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「暴力的過激主義対策サミット」での 潘基文(パン・ギムン)国連事務総長挨拶 (ワシントンDC、2015年2月19日)

プレスリリース 15-013-J 2015年02月27日

©UN Photo/Eskinder Debebe

©UN Photo/Eskinder Debebe

暴力的過激主義に関し、重要な会議を開催していただいたオバマ米大統領とケリー米国務長官に感謝いたします。お二人のリーダーシップと強い決意、そして雄弁な演説は、私たちが暴力的な過激主義とテロリズムに打ち勝つために力を合わせ、これまでの取り組みをどのように積み重ねていけるのかについて話し合うためにふさわしい道のりを示しました。

問題を拡大するのではなく解決する方向で、この深刻な課題に取り組むことは、21世紀に人類が直面する最大の試練かもしれません。

明確にしておきたいのは、ダーイシュやボコ・ハラムを含む新世代の越境テロ集団の台頭は、国際の平和と安全にとって重大な脅威であるということです。

これら過激派は、私たちを二極化させ、恐怖に陥れ、挑発し、分裂させるため、斬首や火刑、残忍な映像といった形で、意図的な「衝撃と畏怖」戦略を追求しています。その犠牲者は、人類それ自体と同じくらい多岐に及びます。

しかし、犠牲者の大半が、大きな混乱と苦難に晒されたイスラム教徒であるという事実は、認識しておきましょう。

女性と女児は、レイプや拉致、強制結婚、性的奴隷制その他の言語に絶する蛮行をはじめ、恐ろしい組織的な虐待を受けています。

いかなる理念も不満も、このような犯罪を正当化することはできません。私は、テロ集団に打ち勝つための断固とした政治的意志を示している加盟国を称賛します。私たちはこの脅威を無力化するために、全力を尽くさねばなりません。それは、決定的かつ具体的な対策を講じることだけでなく、落とし穴に気を付けることも意味します。

私たちの長年にわたる経験は、短絡的な政策やリーダーシップの破綻、人間の尊厳と人権に対するまったくの無関心が、まさに私たちが支援対象としている人々の間に、大きな苛立ちと怒りを生むことを証明しています。

私たちの道徳的指針を捨ててしまったのでは、決して前途は開けません。

私たちには冷静な頭が必要です。常識も必要です。恐怖の虜になってはなりません。

皆様、

私はこの考えから、人々を守り、人間の尊厳を堅持するための私たちに共通の取り組みに関し、4つの必須事項を考えています。

第1に、暴力的過激主義を防ぐためには、その根源に取り組むことが必要です。過激主義の背景にある動機を探ることは、極めて難しい作業です。

それでも私たちは、有害なイデオロギーが自然に湧いて出てくるわけではないことを知っています。抑圧や腐敗、不正は、憎しみを生む温床です。

過激派のリーダーは、疎外感を悪い方向へと募らせます。そして、犯罪者やギャング、殺し屋として、自ら標榜すると主張する信条から、最もかけ離れた偽善者になっていくのです。

ところが、彼らは仕事が無かったり、生まれた場所に帰属意識さえ持てなかったりして、不満を抱える若者を餌食にします。そして、ソーシャルメディアを活用し、同調者を増やし、恐怖をばら撒いているのです。

過激派には、憎悪を育てる戦略があります。私たちには、調和や実質的な統合、そして平和を育む包括的な戦略が必要です。

第2に、暴力的過激主義の予防は、人権の推進と表裏一体をなしています。

まさに私たちが講じる対策それ自体が、過激派が仲間を増やすために最も効果的な手段となっている現実を、私たちは何度も目にしてきました。対テロ戦略が適正手続きの基本的要素や、法の支配の尊重を欠くことが、あまりにも多くなっています。

テロリズムの包括的定義はしばしば、反体制派や市民組織、人権擁護者の正当な行動を犯罪化するために利用されています。政府はテロや過激主義との闘いを、自らに対する批判者を攻撃する口実として用いるべきではありません。

