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TICAD7 テーマ別会合「気候変動・防災」におけるアントニオ・グテーレス国連事務総長挨拶 (横浜、2019 年8月29日)

2019年08月30日

©UN Photo/Ichiro Mae

本日、気候変動の影響に起因する災害リスクの軽減という重大な問題について、皆様と話し合えることを嬉しく思います。

私は、リスク軽減とレジリエンス構築に向けたグローバルな青写真として「仙台防災枠組」が成立したここ日本以外に、この問題について話し合う最適な場所を思いつきません。

災害ほど開発を損なうものはありません。

数十年かけて達成された持続可能な開発に向けた前進が、一瞬にして水泡に帰してしまいかねないからです。

サイクロン・イダイがモザンビークに及ぼした被害を見ただけでも、このことはよく分かります。それは、気候変動によって災害がさらに悪化したほんの一例にすぎません。

この点に関し、アフリカには特別な道徳的権威があります。アフリカは地球温暖化をほとんど助長していないにもかかわらず、こうした壊滅的な結果の影響をまともに受けているからです。

私が9月23日にニューヨークで「気候行動サミット」を開催する理由もここにあります。

私たちの包括的目標は、野心を高め、世界の気温上昇を1.5˚C以内に抑えられる目途を立てることにあります。

昨年、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が発表した特別報告書によると、地球温暖化を産業革命以前との比較で1.5˚Cに抑えるためには、私たちの土地、エネルギー、産業、建物、輸送、都市の管理方法を「急速かつ広範に移行」させる必要があります。

私はこうした理由から、リーダーの方々に対し、私たちをしっかりと持続可能な道へと導くための具体的かつ現実的な計画を持って、サミットに参集するようお願いしています。

各国は、「自国が決定する貢献(NDC)」が2020年までに強化されることを示さなければなりません。

そして、今後10年間でいかにして温室効果ガス排出量を45%削減し、2050年までに正味ゼロ・エミッションを達成するのかを実証せねばなりません。

同時に、気候の攪乱が今あらゆる場所で生じていることも、十分に明らかになっています。

私たちが気候関連の被害を耳にしない週はありません。

そして、気候変動の影響は深刻度においても、頻度においても増大の一途をたどるものと見られます。

もちろん、アフリカは特に大きな打撃を受けますが、いかなる国も、そして経済セクターも、その影響を逃れることはできません。

例えば、ここ日本でも、この数日間で100万人近くが洪水によって避難を強いられました。

北極圏では、記録的に高い気温によって生じた破壊的な山火事の被害が広がっているほか、アマゾンの悲劇は誰もが目にしています。

ウガンダでは、気候変動がマラリアの蔓延を助長しています。

また、アフリカ全土で長期的な干ばつが恒常的な現実として広がりを見せており、サヘル地域ではっきりと表面化してきた情勢不安とも直接的に関連づけられています。

常にそうですが、気候変動の影響で最初に、最も大きな打撃を被るのは貧困・弱者層です。

気候変動の原因に取り組むだけでなく、その影響に対処する際に誰一人取り残してはならない理由も、そこにあります。

同じ理由から、気候行動サミットは、適応とレジリエンスに加え、緑の気候基金の大がかりな補填をはじめ、適応資金の確保も重要な中心議題としています。アフリカ諸国を支援するためには、それらすべてが欠かせません。

気候行動サミットに向け、防災に取り組もうとする国々とパートナーによる取り組みも提案されています。

その中には、貧困・弱者層の保険加入を大幅に容易にするための案も含まれています。

こうした人々には、災害から素早く立ち直るための手段を与えることが欠かせません。

また、私たちは災害が起きた後の対応効率を上げるだけでなく、警報や準備態勢をさらに充実させることで、そもそも災害の発生を防ぐための取り組みも行わねばなりません。

それは単に正しいことであるだけでなく、経済的にも理に適っています。

例えば、気候変動に強いインフラ整備の便益費用比率はおよそ4:1に上ります。

つまり、早期に行動することは人道上の必要性に合致しているだけでなく、経済的合理性も兼ね備えているのです。

「気候行動サミットに向けた早期警報と早期行動、および、投資決定における気候リスクのメインストリーミングに関する提案」は、まさにこの課題に取り組むものです。

こうした提案を実行に移し、必要なスケールと継続性の達成を助けるため、私は皆様に支援をお願いしたいと思います。

気候行動サミットを成功させ、その成果を確保するためには、私たち全員が力を合わせなければなりません。

私はこの会合で、気候変動に起因する災害のリスク軽減に向け、私たち全員がさらにどのような行動を取りうるかに関し、皆様の見解をお聞きできることを大いに楽しみにしています。

私たちがすでに経験し、そして今後ますます多く経験することになる気候変動の影響によって、誰一人取り残されることがないようにしなければなりません。

ありがとうございました。

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原文(English)はこちらからご覧ください。