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気候野心サミット、グラスゴー気候会議に向けた行動と野心の 新たな高まりを示す(プレスリリース日本語訳)

2020年12月29日

75カ国と企業、部門、都市による具体的な計画と新たな誓約
パリ協定の目標に一歩近づき、今後の作業が浮き彫りに

 

ニューヨーク、ロンドン、パリ、12月12日 — 気候変動対策を担う世界のリーダーたちは本日、気候危機と対峙するための野心的な新しい約束と緊急行動、具体的な計画を提示することで、排出量正味ゼロの強靭な未来に向けて、大きな一歩を踏み出しました。

国連と英国、フランスがきょう、イタリアとチリとのパートナーシップにより、パリ協定採択5周年に因んで共催した「気候野心サミット(Climate Ambition Summit 2020)」は、2021年11月にグラスゴーで開催予定の国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)に至る道のりで、大きな節目となりました。

全大陸から参加したリーダー75人が、サミットで新たな公約を掲げました。このことは、国際的な行動の羅針盤として、かつてなく重要性を増しているパリ協定が、気候変動対策とその野心を急速に高めていることをはっきり示しています。

サミットは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)という課題を私たちが共有する中でも、気候変動がグローバルな最優先課題となっていることと、科学が示すことは明確であるという共通の理解が存在することを明らかにしました。気候変動による破壊は加速しており、地球の気温上昇を1.5°Cに抑えるために、国際社会としてすべきことは、まだ数多く残っています。

しかし、本日のサミットは、気候変動対策とその野心が高まっていることに疑いの余地がないことを明らかにしました。サミットで、あるいはその直前に出された発表、そして来年早々に予定される発表によって、全世界の二酸化炭素排出量の約65%を占め、世界経済の約70%を担う国々が、来年初めまでに排出量正味ゼロまたはカーボンニュートラルの達成を約束することになります。

こうした約束は今すぐに、これら目標を達成するための具体的な計画と行動で裏付けなければなりません。きょうのサミットはこの意味で、前進を大きく後押ししたと言えます。

 

グラスゴーへの道を開く国別気候計画(NDC)の強化

  • 国別気候計画(NDC)の強化を発表する国の数はきょう、一気に増大し、公約を提出しているのは71カ国(すべてのEU加盟国を新たなEU NDCに含む)となっています。EUのNDCのほか、サミットの開催中またはその直前にNDCの新規提出と強化を発表した国は27カ国を数えました。
  • 徐々に増大する取り組みから大幅な改善へと方針を転換する国の数も、15カ国へと増えています。アルゼンチン、バルバドス、カナダ、コロンビア、アイスランド、ペルーを含む国々が、サミットで一層強化したNDCの取り組みを約束しました。
  • サミットで発揮されたリーダーシップと、NDC強化の発表で、2020年中に正式に提出されるNDCは50件を超える見通しとなり、今後数カ月間で他の国々が追随する勢いと道筋が整っています。
  • 本日の発表と最近の公約で、私たちははるかに大きな勢いをもって2021年とグラスゴーでのCOP26へと続く道を歩むことになります。サミットでは他の国々、特にG20諸国の追随を促すNDC強化の代表例も紹介されました。

 

排出量正味ゼロの強靭な未来に向けた更なる一歩

  • 気候野心サミットを受け、24カ国が正味ゼロまたはカーボンニュートラルを達成するための新たな約束、戦略または計画を発表したことになります。最近の中国、日本、韓国、EU、そして本日のアルゼンチンによる約束は、他のG20諸国にとって明確な基準を確立しました。本日のサミットでは、フィンランド(2035年)、オーストリア(2040年)、スウェーデン(2045年)など、排出量の正味ゼロを達成する野心的な期限を設け、今後のさらなる取り組みの進め方を明らかにする国々もいました。
  • 気候変動に脆弱な国々は、行動と野心の先頭に立っています。バルバドスとモルディブは、適切な支援を受けながら、2030年までにカーボンニュートラルを達成するという極めて野心的な目標を掲げています。フィジー、マラウイ、ナウル、ネパールは、2050年にその達成を目指すという目標を示唆しています。
  • サミットでは、適応とレジリエンスが中心的な位置を占めるようになりました。20カ国が、人々と自然を気候変動の影響から守るため、新しい約束や、今後の約束を示唆しました。エチオピアをはじめとする国は、人々と自然を守る経済の全体的なアプローチを採用していると述べる一方で、スリナムはその国家適応計画の実施にさらに力を入れていることを明らかにしました。英国やポルトガル、スペインなどの先進国もそれぞれ、適応への取り組みを一層進めていることを発表しました。大々的な新しいグローバル・キャンペーン「Race to Resilience(レジリエンスを急ぐ)」も本日立ち上がり、2030年までに気候変動リスクにさらされた40億人を守るという目標も定められました(詳しくは下記をご覧ください)。

