国際寛容デー(11月16日)に寄せる
コフィー・アナン国連事務総長メッセージ
プレスリリース 02/097-J 2002年11月15日
「国際寛容デー」は、人類にとって最も重要な徳の一つに世界の関心を向けるものです。寛容は、服従、自己満足、無頓着などと混同されるべきではありません。寛容とは、人間の多様性に積極的かつ前向きに関わることであり、この多民族・多文化社会において民主主義の根本原理のカギとなるものです。
しかし依然として、不寛容が世界中で何百万もの人々の暮らしを荒廃させています。21世紀は始まったばかりですが、私たちはすでに、不寛容がいかにすさまじい暴力の形となって表われ、世界中で死や苦悩を引き起こしているかを目撃しています。だからこそ、不寛容は国連で最も議論を必要とするテーマとなっているのです。
不寛容は日々の生活に見られるものであり、他者の感情、権利、尊厳に対する無神経さにより人を傷つけるような行動や態度として表われます。私たち一人ひとりが、毎日の暮らしの中で寛容の精神を推し進めなければなりません。草の根レベルで不寛容や排除と戦うことが、世界的不寛容に打ち勝つ唯一の方法です。
他の多くの不合理な態度と同様、不寛容はしばしば恐怖に根ざしています。未知のもの、自分と違うもの、他者に対する恐怖です。このような恐怖の根元には、無知と教育の欠如があります。そこから偏見、憎しみ、差別が育つのです。教育は、不寛容を予防する最も効果的な手段です。特に子どもたちにとっては、なぜ人権と人間の尊厳と人間の多様性の尊重が切り離せないのか理解するためにも、寛容について学ぶことが絶対必要です。教育自体が不寛容のウイルスに冒されていてはなりません。教育は、人々に自分たちの権利と自由が何であるか、どのように尊重されるべきかを教え、また他人が権利と自由を謳歌することを守りたいという望みを抱かせるようにするものでなければなりません。
もし人間という家族がともに平和に暮らしたいと願うのなら、私たちは互いを知り、受け入れなければなりません。寛容を推し進めようとするいかなる努力も、その中心に人と人、異なる文化、民族の間の開かれた対話が必要です。対話なくしては、文化的多様性は脅かされます。対話なくしては、社会のつながりそのものが危機に瀕します。対話なくして平和はありえません。
この「国際寛容デー」に際し、世界的に尊重すべき原則を私たちそれぞれが積極的に実践しましょう。寛容のための努力が私たち一人ひとりから始まるのだということを認識しようではありませんか。