本文へスキップします。

  • プリント

ここから本文です。

年金と医療費が増大する中、高齢化する世界を支える具体的な措置を国連の新たな報告書が呼びかけ(2023年1月12日付 国連経済社会局プレスリリース・日本語訳)

プレスリリース 23-001-J 2023年01月16日

photo from UNDESA Website

人口の高齢化による恩恵を得るには、まず出生時からの機会均等の推進を

ニューヨーク、2023年1月12日 - 本日発表された『世界社会情勢報告2023』によると、65歳以上の世界人口は、2021年の7億6,100万人から、2050年には16億人へと2倍超に増加する見込みとなっています。世界が生活費の高騰など複数の危機に対処し続ける中、高齢者の権利と福祉を、持続可能な未来の実現に向け団結した取り組みの中心に据えなければなりません。

健康長寿は発展の機会をもたらす

『世界社会情勢報告2023:高齢化する世界で誰一人取り残さない(World Social Report: Leaving no one behind in an ageing world)』によると、人口の高齢化は現代を特徴づける世界的な潮流です。世界では、2021年生まれの子どもの平均寿命予測は71歳で、1950年生まれの子どもよりも約25年長く、また女性は男性よりも平均で5年長生きする見込みです。北アフリカ、西アジア、サハラ以南アフリカでは、今後30年間で高齢者数が最も速く増加することが見込まれている一方、ヨーロッパと北米を合わせた地域は、現在、高齢者の占める割合が最も高い地域となっています。保健・医療の改善、教育機会の拡大、そして出生率の低下がこうした変化の要因になっていると報告書は指摘しています。

高齢化する世界に見られる不平等

「力を合わせれば、私たちは明日の世代のために今日の不平等に取り組み、人口の高齢化がもたらす課題に対処し、それに伴う機会を生かすことができます」李軍華(リ・ジュンファ)国連経済社会問題担当事務次長は、このように述べました。

人口の高齢化を進めている保健・教育の改善から、誰もが平等に恩恵を受けているわけではありません。多くの高齢者がよい健康状態にあり、経済的にも活発である一方、病気を抱えたり貧困の中で暮らしていたりする高齢者もいます。先進地域では、年金・医療などの公的移転制度が、高齢者による消費の3分の2以上を占めています。しかし開発途上地域では、高齢者はより長く働き、貯蓄や家族による支援への依存度が高い傾向にあります。さらに、大半の国々での公的支出は、長期ケアの需要拡大を賄うのには不十分です。

報告書が指摘するように、平均寿命は、収入、教育、ジェンダー、民族、居住地などの多くの要素に大きく左右されます。これらの要素の組み合わせによっては、幼少期から始まる制度的な不利につながることが非常に多くあります。

制度的な不利は、それを防ぐ政策がなければ、その人の生涯を通じて相互に増幅し合うため、高齢になると大きな格差につながり、持続可能な開発目標(SDGs)の目標10「人や国の不平等をなくそう」を含め、SDGsの達成に向けた前進に深刻な影響を及ぼします。

進むべき道

こうした人口動態の変化を受けて、生計手段と労働に関連する長年の政策と慣習を再考していかなければなりません。アントニオ・グテーレス国連事務総長は、自身の報告書『私たちの共通の課題(Our Common Agenda)』の中で、すべての人に一生を通して質の高い教育、医療、ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)へのアクセスを促進するための、長期的なイニシアチブを呼びかけています。

すでに多くの国々が、生涯学習の機会を取り入れ、多様な世代による労働力の強化と十分な活用を行っており、また個人の多様な事情や選好に対応できる柔軟な定年制度を導入しています。

各国政府は不平等を減らしつつ予算編成することが可能を

年金制度など、社会的保護システムの見直しが必要です。大きな課題の一つは、公的年金制度の財政の持続性を維持しつつ、インフォーマル雇用に就く労働者を含むすべての高齢者の所得を安定させることです。

高齢化する世界において、持続可能で包摂的な経済成長を確実にするためには、非公式(インフォーマル)なケア部門が主に果たしてきた公式(フォーマル)な経済への多大な貢献を評価しつつも、(そこに従事している)正規の労働市場から従来排除されてきた女性などの集団向けにディーセント・ワークの機会を拡大することが、さらに重要な要素として挙げられます。

『世界社会情勢報告2023』について
国連経済社会局(UNDESA)が発表した『世界経済情勢報告2023』(https://www.un.org/development/desa/dspd/world-social-report.html)は、2023年9月に開催されるSDGサミットにおいて、世界の指導者たちがSDGs達成のための道筋を描き、決意を新たにするにあたり、人口の高齢化に対処する政策上の選択肢の分析と検討を含めて、情報や政策ガイダンスを提供することを目的としています。

高齢化に関する国連経済社会局(UNDESA)の政策概要
『世界社会情勢2023』に基づく国連経済社会局による一連の政策概要は、以下でご覧いただけます。
https://www.un.org/en/desa/products/policy-briefs

報道関係者のお問い合わせ先:
Sharon Birch
United Nations Department of Global Communications
birchs@un.org

Helen Rosengren
United Nations Department of Economic and Social Affairs
rosengrenh@un.org

* *** *