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国連人権理事会でのアントニオ・グテーレス国連事務総長発言:「最高の願望の実現を:人権のための行動呼びかけ」(ジュネーブ、2020年2月24日)

プレスリリース 20-011-J 2020年03月04日

まず、ミチェル・バチェレ国連人権高等弁務官とその事務所によって行われている活動に対し、感謝と称賛の意を表したいと思います。

バチェレ氏はご自身の経歴から、人権侵害を受けることが社会および個人にとってどのような意味を持つかを理解するとともに、世界的なリーダーとして、人権の推進に努めた経験も有しています。

こうした事情がすべて、バチェレ氏に独自の不可欠な発言力を与えています。

皆様、

私は、あらゆる人権を推進するための国際的な対話と協力の拠点であるこの人権理事会に、行動を呼びかけるためにやって来ました。

そして、私が国連創設75周年というこの時期を選んだのは、人権が国連の活動すべての中心にあり、しかも今まさに、人権が攻撃にさらされているからに他なりません。

私は、人権の基本中の基本である中核的な理解から、話を始めたいと思います。人権は人間の尊厳と価値に関わるものだということです。

人権は希望の地平を広げ、可能性の範囲を拡大し、私たちと私たちの世界の力を最大限に引き出します。

人権は、社会が自由の中で成長することを支援し、女性と女児の平等を確保し、持続可能な開発を前進させるとともに、紛争を予防し、人々の苦痛を弱め、公正で公平な世界を構築するための究極的なツールです。

世界人権宣言にも謳われているとおり、人権は「人々の最高の願望」なのです。

地球上のある場所で起きた前進は、別の場所での前進を促します。

私はその様子を目の当たりにしてきました。

そして、実際に経験してきました。

ポルトガルのサラザール独裁政権下で育った私は、24歳になるまで民主主義を経験したことがありませんでした。

私は独裁政権が国民だけでなく、植民地支配下にあるアフリカの人々も抑圧する様を目にしました。

しかし、私たちに勇気を与えたのは、世界各地で他の人々が人権を求めて繰り広げてきた闘争と、その成功でした。

過去数十年にわたり、多くの人々の努力によって、あらゆる大陸で人権が大きく前進してきました。

植民地支配とアパルトヘイトは克服され、独裁政権は倒され、民主主義が広がりました。

市民的、文化的、経済的、政治的、社会的権利をすべて詳しく定める画期的な規約も成立しました。

条約を基盤とする強固なシステムとともに、特別手続きや説明責任メカニズムも導入されました。

一世代の間に、10億人が貧困を脱しました。

そして私たちは、飲料水へのアクセスから幼児死亡率の大幅な低下に至るまで、大きな前進を目にしてきました。

私たちの社会はすべて、女性や若者、少数者、先住民その他が指導する人権運動から恩恵を受けています。

それでも、人権は現在、ますます大きな課題に直面しています。どの国も例外ではありません。

私たちは戦火に見舞われた狭い地域に一般市民が閉じ込められ、兵糧攻めと爆撃に遭うという、明らかな国際法違反を目の当たりにしています。

人身取引は世界のあらゆる地域に広がり、絶望的な状態にある弱者を餌食にしています。

女性や女児が奴隷として搾取、虐待され、その潜在能力を最大限に活用する機会を奪われています。

国家安全保障の定義が過度に拡大される中で、市民社会の活動家は投獄され、宗教的、民族的少数者は迫害されています。

ジャーナリストは、その職務を全うしようとしただけで殺害されたり、嫌がらせを受けたりしています。

少数者や先住民、移民、難民、LGBTIコミュニティーは「他者」として中傷され、ヘイト行為の標的とされています。

また、全世界で飢餓が広がり、若年失業率も憂慮すべき水準にまで上昇している様子もうかがえます。

気候危機や人口構成の変化、急速な都市化、テクノロジーの進歩といったメガトレンドからは、一連の新たな課題が生まれています。

人々は取り残され、不安は高まり、亀裂は深まっています。

中には、不安に付け込み、こうしたギャップを極限にまで拡大しているリーダーもいます。人々を分断し、得票数を増やすというねじ曲がった政治的計算が当たり前になっているからです。

