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国連防災世界会議 開会の辞
ヤン・エーゲラン国連人道問題担当事務次長

プレスリリース 05/006-J 2005年01月18日

天皇、皇后両陛下
皆様

私たちはつい先日、現代史上で最大級の自然災害に見舞われたばかりです。この悲劇の規模を完全に把握することはできないかもしれません。津波で命を失われた方々を悼むとともに、勇敢な対応を続ける現地の、そして国際的な救援活動員の方々に敬意を表したいと思います。

死者に敬意を示す最善の方法は、生きている者を守ることに他なりません。私たちはきょう、ここに集い、新たな緊迫感と活力をもって、この課題に取り組むことになります。言葉を実行に移し、善意を具体的行動で示さなければならないことは明らかです。日本の有名なことわざからも、「実行力なき洞察力は白日夢、洞察力なき実行力は悪夢」であることがわかります。

皆様、コミュニティをより安全にするためには、手をこまねいている時間はありません。地震、津波、洪水、イナゴの大群、干ばつなどの災害は毎年、数千万人に壊滅的な被害を及ぼしています。こうした自然の脅威に加えて、地球温暖化や環境破壊、無秩序な都市化など、私たち自身が作り出した脅威もあります。

現在、数百万人が暮らす過密で無計画な巨大都市の中には、基礎的なインフラがほとんど備わっていないものがあります。さらに、地震多発地帯や無防備な沿岸地帯に暮らす人々も数百万人に上ります。ここでも、もっとも被害を受けやすいのは貧しい人々です。災害に耐えたり、災害から立ち直ったりするための資源がないからです。

津波の悲劇が物語るとおり、局地的災害の影響が全世界に及ぶこともあります。また、グローバルなリスクには真の意味でグローバルな解決策が必要なことも、改めて浮き彫りにされました。

防災は追加的なコストではなく、私たちに共通の未来に不可欠な投資です。すべての投資がそうであるように、今の時点でコストを支払わなければ、将来的に大きな報酬を得ることはできません。しかし、防災への投資の利益は単に金額で計られるわけではありません。世界各地で救われる人命を考えることが、もっとも重要です。事実、私たちに共通の未来に対する投資からは、私たち全員が利益を得るのです。

「防災への取り組みに資金を出す余裕が現在ない」という疑問があるでしょう。私は逆に「そうしない余裕はあるのか」と冷静に問いたいと思います。防災への取り組みは、機会や投資であるだけでなく、道徳的な義務でもあるのです。

今週、私たちは以下のような3つの分野での行動を取らなければなりません。

第一に、私は会議に対し「行動枠組み」案の採択を求めます。しかしそれは、ローカル、グローバルの両レベルで災害への抵抗力をつけるために、期限の前倒しと明確な指標を伴うものとすべきです。この行動枠組みを提言するにあたり、私はISDR(国連国際防災戦略)とそのグローバル・ネットワークが行った作業を評価したいと思います。これらの機関に対しては、集団的な取り組みをより大胆に推し進めるよう促します。ただし、こうした取り組みは実地の成果をあげるとともに、厳格な説明責任の基準に見合うものとしなければなりません。

さらに具体的に、今後10年間で達成すべき行動目標についてお話ししたいと思います。

災害に見舞われやすい国々はすべて、明確で目標志向の防災政策と行動計画を策定し、その基盤として、特定の機構と資源を割り当てるべきです。全世界のあらゆる災害多発地域で、脆弱なコミュニティを対象とした人間中心型の早期警報システムを導入すべきです。世界各地の子どもは、基礎的なライフスキル教育の一環として、自然災害を念頭に、より安全に暮らすことを学ぶべきです。全世界のコミュニティで、災害のリスクに取り組み、自分自身とその財産を保護するための訓練を改善し、災害に対する備えを固めるべきです。病院や保健所、学校については、地震や台風、そして低気圧やその他の危険にも耐えられるよう建物の新築や改築、改修を行うことにより、これらを避難場所に指定すべきです。貧しい人々を置き去りにしてはなりません。彼らが、独創的な官民協力を通じ、災害保険や再保険など、有意義な金融リスク分担の手段を利用できるようにすべきです。さらに、より安価なリスク軽減技術の開発と提唱に関する研究への投資を活発化すべきでもあります。

第二に、今後10年間、あらゆる国々が現在、災害救援に費やしている数十億ドルのうち10%以上を、防災への取り組みに用いるべきだと提案したいと思います。グローバルな緊急援助調整官としての役割を兼ねる立場から、私は、消火や傷の治療にどれだけの金銭が使われており、そもそもの破壊や苦痛を予防することに費やす金額が少なすぎることを痛感しています。

この目標の達成は可能です。政府と地域団体が連携すれば、その効果は絶大です。キューバ、エチオピア、ベトナムなど、その他の多くの国々での実例が示すとおり、コミュニティが災害に対する警戒を怠らず、経済がリスクを軽減する構造を備えていれば、損害を大きく減らすことができるのです。

モンゴルの不毛なステップからバングラデシュの氾濫原に至るまで、伝統文化は自然が発する警告を読み取る術を培ってきました。自然の猛威に備える方法を子どもたちに伝えるとともに、その潜在的破壊力を和らげることに配慮しつつ、コミュニティと生活を作り上げてきたのです。

その経験に学ぶ時が来たのではないでしょうか。防災は高度な技術やハードウェアの独壇場ではないはずです。その根本には、コミュニケーションと教育の問題が横たわっています。確かに、グローバルな早期警報システムは必要です。実際、国連教育科学文化機関(UNESCO)やISDRそして私たちは国連で、加盟国や協力機関と力を合わせ、網羅的な早期警報システムを実現すべて取り組んでいます。しかし、技術が万能薬でないことも忘れてはなりません。災害警報と防災措置を成功させるうえで、ハードウェアではなく人間が中心とならなければならないという経験は、シンガポールから南アフリカに至るまで、各地で得られています。

この点を踏まえ、最後の第三点に移りたいと思います。防災と被害軽減への取り組みは、それだけでは成り立ちません。コミュニティの全体的開発にこれを織り込まなければなりません。そのためには、従来の開発モデルを根本的に見直し、リスクの軽減と管理が持続可能な開発政策の中心に来るようにする必要があります。そうしなければ、ミレニアム開発目標といえども、世界でもっとも貧しく脆弱なコミュニティにとっては、絵に描いた餅に終わってしまいます。これらの目標が達成できるよう、緊密な協力を行うことを期待しています。

これは野心的なプログラムですが、その実現は可能です。しかし、私たち自身が相違を乗り越え、共通の利益をともに追求して行かない限り、成功は望めないでしょう。

コストを恐れることも、努力の半ばでたじろぐこともできません。中でももっとも大事なのは、決意を翻さないことです。数百万人の命は、私たちがここ神戸で言葉を実行に移せるかどうかにかかっているのです。

最後になりましたが、日本国民、日本政府、そして兵庫県の方々の温かい歓迎と指導力に感謝いたします。きのうの天皇陛下のお言葉にもあったとおり、私たちは10年前の大震災を記憶に留めるだけでなく、「将来の災害から人命を救えるような安全な社会を築かなければならない」のです。それこそが私たちの使命といえるでしょう。

ご清聴ありがとうございました。

兵庫県神戸市、国連防災世界会議
2005年1月18日

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