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2023年の優先課題に関するアントニオ・グテーレス国連事務総長の総会発言(ニューヨーク、2023年2月6日)

プレスリリース 23-018-J 2023年04月03日

総会議長、各国代表の方々、皆様、

はじめに、トルコとシリアを襲った壊滅的な地震について、深い悲しみを表明します。犠牲者のご遺族に、哀悼の意を表します。

国連は、緊急対応を支援すべく動員しています。

今回の地震で被災したすべての人々を支援するため、連帯して協力しようではありませんか。被災者の多くは、かねてより緊急の人道支援を必要としていたところです。

国連難民高等弁務官の任にあった期間中に、私は同地域を何度か訪れています。地域の人々が並々ならぬ寛大さを示してくださったことを、決して忘れることはありません。現代の最も困難な紛争の一つから逃れてきた難民たちに対し同地域で私が目にしたものと同じ連帯を、今こそ私たち全員が示す時なのです。

皆様、

1カ月前、私たちは暦をめくって新しい年を迎えました。

ところが、つい数日前、別の時計の針が進みました。いわゆる「終末時計」です。

この象徴的な時計は、アルベルト・アインシュタインをはじめとする原子力科学者たちが76年前に制作したものです。

毎年、専門家たちは、人類が午前0時、つまり自滅にどれほど近づいたかを測ってきました。

2023年、専門家たちはロシアによるウクライナ侵攻、もはや手に負えなくなった気候変動による惨禍、世界の規範や制度を脅かす核の脅威の高まりを受けて、世界情勢を概観しました

