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「国際婦人デー(3月8日)」に寄せるメッセージ
アナン国連事務総長
女性の意思決定参加に対する障壁除去の必要性を強調

プレスリリース 00/19 2000年03月07日

 21世紀最初となる今年の国際婦人デーは、平和のために団結する女性をテーマにしています。このテーマは、国連の2つの重大な任務を結びつけるものです。国連憲章は、国連という組織が、将来の世代を戦争の惨禍から救うために創設されたことを記しています。憲章はまた、男女同権を宣言しています。私たちはその両方を達成しなければなりません。
 その幕を閉じたばかりの20世紀においては、大規模な国家間戦争の時代が頂点に達し、そして後退し、代わって民族紛争および国内紛争の時代が到来しました。今日の小規模な戦争は、旧来の大規模な戦争に劣らない数の死者をだしています。小型兵器は1度に1人しか殺せないかもしれませんが、それでも殺戮兵器であることには変わりありません。紛争がもっとも起こってはいけない社会で発生し、もっとも罪のない人々に犠牲を強い、もっとも無防備な人々に最大の被害をもたらすことが、余りにも多くなっています。一般市民は戦争の主要な標的となっています。そして、レイプ、強制立ち退き、食糧・医療に対する権利の否定など、その負担は、女性により大きくのしかかっています。
 しかし、女性は紛争の代償をよく知っているため、男性よりもその防止あるいは解決に適していることも多いのです。社会が崩壊する際には、女性は、人々が生活を続けていくうえで重要な役割を果たします。民族間の緊張が紛争を発生させたり、悪化させたりするとき、女性は障壁よりも架け橋をつくる傾向にあります。戦争と平和の影響と意味合いを考えるとき、女性は自分自身のことよりも、子どもたちとその未来を第一に考えるのです。
 私たちは現在、絶え間なく変化が起っている新しい時代に生きていますが、女性の強さは、人類の誕生以来のものです。教育や伝統を通じて、世代から世代へ、女性たちは平和の文化を伝えてきました。その昔、カフカス地域においては、女性がヘッドスカーフを投げ入れたら、対立する紛争当事者は戦いをやめるのが習わしでした。私の出身大陸であるアフリカにおいては、たいていの場合、コミュニティー内部あるいは異なるコミュニティー間において、平和的共存のために人間として身につけることが必要な基礎的技術や価値観を子どもたちに教え込むのは、母親や叔母、あるいは祖母でした。
 紛争によって荒廃したいくつかの社会においては、女性たちは、紛争当事者間の仲介者として行動し、共通の土台をみつけるための手段を模索してきました。女性たちは難民キャンプに入り、避難している女性や子どもたちを支援してきました。女性たちは、戦う男たちの恥辱に勇敢に立ち向かい、その不信を克服し、最後には、平和の願いを実現させてきました。
 女性たちは、委員会、女性団体、非政府機関および教会団体を組織して、緊張を緩和し、男性たちに和平を受け入れるよう説得することにより、国連の平和維持要員にかけがえのない支援を提供しています。国連で働く私たちは、そのことを直にこの目で見ており、よく知っています。このような理由もあり、私たちは国連の平和維持および平和創造活動により多くの女性を採用し、私たちの活動すべてにおいて、ジェンダー問題の認識を高めようと、特別の努力を払っているところです。アフガニスタン、コソボおよび東ティモールを含め、いくつかの派遣団は、ジェンダー問題を担当する文民ユニットを擁するようになっています。私たちはさらに努力を進め、現地と本部の双方で、より多くの有能な女性を平和活動に採用していく所存です。もう一度、私は加盟国に対し、国連に派遣する部隊に有能な女性を含めるとともに、あらゆるレベルの国連職員候補として、有能な女性を指名するよう呼びかけます。
 国連の各機関は毎日、難民のケアを行い、武力紛争における女性の権利に関する法的規準を定めることで、もっとも弱い立場にある女性の援助に努めています。戦災国には特別のミッションを派遣しています。医療を施し、心的外傷を受けた人々を援助しています。銃声が止んだ後には、戦災国の女性と協力し、男女双方が自らの国家と社会を再建する手助けを行っています。
 私たちは、開発なしに恒久的平和はありえないことを承知しています。私たちはまた、女性が十分な役割を果たさなければ、開発はありえないことも承知しています。そのためには、女性の意思決定参加に対する障害を除去し、土地へのアクセスを与えなければなりません。女性とその家族の安全を確保しなければなりません。また、女性が人権と政治的権利を完全に享受できるようにしなければなりません。国連は、地域的にも国際的にも、政府と市民社会のパートナーと手を携え、これらの目標の達成に努めているのです。
 これら目標の多くは5年前、北京の第4回世界女性会議において、参集した各国政府が採択したものです。今年6月には、その実施状況の再検討を行う特別総会が開かれます。北京綱領は、紛争時における女性とその人権の保護を求めました。また、紛争解決にいたるさまざまな意思決定において、女性がより大きな役割を果たすこと、および、より多くの紛争を非暴力的な方法で解決することも求められました。私たちすべてに対し、平和の文化への道を開くことが要請されているのです。
 この平和の文化が時代を支配するときが来たと信じます。なぜなら、今日の世界においては、一国に影響を及ぼすことによって、私たちすべてが影響を受けるからです。私たちを人間として定義づけるものは、人種や信条でもなければ、地理的な条件でもありません。私たちが生きるうえで目的や内容を与えてくれるのは、私たちの子どもたちや孫たちが恐怖や欠乏から解放され、尊厳のある生活を送ることが可能になるようにとの願いです。まさに、それこそ、私たちすべてが共有するものです。
 私たちの努力を結束させ、これらの誓いを実現していきましょう。各地の女性の努力を生かして、将来の世代のために平和を達成しましょう。平和のために団結する女性の力を借りていこうではありませんか。