 

グレー・エコノミー(灰色経済)からグリーン・エコノミー(緑の経済)へのシフトを加速

  • 気候野心サミットでは、それぞれの経済全体の目標を達成するための具体的な政策を定める国もありました。パキスタンは、石炭火力発電所を新設しないことを発表したほか、イスラエルは、ますます多くの国がそうしているように、石炭利用を段階的に廃止することを発表しました。15カ国は、2030年までに再生可能エネルギーへの移行を図るため、それぞれの移行を加速する方法の詳細を提示しました。具体的には、化石燃料ゼロを目指すバルバドス、再生可能エネルギー100%を達成しようとしているバヌアツ、電力の脱炭素化を図るスロバキアが含まれます。デンマークは、石油とガスの探査に終止符を打つことを明らかにしました。インドは、2030年までに再生可能エネルギー設備容量を450GWに増やすという新たな目標を発表しました。中国は、一次エネルギー消費に非化石燃料が占める割合を2030年までに約25%程度に増やすことを約束しました。
  • この勢いに乗り、英国とフランス、スウェーデンは、化石燃料への国際金融支援を打ち切る計画を定める一方で、カナダは炭素価格を2030年までに、1トン当たり170カナダドルへと段階的に引き上げることを発表しました。

 

自然を敵ではなく味方に

  • 気候野心サミットでは、12人のリーダーが、自然に基礎を置く解決策で気候変動に取り組むための計画がすでにあることを明らかにし、自然保護に向けた決意を示しました。2021年の国連生物多様性会議が近づく中で、気候野心サミットは、気候と生物多様性という2つの危機に立ち向かうための解決策をさらに統合し、持続可能な開発目標全体で前進のスピードを上げる必要性を明らかにしました。
  • 12のドナー国は、ドイツによる5億ユーロに迫る追加投資、フランスによる既存目標の年間10億ユーロに上る積み増し、ポートフォリオの35%に気候変動対策のコベネフィットを含めるようにする世界銀行の取り組み、同じく50%に気候コベネフィットを含め、パリ協定との業務の整合性を100%確保するという欧州投資銀行(EIB)の約束など、途上国に対する支援の約束を明らかにしました。
  • しかし気候野心サミットは、誰一人取り残さないようにするために、すべきことはまだ多く残っていることも示しました。COVID-19が今年、国際的な気候変動対策資金の流れに悪影響を与えたことを受け、2021年は、この資金が流れていることを立証するとともに、1,000億ドルという目標を充足、超過することが欠かせません。

 

機運から真の意味でのグローバル・ムーブメントへ:都市や企業、金融機関が大規模に野心を引き上げ

  • Race to Resilience(グローバル)– 本日立ち上げられたこのキャンペーンは、2030年までに、気候変動リスクに対して脆弱な集団やコミュニティーに属する40億人の生活と暮らしを守るため、レジリエンスの構築を約束する市長、コミュニティー・リーダー、企業や保険会社などを巻き込んだイニシアティブの結集となっています。行動とイニシアティブの事例としては、下記が挙げられます。
  • Zurich Insurance(スイス)は、チューリヒ食料レジリエンス・アライアンスが2025年までに、資金を3倍に増やし、対象を11カ国から21カ国に広げることを発表しました。
  • フリータウン(シエラレオネ)市長は、2020年から2021年までに100万本の植林を行うことを約束しました。
  • ネットゼロ経営者イニシアティブ(グローバル)― 9兆米ドル相当の資産を運用する組織の設立メンバー30人の一人ひとりが、2050年までのネットゼロ・エミッション達成をはっきりと約束しています。その中には、個別のポートフォリオ・ターゲットの設定や、各メンバーのポートフォリオに入る企業に、地球の気温上昇を5℃に抑えることと整合する脱炭素化目標を定めるよう働きかけることも盛り込まれています。
  • C40都市気候リーダーシップグループ(グローバル) – 「Cities Race to Zero(ゼロを急ぐ都市)キャンペーン」の立ち上げを発表し、最初の1カ月で70都市がこれに加入することにより、パリ協定の履行を図る都市の決意と行動をさらに強化しています。
  • Godrej & Boyce(インド)—製造会社として、2050年までにカーボンニュートラルを達成するという全社的な野心に沿い、Business Ambition for 1.5℃を含む重要なグローバル・イニシアティブへの参画を表明し、科学に基づくターゲットを定めるとともに、省エネ企業を目指す取り組みEP100を通じ、エネルギー効率を高めています。
  • International Airlines Group(スペイン/英国)— 2050年までに排出量の正味ゼロ達成を確約した世界初の航空グループです。グローバル航空市場の20%を占める航空会社13社からなる「ワンワールド・アライアンス」は、2050年までに炭素排出量で正味ゼロを達成するため、持続可能な航空燃料に4億ドル(今後20年間で)の投資を行っています。
  • Dalmia Cement(インド)– グローバルセメント・コンクリート協会に加入する世界的なセメント・メーカー40社は、2050年までに業界全体でカーボンニュートラルなコンクリートを実現するという約束を行いました。このインドのセメント企業は、それをさらに一歩進め、2040年までにカーボンネガティブを達成するための行程表を確立するとともに、100%再生エネルギー化という目標の達成にもグローバルに取り組んでいます。
  • Movida-Rent-a-Car(ブラジル)– 2030年までに排出量の正味ゼロ、2040年までにカーボンポジティブを達成するという誓約を裏づける対策を提示しました。Movidaはその業務全体で排出量を削減し、植林によって自社と顧客のカーボン・フットプリントを相殺するとともに、気候変動の影響に適応し、気候関連財務情報開示タスクフォースの方法論を用いたリスク分析を行っています。
  • Apple(米国)– 2030年までに、そのサプライチェーンと製品についてカーボンニュートラルの達成を誓約するとともに、サプライヤーのうち95社が、再生可能エネルギー100%への移行を約束したことを発表しました。
  • Artistic Milliners(パキスタン) – 繊維会社として、国連ファッション業界気候行動憲章への参加を表明するとともに、カーボン・フットプリントの削減と、数千家屋戸へのゼロエミッション・エネルギー供給による循環経済実現に向けた行動を共有しました。