そして、明確な結論に達しました。

終末時計は現在、午前0時まであと90秒。すなわち、世界の完全な破滅まで残すところあと90秒ということです。

終末時計が、人類の滅亡の時へこれほど近づいたことはなく、冷戦期に最も緊張が高まった時よりも近くなっています。

実は、終末時計は世界にとっての目覚まし時計なのです。

私たちは目を覚まし、仕事に取りかからなければなりません。

皆様、

私たちが生きてきた中で、他に類を見ないほど多くの、複合する課題を目にしながら、2023年が始まりました。

戦争は容赦なく続いています。

気候危機が燃え盛っています。

極度の富の集中と極度の貧困が深刻化しています。

持てる者と持たざる者との間の格差が、社会を、国家を、世界全体を、分裂させています。

大規模な地政学的分断が、世界の連帯と信頼を揺るがしています。

この道は行き止まりです。

針路を修正しなければなりません。

幸いなことに、私たちは気候、金融、紛争の解決など、様々な課題について事態を好転させる方法を知っています。

そして、行動しないことによる損失は、行動するためのコストをはるかに上回ることも知っています。

しかし、戦略的なビジョン、すなわち長期的思考とコミットメントが欠けているのです。

政治家や意思決定者は、言わば現状維持に執着し、身動きが取れなくなっています。

政治・経済活動は短期志向に偏っています。

次の選挙のこと。保身のための次のその場凌ぎの政治工作のこと。その他にも、次のビジネス・サイクルのこと、さらには翌日の株価のことなども。

未来は他人事なのです。

このような短期的思考は、非常に無責任であるばかりか、不道徳です。

そして、自滅的です。

なぜなら、私たちが今現在、直面している問題の解決を、さらに困難な、より対立を深める、より危険なものにしてしまうからです。

私たちは、意思決定の考え方を変える必要があります。

今日の私のメッセージは、つまりこういうことです。

いま起きるかもしれないことだけに目を奪われて、躊躇しないでください。

これから私たち全員に起きることに着目して行動を起こしてください。

皆様、

私たちには行動する義務があります。それも、深く全面的に。

結局のところ、世界は緩やかに動いていません。

テクノロジーも、緩やかに進んでいません。

気候の破壊も、緩やかに進んでいません。

私たちは、緩やかに進んではいられないのです。

今は時間を無駄にする時ではありません。変革の時なのです。

国連憲章と世界人権宣言をはじめとする、国連の活動の指針となるすべてのものに根差した変革です。

今年は世界人権宣言が採択されて75周年を迎えます。世界人権宣言は、私たち共通の人間性を守り、高めるという、私たち共通の使命の真髄です。

世界人権宣言は、大胆であり、野心的であり、不敵でした。

私たちは、その精神と本質から着想を得る必要があります。

世界人権宣言は、「人類社会のすべての構成員の固有の尊厳と平等で譲ることのできない権利は、自由、正義及び平和の基礎である」ことを私たちに思い起こさせます。

最も広い意味で、つまり21世紀のレンズを通して人権を見てみれば、この窮地を脱するためのロードマップが見えてきます。

皆様、

それはまず、平和への権利から始まります。

ロシアのウクライナ侵攻は、世界への甚大な影響とともに、ウクライナの人々に計り知れない苦しみを与え続けています。

和平の見通しは悪化する一方です。

さらなるエスカレーションと流血の可能性は高まるばかりです。

私は、世界がより大きな戦争へと夢遊病のごとく進んでいるのではなく、覚醒した状態でそうしていることに恐怖を覚えます。

しかし、世界には平和が、国連憲章と国際法に則った平和が必要です。

私たちは、あらゆる場所に平和をもたらすために、一層努力しなければなりません。

パレスチナとイスラエルでは、二国家共存による解決が日に日に遠のいています。

アフガニスタンでは、女性と女児の権利が踏みにじられ、破壊的なテロ攻撃が続いています。

サヘル地域では、治安が憂慮すべき速さで悪化しています。

ミャンマーでは、暴力と弾圧の新たな悪循環に直面しています。

ハイチでは、ギャングによる暴力が国家全体を人質に取っています。

そして世界各地で、20億人が紛争や人道危機による影響にさらされた国々で暮らしています。

皆様、

もし、すべての国々が憲章に基づく義務を果たせば、平和への権利は保障されるでしょう。

各国がその誓約を破れば、あらゆる人にとって不安定な世界が生まれます。

だからこそ、憲章に対するコミットメントを新たにすることで、平和へのアプローチを変革する時なのです。人権と尊厳を最優先し、予防を中核に据えるのです。

そのためには、根本的な原因を特定し、戦争の種が芽を出すのを防ぐような「平和の連続体」を全体から捉える視点が必要です。

それは紛争を回避する予防策に投資し、仲介に焦点を当て、平和構築を推進し、女性と若者のより幅広い参加を得るということです。

これは、「新たな平和への課題」案、すなわち、移行期にある世界と戦略地政学的競争の新時代のための多国間行動を再び活性化させる私たちの計画における中核的要素です。

「新たな平和への課題」は、新旧を問わず、あらゆる形態・領域の脅威に対処することを追求しなければなりません。

国連(平和維持活動)が75周年を迎える中、そのミッションの多くで、リソースが不足し、攻撃を受け、維持すべき平和がない状態です。

私たちは、「PKOのための行動 プラス(A4Pプラス)」イニシアティブを通して、改革へのコミットメントを増やしていかなくてはなりません。

一方、「新たな平和への課題」は、憲章第7章に基づいて安全保障理事会がマンデートを与え、拠出が保証された予測可能な資金を備え、地域の部隊が主導する新世代の平和執行ミッションやテロ対策作戦の必要性も認識しなければなりません。

この点で、アフリカ連合(AU)がパートナーであることは明白です。

また、軍縮と軍備管理を再び中核に据える時でもあります。核兵器が持つ戦略的脅威を低減し、その最終的な廃絶に向けて取り組むのです。

核武装をしている国々は、良心のかけらもないこれらの兵器の先制使用を放棄しなければなりません。

それどころか、いついかなる所でもその使用を放棄しなければなりません。

いわゆる「戦術的」核兵器使用は馬鹿げたことです。

私たちは、偶発的にしろ、意図的にしろ、この数十年で最も高い核戦争の危機に直面しています。

私たちは、世界各地の兵器庫に保有されている1万3,000発の核兵器による脅威に終止符を打たなければなりません。同時に、いかなる「新たな平和への課題」も、新たなテクノロジーに伴う危険を無視することはできません。

