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UNEP統合報告書、地球の非常事態を緊急に解決し 人類の未来を守る構想を提示(UNEPプレスリリース・日本語訳)

プレスリリース 21-016-J 2021年03月31日

(2021年2月18日リリース)

    • 気候および生物多様性について強化されたターゲットを達成し、人々を死に至らしめる環境汚染を減らし、持続可能な開発目標(SDGs)を達成するには、社会全体が一丸となって持続可能性に向けて行動しなければならない
    • 人々の世界観を変え、意思決定の中心に自然を据えることが、根本的な変化を実現する鍵となる
    • COVID-19からの復興計画は、自然に投資し、2050年までにネットゼロエミッションを達成するために逸してはならない機会である

2021218日、ナイロビ 自然との関係を変革し、気候、生物多様性、環境汚染の危機に団結して立ち向かうことで、世界は持続可能な未来を手に入れ、今後のパンデミックを防ぐことができる ― 国連環境計画(UNEP)の新たな報告書はこう述べて、地球が直面する3つの緊急事態に対応する包括的な構想を提示しています。

Making Peace with Nature(自然との共存)』と題する報告書は、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)による評価、生物多様性および生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォームによる評価、UNEPの『地球環境に関する展望』報告書、同じくUNEPの国際資源パネルによる評価、そして新型コロナウイルス感染症(COVID-19)などの人獣共通感染症の発生に関する新たな知見など、複数の世界的な評価を基に、上記の3つの環境危機の重大さを示しています。

報告書の執筆陣は、環境と開発に関する複数課題の連関を評価するとともに、科学の進歩と大胆な政策決定を通じて、2030年までの持続可能な開発目標(SDGs)の達成と2050年までのカーボンニュートラルな世界の達成に向けた道をどう切り開き、また、生物多様性の喪失の緩和と環境汚染や廃棄物の抑制をどう図っていけるのかを説明しています。その道を選択するということは、人々と自然の双方を保護する活動に革新や投資を行うということです。これに成功すれば、安定した気候と並び、復元された生態系と、より健康的な生活を得ることができるでしょう。

「本報告書は、気候の緊急事態、生物多様性の危機、そして年間に何百万もの人々の命を奪っている環境汚染の影響や脅威を示した最新の科学的証拠をまとめ、私たち人間と自然との戦争が地球を壊してしまったことを明らかにしています」アントニオ・グテーレス国連事務総長は、同報告書の序文でこのように述べます。「報告書は同時にまた、和平計画と戦争後の再建計画を提示し、私たちをより安全なところへと導いています」

「自然に対する見方を変えることで、私たちは、自然の真の価値を認識することができます。その価値を、政策や計画、経済システムに反映させれば、私たちは自然を復元する活動に投資を振り替えることができ、また、その行為は報われます」と事務総長は続けています。「私たちにとってなくてはならない同志として自然を捉えることで、持続可能性のために人間の創意工夫の能力を解き放ち、私たちと地球のそれぞれの健康と幸福を両方とも確保することができるのです」

COVID-19パンデミックにより打撃を受けた経済に再び活力を与える投資の波が起こっているなかで、この構想は、熱意ある即時の行動の機会と緊急性を示しています。また、各国政府や企業、地域社会、個人など、すべての人が果たすことのできる、そして果たさなければならない役割を示しています。2021年はとりわけ重要な年であり、気候や生物多様性に関する会議である国連気候変動枠組条約締約国会議(COP26)生物多様性条約締約国会議(COP15)が控えています。これらの会議において、各国政府は今後10年間で温室効果ガスの排出量を半分近く削減するとともに、生物多様性を保全・復元し、地球を守るための相乗的かつ意欲的なターゲットを設定しなければなりません。

地球を脅かす3つの脅威に団結して立ち向かう

世界的に急速な人口増加が進む中、経済成長は、繁栄の中の利得格差をもたらし、13億人を貧困の中に置き去りにしています。その一方で、天然資源の採取量は3倍という破壊的なレベルに達し、地球に緊急事態を引き起こしています。パンデミックによってCO2排出量が一時的に減少したにもかかわらず、地球の気温は今世紀中に少なくとも3°C上昇する見込みであり、推定800万の動植物種のうちの100万種以上において絶滅のリスクが著しく増大し、環境汚染に起因する病気が現在、毎年およそ900万人に早すぎる死をもたらしています。貧困と飢餓の根絶、不平等の緩和と持続可能な経済成長の促進、すべての人の雇用確保、そして平和で包摂的な社会に向けた進捗がすべて環境悪化によって妨げられています。

