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国連腐敗防止条約に関する進展

2002年03月18日

 国連総会は間もなく、ある国際条約案の審議を行います。これは各国政府が腐敗と闘い、不法な送金を突き止める助けとなるものです。「開発金融国際会議」は、これに不可欠な政治的支援を提供することができます。

 世界のあらゆる国々で、腐敗は開発と経済実践の成功に対する第一の障害として認識されるようになっています。911日以降、マネー・ローンダリング、国際送金、および、「ブラック・マネー」あるいは「グレー・マネー」という密接に関連する諸問題に対する懸念が、新たな緊急性を帯びています。

 1996年、世界銀行のジェームス・ウォルフェンソン総裁は、「腐敗という害悪」との闘いを世銀の最優先課題に据えました。同年、腐敗対策に対する幅広い国際的支援は、画期的な総会決議(A/RES/51/191)として結実しました。この決議は各国に対し、国際金融取引の過程での公務員に対する贈賄を違法とし、このような支払いについての課税控除を認めないよう求めています。総会は同じ会期中に、枠組みとなる「公務員行動規準(Code of Conduct for Public Officials)」に対する支持を表明しました。

 20023月にメキシコのモンテレーで開催される開発金融国際会議の政府間準備会合では、この問題が再び浮上しました。腐敗に関する包括的で法的拘束力のある国際協定に向けた前進につき、幅広い支持が表明されたのです。

 国連総会はすでに、ウィーンを本部とする国連国際犯罪防止センターに対し、総会による国際条約の「射程と対象範囲」の策定を支援するよう指示を発し(決議55/61および55/188)、腐敗防止条約に関する作業に着手しています。総会はまた、同センターに対し、不正に国際送金された資金を本国に送還する手段を考慮するよう要請しています。

 20018月、犯罪防止センターは政府間開放型専門家グループ(Intergovernmental Open-ended Expert Group)の会合を主宰しました。専門家グループは、国連加盟国が2003年末までに、予防措置、および、犯罪としての罰則措置と救済措置を定める幅広い腐敗防止条約案を策定すべきだと勧告しました。専門家グループはさらに具体的に、司法管轄権、財産あるいは資金の押収、証人の保護、法人の責任、不法送金の送還および国際協力など、困難で複雑な問題に関する条項の想定も行っています。

 腐敗防止条約起草に関する総会アドホック委員会は、2002121日から22日にかけ、ウィーンで初会合を開き、条約案の作成作業に着手しました。委員会は6月、再びウィーンで会合を開く予定です。

条約の目的
 腐敗防止条約案の内容はまだ決まっていません。しかし、1999年の腐敗とその金融経路に関する国連専門家グループ会合(UN Expert Group Meeting on Corruption and its Financial Channels)では、潜在的な条項について合意を達成しうる分野がいくつか現れました。国連経済社会委員会からの委託で開催されたこの専門家会合は、腐敗による収益を追跡し、これに対処するための国際的努力に参加できるような規則を採択するよう、規制が行き届いていない金融センターを説得する必要性を強調しました。専門家グループは、国内レベルの銀行の守秘義務と税務規定が国際的な腐敗防止努力を妨げるべきではないと結論づけた上で、国際的に受け入れられた原則に基づく金融システムと金融活動の監督を強く求めました。さらに、金融機関には、その顧客の身元を正確に確認し、警戒を怠らず、疑わしい取引を届け出ることを義務づけるべきだとの提言も行われました。

 2002年初めに国連事務総長が提出した報告(E/CN.15/2002/3)によれば、腐敗指導者が不正に国外送金した資金を回収するための措置を講じるためには、一連の実際的困難に取り組む必要があると見られます。このような送金は概して巨大な額に上り、資金源、現在地、および、送還を受けるべき者を判断する上で、大きな不透明性が伴うからです。しかも、送還を求める政府は、一連の様々な法域、電子送金、および、その他高度なマネー・ローンダリング操作を経た資金を追跡するのに必要なノウハウも資源も備えていないことがあります。

現行の措置
 グローバルな規模の包括的腐敗防止条約は今のところありません。しかし、以下にまとめたように、関連の国際的・地域的努力は多く継続中です。(さらに詳しい状況については、テクニカル・ノートNo.2-文書A/AC.257/27/Add.2をご覧下さい。)