法の支配は後退しています。

人々は各地で、自分たちをないがしろにしている政治システムと、すべての人に豊かさを届けられない経済システムに対抗し、敢然と立ちあがっています。

皆様、

こうした緊張と試練には、一つの答えがあります。それが人権です。

人権はあらゆる人の生得の権利であり、あらゆる国の利益にかないます。安定を確保し、連帯を構築し、包摂と成長を促進します。

人権を二重基準の媒体にすることも、隠れた計画を実行するための手段にすることもしてはなりません。

主権は依然として、国際関係の基本的な原則となっています。しかし、国家主権を人権侵害の言い訳にはできません。私たちは、人権か国家主権かという無意味な二者択一を克服しなければなりません。人権と国家主権は表裏一体の関係にあります。人権の推進は国家と社会を強くすることによって、主権を強化するからです。

私たちの長年の課題は、世界人権宣言の野心を現実世界の場での変化へと転換することにあります。

私が国連ファミリー自体のほか、加盟国や国会議員、ビジネス界、市民社会、そして各地の人々にも行動呼びかけ(Call to Action)を行う理由も、ここにあります。

私たちは国連の多様な能力を全面的に活用しなければなりません。

そして、もう一つ根本的な点も強調したいと思います。私たちは人間を差別してはならないのと同様、人権の選り好みをすることもできません。

経済的、社会的、文化的権利を抑制することは誤りでしょう。しかし同様に、こうした権利だけで人々の自由への希求に応えられると考えるのも、見当違いでしょう。

私たち国連ファミリーとしては、人権の文化をあらゆる活動に浸透させねばなりません。

事実、私たちは外交の活性化を進めることで、人々の苦痛を軽減し、人権を推進しています。

私たちは気候変動対策を求めることで、世代間の正義を前進させ、人権を推進しています。

私たちは人種主義や白人至上主義その他の過激主義の台頭に警鐘を鳴らし、国連システム全体としては初のヘイトスピーチ対策計画を発表することで、人権を擁護しています。

人権は国連のアイデンティティーそれ自体の一部となっています。

よって私たちは、状況と文脈に応じて、多様な活動のツールボックスを展開しなければなりません。

私たちは一方で、国内人権機関を構築し、国際的な規範や基準の国内への適用を指導するための技術的支援を提供することで、政府やその他のステークホルダーと手を携えていきます。

他方で、私たちは人権の侵害や侵害者を特定することで、声を上げていきます。また、舞台裏で根回しを進めることもあるでしょう。

こうした手法のそれぞれに役割があり、3つがすべて連動することも多くあります。

私たちの活動の評価は、どれだけのニュースを作り出したかや、どれだけ世論のガス抜きに役立ったかで下されるわけではありません。その成否は、人々の生活にどれだけ有意義な変化をもたらせたかという尺度で測られなければならないのです。

皆様、

私たちの行動呼びかけは、協調的な取り組みで飛躍的進歩を達成したり、後退のリスクを回避したりすることができる7つの分野を明らかにしています。

それぞれを簡単にご説明します。

第1に、持続可能な開発の中心としての人権です。

人権は「持続可能な開発のための2030アジェンダ」全体に浸透しています。

大多数の目標とターゲットは、各加盟国が行った法的拘束力を持つ人権擁護の約束に呼応しています。私たちは、人々が極貧状態を脱出するのを支援し、女児をはじめ、すべての人に教育を確保し、ユニバーサル・ヘルスケアを保障し、あらゆる人に平等な機会と選択へのアクセスを確保することで、人々がその権利を要求できるようにするとともに、誰一人取り残さないという2030アジェンダの中核的な 約束を守っているのです。

この約束は私たちに、あらゆる形態の不平等に取り組み、あらゆる形態の差別を撤廃するという義務を課しています。

一人の人間の生涯の見通しが、年齢や性別、見た目、住む場所、信仰のあり方、愛情の対象によって決まってしまうことがあってはなりません。

私たちはまた、若者や障害をもつ人々、少数者、先住民コミュニティー、難民、移民その他、特殊な課題に直面するグループのニーズや経験も重視しなければなりません。

平和で公正な社会と、法の支配の尊重を軸とする人権に基づくアプローチは、より恒久的かつ包摂的な開発へとつながります。

そして私はきょう、すべての国に対し、市民社会の参加に広く道を開くなどして、人権の原則とメカニズムを持続可能な開発目標(SDGs)達成の前面と中心に据えるよう呼びかけます。