民間インフラに対するサイバー攻撃を国際的に禁止する、自律型殺戮兵器システムに国際的に合意された制限を課すなどの措置を盛り込むべきです。

人間の介在は、何としても維持しなければなりません。

皆様、

「新たな平和への課題」は、幅広い連携と効果的な外交のプラットフォームとしての国連の結集力を最大化することを目指すべきです。

黒海穀物イニシアティブは、このアプローチによって、たとえ悲惨な戦争のただ中にあっても、成果が得られることを示しています。

副事務総長による先日のアフガニスタン訪問と域内外での協議は、私たちが、最も困難な状況においても人権をめぐるコンセンサスの構築を目指すことを表しています。

今年は、大胆かつ革新的なアプローチによってともに前進し、国連が「戦争の惨害から将来の世代を救う」という約束を、より良く果たせるようにしようではありませんか。

2つ目に、社会的・経済的権利と開発への権利です。

はっきりさせておきましょう。

世界中で貧困や飢餓が拡大しています。

開発途上国は、先進国の5倍の借り入れコストの支払いを余儀なくされています。

脆弱な中所得国が、譲許的融資や債務救済を拒否されています。

最も豊かな1%が、過去10年間で新たに生み出された富の半分近くを得ています。

人々の雇用・解雇が随意になされているにもかかわらず、いかなる社会的保護も受けられていない人々がいます。

これらすべての重大な欠陥や、さらに多くを私たちは目撃しています。

私たちの経済・金融システムは、根本的に何かが間違っているのです。

国際金融アーキテクチャが問題の中心にあります。

アーキテクチャは、それを通じてグローバリゼーションがすべての人に恩恵をもたらす手段であるべきです。

それが機能していないのです。

国際金融アーキテクチャに必要なのは、単なる進化ではなく、根本的な変革です。

新たなブレトンウッズ体制を構築する時なのです。

開発途上国の劇的なニーズを国際金融システムのあらゆる決定とメカニズムの中核に据える、新たなコミットメント。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックとその対応によって改めて露わになった、恐るべき不平等と不公正に取り組む、新たな決心。

開発途上国が国際金融機関においてはるかに大きな発言力を持てるようにする、新たな決意。

そして、困窮した中所得国をはじめとする脆弱な立場に置かれた国々に対する債務救済と再編を盛り込み、「ブリッジタウン・アジェンダ」の機運を足掛かりとする、新たな債務アーキテクチャ。

特に、多国間開発銀行はビジネスモデルを変え、リスクに対する新たなアプローチを受け入れなければなりません。

開発途上国が持続可能な開発目標(SDGs)を達成する能力に投資する、より大きな民間資本の流れを誘致すべく、自らの資金を大規模に活用してインパクトを増大させるべきです。

これは、開発途上国を支援すべく金融機関が連合する中で、保証を拡大し、ファースト・ロスを負担する立場を取ることを意味します。

抜本的な改革をしなければ、最も裕福な国々や個人が富を蓄積し続け、グローバル・サウスのコミュニティーと国々には、残り物しか与えられません。

皆様、

こうした制度的な改革に向けて取り組む一方で、私たちの前には、3月のLDC会議から9月のSDGサミットに至るまで、SDGsを救う機会があります。

はっきり申し上げます。SDGサミットは2023年の最も重要な機会となります。

2030年に向けた中間点にあって、SDGsは今、過去のものとして消えつつあります。

各国は、貧困と排除に対処し、ジェンダー平等を推進するための明確なベンチマークを携えて、SDGサミットに臨むべきです。

そして、世界は団結してリソースを動員しなければなりません。今すぐにです。

それは、開発途上国が、質の高い教育、ユニバーサル・ヘルスケア、パンデミック対策、ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)と社会的保護への投資に資金を拠出する流動性を、今すぐ持てるようにすることを意味します。

これらは、『私たちの共通の課題(Our Common Agenda)』報告書に示しているように、すべての人の権利と機会に基づいた「新しい社会契約」のための堅固な土台を提供します。

私は、昨年11月のG20サミットで提案したグローバルなSDG刺激策(SDG Stimulus)にG20がSDGサミットまでに合意し、グローバル・サウスの国々を後押しするよう要請します。