 

アントニオ・グテーレス国連事務総長による発言:

「気候野心サミットは、私たちの将来の安全保障と豊かさを確保するため、大胆な気候変動対策を取る用意のある国と企業が増えているという、強いシグナルを送りました。

きょうは重要な前進が見られましたが、これだけで十分ではありません。私たちは依然として、世紀末までに3℃以上の気温上昇への道を進んでおり、その場合には破滅的な結果が待っていることを忘れないでおきましょう。

COVID-19からの復興は、持続可能な開発のための2030年アジェンダに沿って、私たちの経済や社会をグリーン成長の軌道に乗せる機会を提示しています。

私たちが前途を見据える中で、国連は本当の意味で『カーボンニュートラルを目指すグローバルな連立』の構築を、2021年の中心的な目的としています」

 

ボリス・ジョンソン英首相による発言:

「私たちはきょう、各国が協力し、地球を守るための闘いに本当のリーダーシップと野心を示せば、何が達成できるかを目の当たりにしました。

英国はその先頭に立ち、2030年までに排出量を68%以上削減するとともに、海外の化石燃料部門への支援に可能な限り早く終止符を打つことを約束しました。グラスゴーでのCOP26に先駆け、全世界から私たちに成功の道を歩ませる新たな誓約があったことは素晴らしいことです。

私たちが暗く、困難な年を終えようとしていることは間違いありませんが、ワクチンの接種が始まる中で、科学的イノベーションは私たちの救いであることも実証されました。私たちはこれと同じ創意工夫や、一致団結して努力する精神をもって、気候危機に取り組み、未来の雇用を作り、より良い復興を遂げなければなりません」

 

マクロン仏大統領の発言:

「COVID-19の世界的大流行(パンデミック)と、現代で最悪ともいえる経済危機にもかかわらず、私たちはきょう、気候変動が依然として国際的な最優先課題であることを示しました。今回の危機は私たちに、環境に配慮した暮らしへの移行の機会を与えてくれています。私はきょう、70人を超える各国の首脳らが行った発表を歓迎します。今回のサミットは5年前、フランスが議長国を務めるCOPで成立したパリ協定が、これまで以上に、国際的な気候変動対策の羅針盤となっていることを確認しました。

EUは2030年までに温室効果ガス排出量を少なくとも55%削減するという、カーボンニュートラルに向けた根本的な節目となる新たなターゲットを掲げることで、このグローバルな闘いを主導しています。EUとフランスは引き続き、野心的な水準の気候金融を促進していきます。私たちは国連やCOP議長国の英国のほか、パリ協定の全締約国とも連携し、今後も数年間にわたって野心を高め続け、具体的行動を通じてその実現を図れることを心待ちにしています」

さらに詳しい情報については、下記にお問い合わせください。

英国: cop26media@cabinetoffice.gov.uk
国連: matthew.coghlan@un.org; shepard@un.org
フランス:organisationpresse@elysee.fr

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原文(English)はこちらをご覧ください。