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ジェンダー・パリティー戦略5周年を記念する「ジェンダー・パリティーに関するグループ・オブ・フレンズ」に向けたアントニオ・グテーレス事務総長発言(ニューヨーク、2022年12月12日)

プレスリリース 22-083-J 2022年12月27日

はじめに、ジェンダー・パリティー(男女比同率)達成に向け変化をもたらす支援をしてくださったことに対し、グループ・オブ・フレンズに感謝します。

国連システム全体でジェンダー・パリティーを達成することは、私の1期目の任期における重要な優先事項でしたが、2期目においても引き続き、重要な優先事項です。

男女不平等は、根本的に権力の問題です。私たちの男性優位の世界と男性優位の文化は、男性と女性の双方を傷つけています。そして、権力関係を変革するためには、あらゆるレベルのリーダーシップ、意思決定、参加において男女間の平等が必要です。

ジェンダー・パリティーの達成は、個人的優先事項であるだけでなく、国連にとっての戦略目標です。そして、国連自身が支持する価値観、すなわち国連憲章に謳われている価値観を、国連が体現し、模範を示して導いていく上で不可欠です。

国連職員のジェンダー・パリティーは、国連の業務においてジェンダー平等を達成する唯一の方法です。

私の「国連システムのジェンダー・パリティー戦略」が5周年を迎えたことは、2028年までに国連本部と現場のあらゆるレベルにおいてパリティーを達成するという野心的な目標の実現に向けて、国連がどれだけ進んできたかを振り返る機会です。

全体として、私たちは大きく前進しています。

過去5年間に、注目すべき数々の「史上初」を達成してきました。

2020年、私たちは目標年よりも2年早く、国連の歴史上初めて上級幹部のジェンダー・パリティーを実現しました。これは、200人近くもの国連の上級幹部のことです。

また、私たちは平和活動の代表と副代表のジェンダー・パリティーも実現しています。5年前、女性がこれらの役割に占める割合は、わずか25%でした。

2018年には、130人の常駐調整官(RC)のパリティーを実現しました。

さらに、私たちは常駐調整官の地理的な多様性も高めてきました。現在、常駐調整官は世界の全地域56カ国の出身者で構成されており、ジェンダーと地域的な多様性を組み合わせ、私たちが奉仕する人々を反映するようにしています。

本部所在地で女性が占める割合は、今やパリティーを実現しています。

そして、女性職員が少なくとも50%を占める国連機関の数は、5から26に増加しました。

一方で、まだ格差は残っています。

現場では、歩みが遅く、中には後退している場合もあります。

特に懸念すべきはは、現場において国連事務局のエントリーレベルの職に採用される女性の数が減少している点です。これは、将来的なパリティー見通しに深刻な影響を及ぼしかねません。

現在の進捗率では、期限の3年前に当たる2025年には、国連事務局全体のパリティーは専門職のパリティーに近づくと予測されています。しかし、この統計値には、現場ではどのレベルにおいても2028年までにパリティーを実現しそうにない、という事実が隠されています。したがって、ジェンダー・パリティー戦略の次の実施段階では、現場での前進を推し進め、維持することに焦点を当てなければなりません。

私たちは、女性幹部人材パイプライン(Senior Women Talent Pipeline)を引き続き支援します。このパイプラインにより、2014年以降、およそ60名の女性幹部が現場を中心に任命されました。

私たちは現在、このパイプラインを新たな候補者にまで対象を広げ、幹部の地域的な多様性をさらに高めることを目指しています。

また、ロスター(候補者の登録リスト)に登録している女性の数を増やすとともに、一般職職員と現地採用職員を専門職カテゴリーへと円滑に移行させるよう努力します。これは総会による承認が必要な分野であり、女性が現場の専門職の地位を得る上で重要な手段であるため、私は、グループ・オブ・フレンズがこの件で非常に積極的に動いてくれることを期待しています。

ジェンダー・パリティーは、数字だけにとどまらず、組織文化を変革することでもあります。

もし私たちが職場での固定概念や偏見に対処できなかったり、性差別的、人種主義的、差別的な職場環境を許容したりすれば、私たちが奉仕する人々を失望させることになります。

