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潘基文(パン・ギムン)国連事務総長による総会報告「今が私たちの時」(2009年9月23日、ニューヨーク国連本部)

プレスリリース 09-048-J 2009年09月27日

議長、
各国首脳の方々、
各国代表の方々、
皆様、

まず、議長の就任を心からお祝いいたします。そして皆様の成功をお祈りするとともに、私からの全面的支援をお約束いたします。

各国大使の方々、
皆様、

私たちは毎年9月、厳粛な儀式に参集します。私たちは国連の礎である憲章、すなわち平和、正義、人権、そして万人の機会均等という基本原則に対する信念を再確認するためにやって来るのです。私たちはまた、世界情勢を評価し、その時々の重要課題に取り組み、そして今後に向けたビジョンを作り上げます。

今年の第64回総会一般討論の開幕にあたり、私たちはまれに見る重大な岐路に立たされています。
食料、エネルギー、不況、新型インフルエンザの流行など、多くの危機を抱えた世界は、私たちに回答を求めているからです。

多国間主義の精神を新たにし、真の意味で集団行動のとれる国連を作り上げるべき時があるとすれば、それが今なのです。

各国大使の方々、
各国代表の方々、

今が私たちの時です。それは「連合」という言葉を再び国連のものとすべき時です。目的においても、行動においても、連合が必要です。

まず、私たち連合した国々は今年こそ、人類全体が直面する最大の課題、すなわち破滅的な気候変動の脅威に対して立ち上がろうではありませんか。100カ国の首脳はきのう、コペンハーゲン会合に向けた今後の段取りを決めました。各国首脳はあらゆる国々が受け入れることのできる合意の必要性を認識しました。それは、各国の能力に応じた合意、科学的な必要性に沿った合意、そして21世紀の生命線ともいえる「グリーン雇用」と「グリーン成長」に根ざした合意に他なりません。私たちはコペンハーゲン会合までに、立場の隔たりを埋めなければなりません。私はそれが可能だと固く信じています。

第二に、今年こそ各国が連合し、世界から核兵器を廃絶しようではありませんか。この偉大な目標はあまりにも長い間、忘れ去られています。私はこの理由から、昨年10月、軍縮を再びグローバルな検討課題とするための5項目プランを提案しました。そして今、国際情勢は変わり始めています。ロシアと米国は、その核兵器備蓄の削減を約束しました。来年5月の国連核不拡散条約再検討会議は私たちにとって、実質的な進展をさらに後押しする機会となります。

国連を初めて訪れた米国の新大統領が議長を務め、あす開催される歴史的な安全保障理事会での首脳会合は、その新たな出発点となるでしょう。私たちが今すぐに行動を起こせば、包括的核実験禁止条約の発効に必要な署名を得ることができるのです。ともに今年を核兵器廃止に向けた合意の年としようではありませんか。

第三に、私たちは今年こそ、世界の貧困との闘いにおいて、置き去りにされた人々に焦点を当てようではありませんか。「回復の新芽」が見られるとする向きもありますが、私たちには警告を示す赤旗が見えます。私たちの最新報告書『Voices of the Vulnerable(弱者たちの声)』は、新たな危機をはっきりと描き出しています。貧困の瀬戸際にいる人々が、新たに貧困へと突き落とされているのです。今年、貧困ライン以下に転落する人々は1億人にも達しかねないと見られています。たとえ市場が持ち直しているとしても、所得と雇用は回復していません。

人々は憤りを感じています。自分たちが損をするように、グローバル経済が操られているのではないかと考えているからです。私たちはこうした理由から、均衡の取れた持続可能な成長を目指す「グローバル・ジョブズ・パクト(仕事に関する世界協定)」を提示しました。また、私たちが全世界の社会経済情勢についてリアルタイムでデータと分析を提供する「グローバル・インパクト脆弱性警告システム」の新設を進めている理由も、ここにあります。私たちが最善の対応策を講じるためには、誰がどこで苦しんでいるのかを知る必要があるからです。

また、私たちは同じ理由から、来年のこの時期にミレニアム開発目標(MDGs)に関する特別サミットの招集も予定しています。目標達成期限をわずか5年後に控えた今、私たちは2015年に向けて最後の力を振り絞らねばならないのです。私たちが女性と子どもを最優先しているのも、当然のことです。国連児童基金(ユニセフ)の報告によれば、乳幼児死亡率は過去20年間で28%低下しました。妊産婦の保健と死亡率についても、私たちは同じような進展を期待できるはずです。

女性に対する性暴力の予防は、最優先課題としなければなりません。まず、こうした暴力が恥ずべき行為だということに合意しましょう。このような犯罪が国内で起きれば、その国の指導者は個人的な責任を問われることになるのです。女性が出産の際に死亡したり、戦争の手段としてレイプされたり、誰にも助けを求められなかったりする姿を、私たち国連が見て見ぬふりをするわけにはいきません。皆様も最近、こうした理由から、女性問題に専門に取り組む機関の創設に合意されました。私たちがこれほど女性の地位を向上できる力を与えられたことは、いまだかつてありません。

皆様、

今次総会では保護の責任も再確認されました。私たちの暮らす現代には、大小を問わずいかなる国も、国民の人権を侵害し、しかもその責任を問われないなどということがあってはなりません。紛争が生じた場合には、正義と説明責任がそれに続くべきです。

