とスキルを更新する計画、いわば変革の五重奏を示しています。

先月には、私は新たに「科学諮問委員会」を発足させ、世界で最も著名な多数の科学者たちやそのネットワークと、国連指導部とを結び付けました。

「国連フューチャーズ・ラボ」では、システム全体で長期的な展望を活用します。

私たちはまた、市民社会から国会議員、民間セクターに至るまで、その他の重要なステークホルダーとの交流を拡大させています。

こうした取り組みの一環として、私は近日中に、地方自治体と地域政府に関する諮問委員会を立ち上げます。

さらに、今月後半には人工知能(AI)に関するハイレベル諮問委員会を任命し、今年末までにガバナンスに関する勧告を行う予定です。

皆様、

報告書の発表から2年で世界は変わりました。

本日の更新内容が示すのは、国際社会も変化しているということです。

深い分断は存在していますが、私たちは前進を遂げています。

先日の決定や議論は、『私たちの共通の課題』をめぐる共通の目的意識を示しています。

「未来サミット」に向けた今後1年の準備が、極めて重要になります。

総会議長によって任命されるサミットの共同進行役は、私と国連事務局の全面的な支援を受けることになります。

あらためて申し上げますと、サミットでの決定は政府間プロセスを通じて下されます。ただし当然、国連システム全体を動員して支援を提供すべく、この一年活動していきます。

私たちはまた、市民社会、民間セクター、一般市民を活性化させ、この一世代に一度のサミットに意見を提供してもらえるよう努めます。

『私たちの共通の課題』の提案に関する一連の政策概要や、効果的なマルチラテラリズム(多国間主義)に関するハイレベル諮問委員会の報告書は、すでに皆様のお手元にあります。

「SDGサミット」における私たちの準備、活動、アドボカシーは、「未来サミット」での私たちの関与の成功モデルとなっています。

皆様、

私たちを取り巻く状況が求めている、包摂的で効果的、かつネットワーク化されたマルチラテラリズムに向けて、私たちは共に、すでに重要な歩みを進めています。

私は、その一翼を担ってくださったすべての政府と指導者に対して感謝するとともに、今後とも強力な参画と支援をお願いいたします。

ありがとうございました。

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原文(English)はこちらをご覧ください。