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事務総長が招請する気候行動サミットに対する 国連システムの共同アピール (ニューヨーク、2019年5月9日)

プレスリリース 19-030-J 2019年05月27日

1. 我々、国連システム諸機関のリーダーは加盟国に対し、健康への権利、食料への権利、発展の権利、先住民や地域社会、移民、子ども、障害者および弱い立場に置かれた人々の権利、ならびに、ジェンダーの平等、女性のエンパワーメント、世代間の公平、および、すべての人々のディーセントワーク(働き甲斐のある人間らしい仕事)と公正な移行を含め、人権に関するその義務を果たすべく努めつつ、パリ協定に定めるところに従い、地球の気温上昇を産業革命前との比較で1.5℃に抑え、気候変動の影響に適応すべく野心を高め、具体的な行動を取るよう呼びかける。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の地球温暖化に関する特別報告書にあるとおり、不可逆的な気候変動を防ぐためには、地球温暖化を1.5°Cに抑える必要がある。この目標を達成するためには、あらゆるレベルでかつてない規模の変革が必要であるが、我々が今すぐ行動を起こせば、それはまだ可能である。我々は大きな切迫感をもって、加盟国に対し、「 持続可能な開発目標(SDGs)」の達成を支援するため、2020年までに自国が決定する貢献を強化するための具体的、現実的な計画を携えて、今年9月、ニューヨークに参集するよう呼びかける。

I. 緩和

2. 我々は加盟国に対し、気候変動の軽減が道徳的、倫理的、経済的な責務であると認識し、地球の気温上昇を産業革命前との比較で1.5°Cに抑えるため、緊急の行動を取るよう呼びかける。

3. 国連システムは、それぞれの国が自国の決定する貢献と、長期的に温室効果ガス(GHG)排出量を抑える開発戦略などを通じ、「パリ協定」および「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に基づく約束を掲げ履行するとともに、相乗効果を高め、トレードオフを回避し、持続可能な開発アジェンダの実施における政策的一貫性を確保することにより、これを達成できるよう、加盟国を支援している。

4. 我々は、個別の国連機関が達成した前進と、採択した決定を認識する一方で、よりスケールの大きい気候変動ファイナンスを動員し、技術移転と能力構築を容易にすることにより、加盟国が2030年までに温室効果ガス排出量を45%削減し、2050年に正味でゼロ・エミッションを実現するという目標を達成するとともに、すべての人々の生活を大きく変える持続可能な開発の共同便益を実現できるよう、支援を強化することを約束する。

II. 適応

5. 我々は加盟国に対し、人間、生活および生態系、特に強制避難や移住によってリスクにさらされた人々を含め、気候変動の影響を最も受けやすい地域に暮らす人々を保護するため、適切な適応措置を取ることを確保するよう呼びかける。我々は加盟国に対し、財弱なコミュニティと生態系における適応能力と解決策を特定、構築するとともに、誰ひとり取り残さないようにするため、すべての人の経済的、社会的および文化的権利の段階的な実現にできる限り多くの資源と支援を充当するよう強く促す。

6. 国連システムは、包摂的でリスクに配慮した持続可能な開発を追求するとともに、国内適応計画の促進と、一貫性のある国内防災戦略の策定などを通じ、気候変動と災害のリスクを監視、防止および管理できるよう、加盟国を支援する。

7. 我々は、加盟国が地域、国家、都市およびコミュニティなどに対する悪影響を緩和し、強靭性を高め、すべての人に安全で清潔、かつ物理的、金銭的に利用可能な飲料水を提供するための取り組みを拡大し、気候変動に起因する災害によってもたらされた損失と損害に取り組み、気候変動関連事象への社会保障制度の対応力を高めるためのニーズに対する我々の対応力を強化することを約束する。我々には、適応力と強靭性を強化するために具体的な行動を取れるよう、各国、特に小島嶼開発途上国と後発開発途上国を支援する用意がある。我々は加盟国に対し、サミットに参集して、これらの行動を明らかにするよう奨励する。

III. 金融

8. 気候変動ファイナンスは、気候変動に取り組むために必要な規模の行動を実現するうえで欠かせない。資金の動員強化との関連で、先進国は、政府と民間セクターを動員し、開発途上国における気候変動対策を支援するために年間1,000億ドルの資金を拠出するという目標を2020年までに達成するとともに、資金の増額に向けた取り組みをさらに強化しなければならない。

9. 我々は、気候変動ファイナンスが排出量を削減すること、システムの気候変動に対する強靭性を高めるための本質的な変革を極大化するために用いられること、女性、若者および子どもを含め、最も影響を受ける公算が高い人々にとって利用可能であり、かつこれに裨益すること、環境権、社会的権利および人権に関する実効的なセーフガードの確立と実施を通じ、気候変動ファイナンスの潜在的な悪影響を防ぐこと、ならびに、被害が生じた場合には、実効的な救済措置へのアクセスを保証することを確保することによって、各国が気候変動ファイナンスの好影響を極大化すべきであることを強調する。