国際刑事裁判所(ICC)の活動が極めて重要な理由は、ここにあります。来年5月にはウガンダの首都カンパラで再検討会議が開かれますが、私たちはこれを、裁判所の権限を強化する機会と捉えています。

平和と安全、正義がなければ、私たちの崇高な目標はどれも達成できないからです。ダルフールでは、最近の進展を定着させ、私たちの任務を完遂することを意味します。年末までに90%の部隊が展開する予定です。それでも私たちは、輸送車両やヘリコプターをはじめ、極めて重要な資産を欠いています。その間も、スーダンと周辺地域の全般的な安定は急務になっており、私たちは南部スーダンとの包括的和平への取り組みを強化せねばなりません。

ソマリアは、アフリカ平和維持要員や政府、さらには国際的な海賊対策への支援という点で、引き続き注意を要します。

スリランカでは、再定住、和解、説明責任の実現に努めていきます。政府は先週も私の特使に対し、1月末までに全避難民の帰還を認めるという約束を再確認しましたが、私たちはこれを歓迎しています。

ミャンマーでは自由と民主化の実現に努めます。先週、数人の政治犯が釈放されましたが、まだ要求は満たされていません。私たちはミャンマーの友好国と近隣国に対し、ミャンマーとその国民の最善の利益になるよう、さらに格段の努力を呼びかけます。アウン・サン・スー・チー氏をはじめ、すべての政治犯が釈放されないかぎり、来年の選挙を信頼できる、包括的なものとして受け入れるわけにはいきません。

私たちはガザでの流血を止めようと、努力を重ねました。それでも人々の苦難は続いています。正義と説明責任の問題に取り組む必要があります。私たちは二国家共存という解決策と、中東の包括的和平に向けた交渉を復活させねばなりません。私たちは、和平交渉再開に向けたオバマ米国大統領の取り組みを支持するとともに、四者協議の中でこの目標実現を目指していきます。

アフガニスタンでは困難な環境に直面しています。最近の選挙は深刻な弱点を露呈しました。それでも私たちは、これまでに前進が見られたこと、そして、この前進を今後の土台とできることを忘れるべきではありません。私たちは日が昇るまで、アフガニスタンの人々と長い夜を共にする決意でいます。私たちがこれらの人々を見放すことはありません。私たちはまた、パキスタンの人々に対する支持も誓います。

私たちは東ティモールやハイチ、シエラレオネ、ネパールで、大きな前進を遂げました。イラクでも静かな進展が見られるほか、キプロスでは新たな機会が開けました。これまでの実績を評価し、さらに歩を進める時がやってきたのです。

各国首脳の方々、皆様、

最後に皆様の周囲をご覧になってみてください。この総会が閉幕するまでに、国連事務局ビルの中は空っぽになります。職員は市内のあちこちに分散することになります。私たちの国連は、まったく新しい姿に生まれ変わるのです。私たちに共通の大きな望み…それは、この外観の刷新を内なる刷新の象徴とすることです。

私たちがより良い世界に向けた国連の強化をあれほど強調した理由も、まさにここにあります。私たちはDelivering as One UN(国連を一つにまとめ、実行力を発揮すること)において前進を遂げました。戦争から立ち直りつつある社会が再び紛争に陥ることのないよう、私たちは適切な「平和構築」を大きく進展させました。また、危機がさらに広範で大きな代償を伴う悲劇へと発展しないよう、調停と外交の手段の先鋭化も図りました。私たちは事務局にフィールド・サポート局を創設したほか、平和維持の機動力と実効性を高めるための「ニュー・ホライズンズ(New Horizons)」戦略も策定しているところです。

私たちはこの点で、加盟国からの強力な支援を必要としています。それは私たちが、危険な場所で勤務する勇気ある職員の安全確保に向け、強力な支援を行うのと同じことです。私たちが目指す理想を実現するために、あまりにも多くの職員の命が失われているのです。

各国大使の方々、
各国代表の方々、
各国首脳の方々、
皆様、

私は今年、氷に閉ざされた北極圏からモンゴルの草原地帯に至るまで、世界各地を訪れてきました。私はそこで、地球とそこに暮らす人々に対する気候変動の影響を目の当たりにしました。

コンゴ民主共和国では、兵士にレイプを受けた18歳の少女にお会いしました。彼女にとって国連は、新しい生活に対する希望そのものです。

トリニダード・トバゴからロンドン、ラクイラに至るまで、各地で開かれたサミットでは、特に声を大にして一つのことを主張してきました。

それは、私たち国連が声なき人々の声であり、盾を持たない人々の盾であるということです。

私たちが希望のない人々に真の希望を与え、そして、景気回復への曲がり角をしっかりと曲がりきるためには、すべての国々とすべての人々を取り組みの対象とせねばなりません。私たちが力を合わせれば、それは可能です。私たちはともにリスクを冒し、責任という負担を負い、未曾有の事態に立ち向かい、そして歴史的な偉業を成し遂げるために、この場に集まっているのです。今年も、そしてどの年も、そのことに変わりはありません。

なぜなら、 私たちこそが国連だからです。私たちこそが人類最大の希望だからです。そして、今が私たちの時なのです。

ご静聴いただき、ありがとうございました。

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