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2018年:異常気象が6,000万人に影響

プレスリリース 19-007-J 2019年02月22日

UNISDRプレスリリース(24 January 2019 UNISDR 2019/01)

ジュネーブ、2019年1月24日 – 災害疫学研究所(CRED)がEM-DAT(国際災害データベース)に記録した281件の災害を分析したところによると、昨年は、地震と津波による死者が災害による死者1万733人の大半を占める一方で、自然災害の被災者6,170万人の大半は、異常気象によるものでした。

水鳥真美・防災担当国連事務総長特別代表は、次のように述べています。「昨年、地球上で異常気象の影響を免れた場所はありませんでした。分析対象となった洪水や干ばつ、暴風雨、森林火災は5,730万人に影響しており、私たちが災害による損失を減らすためには、災害リスクの管理方法を改善せねばならないことが改めて浮き彫りになりました」。

「地球温暖化を1.5°Cまたは2°C以内に抑えるための時間はなくなりつつあります。私たちは気候変動への適応にも同様に対処せねばなりませんが、そのためには都市の災害リスクを軽減し、土地利用の改善や計画規制、建築基準の強化により新たなリスクの発生を避け、保護的機能を持つ生態系を守り、貧困を削減するとともに、海水面上昇による曝露を減らすための積極的な措置を取ることが必要になります」。

2018年の1万733人という死者数は、2000年から2017年までの年平均7万7,144人と比べ、低い数字ですが、この平均死者数は、インド洋津波(2004年)やサイクロン・ナルギス(2008年)、ハイチ地震(2010年)などの大災害で多数の命が失われたことによって、はねあがってしまいました。2018年は、このような巨大災害がなかったとはいえ、いずれにせよ、大きな自然ハザードによる死者の数は、減少傾向にあるようです。その理由としては、生活水準の向上と災害リスク管理の改善が考えられます。

地震や津波、火山活動を含む地震性活動は昨年、340万人の生活に混乱を及ぼし、他の種類のハザードよりも多くの死者を出しました。例えば、インドネシア(4,417人)、グアテマラ(425人)、パプアニューギニア(145人)などの国で発生しました。

洪水はインド・ケララ州の2,300万人を含む3,540万人と、最も多くの被災者を出し続けました。死者もインド(504人)、日本(220人)、ナイジェリア(199人)、朝鮮民主主義人民共和国(151人)をはじめ、2,859人に上ります。

昨年の暴風雨による被災者は1,280万人、死者は1,593人でした。特に、ハリケーン・フローレンス(140億米ドル)とマイケル(160億米ドル)や、台風21号(ジェビ)(125億米ドル)による被害があったため、最終的な経済的損失の統計がまとまれば、暴風雨は2018年に最も損害額が大きかった災害となるでしょう。

ヨーロッパと北米の森林火災は、記録的な数の死者を出しました。ギリシャ(126人)の山火事では、ヨーロッパでの森林火災の記録上最多の死者が出たほか、米国(88人)でも、この百年間で最も多くの犠牲者を出す山火事が発生し、損害額も記録的な数字(165億米ドルと推計)に上りました。

CREDの統計によると、ケニア(300万人)やアフガニスタン(220万人)、そしてグアテマラやホンジュラス、エルサルバドル、ニカラグアといった移民が大量に発生している地域を含む中米(250万人)など、世界中で合計930万人が干ばつにより影響を受けたことがCREDの統計により明らかにされました。干ばつや異常気温の報告は不十分なため、これによる世界的な被害の把握が難しい状況となっています。

ルーヴァン・カトリック大学のデバラティ・グハ=サピルCRED所長は、次のように語っています。「干ばつや異常気温をはじめとした、あらゆる災害の影響の報告、特に低所得国からの報告には不備が多いことが知られています。こうした災害による人的被害を定量化することは難しいものの、特に具体的なSDGターゲット指標について報告するために、緊急に行われる必要があります。よって、関連する国連機関は、コミュニティーのレジリエンス(災害に対する強さ)と適応能力の改善を測定する革新的なアプローチに取り組む必要があります」。

国連加盟国は、災害による損失の削減と「仙台防災枠組(2015-2030)」の実施に取り組むことを表明しています。仙台防災枠組は、災害による損失を減らすための全世界的な計画であり、死者数と被災者数だけでなく、不可欠なインフラに対する経済的損失と被害を減らすことも明確なねらいとしています。