北米、欧州、中国経済について最近いくらか良いニュースがあるものの、開発途上国や、実際にあらゆる場所の労働者が直面している大きな困難を忘れることはできません。

私は、真の変化に向けた国連の結集力を活用して、これからも早急な行動と根本的な改革を求め続けます。

皆様、

開発への権利と一体不可分であるのが、クリーンで健康、かつ持続可能な環境を求める権利です。

無情で、無慈悲、そして無意味な自然との戦争は、終わらせなければなりません。

自然との戦争によって、私たちの世界は、1.5℃の気温上昇の上限を突破し、命を脅かす2.8℃に向かって今なお進むという差し迫ったリスクにさらされています。

その一方で人類は、世界の豊かな生物多様性に向けて大きな槌をかざし、自分たちや地球に残酷で不可逆的な影響を与えています。

私たちの海は、汚染によって、プラスチックによって、化学物質によって窒息しています。

そして私たちの地球の血液である水は、吸血鬼のような過剰消費によって枯渇しつつあります。

2023年は清算の年です。流れを変える気候行動のための年でなければなりません。

私たちには、破壊を止めるための中断が必要なのです。

小さな前進では、もう足りません。

言い訳は、もう結構です。

グリーンウォッシング(見せかけだけの環境配慮)は、もう要りません。

化石燃料産業の底なしの強欲とその支持者には、もううんざりです。

皆様、

私たちは、排出量を削減し、気候正義を実現するという2つの緊急優先課題に焦点を絞らなければなりません。

世界の排出量をこの10年間で半減させなければなりません。

それは、特にG20諸国で化石燃料から再生可能エネルギーへの移行を加速させ、鉄鋼、セメント、船舶、航空産業など排出量が最も多い産業部門を脱炭素化することで炭素汚染を削減するという、はるかに野心的な行動を意味します。

南アフリカ、インドネシア、ベトナムとの「公正なエネルギー移行パートナーシップ」を実現することを意味します。

さらに「気候連帯協定」を通じて、こうした協力を発展させます。同協定では、すべての主要排出国が排出削減に向けてさらに努力するとともに、1.5℃の目標を維持するための共通の取り組みの中で、より豊かな国々が財政的・技術的リソースを動員して新興国を後押しします。

そしてそれは、信頼できる即時の行動、つまりまやかしの炭素クレジットではなく実際の排出量によって裏打ちされた、企業、投資家、都市が掲げる、さらに野心的な2030年の排出目標を意味します。

2050年までの排出量正味ゼロを誓約したすべての企業、都市、地域、金融機関は、私のハイレベル専門家グループが設定した基準に沿って、2025年と2030年に向けた信頼できる野心的な目標を備えた移行計画を9月までに提示すべきです。

生産拡大に躍起になり、莫大な利益を得ている化石燃料の生産者とその支持者たちに向けて、特別なメッセージがあります。

2025年と2030年の目標を備え、排出量正味ゼロに向かう信頼できる針路を事業全体にわたって定められないのであれば、あなた方は事業を行うべきではありません。

あなた方の主力商品は、私たちにとって問題の核心なのです。

私たちは、自滅的な化石燃料の復活ではなく、再生可能エネルギーによる革命を必要としているのです。

皆様、

気候行動は、十分な資金がなければ不可能です。

先進国は自らがすべきことをわかっているはずです。

少なくとも、前回の締約国会議(COP)での約束を果たしてください。

開発途上国に1,000億ドルを提供する約束を守ってください。

シャルム・エル・シェイクで合意した「損失と損害」の基金について、すべきことを行い、実現してください。

適応資金を倍増させてください。

COP28までに「緑の気候基金」を補充してください。

地球上のあらゆる人を守る早期警戒システムの計画を、5年以内に推進してください。

そして、化石燃料に対する補助金を廃止し、再生可能エネルギーに投資の軸足を移してください。

皆様、

12月のCOP28に向けた道のりの中で、私は9月に「気候野心サミット」を開催します。

政府、企業、市民社会を問わず、あらゆるリーダーが参加できます。

しかし、これには条件があります。

この10年間で加速させた活動と、さらに更新した野心的な排出量正味ゼロの計画を示してください。そうでなければ、出席しないでください。

12月のCOP28は、私たちの現状と、パリ協定の目標を達成するために今後5年間で実現すべきことを評価する、私たち全員にとって正念場となる初めてのグローバル・ストックテイクの場となります。

私たちはまた、「グローバルな生物多様性枠組み」に息を吹き込み、十分なリソースを動員するための明確な道筋を確立しなければなりません。

そして、各国政府は、自然を破壊している補助金を保全と持続可能性のためのインセンティブへと振り替える、具体的な計画を策定しなければなりません。

海洋に関する行動とは、海洋汚染に対処し、乱獲に終止符を打ち、海洋生物多様性を守り、さらにその他の措置を講じるための、新たなパートナーシップとより厳格な取り組みを意味します。