第2の分野は、危機の時代の人権です。

人権が最も大きな試練にさらされるのは、紛争が勃発したり、テロ攻撃が発生したり、災害に襲われたりする時です。

国際人権・難民・人道法は、最も暗い時代でも、ある程度の人間性を回復させることができます。

もう一つ強調したいのは、テロ対策に必要な取り組みといえども、人権の面で妥協してはならないということです。さもなければ、テロ対策は逆効果に終わってしまうでしょう。

今回の行動呼びかけは、人権の尊重が危機予防に不可欠なメカニズムであることを認めています。

しかし、予防がうまく行かず、暴力がはびこっている場合、人々を保護することが必要になります。

私たちは、国連活動の実効性と一貫性を確保するため、現地での広範な作業に依拠しながら、国連ファミリーに適用できる共通の保護アジェンダを策定していきます。

このアジェンダは、私たちが奉仕する人々の年齢やジェンダー、多様性に十分に配慮したものとなります。

少数者の保護と先住民の権利にも、さらに重点的に取り組みます。

また、「人権を最優先に(Human Rights Up Front)」をはじめとする重要なイニシアティブに立脚しながら、人権分析を強化するとともに、国連国別チーム内での人権顧問のプレゼンス拡大も図ります。

その一方で、私たちは引き続き、安全保障理事会やその他の国連機関と連携し、認識の向上や危機の予防、人々の保護、さらには国際刑事裁判所(ICJ)をはじめとするグローバルな司法メカニズムなどを通じた説明責任の確保を図っていきます。これらはジェノサイドやその他の残虐な犯罪の予防にも欠かせない手段です。

3番目は、ジェンダーの平等と女性の権利平等です。

女性の人権なしに、人権が実現することはありません。

しかし、北京行動綱領採択から25周年にあたる今年、私たちは女性の権利に対する抵抗や、恐ろしい数の女性の殺害、女性の人権擁護者に対する攻撃、そして服従や排除を永続化させる法律や政策への固執を目の当たりにしています。

女性と女児に対する暴力は、世界で最も広く蔓延している人権侵害です。

また、政治指導者としての役割や和平プロセス、経済的包摂への女性の参加も、慢性的な停滞を見せています。

格差の中身は違っても、その根源と理由は同じです。それは権力です。

女性は数千年にわたり、組織的に黙らされ、隔絶され、無視されてきました。

政策や法律は、人類の半数のみの経験を基に策定されたものがほとんどです。

私たちは、すべての人のためになるような社会経済とカバナンス、安全保障のシステムを意識的に構築できるよう、考え方を変える必要があります。

ある著名な専門家が記しているとおり、「女性が権力構造の中に十分に参加できていないと考えるのなら、変わるべきは間違いなく権力のあり方で、女性のほうではない」からです。

この作業は内部から始まっています。今年1月1日、国連はその歴史上初めて、常勤の事務次長と事務次長補の最高幹部レベルで、女性90人、男性90人というジェンダー・パリティー(男女同数)を達成しました。

私たちは、2028年までに国連システム全体のあらゆるレベルでジェンダー・パリティーを達成し、国連のあらゆる活動にジェンダーの観点を適用し、ジェンダー平等を求める働きかけを全方面で強化し、ジェンダー平等に向けた動向をよりよく追跡するとともに、そのための資金調達に関するベンチマークを設定することを約束しています。

本日、私はあらゆる国に対し、ジェンダーの平等を促進し、差別的な法律を撤廃し、女性と女児に対する暴力を終わらせ、性と生殖に関する健康と権利を確保し、あらゆる領域で女性の平等な代表と参加に向けて取り組むよう呼びかけます。

4つ目の分野は、市民参加と市民的空間です。

全世界で、シビック・スペースが縮小しています。そして、この縮小につれ、人権も縮小しています。

抑圧的な法律が相次いで制定され、表現、信教、参加、集会、結社の自由に対する制約がますます広がっています。

ジャーナリストや人権擁護者、環境保護活動家、特に女性は、司法の運営にその関与が欠かせないまさにこの時期に、大きな脅威にさらされつつあるのです。

最新テクノロジーは確かに、市民社会のネットワーク化を後押ししましたが、当局に対しても、個人の動きを統制し、自由を抑制するためのまったく新しい手段を提供しました。

国連が市民社会の積極的な関与なしに、その任務を達成できないことは明らかです。

私たちは、女性の権利擁護団体と若者に特に関心を向けながら、市民社会の声が常に、国連の機関や部局に届くようにするため、取り組みをさらに強化しています。

また、私たちは国連システム全体で、シビック・スペースを促進、保護し、市民社会の行動手段をさらに強化するための戦略を策定する予定です。

5番目は、将来の世代の権利です。

気候危機は、人類の存続にとって最大の脅威となっており、すでに世界の各地で、人権を危険にさらしています。

このグローバルな危機は、現在の意志決定において将来世代の権利に十分に配慮することがどれだけ必要かを物語っています。

加盟国の中には、小島嶼開発途上国をはじめ、気候危機でその存在自体が脅威にさらされている国もあります。

私たちが行動を起こさなければ、私たちの子孫が基本的権利をすべて享受することは到底できないでしょう。現在、勇敢にも発言を続けている若者の声にも、こうした不安が反映されています。

