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2004年世界水の日(3月22日)に寄せる
コフィー・アナン国連事務総長のメッセージ

プレスリリース 04/023-J 2004年03月23日

~水と災害:正しい情報と備えを~

今年の「世界水の日」のテーマは「水と災害:正しい情報と備えを」です。洪水、干ばつ、ハリケーン、台風、サイクロンなどの水関連の災害は、多くの人命と財産を奪い、数百万人の人々に被害を及ぼし、甚大な経済的損失をもたらします。貧困層と弱者層は依然として、もっとも大きな被害を受けていますが、2002年に中欧で見られたように、先進国にも大きな被害が及ぶ可能性があります。これをいくら天災で済まそうとしても、人間の行為が危険と脆弱さを増大させる上で大きな役割を演じていることは、歴然たる事実です。ましてや、石油や毒物の流出事故などの紛れもない人災が、私たちの貴重な水資源に大きな損害を与えていることは、言うまでもありません。

過去の文明には、水に関連する理由から苦難に陥ったり、さらには崩壊したりしたものもありますが、近代社会はこれに比べて明らかな利点を備えています。私たちには知識を有しているだけでなく、その知識を世界の津々浦々にまで広める能力があるからです。また、飛躍的な科学の進歩により、気象予報や農業経営、天然資源管理が大きく向上しただけでなく、災害を予防し、災害に備え、さらにはこれを管理する手段も発達しています。技術革新は今後も、私たちの取り組みを支える主要な役割を果たすことでしょう。しかし、災害に対する脆さを克服し、危険が手におえない災害へと発展しないようにするためには、合理的で正しい情報に基づく政治的、社会的、文化的な対応、さらには、災害管理の各段階への一般市民の参加が不可欠です。

今年の世界水の日を記念して、『洪水による被害の軽減ガイドライン(Guidelines for reducing flood losses)』も刊行されることになりました。このガイドラインは国連経済社会局(DESA)、米国海洋大気庁(NOAA)、国連国際防災戦略(UNISDR)、国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)および世界気象機関(WMO)による共同の取り組みとして、スイス開発協力庁の協力を得て作成されたもので、政策決定者にとってのマニュアルとして、一連の選択肢を提示しています。また、2005年1月に兵庫県の神戸で開催予定の「世界防災会議」での討議に向けたたたき台としても作成されており、すべての関係者に有効な資料です。

国際社会は、水関連の防災問題から一歩進んで、グローバルな水問題に対処するその他の措置も講じています。各国首脳は2000年、公平なアクセスと十分な供給を促進する水管理戦略を策定し、水資源の持続不可能な利用に歯止めをかけることを約束しました。2002年の「持続可能な開発に関する世界サミット」では、世界の指導者が、2005年までに統合的な水資源管理計画と水効率改善計画を作成することで合意しました。

目下の世界的な水関連の課題に対しては、称賛に値する国際的な対応も多く見られますが、ほとんどの取り組みは不十分なものに終わっています。安全な飲み水を物理的あるいは財政上の問題があって利用できない人々の割合を2015年までに半減させるという「ミレニアム開発目標(MDGs)」を達成するためには、一日あたり27万ヵ所に水道をつなぐ必要があります。衛生設備に関する目標の達成は、これよりもさらに困難です。だからと言って、多くの政府と市民社会の団体による献身的な努力が無意味だというのではありません。これまでのやり方から大きく飛躍することが急務なのです。

このような見地から、私は「水と衛生に関する諮問委員会(Advisory Board on Water and Sanitation)」の設置を決定しました。諮問委員会には、委員長の橋本龍太郎元総理をはじめ、幅広い有識者や技術専門家のほか、人々の意識を高め、政府を動かし、メディア、民間企業および市民社会との協力を図る上で経験豊富な方々が委員として参加しています。私は諮問委員会に対し、委員の独特の専門知識を活かして、水と衛生の問題に対する意識の向上、水・衛生設備プロジェクトの資金調達支援、および新たなパートナーシップの促進を図るよう求めました。

貧困を根絶し、持続可能な開発を達成しようという私たちの希望の中で、水は中心的な存在です。「世界水の日」を迎えるにあたり、水の問題に今後とも然るべき関心を払ってゆくという決意を新たにしようではありませんか。