報告書は、前述の3つの環境非常事態は相互に作用し、共通の原因を有するため、総合的な対応のみが効果が生むことについて説明しています。例えば、化石燃料に対する補助金や、環境コストを考慮しない価格設定は、3つの問題すべての背景にある、エネルギーや天然資源の過剰な生産、消費を助長しています。

インガー・アンダーセンUNEP事務局長は、同報告書が強調しているのは、考え方や価値観を変えること、地球の環境危機に見合う政治的、技術的な解決策を見つけることの重要性だと指摘します。

「COVID-19危機により、いかに人々の健康と自然が結び付いているのかが示され、私たちが自然を捉え評価する方法を大きく変えなければならないということが明確になりました。その価値観を、経済政策であれ個人の選択であれ、意思決定に反映させることで、私たちは持続可能性に向けた急速かつ長続きする変化を、人々にも環境にももたらすことができるのです」とUNEP事務局長は述べます。「パンデミックにより打撃を受けた経済のための『グリーン・リカバリー』計画は、変革の促進のために逸してはならない機会なのです」

第5回国連環境総会に先立って公開された同報告書は、地球とその気候を総体的に保護し復元するための緊急の行動が必要である理由と、その切迫性について、確固たる論拠を示しています。

報告書は、変革とはどのようなものか、また、その変革によって繁栄や雇用やより平等な状態をどのように生み出せるのかを、例を挙げて示しています。広範囲にわたる変革には、自然に対する私たちの評価方法と投資方法を見直すこと、あらゆるレベルの政策および決定に自然という価値観を取り入れること、補助金やその他の経済、金融システムの要素を全面的に見直すこと、持続可能なテクノロジーとビジネスモデルにおける革新を促進することが必要です。民間での、エレクトリックモビリティや代替燃料への大規模投資は、迅速に移行することで得られるかもしれない利益を、いかに産業界全体が認識しているかを示しています。

持続可能な開発目標(SDGs)で設定された目標の多く、とりわけ貧困の緩和、食料や水の確保、すべての人の健康促進にはあらゆる形態の環境悪化を食い止めることが不可欠である、と報告書は指摘します。一例として、持続可能な方法で行われる農業や漁業の強化が、食生活の改善や食品廃棄物の削減と結び付くことで、世界の飢餓や貧困に終止符を打ち、栄養摂取や健康を増進して、より広い陸地と海洋の豊かさを守るためにどれほど役立つのかを記しています。

報告書では、行動の呼びかけを強めるとともに、社会のあらゆるレベルのステークホルダーが意思決定に関与する必要性を強調しており、持続可能な世界を実現するために、政府、企業、地域社会、個人による着手が可能かつ必要である多くの重要な行動を特定しています。

例:

  • 各国政府は、経済活動の手段に自然資本を取り入れ、炭素価格を設定し、数兆ドルの補助金の対象を、化石燃料や持続不可能な農業、輸送から、低炭素の自然に優しいソリューションに変更する
  • 国際機関は、「ワン・ヘルス」アプローチとともに、生物多様性に関する意欲的な国際目標、例えば保護区ネットワークの拡大および改善などを推進する
  • 金融機関は、化石燃料への融資を打ち切り、生物多様性の保全と持続可能な農業のための革新的な投資計画を開発する
  • 企業は、循環型経済の原則を採用することで資源利用と廃棄物を最小限に抑え、透明性のある、森林破壊につながらないサプライチェーンを維持することにコミットする
  • 非政府組織(NGO)は、ステークホルダーのネットワークを構築し、土地資源および海洋資源の持続可能な利用に関する決定にその完全参加を確保する
  • 科学機関は、炭素排出量の削減、資源効率の向上、都市・産業界・地域社会・生態系の回復力の向上を図るための技術と施策を先導する
  • 個人は、自然との関係を見直し、持続可能性について学び、習慣を変えることで資源利用を減らし、廃棄する食料・水・エネルギーを削減し、より健康的な食習慣を身に付ける

持続可能な未来とは、COVID-19危機に学び、パンデミックの脅威を軽減することをも指しています。報告書は、病原体が動物から人間に感染するリスクがいかに生態系の劣化によって高まるかを明確に示すとともに、人間、動物、地球の健康をひとつのものと見なす「ワン・ヘルス」アプローチの重要性を強調しています。

 

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国連環境総会(UNEA)について
UNEAは、環境問題に関する世界最高レベルの意思決定機関です。隔年開催される環境総会では、世界的な環境政策の優先課題が設定され、国際環境法が策定されています。環境総会は決議採択、行動への呼びかけの発出を通じて、リーダーシップを発揮し、環境に関する政府間行動を促進しています。

詳しくは下記にお問い合わせください。

Keisha Rukikaire, Head of News & Media, UN Environment Programme
E-mail: rukikaire@un.org

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