  • 国連越境組織犯罪防止条約UN Convention against Transnational Organized Crime)は200010月、イタリアのパレルモでの調印式により、加盟国による署名のために開放されました。この条約により、各国政府は、以下を重大犯罪(一般的に4年以上の懲役刑に値すると考えられる)として扱うことを義務づけられています。それらはすなわち、越境犯罪に関与する集団への参加、公務員、裁判官あるいは証人の買収あるいは脅迫、および、マネー・ローンダリング(対象の資金が犯罪行為に起因することが立証された場合)です。国際条約としてははじめて、企業が訴追の対象となり、厳しい経済的処罰を受ける可能性があります。条約にはまた、犯罪者引渡しの範囲を拡大し、容疑者の追跡と訴追に関する国際協力を強める措置も盛り込まれています。条約は40カ国の批准によって発効します。20021月現在、批准国は6カ国となっています。
  • マネー・ローンダリング対策規定は、1988年の麻薬および向精神薬の不正取引防止に関する国連条約UN Convention against Illicit Traffic in Narcotic Drugs and Psychotropic Substances)にも含まれています。(この条約は、話合いで合意が達成された場所に因み、ウィーン条約とも呼ばれています。)
  • 1997年、経済協力開発機構(OECD)は国際商取引における外国公務員への贈賄の防止に関する条約Convention on Combating Bribery of Foreign Public Officials in International Business Transactions)を採択しました。この法的拘束力を有する条約は、署名国に対し、賄賂の受け取りはもちろん、その申し出あるいは約束も国内法上の刑事犯罪として取り扱うこと、および、司法共助と犯罪者引渡しを促進することを義務づけています。このOECD条約は、原署名国34カ国のうち33カ国の署名を受け、1999年に発効しました。OECDの加盟国も非加盟国も条約に加入できますが、ほとんどの開発途上国は、国連のような普遍的構成を有する機関が制定した措置に従うことのほうを望んでいます。
  • OECD1990年、マネー・ローンダリングに関する金融活動作業部会Financial Action Task Force on Money Laundering)を設置しました。部分的にウィーン条約をたたき台とする作業部会の「40カ条勧告」は、顧客の本人確認や記録保存など、国内の法制度、銀行および金融機関向けの基準を設けています。国際協力のための指針も定められています。作業部会は2001年から2002年にかけ、その勧告を再検討中で、これを受けて勧告の修正が行われる予定です。

Published by United Nations Department of Public Information - DPI/2227/C - February 2000


 

グローバルな脱税の取締り

 グローバル化と電子商取引は、公正な徴税について数多くの困難な問題をもたらしました。

 20023月の「開発金融国際会議」の準備会合で、これら新たな課題がどのように取り扱われるかは、開発途上国がその経済を前進させ、蔓延する貧困を克服するために十分な資源を動員できるかどうかを判定する上で、重要な要素となるでしょう。

 インターネットを利用した事業、多国籍企業および国境を越えた合併吸収の増大は、税収に多くの影響を与えています。先進国の政府も開発途上国の政府も、電子商取引と瞬時の国際金融フローという目新しい世界で、税金の形態と率を定めることに苦心することが多くなっています。国連によれば、租税回避と脱税が増大する一方で、特に経済体制移行国と開発途上国では、政府が開発のための公共サービスと公共インフラの整備に追われているのが実情です。

 その他、グローバル化の時代に生じた問題としては、海外労働者の所得に対する課税、および、いわゆる「底辺への競争」に関する混乱と論争があげられます。「底辺への競争」とは、海外からの投資誘致を望む国々が、低い税率や一定期間の免税を認めることで互いに競争しようとして、結果的に相互のインセンティブを打ち消し合い、それぞれの政府の税収が減少することを指しています。また、徴税のメカニズムを強化し、グローバル化による抜け穴をふさごうとする動きは、マネー・ローンダリング、不法な送金、越境犯罪および国際テロを取り締まろうとする現在のグローバルな趨勢にも対応しています。

 ある国連報告(A/AC.257/add.1)によれば、これらの問題への対策に関し、多国間の機関あるいはフォーラムから、少なくとも10件の正式な提案がなされています。この国連報告は、20023月にメキシコのモンテレーで開催される開発金融国際会議FfD)の準備会合に対する意見表明として提出されたものです。

