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平和構築と持続的平和に関する総会ハイレベル会合における アントニオ・グテーレス国連事務総長挨拶 (ニューヨーク、2018年4月24日)

プレスリリース 18-026-J 2018年05月02日

平和の構築と持続に対する私たちの共通の決意を新たにする機会を与えていただき、感謝いたします。

私たちの一致団結した取り組みにとって重要な時期に、そして、世界の多くの場所で平和が脆く、危険にさらされている時期に、私は皆様がこの問題に、ハイレベルの関心を寄せていることを歓迎します。

2年前、総会と安全保障理事会は「紛争のあらゆる段階と、そのあらゆる側面で」平和を持続させるための協力の改善を約束する野心的な決議をそれぞれ採択することにより、はっきりとしたメッセージを発信しました。

この対をなす決議は、平和構築と持続的平和を実現する主たる責任が政府にある一方で、私たちは平和で強靭な社会を構築するため、さらに取り組みを強化できることを強調しました。

2年後の今、進捗状況を把握し、共通の前途を描く時が来ています。

世界経済の統合、貿易の拡大、貧困の削減と生活水準の改善、驚くべきテクノロジーの進歩など、グローバリゼーションの多くの恩恵には、疑う余地がありません。

しかし同時に、私たちの世界が、いくつか根本的な点で後退していることも認めなければなりません。

暴力的紛争を抱える国の数は、過去およそ30年間で最も多くなっています。

都市部で爆発性兵器により殺傷される民間人は、記録的な数に上ります。

暴力や戦争、迫害によって、記録的な数の人々が避難を強いられ、移動しています。

恐ろしい人権侵害や、ナショナリズム、人種主義、排外主義の台頭も見られます。

不平等が拡大した結果、地域や国、コミュニティー全体が進歩から孤立し、成長から取り残されています。女性と女児は、あらゆる種類の差別を受けています。これらはいずれも、私たちが奉仕の対象とする人々の恐怖を和らげ、世界によりより未来への道を歩ませ、持続可能な平和と開発の基礎を築くため、私たちが結束と勇気を高める必要性を示しています。

私はこのハイレベル会合が、持続的平和を目指し、2016年に採択された決議の履行に向けた勢いを強めることを期待しています。

議長、各国代表の皆様、

平和構築と持続的平和に関する私の報告書には、各国政府と国民を支援する国際的な取り組みの一貫性を高める必要があるという、中心的なメッセージがあります。

私たちが抱える課題の規模と性質を考えれば、各国の優先課題と政策に基づき、すべての重要なステークホルダーが戦略、活動面でのパートナーシップをさらに緊密化する必要があります。こうした重要なステークホルダーには、政府、国連、その他の国際・地域・小地域機関、国際金融機関、市民社会、女性団体、若者の団体や民間セクターが含まれます。

さらに統一性を高めるため、私たちはすべての取り組みにおいて、また、紛争の予防と解決から平和維持、平和構築、さらには長期的開発に至る平和の連続体のあらゆる段階で、パートナーシップを強化しています。

調停に関するハイレベル諮問委員会は、有能な外交官の専門知識を活用し、全世界で平和のための活動を支援し、地域機関や非政府組織その他、平和に欠かせない調停という活動に携わる人々との関係強化をねらいとしています。

私は先月、より強力かつ安全な国連平和維持ミッションの展開を図るため、「平和維持のための行動」イニシアティブを立ち上げました。

このイニシアティブの重要要素として、寛大に兵員を提供する国々はもとより、警察官や機材その他の資源を提供する国々も含め、私たちのあらゆるパートナーやステークホルダーとの関係を強化することが挙げられます。

私たちはまた、すべてのステークホルダー間の統一性を強化するため、パートナーシップの結集を図るプラットフォームとして、平和構築委員会への支援強化も目指しています。そのために、平和構築支援事務所を改革し、その強化を図るとともに、国連システム全体での平和構築支援事務所の役割も強化していきます。これにより、私たちが紛争終結後の移行を円滑化できる能力も高まることでしょう。

これらの取り組みはいずれも実を結びつつあります。例えば、リベリアの平和維持ミッションUNMILから国連国別チームへの移行は、国連全体の調整と準備が新たな水準に達していることを実証しました。

しかし、議長も述べられたとおり、リスクを抱える国と国連の両方で、さらに取り組みが必要であることは明らかです。

持続的な平和は、女性や若者、少数者、障害をもつ人々など、社会から最も隔絶された人々のニーズに配慮する各国の熱心で包摂的な主体性があって初めて実現するのです。

女性は決定的に重要な平和構築者であるため、私はすべての平和構築プロセスでの女性の包摂を強く意識しています。女性の平和構築への参加に関する国連の「7項目アクションプラン」は、ジェンダー対応型の平和構築に向けた資金を増額し、政策決定に対する女性のアクセスを拡大し、ジェンダーに配慮した分析と計画策定を改善するための措置を定めています。ジェンダー関連問題は引き続き、この議論の中心に据えなければなりません。そして、ジェンダー・パリティーに関する私たちのコミットメントは、この方針に沿うものと言えます。

