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国際高齢者デー(10月1日)に寄せる
ジュリアン・R・ハント総会議長メッセージ

プレスリリース 03/104-J 2003年10月14日

~高齢者は大切な資源~

 今日のグローバル社会が抱える課題を認識することは重要です。しかし、それ以上に重要なのは、さらに一歩進んで、これらの課題に有効に取り組むための行動を起こすことです。世界中で長生きをする人々の数が急速に増えていることも、こうした課題のひとつです。世界各地で人間の寿命が延びたことにより、高齢者に関する諸問題は世界全体で取り組まなければならない課題となったのです。

 きょう、世界中の人々とともに13回目の国際高齢者デーを迎えるにあたり、私たちそれぞれの国々、そして世界全体に対して、高齢化問題に包括的な取り組みを行うことを余儀なくさせる事実が突きつけられています。昨年、60歳以上の高齢者は6億2,900万人に達したと見られていますが、これは世界人口の10人に1人に当たります。2050年までには、この数字が5人に1人となり、さらに2150年までには3人に1人が60歳以上になると見られています。世界銀行の推計によれば、高齢者の70%程度は現在、開発途上国に暮らしています。

 これほど大勢の人々を開発プロセスから置き去りにしておいて、国家が発展することなどできるでしょうか。私はこの理由から、第13回国際高齢者デーのテーマ「高齢者-開発のための新たな力」が本質的な意味を有し、かつ、時宜にかなったものであると考えます。私は特に、高齢化に関する非政府委員会の取り組みを称えたいと思います。同委員会は、「高齢化のメインストリーミング:高齢化に関するマドリード行動計画とミレニアム開発目標との関連づけ」という補完的テーマを掲げ、高齢者に関連する問題について、この不可欠なアプローチを採用したからです。

 このようなテーマは、高齢者によるこれまでの功績だけでなく、高齢者の持つ発展の可能性にも着目しています。しかし、私たちは、特に開発途上国にとって、高齢化が大きな課題を提起していることにも気づいています。途上国の多くは、債務や貧困といった深刻な問題に苦しんでいるだけでなく、グローバル化と貿易自由化がもたらす不確実性にも直面しています。こうして長寿を祝っている間にも、世界には紛争、戦争、病気などにより、平均寿命が縮んでいる国も多くあるということを、私たちは改めて思い知らされるのです。高齢者は社会の中でも特に弱い存在であり、このような破壊的影響から真っ先に被害を受けることになります。

 私たちには、高齢者を開発のプロセスに取り込み、高齢者の関心問題への総合的かつ継続的取り組みを確保するための基盤となる国際的な枠組みがあります。1999年の「高齢者のための国連原則」は自立、参加、介護、自己実現および尊厳を、高齢者に関する取り組みの中心的要素として掲げています。「高齢化に関するマドリード国際行動計画」は、高齢者が社会にもたらすことのできる恩恵を認識し、高齢化を開発枠組みと貧困削減戦略の中心的課題とするよう呼びかけています。社会のその他集団の場合と同じく、高齢者も、開発を促進してその恩恵を享受するための決定と行動に関わるべきだというのが、行動計画の考え方です。

 私たちはきょう、社会、経済そして文化の発展に不可欠な貢献のできる大切な資源として、高齢者と手を取り合ってゆくという決意を新たにしようではありませんか。高齢者の知恵、経験、そしてコミュニティや社会を築き上げてゆく技能を十分に活用することを約束しようではありませんか。そして、より幅広い国際社会が国連憲章に掲げられた目標を実現するためには、高齢者の貢献が必要だということを認識しようではありませんか。

 きょうはまた、高齢者に対する私たちの約束を新たにする機会でもあります。その約束とは、高齢者の健康と安寧を特に重視すること、高齢化問題の解決に向けた公的支援を行うこと、私たちが定めた目標を達成するために政府と国際機関、および、市民社会と個人との強靭なパートナーシップを作り上げること、そして、高齢化の分野における行動志向型プログラムに十分な資源を提供することに他なりません。「ミレニアム開発目標」をはじめとする国連の開発課題の充足に向けて歩を進める中で、とりわけ、「マドリード行動計画」の実施を重要な優先事項としようではありませんか。

 長寿を祝う日であるきょう、私は全世界の高齢者の仲間たちに敬意を表したいと思います。