 これら提案のうち9つは、この1年間に行われました。その核心をなすのは、税務当局間の国際協力の重視です。こうした自発的な連携努力には、情報交換だけでなく、開発途上国の税制運営と徴税に対する技術援助も含まれることになるでしょう。

グローバルな税務ネットワーク
 世界銀行、国際通貨基金(IMF)、および、28の経済先進国が加盟する経済協力開発機構(OECD)のスタッフによる検討の結果、政府間の税務問題に関する対話を開き、最良慣行を広め、技術援助の戦略的重点を明らかにするための国際的努力を求める提案が生まれました。この提案はFfD準備委員会に提出されています。

 このネットワークは新たな機関を作り出すのではなく、世銀、IMFおよびOECDの間で情報と資源をプールしたものとなる予定です。開発途上国と経済体制移行国の観点も十分に取り入れるべきだとの主張にも配慮し、提案には、国連の関連主体およびその他の参加機関を作業に関与させる仕組みも盛り込まれています。さらに、このネットワークについて、普遍的な管理機構を定める提案も行われています。例えば、FfD準備委員会向けに作成された税務協力に関する国連のテクニカル・ペーパーでは、国連経済社会理事会が定期的にネットワークの活動を審査すべきだとの提案がなされています。

税務問題の国際協力に関する国連アドホック専門家グループ
 課税の国際的側面に関するほとんどの政府間協議は、限られた国々が参加する話合いの場で行われています。しかし、国連には、世界中から集められた専門家のグループが設けられています。国連加盟国から選ばれた主要な税務当局の代表はアドホック・グループを形成し、個人的な立場で活動しています。このグループは高水準のノウハウと比較的インフォーマルな性格を備えているため、権威的であると同時に、オープンで率直な討論がしやすくなっています。南北の国々、そしてすべての主要地域の国々が対等な立場で平等に参加する大規模な国際税務フォーラムとしては、これが唯一の存在です。このように、専門家グループは、国際的な視点から意見と提案を交換し、国際税務改革スキームへの開発途上国と経済体制移行国の参加を促進する上で、理想的な話合いの場となっているのです。

 専門家グループは、国連の公共経済・公共行政部(Division for Public Economics and Public Administration)内に設置されたその事務局を通じ、プロジェクトを実施していますが、その中には、税務協力に関するモデル二国間条約、および、税務条約の交渉に関するマニュアルの普及が含まれています。モデル条約は、各署名国の具体的なニーズに簡単に適応できるように策定されており、国連事務局によれば、800件を超える条約で採用されています。

 国際税務機関設立案
 ある独立金融専門家パネルは、国際税務機関(ITO)設立のアイデアを提示しました。このパネルは、国連のコフィー・アナン国連事務総長が任命し、メキシコのエルネスト・セディージョ元大統領が議長を務めています。

 政府間FfD協議への独自の意見表明として提出された20016月の報告で、セディージョ・パネルは新しい機関設立の検討を提案しました。ITOが果たしうる役割としては、技術援助の提供、国際的課税基準の策定に関する話合いの場の提供、IMFによる各国のマクロ経済政策の審査と同様の税務動向に対する監視の維持、多国籍企業誘致のための望ましくない税務競争の抑制、および、税務問題に関する国際紛争の調停があげられています。パネル・メンバーの中には、このような機関が、多国籍企業に対する合算課税方式に関する国際合意の取り付け、および、国外移住者からの公平な徴税原則の確立も取り扱えるのではないかとする意見もあります。この提案はFfD準備委員会に提出されましたが、近い将来に実現可能なものとしては賛同を得られませんでした。

FfD協議
 モンテレー会議前の最後のFfD準備委員会会合で、各国政府は、各国当局および多角的機関間の国際税務協力、および、対話と交流を行う普遍的な政府間ネットワークへの参加を求める案文を協議しました。このネットワークは、開発途上国と経済体制移行国のニーズを特に重視するものです。すなわち、税務問題に関する国際協力強化のための仕組みは完全にはでき上がっていないものの、各国政府の税務基盤を強化し、その開発金融を支援することには大きな関心が示されたと言えます。

Published by United Nations Department of Public Information - DPI/2227/E - February 2000

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