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COP26閉幕にあたってのアントニオ・グテーレス国連事務総長声明 (英国 グラスゴー、2021年11月13日)

2021年11月22日

はじめに、国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)のホストを務めてくださった英国政府とグラスゴー市民の皆様の素晴らしいおもてなしに感謝いたします。

そして、アロック・シャルマ議長とそのチームの皆様に敬意を表します。COP26はきわめてチャレンジングな会議でしたが、皆様は、参加国間のコンセンサスの形成にあたり素晴らしい技量を発揮されました。

パトリシア・エスピノーサ国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)事務局長をはじめ、UNFCCCのすべての同僚の皆様に感謝します。

各国代表の皆様、そしてCOP26が約束を果たすよう圧力をかけてくださった周りのすべての方々にお礼申し上げます。

採択された文書は妥協の産物であり、今日の世界の利害や状況、矛盾、政治的意思の状態を反映しています。

重要な進歩があったとはいえ、残念ながら、深刻ないくつかの矛盾を克服するための団結した政治的意思が不十分でした。

開会にあたって申し上げたように、私たちは1.5℃目標を維持するための行動を加速しなければなりません。

壊れやすい私たちの地球は、危機に瀕しています。

私たちは依然として、気候の大惨事のすぐそばに立っているのです。

今こそ緊急事態モードに移る時です。そうしなければ、排出量正味ゼロを達成する機会自体がゼロとなります。

私は、化石燃料への補助金を廃止しなければならないことを改めて確信しています。
石炭の利用を段階的に廃止しましょう。

炭素に価格をつけましょう。

気候変動によって今発生している影響に対して脆弱なコミュニティーに、レジリエンス(強靭性)を構築しましょう。

そして、開発途上国支援のために1,000億米ドルの気候変動対策資金を投じるというコミットメントを果たしましょう。

COP26ではこうした目標を達成できませんでした。しかし、前進するために必要ないくつかの基本要素はできています。

森林破壊を終わらせるというコミットメント。メタン排出量を大幅に削減するというコミットメント。排出量正味ゼロに関して民間資金を活用するというコミットメントです。

また、今回の成果文書では1.5℃目標に向けた決意を再確認しました。適応のための気候変動対策資金を増強することを。気候変動による修復不可能な被害に苦しむ脆弱な立場に置かれた国々への支援強化の必要性を認識することを。

さらに、今回の文書では、特別引出権(SDR)を含む譲許的な金融支援やその他の形態の支援において気候変動への脆弱性を考慮することを国際金融機関に初めて奨励しています。

そして、ついに炭素市場と透明性に合意し、パリ協定のルールブック(実施指針)が完成しました。

これらの前進は歓迎すべきものですが、十分ではありません。

今後10年間で急速に、大幅に、かつ持続的に排出量を削減することが絶対的な優先事項であることを科学は示しています。

具体的には、2030年までに、2010年比で45%削減しなければなりません。

しかし、現在の「国が決定する貢献(NDC)」の設定では、たとえそれが完全に実施されたとしても、今後10年間に排出量が引き続き増加し、気温上昇が今世紀末までに産業革命以前の水準と比べて2℃を優に超えることは明らかです。

私は、成果文書と同様に、2020年代に排出量削減に向けた行動を加速させることを約束した、ここグラスゴーでの米国と中国の間の合意を歓迎します。

その他の多くの新興経済国の排出量削減を支援するには、先進国や金融機関、専門的な知見を持つ機関などによる支援を連携させる必要があります。

それは、各新興国が石炭から移行することを促進してその経済のグリーン化を加速させるために、きわめて重要です。

数日前に発表された南アフリカとのパートナーシップは、まさにそのモデルです。

私が特に訴えたいのは、適応および損失と被害の問題に関連する私たちの今後の活動についてです。

適応は、技術者まかせにする問題ではありません。生きるか死ぬかの問題なのです。

私はかつて母国ポルトガルの首相でした。今日、私は自分が脆弱な立場に置かれた国出身のリーダーであると想像してみます。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチンは不足しています。母国の経済は落ち込んでいます。借金は膨らんでいます。復興に必要な国際的資源はまったく足りていません。

その一方、私たちのような国は気候危機への関与が最も少なかったにもかかわらず、最も苦しんでいます。
そして、また新たなハリケーンが母国を襲えば、国庫は底をつきます。

気候関連災害から国々を守ることは慈善事業ではありません。それは連帯であり、啓発された自己利益なのです。
今日、私たちはもう一つの気候危機に直面しています。不信という風潮が地球を覆っているのです。気候変動対策を通して信頼を取り戻し、信用を回復させることができます。

これは、開発途上国に対する1,000億米ドルの気候変動対策資金のコミットメントをついに果たすことを意味します。

もう借用書は要りません。

進捗状況を測定し、気候計画を毎年更新し、野心を高めるのです。私は、各国首脳レベルのグローバル・ストックテイキング・サミット(世界全体の実施状況見直し会議)を2023年に開催します。

そのサミットでは、パリ協定ですでに確立しているメカニズムを超えた、非国家主体の排出量正味ゼロ・コミットメントを測定・分析するための明確な基準を確立します。

私は、そのためのハイレベル専門家グループを設けます。

最後に、若者、先住民コミュニティー、女性リーダーたち、そして気候変動対策支持者を先導するすべての人々に向けた希望と決意のメッセージで締めくくりたいと思います。
私は、皆さんの多くが失望していることを知っています。

成功か失敗かは、自然がもたらすものではありません。それは私たちの手中にあります。

前進するための道筋は必ずしも真っすぐではありません。時には回り道もあります。時には溝もあります。

スコットランドの偉大な作家であるロバート・ルイス・スティーブンソンはこう言っています。「毎日をどれだけ収穫したかで判断するのではなく、どれだけ種を蒔いたかで判断しなさい」

私たちには道に沿って蒔くべき、さらに多くの種があります。

1日や1回の会議で私たちが目指す目的地にたどり着くことはできません。

しかし、私たちはそこにたどり着けると、私は知っています。

私たちは、自分たちの命のための闘いの真っただ中にいるのです。

決して諦めないでください。決して後退しないでください。前進し続けようではありませんか。

私はこの道のりをずっと皆さんと共にあります。

COP27は今始まったのです。

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原文(English)はこちらをご覧ください。