私はまた、私たちの若い女性や男性との関わり合いを決定づけるうえで重要な役割を果たすものとして、「若者と平和、安全」に関する新たな報告書を温かく歓迎します。平和と安全に対して若者ができる大きな貢献を認識すべき時は、すでに来ています。若者に物事を任せ、その知識やアイディア、自発性を十分に活用することを目指す私のこの分野での改革を、皆様も支援していただけるものと期待しています。

中でも、経済的、社会的、文化的、市民的、そして政治的なあらゆる人権の尊重に深く根差す持続可能で包摂的な開発は、暴力的な紛争と情勢不安を防ぐ世界最高のツールと言えます。

「持続可能な開発のための2030アジェンダ」は、より平和で安定的、かつ強靭な社会群を目指す私たちに共通の青写真です。

持続可能な開発はそれ自体が目的であるだけでなく、紛争の予防に対しても欠かせない貢献をします。

持続的平和への投資は、基本サービスに投資し、人道・開発機関を結集させ、実効的で責任ある制度を構築し、人権を守り、社会的一体性と多様性を促進し、持続可能なエネルギーへと移行することを意味します。

質の高い教育とやりがいのある人間らしい仕事、そして訓練を若者が得ることは、根本的な意味があります。

私たちには、平和と持続可能な開発、人権を統合することにより、予防を優先し、紛争の根本的原因に取り組むホリスティックなアプローチが必要です。

議長、皆様、

私の報告書には、国連の機関全体が加盟国に提供する協調的支援を、開発、管理、平和
と安全に関する各部門の改革により、より効果的かつ効率的にすることを目指す提案が盛り込まれています。

私は、国連を未来の世界に備えさせることを決意しています。

そのためには、財源の確保が欠かせない側面となります。平和構築活動の財源確保に関して、まったく前進が見られなければ、生命を守り、危機にさらされた国の情勢を安定化させ、苦痛を和らげ、社会的弱者を守るために私たちが展開してきた取り組みも、無に帰すおそれがあります。

国際社会は過去10年間、人道援助や平和維持、難民の受け入れに2,330億ドルを費やしてきました。

私たちが予防にもっと投資せねばならないのは、それが効果的かつ経済的であるだけでなく、何よりも人命を救うことができるからです。

平和構築基金はすでに、国内のパートナーを支え、平和と安定への移行を支援し、国連の25の機関や政府その他のパートナーを通じて資金を供与することで、統一性を高めるとともに、その目的を国際金融機関やその他主体の目的とすり合わせ、大きな乗数効果を生む能力をすでに実証しています。

平和構築基金には対応力があり、危機が差し迫った状況に素早く介入できます。触媒的な役割を果たし、他の資金提供者の資金も動員できます。また、他者が投資を躊躇するような案件に資金を提供し、多様性と包摂性を重視していることは、基金のプログラムの多くが、女性や若者を支援対象としていることからも窺えます。

私は改めて、基金の資金規模を年間5億ドルに引き上げるよう訴えます。

私は報告書で、自発的な定期的拠出や、革新的な資金調達を呼びかけながら、平和構築活動を拡大、再編、優先づけするための手段を多く提案しています。皆様がこれらの提案に相当の関心を向けていただけることを期待しています。

平和と安全に関し、私が推進している改革では、平和構築支援事務所の常勤職員の50%増員も提案されていますが、改革で実現する効率改善により、この増員は追加的費用を伴わずに実施することができるでしょう。

改革で提案されている平和構築事務所の強化と、平和構築基金に割り当てられる資金の増額は、ツールと方法の共通化とパートナーシップの強化により、平和と安全を目指す私たちの行動と、私たちのその他すべての活動との間につながりを作り出すことになるはずです。

議長、各国代表の皆様、

私は、今の不和と分裂の時代に、加盟国が平和構築と持続的平和という不可欠な試みに向けて結集したことに、心を強くしています。私はあす、安全保障理事会で同じ問題について発言する予定です。

私の発言の冒頭でも触れたとおり、私たちが予防や紛争解決、平和維持から平和構築、さらには長期的開発へと至る連続体全体を通じ、平和を構築、維持するためには、安全保障理事会と総会双方の強力な支援が必要です。

私の報告書に対する皆様の決議を歓迎するとともに、平和構築体制の強化に関する継続的な協議で、分裂が克服され、効果的かつ統一的な協力が可能になることを期待しています。

私は、このハイレベル会合における皆様の議論と、グローバルな平和と安全の構築、維持という、国連の主たる目的の一つを実現するため、私たちが協力を続けられることを楽しみにしています。

ありがとうございました。

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原文(English)はこちらをご覧ください。