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「2018年地球気候の現状に関するWMO報告書」発表記者会見における アントニオ・グテーレス国連事務総長挨拶 (ニューヨーク、2019年3月28日)

プレスリリース 18-017-J 2019年04月04日

©UN Photo/Mark Garten

マリア・フェルナンダ・エスピノサ国連総会議長およびペッテリ・ターラスWMO事務局長とともに

 

メディアの皆さん、こんにちは。本日はご出席いただき、ありがとうございます。

私は国連事務総長として、世界気象機関(WMO)の活動を大きな誇りにしています。WMOの報告書は、気候変動がどのような進化を遂げているか、という問題の解明に絶対に欠かせない極めて強固な科学的基盤と、私たちの将来の行動に対する明らかな指針を提供しているからです。

私は、この報告書が今年も出されたことに、深く感謝しています。

気候変動の加速が続いていますが、この報告書では、3つの点を特に重要視しています。

第1に、陸地の気温と海水温、海水位、大気中の温室効果ガス濃度は軒並み、過去最高を更新しています。

第2に、異常気象の劇的な影響がますます頻繁に見られるようになっています。

昨年は米国だけでも、14件の気象・気候関連災害が発生しましたが、被害額はそれぞれ10億ドルを超え、合計でおよそ490億米ドルに達しました。

全世界の洪水被災者の数は、3,500万人を超えています。

最近では、南部アフリカを襲ったサイクロン「アイダイ」が、甚大な被害を及ぼしました。

第3に、公衆衛生への影響が広がっています。

熱波にさらされる人の数は平均で、今世紀初頭と比較しても1億2,500万人ほど増えており、死者も多く出ています。

特に熱波が長引き、激しさを増し、さらに頻繁になる中で、酷暑と大気汚染の同時発生が、危険度をさらに増しつつあります。

よって、この報告書はまさに、さらに強力な注意喚起だと言うことができます。

これまでも申し上げてきたとおり、気候変動は私たちの取り組みを上回る速さで進んでいることが証明されたのです。

9月23日にここニューヨークで、私たちが気候行動サミットを開く理由も、そこにあります。

私たちがさらに大きな野心を持って、気候変動に取り組むことが重要です。

私はリーダーの方々に対し「スピーチではなく、計画を用意してきてください」とお願いしています。

つまり私は、私たちに今度こそ、持続可能な道を歩ませるための具体的かつ現実的な計画を持って、サミットに出席するよう呼びかけているのです。

そのためには、パリ協定に基づき、2020年までに「自国が決定する貢献(NDC)」を強化するとともに、今後10年間で温室効果ガス排出量を45%削減し、2050年までに全世界でゼロ・エミッションを達成できる方法を示さねばなりません。さもなければ、気候変動は不可逆的となり、パリ協定で定められた目標も達成できなくなってしまうでしょう。今世紀末までに気温上昇を1.5°Cに抑えられなくなってしまう瞬間は、私たちの目の前に近づいています。この動きを逆転させることができる時間は、ほんの数年しかありません。なぜなら、大気中の二酸化炭素濃度は消えないからです。よって、私たちは気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が示したシナリオよりも、はるかに悪い事態に陥ることが避けられなくなる瞬間に近づいている、ということになります。

科学もその対策が必要だと言っています。

世界中の若者も今、当然ながら同じ対策を求めています。

私はサミットに対し、気候行動の利益と、誰もがその恩恵に浴せることを実証するよう望んでいます。

気候変動問題への解決策が、私たちの経済を強化し、大気環境と公衆衛生を改善し、私たちの環境を守れることを理解している政府や都市、企業の数は確実に増えてきています。

私たちはエネルギー、持続可能な農業、森林、海洋、気候変動の影響に対するレジリエンスなど、さまざまな部門での取り組みに期待しています。

私はこうした取り組みで、あらゆる意思決定におけるジェンダー平等の重要性も明らかになるのではないかと思います。

また、必要な気候変動対策によって不利な状況に取り残される人が出ないよう、公正な移行(just transition)の重要性も強調されるようになるでしょう。

私たちが必要とする転換によって誰ひとり取り残されないようにする方法は、それ以外にありません。

転換がすでに始まっていることは確かですが、それが必要な速さで進んでいないことも確かです。

最新テクノロジーはすでに、化石燃料主導型の経済よりも低いコストでエネルギーを供給しています。

太陽エネルギーと陸上風力は事実上、すべての主要経済国で最も安価な再生可能エネルギーとなっています。

ですから、私たちはこの移行を加速することができます。また、そうせねばなりません。

そのためには、化石燃料と温室効果ガス排出量の多い持続不可能な農業に対する補助金を廃止し、再生可能なエネルギーや電気自動車、気候に優しい実践に向けたシフトを遂げなければなりません。

気候リスクから大気汚染による健康被害に至るまで、温室効果ガス排出の実質的コストを反映するカーボンプライシングも必要です。

また、石炭火力発電所の閉鎖を加速し、その新規の建設を中止するとともに、失われた雇用をより健全な雇用で代替することにより、転換を公正かつ包摂的で、利益をもたらすものにもせねばなりません。

今後数年の間に、全世界でインフラ整備への多額の投資が行われることでしょう。

私たちはこのインフラを持続可能で気候に優しいものとしなければなりません。さもなければ、私たちは一気に進む気候変動に何の手も打てなくなってしまうでしょう。

こうした取り組みを進めれば、私たちは不可逆の気候の混乱という脅威を回避するとともに、2030アジェンダの実現に向けて歩を進めることができるのです。

ありがとうございました。

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原文(English)はこちらをご覧ください。