私たちの行動呼びかけは、9月に行われたユース気候サミットを含む気候行動サミットに基づき、気候変動対策と安全でクリーン、かつ健全で持続可能な環境に対する権利の実現を求めるものです。

私たちは、若者がその意見を表明するだけでなく、とりわけその未来を左右するような決定に参加、貢献できるようにするためのスペースを作っていきます。

第6の分野は、集団行動です。

この行動呼びかけは、現在の危機に対処するために必要な集団行動の中心に人権を据える枠組みの一環として行われています。

人権を軸に据えながら、マルチラテラリズムをさらに包摂的に、ネットワーク化しなければなりません。

私たちはあらゆる機会を捉え、加盟国をはじめとするさまざまなステークホルダーとの間で、人権擁護機関に対する支援強化を含め、人権問題と人道課題に関する対話を進めていくつもりです。

能力の育成と、国の機関や市民社会の支援を図るための行動も強化します。

また、安全保障理事会や総会、人権理事会のほか、二者間や地域のレベルでも、引き続き率直な対話を維持していきます。

普遍的定期審査(UPR)は、各国での私たちの活動に欠かせないツールです。私たちはこれを通じて、最も困難な状況の中でも、数多くのグッドプラクティスや成功例を収集してきました。私たちはきょう、この取り組みをさらに充実させることをお約束します。

UPRの力と潜在性を活用しつつ、私たちの協力基盤を整備し、人権課題に対応するため、私は間もなく、国連の各国常駐代表向けに、新たな実践指針を発表することになっています。

私たちはあらゆる活動で、加盟国が独自の人権擁護機関を設置し、国連のツールを全面的に活用して今後の課題に取り組めるようにするため、支援をさらに強化することを決意しています。

最後に7番目として、人権に関する新たな展望が挙げられます。

デジタル時代は福祉、知識、発見という点で、人間に新たな可能性を提示しています。

ところが、最新テクノロジーは監視、抑圧、オンラインでの嫌がらせやヘイトスピーチを通じ、権利やプライバシーの侵害に利用されることがあまりにも多くなっています。また、テロ組織や人身取引犯もこれを悪用しています。

顔認証ソフトウェアやロボット工学、デジタル認証、バイオテクノロジーといった技術的進歩が、人権を損なったり、格差を拡大させたり、既存の差別を悪化させたりするために利用されることがあってはなりません。

デジタル協力に関するハイレベル・パネルは、各人がデジタル技術の進歩と、それによって生まれる 新たな展望から利益を得られる世界を構築するための道筋を示しています。

私たちはこの意味で、オンラインでも人権を適用すること、そして個人情報や健康データをはじめとするデータをしっかりと保護することを求めています。

民間セクターとの連携は欠かせません。

私たちはまた、インターネット・ガバナンス・フォーラムなど、必要不可欠な世界機関の強化も図っています。

そして最後に、私たちは自律型兵器が野放し状態で、または人間の承認を得ることなしに殺害を行うことがないよう、監視しなければなりません。

私は改めて、自律型致死兵器システムの世界的な禁止を訴えたいと思います。

各国代表の方々、皆様、

私はきょう発表した行動呼びかけに、私と国連の全精力を傾けることを決意しています。また、人権高等弁務官の不可欠な活動にも、全面的な支持を表明します。私たちはこれらの約束を果たせるよう、事務総長室と高等弁務官事務所(OHCHR)との密接な連携もさらに強化していくつもりです。

皆様一人ひとりには是非とも、人と地球に裨益する私たちの呼びかけに参加していただきたいと思います。

世界中の人々は、私たちが自分たちの味方であることを知りたがっています。

戦争や抑圧、貧困で尊厳を奪われているか、単によりよい未来を夢見ているかにかかわらず、人々は譲ることのできない権利を要求し、その尊重を確保するために、私たちの支援を必要としているのです。

市民的、文化的、経済的、政治的、社会的な人権はいずれも、目的であると同時に、手段でもあります。

あらゆる男女が人権を享受できるようにするという、人類最高の願望の実現に向け、ともに取り組んでいこうではありませんか。

ありがとうございました。

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原文(English)はこちらをご覧ください。