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ユネスコ事務局長補らによる寄稿(日本語訳):「誠実性がもたらす利益:知ることの価値」

2026年09月28日

9月28日は「情報へのユニバーサル・アクセスのための国際デー」。これにあわせ、国連教育科学文化機関(ユネスコ)のマリヤ・ガブリエル コミュニケーション・情報担当事務局長補らが寄稿「誠実性がもたらす利益:知ることの価値」を発表しました。日本語訳の全文は以下をご覧ください。

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執筆者:
マリヤ・ガブリエル 国連教育科学文化機関(ユネスコ)コミュニケーション・情報担当事務局長補
デービッド・ウォームズリー 世界編集者フォーラム会長
リズ・コービン 欧州放送連合報道局長

私たちは情報が不足しているわけではない。これほど多くの情報を手にしたことは、かつてなかった。それでも世界中で、人々は最も単純な問いに答えることに苦労している。実際に何が起きたのか。誰が何を決めたのか。それは真実なのか。

これが、私たちの時代のパラドックスである。史上最もつながった社会は、同時に混乱や操作、不信感に対して最も脆弱な社会の一つでもある。情報は説明責任よりも速く動く。アルゴリズムは正確さよりも先に、人々の怒りを掻き立てる情報を拡散する。人工知能(AI)はもっともらしい虚偽を大量に生成する。このような環境において、知る権利は単なる透明性の問題ではない。それは自由の鼓動そのものである。

何が起きているのか、そして自分たちの名の下に何が行われているのかを正確に理解できなければ、欺瞞の霧はますます濃くなり、悪意ある行為者は罰を受けることなく人々を欺くことができる。

情報へのアクセスが拒まれるとき、社会は最も脆弱になる。Access Now と #KeepItOn 連合の調査によれば、2025年には52カ国で313件のインターネット遮断が記録され、これは過去最多であった。遮断はジャーナリズムを封じ、コミュニティを沈黙させ、命を救う可能性のある情報を人々から奪う。

情報アクセス法は情報の誠実性を支える基盤であり、ユネスコの最新のモニタリング結果は前進を示している。2025年の調査では、141カ国が情報アクセスについて法的保証を有していることが明らかになった。しかし、法律の制定は実施を意味しない。多くの国は依然として、監督、不服申立て、執行、記録管理、データ管理の面で実務上の課題を抱えている。調査対象国のうち51カ国は、制度や手続きがあると報告していながら、記録管理に関するデータを提示できなかった。

情報コミッショナーやその他の監督機関は、法的規定を実効性のある権利へと転換する役割を担う。しかし、その多くは弱い権限、任命の遅れ、予算削減、政治的介入、権限の制限、独立性への侵略によって阻害されている。情報アクセスが機能するためには、こうした機関が法律によって保護され、十分な権限と資源を与えられ、不当な影響から守られなければならない。

この格差は、ユネスコと Centre for Law and Democracy が共同で実施した2025年の情報アクセス法に関する調査によってさらに裏付けられた。76カ国で行われた146件の同一の情報開示請求のうち、38%は実質的な回答を得られず、完全な開示に至ったのはわずか42%、平均的な回答までにかかった時間は22日であった。同様の調査は今年も実施される予定であり、これまでと異なる結果が得られることを期待している。

情報アクセスは進化を続けなければならないが、善意に基づく法制度を持つ国々においてすら、その不備の実例はいたるところに見られる。

そして情報の空白の中で、勇敢で独立したジャーナリズムは欠かせない。ジャーナリズムは情報を汲み取り、公共の理解へと変える。調査し、問いただし、裏付けを取り、文脈を与える。同時に偽情報にも対峙する。一部の関係者が避けたがる問いを投げかける。そして市民に、公共生活に意味のある形で参加するための手段を与える。

偽情報がもたらす被害は現実に起こっているものである。ユネスコの推計によれば、個々の偽情報事案は年間3,500億ドルから5,100億ドルの経済的・社会的損失をもたらしうる。これは、公衆衛生対応の弱体化、選挙の歪曲、気候変動対策の遅れ、金銭的損失、評判の毀損、制度への信頼の侵食を通じて生じる。したがって偽情報は単なるコミュニケーション上の問題ではない。それはガバナンス上のリスクであり、経済的な負債であり、人々が十分な情報に基づいて意思決定を行う能力に対する直接的な脅威である。

公共放送局や独立した報道機関は、この問題に対する重要な対抗勢力である。彼らの使命は、いかなる代償を払ってでもエンゲージメントを追求することではなく、すべての視聴者・読者に情報を提供し、奉仕することにある。しかし彼らは、視聴者・読者層の分断、信頼の低下、政治的介入、財政的制約、プラットフォームへの依存、そして横行する虚偽・合成・操作されたコンテンツという同時多発的な圧力に直面している。質の高いジャーナリズムを維持しようとする彼らの苦闘は、一業界だけの問題ではなく、民主主義そのものに関わる問題である。

この状況への対応には、公共の利益にかなうジャーナリズムへの投資の再強化、編集の独立性、ファクトチェック、オープンソース検証、メディア情報リテラシー、そして国境を越えた協力が含まれていなければならない。虚偽情報が世界規模で広がるのと同様に、信頼できるジャーナリズムの担い手もまた、国境を越えて協力しなければならない。公共サービスメディアがなければ、情報エコシステムはより貧しく、はるかに脆弱なものになるだろう。しかし、彼らだけでそれを守ることはできない。

ワールド・ニュース・デーと「情報へのユニバーサル・アクセスのための国際デー」にあたり、この課題は現実的なものであり、私たちは情報空間に関わるすべての関係者に、さらなる努力を呼びかける。

● 各国政府は情報アクセス法を執行し、独立した監督機関を保護しなければならない。
● プラットフォーム及びテクノロジー企業は、自らが作り出す情報空間について、国際人権法に完全に沿った形で全面的な責任を負わなければならない。
● そしてあらゆる種類の報道機関は、情報の拡散性よりも報道の厳密さを常に選ぶべきである。

自由に流れ、信頼できる情報は、共有された利益である。しかしそれは、情報アクセスを保護する当局、何よりも真実を追求するジャーナリスト、そして事実を知る市民の権利があってこそ成り立つ。誠実性がもたらす利益は現実のものである。しかし、それがもたらされるのは、私たち全員がそれぞれの役割を果たしたときだけである。

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