私たちには、取り組みを支える重要なツールがあります。

「Enabling Environment Guidelines for the UN system(職員が活躍できる環境に関する国連システムのためのガイドライン)」と、国連女性機関(UN Women)が策定した現場向けガイドラインは、尊重され、包摂的で、多様性のある職場環境づくりに関する提言を行っています。

これは、特に労働条件が最も厳しい現場において、女性職員を維持するために不可欠です。

私はまた、より広義の職場環境においてもジェンダー・パリティーを支援する前向きな変化を目にしていることを嬉しく思います。私は、国際公務員委員会による16週間の育児休暇をすべての親に勧告するとともに、出産した母親特有のニーズを満たすための10週間の追加休暇を与えるという決定を歓迎します。

現在、これらの勧告は、総会第5委員会で検討されています。そして私は、このグループに改めて支援を要請します。

また、私はセクシュアル・ハラスメントを含むあらゆる形態の差別に終止符を打つための措置を推進する決意です。

セクシュアル・ハラスメント対策に関する事務局長調整委員会タスクフォース(Chief Executives Board Task Force on Addressing Sexual Harassment)は、過去5年間で大幅に前進しました。同タスクフォースは、国連システム全体に対するモデル方針を策定し、(過去の事案を確認する)ClearCheck適格審査データベースを導入、学習のための対話を国際社会と実施し、重要な関係機関の下でハラスメントに関するガイダンスを作成しました。

国連事務局では、専門の調査官の採用と迅速な調査方法によって、セクシュアル・ハラスメントの申し立てを調査する能力を強化しています。セクシュアル・ハラスメントの訴えがあれば、他の訴えでは一般的となっている様々な煩雑な手続きを経ることなく、このセクシュアル・ハラスメント調査官のグループに直接届けられます。また、「声を上げようヘルプライン(Speak Up Helpline)」を立ち上げ、被害者への支援を拡充しています。

こうした施策は、潜在的なハラスメント加害者への抑止効果があります。

そして私たちは、セクシュアル・ハラスメントに対して、被害者を中心に据えたゼロ・トレランス(一切許さない)・アプローチを徹底しています。

国連システム全体に安全、平等かつ包摂的な労働環境を整備することは、これらの取り組みに欠かせなません。

2028年の期限に向けた中間地点にいる今、私たちには3つの改善すべき分野が明確に存在しています。

第一に、補完的な目標として、ジェンダーと地理的な多様性の反映に焦点を当てます。国連事務局ではアフリカ地域出身の専門職員における女性の割合はわずか36%であり、これを変えなければなりません。

第二に、私たちは現場でのミッションに女性を採用する取り組みを強化します。

アフリカでの大規模かつ複雑な国連のミッションは、それぞれ約600から800人の専門職員で構成されていますが、女性は3分の1にすぎません。

私たちは、「上級管理職への推薦を求めるグローバルな呼びかけ(Global Call for nominations to senior leadership positions)」などを通じて、加盟国が私たちの取り組みを支援してくださることを期待しています。

第三に、政策とツールを強化し、国連を女性にとってより魅力的な雇用主にします。

私たちは、加盟国や市民社会、特にグローバル・サウスのそれらと緊密に協力し続け、国連組織のあらゆるレベルですべての国とコミュニティーを反映できるようにします。

そのため私は、ジェンダー・パリティー戦略の実施に関する、2つの市民社会組織による外部評価を歓迎するとともに、その結論に期待しています。

私は、世界各地、そして国連におけるジェンダー平等の擁護者となることを誇りに思います。

そして、私たちの組織で平等な男女比率の達成に関わったすべての関係者に祝意を表します。また、強力かつ継続的に支持してくださったこのグループ・オブ・フレンズに感謝いたします。

ジェンダー・パリティーは、私たちが奉仕する人々の期待に応え、すべての人にとってより持続可能で、公正で、包摂的かつ平和に繁栄する世界を築くために不可欠なのです。

ありがとうございました。

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原文(English)はこちらをご覧ください。