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「気候野心サミット」に関するブリーフィング アミーナ・J・モハメッド国連副事務総長が加盟国に向けて (ニューヨーク、2023年6月9日)

プレスリリース 23-036-J 2023年06月21日

各国代表の方々、皆様、

アントニオ・グテーレス国連事務総長の「気候野心サミット」について本日ご説明できることを喜ばしく思います。同サミットは、世界が非常に厳しい現実に直面する中で開催されることになります。

現在、気候に関するほぼすべての指標は、現状が望ましくない方向へと向かっていることを示しています。

温室効果ガスの排出量は、過去最大を記録し、

資金拠出の約束は、果たされないままです。

そして、世界気象機関(WMO)は、今後5年間の気温が観測史上、最も高くなる見込みだと警告しています。

当然のことながら、これは脆弱な立場に置かれたコミュニティーに最も大きな打撃を与えることになります。これらのコミュニティーの人々は今日、干ばつ、火災、洪水によって住処を追われ、最も苦しんでいます。

そして、ニューヨークでさえも、カナダでの森林火災の影響を目の当たりにしています。

「カナダ気候変動報告(CCPR)」は、人為起源の気候変動の結果として、カナダで熱波や極端な高温、森林火災のリスクが高まるだろうと強調しました。

今春、カナダでは平年よりも気温が高く空気が乾燥し、先週、ケベックでは異例の火災気象条件となりました。

これらすべてが、気温が産業革命以前と比べて1.2上昇しただけで起きているのです。

こうした厳しい状況下でも、希望はあります。

1つ目は、進捗を示すいくつかの兆候が見られることです。

国際エネルギー機関(IEA)は、太陽光発電への投資が初めて石油生産への投資を上回ることになると発表しましたが、これは祝うべき画期的な出来事です。

2つ目は、世界全体の気温上昇を産業革命以前と比べて1.5℃に抑え、気候変動の最悪の事態を回避することは、依然として可能であるということです。ただし、事務総長の言葉を借りれば、それは私たちが気候行動において飛躍的進歩を遂げた場合にのみ可能です。

これが、3月に発表された気候変動に関する政府間パネル(IPCC)統合報告書の明確なメッセージです。

この報告書を受けて、事務総長は「アクセラレーション・アジェンダ」を提唱しました。

これは各国、特にG20諸国に対して、気候行動の加速に協力するよう求めるものです。

「アクセラレーション・アジェンダ」はこれらの国々に対し、明確に定義された具体的な行動を取り、先進国は2040年にできるだけ近い時期に、新興国は2050年にできるだけ近い時期に、排出量正味ゼロを達成するよう求めています。

また、気候正義のより迅速な実現を呼びかけています。

開発途上国と脆弱な立場に置かれた国々が気候に関する行動を取る際に必要な資金とテクノロジーにアクセスできるよう、先進国が協力して取り組む必要があります。

こうしたことを背景に、「気候野心サミット」が国連総会ハイレベル・ウィーク中の920日に開催されます。

同サミットは、各国政府、企業、金融機関、地方自治体、市民社会における「ファースト・ムーバーおよびドゥーワー」(先行者および実行者)が、事務総長による気候行動「加速」の呼びかけにどう応じるのかを私たちが確認する機会です。

このサミットは、1.5の約束を守る上で必要な、かつてない水準の加速と協力へと私たちの注意を向けることを目指しています。

また、国境や社会を越えた協力が、いかに排出量の多い部門で脱炭素化を加速でき、いかに気候変動にレジリエントな(強靭な)社会を構築できるかを示すことを目標としています。

このサミットは、野心、信頼、実施という、3つの個別の、しかし相互に関連する軌道を中心に構想されています。さらに、それぞれの進捗状況を明らかにする狙いもあります。

野心の軌道の先にあるのは、各国政府、とりわけ主要排出国の政府であり、これらの国々が具体的な行動と提案を発表し、事務総長の「アクセラレーション・アジェンダ」に応えるよう求めています。

例えば、現在の「自国が決定する貢献(NDC)」に関する野心の引き上げ。

排出量正味ゼロ目標の加速。

経済協力開発機構(OECD)諸国は2030年までに、その他すべての国々は2040年までに、新規の石炭利用の停止と段階的な廃止を約束する信頼できるエネルギー移行計画を提示すること。2050年に世界の排出量正味ゼロを目指す目標に沿って、既存の石油・ガス生産を世界中で段階的に減らすこと。

より野心的な再生可能エネルギーの目標を設定すること。

資金面での期待に応えること、つまり、「緑の気候基金」への誓約を行い、開発途上国に約束した気候変動対策資金1,000億ドルの拠出を確約すること。

信頼の軌道は、主に企業、都市、地域、金融機関のリーダーたちに向けられています。

事務総長は、国連の信頼性基準に完全に沿った移行計画を提示するよう、彼らに求めました。

この基準は昨年11月に、事務総長の「非国家主体の排出量正味ゼロ・コミットメントに関するハイレベル専門家グループ」によって示されたものです。

ビジネスモデルを完全に見直す勇気を持ったリーダーを非難する人々もいますが、国連は、こうしたリーダーたちの取り組みを誇らしく紹介しています。

最後に、実施の軌道です。これは既存のパートナーシップと今後実現するパートナーシップの両方を示すものであり、エネルギーや輸送といった排出量が多い部門での脱炭素化の加速化、あるいは早期警報システムや適応資金の提供といった分野での気候正義の進展をもたらします。

各国政府、国際機関、地域機関、金融機関、民間セクター、市民社会のリーダーたちは、実施に向けた連帯を示すべく招かれています。それらは、それぞれの責任分担と計画的な進め方を明確に示すものでなければなりません。

これら3つの道筋について、セルウィン・ハート国連事務総長特別顧問(気候行動および公正な移行担当)がより詳細な説明を行います。

各国代表の方々、皆様、

国連は、各国の代表、民間セクター、市民社会団体が、信頼のおける野心的な行動と約束を携えて「気候野心サミット」に参加してくださることを望み、期待しています。

そうすれば、気候野心サミットが開発途上国と先進国間の信頼を再構築する助けとなるでしょう。

世界が切に必要としている、気候行動の加速を推進できるのです。

「グローバル・ストックテイク(GTS)」が「国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)」で終了するのに伴って、気候野心サミットは今後5年間に必要な気候行動に対する私たちの理解を形作ることもできます。

また、気候野心サミットは、SDGサミットの直後に開催されることもあって、気候に関する行動がSDGs達成の鍵であることを私たちに思い起こさせてくれます。

私たちは、この極めて重要な時期において、「気候野心サミット」が人々と地球のためにその役割を果たせるよう、すべての国の政府およびステークホルダーと協力する機会を心待ちにしています。

ありがとうございました。

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原文(English)はこちらをご覧ください。