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生物多様性に関するハイレベル協議における潘基文(パン・ギムン)国連事務総長演説 (ニューヨーク、2010年9月22日)

プレスリリース 10-069-J 2010年10月04日

総会議長、
閣下、
各国首脳の方々、
皆様、

私は、このハイレベル協議を招集した総会に賛辞を贈ります。

地球の生物種と生息地、そして、これらが提供する財やサービスの保全は、持続可能な開発とミレニアム開発目標(MDGs)の核心をなすものです。

今年は「国際生物多様性年」に当たるだけではありません。国際社会が生物多様性損失の速度を大幅に低下させることを約束した期限にも当たります。

しかし、2010年の目標達成はできなくなりました。

事実、生物多様性条約事務局が発行した『地球規模生物多様性概況第3版』を見る限り、世界の生物多様性の損失は加速しています。

生物種の絶滅は自然に任せた場合の千倍もの速さで進んでいるとの科学的証拠も得られています。

理由は簡単です。それは皆様、私、そして人間すべての活動だからです。

主な原因としては森林破壊や生息地の変化、土地の劣化などが上げられます。

気候変動の影響の増大は、問題をさらに複雑にしています。

どの緊急事態もそうであるように、もっとも大きな被害は貧しい人々に及びます。

「生命の網」ということがよく言われますが、私たちの暮らし方は、私たち自身を「死の網」にかけるものといえます。

この破壊にどのような意味合いがあるかをまだ把握できない人々が、あまりにも多くいます。

得体の知れないカエルや、絶滅の危機に瀕したフクロウをなぜ救う必要があるのか、わからずにいるのです。

地球は私たちが好き勝手に使えるものと考える人々もまだ多くいます。

こうした主張は、生物種としての私たち人類の安寧、気候の調整、水の供給、そして食料安全保障にとっての生態系の重要性をまったく知らないことをさらけ出しています。

今年の国際年に当たり、私たちは生物多様性への投資がもたらす具体的な利益を実証する必要があります。

生態系サービスは、こうした投資の収益と直接に関係しています。それは私たちにとっての自然資本だからです。

私たちは、生態系の保護がミレニアム開発目標(MDGs)の達成や、気候変動に対する抵抗力の育成に役立つことを示す必要があります。

生態系サービスは、環境が提供する多額の補助金といえますが、全世界でその真価はあまりにも低く見積もられています。

ずさんな管理によってこうしたサービスを失えば、凶作が起き、利益は落ち込み、貧困が進み、経済も低迷します。

ハイチやエチオピアなどの国々での森林破壊や、1930年代にこの米国で生じた砂塵(ダストボウル)による人的損失を思い起こしてください。

昨年の金融危機は、私たち全員に影響する複雑な諸関係の監視や規制を怠ることの危険性を各国政府に痛感させました。

生物多様性の危機も同じことです。私たちは自然経済を破綻に追い込んでいます。手遅れになる前に、緊急対策を打ち出す必要があるのです。

来月、日本の名古屋で生物多様性条約の193の締約国が会議を開きます。

この会議では、生物多様性に関する新たな「戦略計画」と2050年に向けた生物多様性ビジョンが採択される予定です。

この総合的で国際的な生物多様性の枠組みは、2年間にわたる包括的かつインクルーシブな取組みの成果です。

戦略計画は、2012年のリオ+20サミットまでに具体的な国内目標を定め、すべての利害関係者を関与させるとともに、社会のあらゆる分野で生物多様性に配慮することを呼びかけるものとなっています。

実施の手段や監視と評価のメカニズムも盛り込まれています。

また、遺伝資源へのアクセスと、これに派生する利益の公平な共有という重要な課題にも取り組むことになります。

紙の上では確かな計画ですが、その実現にはリーダーシップが必要です。

それは環境大臣だけでなく、財務や計画、経済的生産や運輸、保健や社会福祉を担当する大臣の責任でもあります。

さらに、私たちは環境保護をコストとみなすことを止めなければなりません。

環境保護への投資は、首脳である皆様が、各国の経済成長と国民の安寧を定着させるために行わねばならないその他の投資と切り離して考えることができないものだからです。

私たちの自然インフラを維持、回復すれば毎年、数兆ドルに上る経済的な利益を得ることもできます。

その破壊を許すことは、お金を窓から投げ捨てるようなものです。

私はきょうご出席の指導者すべての方々に対し、生物多様性の損失を食い止めることを約束するよう求めます。

それは皆様の遺産、つまり子孫に対する贈り物でもあるのですから。

ありがとうございました。