3月に開催される水サミットは、私たちの世界の血液である「水」にしかるべきコミットメントを与える、大胆な「水行動アジェンダ」へと結実させなければなりません。

気候行動は、SDGsのすべての目標を前進させる21世紀最大の機会です。

クリーンで健康、そして持続可能な環境は、すべての人のために実現しなければならない権利です。

皆様、

第4は、多様性および文化的権利の普遍性の尊重です。

どこから来たのか、どこに住むのかにかかわらず、文化は人類の心と魂です。

私たちの人生に意味を与えてくれます。

文化的権利にとって、普遍性と多様性は不可欠です。ある文化や集団が他の文化や集団に優越するのであれば、文化的権利は無意味になります。

しかし普遍的な文化的権利は、神聖な墓所の破壊から国家主導の改宗、そしていわゆる再教育プログラムに至るまで、全方位からの攻撃にさらされています。

反ユダヤ主義、反イスラムの偏狭、キリスト教徒の迫害、人種主義や白人至上主義のイデオロギーが台頭しています。

民族的・宗教的少数者、難民、移民、先住民とLGBTQI+コミュニティーは、インターネット上でも実社会でも、ますます憎悪の対象となっています。

権力を持つ立場にある多くの人が、多様性を脅威として風刺することで利益を得ています。

そして分断と憎悪の種を蒔いています。文化の違いを武器にしています。

ソーシャルメディア・プラットフォームは、有害な考えを増幅させ、過激派の見解を主流化させるアルゴリズムを使用しています。広告主は、こうしたビジネスモデルに資金を供給しています。

一部のプラットフォームは、ヘイトスピーチを容認しています。これはヘイトクライムへの第一歩です。

ホロコーストとルワンダのツチ人に対するジェノサイドに関する国連アウトリーチ・プログラムや、ヘイトスピーチに関する国連戦略・行動計画は、世界中で文化的権利と多様性を守るための、国連によるコミットメントの一部です。

私たちは、インターネット上での誤情報や偽情報の拡散に影響力を持つあらゆる主体、つまり各国政府、規制当局、政策立案者、テクノロジー企業、メディア、市民社会に対して、行動を起こすよう呼びかけます。

憎悪を止めてください。強力な防護柵を構築してください。有害な言説に対して説明責任を果たしてください。

そして『私たちの共通の課題(Our Common Agenda)』に関する私の報告書の一環として、私たちはデジタル・プラットフォームにおける情報インテグリティに関する行動規範を軸に、すべてのステークホルダーを結集させています。

私たちはまた、誤情報や偽情報が気候危機を含む地球規模の課題の前進にいかに影響を及ぼしているかに焦点を当てることも強化していきます。

皆様、

第5は、完全なジェンダー平等の権利です。

ジェンダー平等は基本的人権であるとともに、いくつかの最も重大な世界的課題に対する解決策でもあります。

しかし、私たちの時代において最も蔓延している人権侵害によって、人類の半数が抑圧されています。

アフガニスタンの女性と女児は、自分たちの国の中で追放され、公の生活から締め出され、生活のあらゆる側面において男性に支配されています。

ある若い女性は次のように述べました。「私たちは生きながらにして、死んでいるのです」

イランでは、女性と女児が基本的人権を要求する抗議行動を街頭で行い、多くの人的犠牲が生じました。

最も極端な事例が関心を集める一方で、ジェンダーに基づく差別は、世界中で慢性的に広がっており、ありとあらゆる国々を尻込みさせています。

最先進国でさえ、男女間には大きな賃金格差があります。後期中等教育においてジェンダー・パリティー(男女比同率)を達成している国は、4分の1にも至りません。

このままのペースで行くと、女性が男性と同じ法的地位を得るまでには、286年かかる可能性があります。

しかも、事態は悪化しつつあります。

国際レベルでは、一部の政府が今や多国間交渉にジェンダーの視点を取り入れることにさえ反対しています。

私たちは、女性と女児の権利に対して、強烈な抵抗に直面しています。

女性の性と生殖に関する権利と法的保護が脅威にさらされています。

男性や男児と同じくらいに女性と女児にも影響を及ぼす課題についても、男性だけで開かれるパネル、いわゆる「マネル(manels)」に、私はたびたび直面しています。これは禁止すべきです。

