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アカデミック・インパクト発足式での国連事務総長挨拶

2010年12月01日

ファーリー・ディキンソン大学のマイケル・アダムス学長、赤阪清隆事務次長、学界指導者、大学学長、教授、そして学生代表の方々、皆様、

この重要な式典に、ようこそお出でくださいました。

実のところ、私はけさ、これほど多くの著名な学識者の皆様を前にし、少し緊張しています。英語は学生時代、好きな科目ではありましたが、どうか演説の終わりに、文法の誤りを指摘することだけはご勘弁ください。

こうして場内を見渡しますと、活気に満ち溢れた世界的シンクタンクの中にでもいるような気持ちになります。皆様が全体としてお持ちの知識は、きわめて多くの分野はもとより、ボツワナからバンコク、日本の九州から南アフリカのクワズール・ナタール州、さらにはメキシコからモンゴルに至るまで、多くの国々もカバーしているからです。皆様の国々はすべて、平和維持要員の提供や開発の支援、私たちの成功に必要な政治的な後押しの提供などを通じ、すでに国連の活動に貢献しています。

しかし、人材や資源だけでなく、私たちにはアイデアが必要です。アイデアこそが、国連に生命力を与えるからです。

一つのアイデアから、数百万人の命を救う突破口が生まれることがあります。新しい技術で、あらゆる人々の苦難を解消することもできます。たった一つの理論で、平和に向けた行動が沸き起こることもあるのです。

学界は国連が創設されて以来、私たちの活動を支援してきました。研究専門の科学者がいなければ、私たちは決して天然痘を撲滅できなかったことでしょう。調停の専門家は、平和と安全に計り知れない貢献をしてきました。私とその前任者たちの首席顧問には、大学の学部長も多く名を連ねています。国連の副事務総長は母国の外務大臣だけでなく、タンザニア大学の教授も務めていました。

全世界の学識者は、私たちの活動を推進し続けています。農業開発に関する発明や貧困を終わらせるための戦略、そして女性の権利に関する研究はいずれも、私たちの任務遂行に直接寄与しています。

教え、学ぶことはそれ自体、人々の間に絆を作り上げる行為です。

今回のイニシアティブの発足で、私たちがこうした取り組みを加速できるチャンスが生まれました。

アカデミック・インパクト(United Nations Academic Impact/UNAI)はすでに、全世界で大きな関心を呼んでいます。

私は今月上旬、上海のある会議で開会の辞を述べましたが、この会議には中国全土の大学から参加者が集まりました。

数週間後には、スペインのニーマイヤー・センター(国連本部を設計した唯一存命中の建築家にちなみ命名)で、ヨーロッパ初のアカデミック・インパクト会議が開催される予定です。

さらに来年は、韓国大学教育協議会との共催により、教育と起業に関する会議も予定されています。

私は、これらをはじめとする取り組みに感謝するとともに、さらなる前進を望んでいます。

私たちの間にきょう、正式な関係ができ上がったことで、学界が及ぼす大きな影響力をさらに高めることができるようになったのです。

皆様、

私たちは政治学、国際法、外交などの学問分野が、平和や開発、人権と明らかに結びついていることを認識しています。

今から半世紀前、国際舞台での活躍を望む人々の間では、法律や外交、政治学の学位を目指すことが常識とされていました。

現在では、私たちの活動が事実上、その他すべての学問分野に及ぶという認識がますます広がっています。建築学と工学は持続可能な開発に、人文科学は寛容と異文化理解に、医学は公衆衛生にそれぞれ関わっています。

それはまさに、国連の任務が、時には急速に進化を続けているからに他なりません。

これまでの平和維持の経緯を考えてみてください。

従来の平和維持活動では、休戦ラインを境にした兵力の引き離しを行っていました。戦闘行為の再発を防ぐためには、比較的少数の兵員とわずかな調停者がいれば十分でした。

現在の平和維持は、これとまったく様相を異にする場合が多く、人道援助や人権、制度構築、治安セクター改革、子どもの保護など、多くの事項が絡んできます。私たちは今でも、兵員や警察官に依存していますが、法医学者、人権問題専門の弁護士その他多くの職業専門家も必要であり、その中には研究者が多く含まれています。

つまり、研究対象が物理学の新理論であれ古典文学であれ、学識者の活動は全世界で前進を促す力となっているのです。

このことを理解する大学が増えています。学部が連携して、学際的な学位を設けるケースも見られます。研究施設でも難民キャンプでも分け隔てなく活動できる多才な学識者も現れはじめました。サテライト・キャンパスを開設し、通学できない人々に「遠隔地教育」を施す大学もあります。

このことによって、新しい大きな可能性が開けてきました。国境や学問分野を越えたアイデアの共有により、私たちは多くの苦難をもたらす相互関連性の強い問題への解決策を見つけることができます。

気候変動は単なる環境への脅威ではなく、貧困と密接に結びついています。

貧困は雇用だけの問題ではなく、食糧安全保障にも直結しています。

食糧安全保障は健康に影響します。

健康は何世代もの子どもに影響を与えます。

子どもたちは私たちの将来の鍵を握っています。

そして教育は、これらすべての側面で前進をもたらすことができるのです。

皆様、

皆様は国連アカデミック・インパクトに参加することで、この連鎖の実現を約束されたのです。

そうすることで、皆様は教え、学び、個別研究を進めるという大きな個人的満足感を越えるものを得られます。皆様の学識が日々、苦闘を繰り広げる人々の力となれば、さらに大きな誇りにもなるはずです。

私たちは皆様に知的財産の提供をお願いしているのではありません。皆様の活力、エネルギー、そしてコミットメントを求めているのです。

皆様一人ひとりには、数十人を越える学生を鼓舞する力があります。そして皆様の一人ひとりが、世界を変えていけるだけの情熱をお持ちです。

今回のイニシアティブに参加され、私たちと共に歩み始めた皆様に感謝いたします。すべての人々にとってよりよい世界を築くという国連の活動の一環として、私は皆様との緊密な協力により、この取り組みを有意義に活用できることを楽しみにしています。

ありがとうございました。