過激派は意図的に、このような過剰反応を作り出そうとしています。私たちがその罠にはまってはなりません。

第3に、暴力的過激主義を防ぐためには、総合的なアプローチが必要です。

軍事作戦は、実質的な脅威に立ち向かううえで欠かせません。しかし、銃弾が特効薬となるわけではありません。

ミサイルでテロリストを殺すことはできます。しかし、テロリズムを殺すのは、グッド・ガバナンス(良い統治)です。私たちは、ミサイルがテロリストに効いても、テロリズムに効くのはグッド・ガバナンスであることを忘れてはならないのです。

人権、説明責任のある制度、サービスの公平な提供、政治参加 ― これらはいずれも、私たちが使える最も強力な武器です。

私たちはまた、子どもたちに思いやり、多様性、共感の大切さを教えなければなりません。学校でも家庭でも、教育は将来の世代の心をつかむ闘いに勝つうえで、決定的な役割を果たすからです。

第4に、暴力的過激主義を防ぐことは、グローバルな課題です。

暴力的過激主義は、南北問題でも東西問題でもありません。特定の地域や宗教に限った問題でもありません。それは国境を越え、全世界に広がっています。

ケリー長官の発言にもありましたが、一つの国や組織が単独でテロリズムや過激主義に打ち勝つことはできません。地域・国際機関や政治、宗教、学界、市民社会のリーダーとともに、すべての国が手を携え、国際人権・人道法を尊重する多面的な対策を練るべきなのです。

加盟国が2006年、コンセンサスにより採択した「国連グローバル対テロ戦略」は、包括的な枠組みを提供しています。昨年9月、オバマ大統領が議長を務める会合で、国連憲章第7条に基づき採択された安全保障決議2178は、私たちの集団的な取り組みをさらに後押ししました。

国連は、政府の間で能力を強化し、人々の間に橋を架けるための作業を進めているところです。

確実に言えるのは、リーダーがコミュニティに対して孤立や忌避を呼びかければ、過激派の思うつぼだということです。

私はまた、反移民勢力と過激派がお互いを餌にしながら、不寛容が増幅するという死のスパイラルが生まれている現状も憂慮しています。

国際社会は、その集団的な英知とベスト・プラクティスを結集しなければなりません。

国連システムは、暴力的過激主義の防止を図る包括的なマルチステークホルダー行動計画の策定に取りかかろうとしていますが、この計画は今年のうちに、国連総会で全加盟国に提示される予定です。

各国代表の方々、

皆様、

このような計画の第一歩として、国連事務総長である私と、国連総会議長は「国連文明の同盟」との協力により、全世界の宗教指導者が一堂に会し、相互の理解と和解を促進するための特別イベントを数カ月以内に開催する予定です。私たちは、国連という場を活用し、寛容、連帯、和解の強力なメッセージを送るつもりです。

ケリー長官、

閣僚の方々、

各国代表の方々、

皆様、

現代世界は苦痛に満ちています。学校や職場で、罪のない人々が射殺されています。女児が残虐な拉致と虐待を受けています。爆弾テロで毎日、人命が失われています。

こうした現実には、圧倒されるばかりです。誠に痛ましい限りです。

同時に、私は今のような試練の時期に、勇気と連帯を示す行動がしばしば見られることを心強く感じています。

パリの食料品店で、イスラム教徒の店員がユダヤ人の買物客を安全な場所に案内したり、中央アフリカ共和国で、キリスト教徒が虐殺を逃れてきたイスラム教徒を大聖堂に迎え入れたり、コペンハーゲンからチャペルヒルに至るまで、数千人が恐ろしい流血事件の犠牲者との連帯を示すデモ行進に参加したりした話には、本当に勇気づけられました。

私たちには、この心が必要です。それこそが、私たちの将来を左右するからです。

そして私は、テロリズムと過激主義を克服しようとする皆様の強力なリーダーシップと政治的意志を頼りにしています。皆様もぜひ、国連を頼りにしてください。

ご清聴ありがとうございました。