 

災害別死者数(2018年と21世紀平均の比較)

災害

2018

平均(2000-2017年)

干ばつ

0

1,361

地震

4,321

46,173

異常気温

536

10,414

洪水

2,859

5,424

地すべり

282

929

ドライ・マス・ムーブメント(土塊や岩塊などの乾燥物質の斜面下方移動)

17

20

暴風雨

1,593

12,722

火山活動

878

31

森林火災

247

71

合計

10,733

77,144

出典:EM-DAT(国際災害データベース)

 

被災者数上位10カ国(2018年)

被災者総数

1. インド

23,900,348

2. フィリピン

6,490,216

3. 中国

6,415,024

4. ナイジェリア

3,938,204

5. グアテマラ

3,291,359

6. ケニア

3,211,188

7. アフガニスタン

2,206,750

8. 米国

1,762,103

9. 日本

1,599,497

10. マダガスカル

1,472,190

出典:EM-DAT(国際災害データベース)

 

死者数上位10カ国(2018年)

死者総数

1. インドネシア

4,535

2. インド

1,388

3. グアテマラ

427

4. 日本

419

5. 中国

341

6. ナイジェリア

300

7. 米国

298

8. パキスタン

240

9. 朝鮮民主主義人民共和国

237

10. フィリピン

221

出典:EM-DAT(国際災害データベース)

 

災害別被災者総数(2018年と21世紀平均の比較)

災害

2018

平均(2000-2017年)

干ばつ

9,368,345

58,734,128

地震

1,517,138

6,783,729

異常気温

396,798

6,368,470

洪水

35,385,178

86,696,923

地すべり

54,908

263,831

ドライ・マス・ムーブメント(土塊や岩塊などの乾燥物質の斜面下方移動

0

286

暴風雨

12,884,845

34,083,106

火山活動

1,908,770

169,308

森林火災

256,635

19,243

合計

61,772,617

193,312,310

出典:EM-DAT(国際災害データベース)

 

年別死者総数(21世紀)

死者総数

主な災害(死者5,000人以上)

2000

9,609

 

2001

30,844

グジャラート地震

2002

12,124

 

2003

109,827

バム地震、ヨーロッパ熱波

2004

242,765

インド洋津波

2005

88,673

カシミール地震

2006

24,239

ジャワ地震

2007

16,960

 

2008

235,256

サイクロン・ナルギス、四川大地震

2009

10,672

 

2010

297,140

ハイチ地震、ロシア熱波、ソマリア干ばつ

2011

51,434

東日本大震災

2012

10,319

 

2013

21,859

インド北部洪水、台風ハイエン

2014

7,993

 

2015

22,774

ネパール地震

2016

8,512

 

2017

9,734

 

2018

10,733

 

合計

1,221,465

 

出典:EM-DAT(国際災害データベース)

 

さらに詳しい情報については、こちらのリンクから関係資料をご覧ください:
https://cred.be/sites/default/files/Review2018.pdf

EM-DAT(国際災害データベース)は一部、米国国際開発庁(USAID)からの資金供与を受けています。
www.emdat.be

EMDATのお問い合わせ先:
Regina Below: regina.below@uclouvain.be
Nima Yaghmaei: nima.yaghmaei@uclouvain.be

 

UNISDRについて:UNISDRは、防災分野を担当する国連機関です。防災担当事務総長特別代表がUNISDRのヘッドを務め、「人命・暮らし・健康と、個人・企業・コミュニティー・国の経済的・物理的・社会的・文化的・環境的資産に対する災害リスク及び損失を大幅に削減する」ことを目指す「仙台防災枠組2015-2030」の実施を支援しています。 

CREDについて:CREDはブリュッセルのルーヴァン・カトリック大学保健社会研究所(IRSS)に本拠を置いています。CREDは40年以上の間、国際災害・紛争保健学研究の分野で、救援と社会復興、開発を関連づける活動を行っています。CREDは特に公衆衛生と疫学の領域で、人道的緊急事態に関する調査、研修および技術的ノウハウを促進しています。

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原文(English)はこちらからご覧ください。