10. 我々は加盟国に対し、公的・私的金融へのアクセスを容易にできる政策枠組みを構築するとともに、資金の流れを低排出の気候変動に強い開発へと向けるための公共政策を実施、拡大するよう呼びかける。

11. 我々は、投資を可能にする環境を整備し、気候変動対策を関連の国内財政計画全体の主流に取り込むとともに、責任ある民間投資を持続可能な形で呼び込み、拡大するための市場ベースの手段を統合するため、このシステム全体的な取り組みを強化することを約束する。我々は加盟国に対し、国内の気候変動ファイナンスのロードマップ、存続可能なアプローチおよび成功例を共有するよう奨励する。

IV. イノベーション

12. 我々は加盟国に対し、持続可能な開発を前進させるイノベーションの機会を伴う野心的な気候変動対策を追求するよう呼びかける。

13. 国連システムは、情報・商業技術、データおよびツールをはじめとして、新たに生じつつある技術の利用を含め、加盟国が関連のデータと技術革新を開発、活用し、気候変動と持続可能な開発に関する課題、および、災害リスクの削減と管理に関する解決策を見出せる能力の強化を支援する。第4次産業革命は、低排出の気候変動に強い開発経路へのパラダイム・シフトを図る上で、大きな潜在的可能性を提供する。

14. しかし、イノベーションに必要なのは技術だけではなく、未来を洞察するアプローチ、新しいビジネスモデルや金融手段、さらには、地域協力の強化を含むパートナーシップも、気候変動に強い低排出の開発経路への迅速、実効的かつ中長期的な移行を確保するうえで欠かせない。

15. 我々は、この支援を強化するとともに、学界や科学界、NGO、子どもと若者、女性の団体と起業家、労働組合、民間セクターおよび地方自治体を含め、関連のあらゆるステークホルダーとの間で革新的なパートナーシップを構築し、気候変動緩和/適応/ファイナンス/対策技術の分野で協調的行動の動員を図ることを約束する。我々は加盟国に対し、他の国々とともに気候変動に対処するための革新的アプローチをサミットで共有するよう奨励する。

V. 国連システム

16. 国連システムは、気候変動に対処するための具体的なステップを踏み、我々の活動のやり方に持続可能な開発への配慮をより組織的に統合すべく、その野心を高めることを約束する。国連システムがその政策、戦略、プログラム、プロジェクト、施設および活動において、環境と社会の持続可能性の全体像に取り組むことで、自らが主張する原則を実践し、持続可能な開発目標を組織的に体現できるよう、我々は現状の取り組みを土台とする形で、 2020~2030年を対象とする国連システム全体を通じた、環境的・社会的なサステナビリティ戦略を策定する。

17. 我々は特に、GHGの排出、廃棄物管理、大気・水質汚染および生物多様性喪失に照準を絞った行動を通じ、我々の環境に対する影響を緩和することを約束する。特にGHG削減の分野に関し、我々はIPCC報告書の提言に沿い、すべての施設と活動におけるエネルギー需要削減、再生可能エネルギーへの移行、および、我々の移動・輸送の管理と気候中立性の改善に向け、具体的なステップを踏んでゆく。

18. 我々は継続的改善の原則、および、我々の内部管理機能全体への持続可能な開発への配慮の統合に基づく環境管理アプローチを採用し、プロジェクトやプログラムにおける環境的、社会的セーフガードの適用などを通じて、可能な限り、改善の機会を捉えられるようにする。我々は「Greening the Blue(環境に優しい国連システム)」イニシアティブを土台に、我々の持続可能性報告枠組みを拡大、改善し、我々の進捗状況や取り組み、および、実施面での課題について透明な伝達を図ってゆく。

19. 我々は9月、事務総長が招集する「気候行動サミット」で、2020年までに我々の内部活動で気候中立性を達成し、国連の全活動で環境と社会の持続可能性を高めるためのシステム全体的な取り組みを提示する。

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* UN Secretariat, ILO, FAO, UNESCO, ICAO, WHO, WBG, UPU, ITU, WMO, IMO, WIPO, IFAD, UNIDO, UNWTO, IOM, UNCTAD, UNDP, UNEP, UNHCR, UNRWA, UNICEF, UNFPA, WFP, UNODC, UN-Habitat, UN Women, UNOPS, UNU, OHCHR, UNAIDS, UNFCCC, ECA, ECE, ECLAC, ESCAP, ESCWA

(English)
Joint Appeal from the UN System to the Secretary-General’s Climate Action Summit