ジェンダー平等は権力の問題です。数千年の力を背景に、家父長制が再び幅を利かせています。

国連は、あらゆる場所の女性と女児の権利のために、反撃して立ち上がっています。

その取り組みの一環として、私は、国連活動のすべての柱にまたがるジェンダー平等における国連の能力について、独立レビューを委託しました。

そのレビューの結論と勧告は、私たちが世界の女性に対してより良く職務を遂行できるよう、機構や資金、リーダーシップに働きかけます。

私はまた、選挙から役員会議、和平交渉のテーブルにおいても、女性の代表者が占める割合の格差を埋めるためのクォータ制などの措置に対する支援も強化します。

女性の地位委員会では、デジタル領域での大きな不平等を助長している、科学技術におけるジェンダー・ギャップに焦点を当てます。

国連組織内では、私は、上級幹部に関して達成した前進を維持し、これを足掛かりに、あらゆるレベルでの取り組みを強化します。

皆様、

第6は、包摂的な社会の基盤としての、市民的・政治的権利です。

表現の自由と政治への参加は民主主義の本質であり、社会と経済を強化します。

しかし、民主主義が後退している中、世界各地でこれらの権利が脅威にさらされています。

COVID-19のパンデミックは、市民的・政治的権利の侵害というパンデミックの隠れ蓑に利用されました。

抑圧的な法律が、意見を表明する自由を制限しています。新たなテクノロジーは、しばしば、集会の自由や移動の自由さえも制限する口実や手段を与えています。

人権活動家たちは、ハラスメント、虐待、拘束やそれ以上にひどい行為の標的になっています。

市民社会のスペースは、私たちの目の前から消えつつあります。

メディアが非難の的になる国がますます増えています。

昨年殺害されたジャーナリストと報道関係者の数は、50%も急増しています。さらに多くの関係者がハラスメントを受け、投獄され、拷問を受けました。

私の「人権のための行動呼びかけ(Call to Action for Human Rights)」の実現に資するため、私たちは、基本的自由を推進し、国連のあらゆる活動への市民社会のより組織的な参加を促進し、世界中のシビック・スペースを保護すべく取り組んでいます。

そして私たちは、参加する権利と、自由で独立したメディアを含む表現の自由を保護する法律や政策に対する支援を強化しています。

皆様、

最後に、私たちが直面しているすべての脅威は、今日の人々の権利だけでなく、将来世代の権利も損なっていることを、私たちは認識しなければなりません。

それは基本的な責務です。そしてグッド・ガバナンスを測るリトマス試験紙でもあります。

しかし、あまりに多くの場合、将来世代はかろうじて補足的に扱われているにすぎません。

来年(2024年)開催予定の「未来サミット」では、そうした権利を世界的議論の前面に押し出さねばなりません。自然と和平を結ぶこと。「グローバル・デジタル・コンパクト」、すなわちすべての人に開かれた、自由で包摂的なデジタルの未来を確保すること。大量破壊兵器を廃絶すること。そして、より公正で包摂的なガバナンスを構築すること。

若者以上にそのような未来を擁護する支援者はいません。そして今年開設される新しい国連ユース・オフィスは、私たちの取り組みを強化するためのものです。

こうした取り組みは、グローバルな行動を強化し、新たな時代に合った国連、すなわちこれまで以上に創造的で、多様性に富み、多言語が用いられ、私たちが奉仕する人々に寄り添う国連を構築する機会でもあります。

私は、2月13日の総会で『私たちの共通の課題』について、より詳細なブリーフィングを行うことを楽しみにしています。

皆様、

今年の優先課題では、人権を基準にしたアプローチが私たちの究極的な優先課題を達成する上で中心にあります。それは、より安全で、より平和的で、より持続可能な世界です。

国連憲章と世界人権宣言は、今日の袋小路を脱するための道筋を示しています。

それらは、解決策と希望の源泉なのです。

その源泉を生かし、その希望を生かして、手遅れになる前に、決意を持って行動しようではありませんか。

時間は限られています。

時計の針は進んでいるのです。

ありがとうございました。

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原文(English)はこちらをご覧ください。