海面上昇とともに高まる危険:海面の上昇は人類にどう影響するか(UN News 記事・日本語訳)
2026年09月23日

執筆者・ダニエル・ディキンソン
2026年8月29日 – 海面は今、観測史上かつてない速さで上昇しています。その影響はすでに実感を伴うものとなり、脅威も増大しています。
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土地は水没し、家屋は浸水し、生計手段が失われる中で、より安心な未来を模索する人々は、さらに窮地に陥っています。
影響を受けるのは環境だけではありません。海面上昇は人権や経済開発、健康、文化、多くの国の未来、そして基本的な人間の尊厳にも大きな影響を及ぼします。
先進国、途上国を問わず、誰もが、ほぼ至る所で被害を受けています。現在の対策と適応の能力は、海面上昇を対処可能な課題にとどめられるか、それとも世代を超えた危機に発展するのかを決定づけることになるでしょう。

海面上昇とは?
簡単に言えば、人間の活動が引き起こした気候変動の影響により、海面が上昇しているということです。
2014年から2023年にかけ、世界の平均海面水位は年間4.7mm上昇してきましたが、2024年にはこれが5.9mmと、記録的水準となりました。
最も楽観的なシナリオでも、海面は2100年までに0.55メートル上昇すると予測されますが、最悪の場合には、1メートルを超えるおそれもあります。温室効果ガス(GHG)の排出量が高止まりするシナリオにおいては、可能性こそ低いものの、海面上昇が今世紀末までに2メートル近くに達し、甚大な影響が生じることにもなりかねません。
海面上昇の原因とは?
- 氷河と氷床の融解
- 熱膨張:海水温の上昇により、海水が膨張し、体積が増加する現象
- 地球の過剰熱の約91%は海洋が吸収しているため、有害なガス排出量の増大で気候が温暖化するにつれ、将来の海面上昇は避けられないことに

人間への影響
世界人口の10人に1人にあたるおよそ7億7,000万人は、満潮時の水位から高さ5メートル足らずの場所で暮らしています。
これは懸念すべき近さであり、その海面との近接性はすでに実感として表れています。
- 淡水井戸や農地に塩害が発生している。
- 洪水は病院や学校、衛生システムに被害を及ぼしている。
- 水系感染症への暴露度が高まり、飲料水の供給を脅かすとともに、心理的ストレスの増大も助長している。
- 多くの沿岸部で経済を支えている漁業や観光業に混乱が生じている。
- 人々がより安全な土地だけでなく、新たに生計を立てられる場所を探す中で、2050年までに世界全体で最大12億人が居住地の移動を強いられかねないとする予測がある。
- 新たなエビデンスによると、一部の地域では海面上昇が大幅に過小評価されている可能性があり、数千万人がこれまで考えられていたよりも大きな脆弱性にさらされる恐れがある。
物理的側面に加え、文化遺産や先祖代々の土地、伝統的な生活様式も失われつつあり、その心理的代償が大きくなっているという現実もあります。

損害の規模
- 沿岸インフラの被害額はすでに8兆ドルを超えている。
- 適応策を取らなかった場合、世界全体の損失額は年間4兆ドルにも上りかねない。
- 小島嶼開発途上国は1970年から2020年にかけ、気候変動によるハザードで1,530億ドルの損失を被った。
- 米国の災害リスクの高い地域では、住宅保険の保険料が2020年から2023年にかけて33%も跳ね上がった。
- 世界全体の貿易量の80%以上を取り扱う港湾は、洪水や海面上昇の影響を受けやすくなっており、グローバル・サプライチェーンにリスクを及ぼしている。
最大のリスクを抱えているのはどこか
最も差し迫ったリスクに直面する国々の多くは、海面上昇を引き起こしているGHGの排出量増大への寄与度が最も低いだけでなく、これに対応できるリソースも往々にして最も乏しい状況にあります。
- 小島嶼:太平洋諸国の中には、世界平均の2倍を超える相対的海面上昇にさらされ、しかも頻度を高める洪水災害に対してとりわけ脆弱な国がある。
- 低平デルタ地帯の都市:ダッカやムンバイ、コルカタでは、1,400万人以上が家や生計手段、生命を失うリスクを抱えている。
- 沿岸部の巨大都市:マイアミやニューヨーク、広州では、インフラの損傷で数兆ドルに上る損失が出るおそれがある。

食い止めることは可能か?
海面上昇の一部はすでに避けられないものとなっているため、完全に食い止めることはできません。
しかし、今後の上昇がどれだけ進むかは、有害な排出物を今、どれだけ削減できるかにかかっています。
その鍵を握る要素の一つが、19万平方キロメートルにも及ぶ南極のスウェイツ氷河です。この氷河が融解しただけでも、0.5メートルを超える不可逆的な海面上昇が一気に生じ、まさに後戻りのできない現実的な転換点を越えてしまうおそれがあります。
不可避な事態への適応
気候変動を引き起こす化石燃料からの脱却は、世界が地球温暖化と、それによる海面上昇を鈍化させるための最優先課題ですが、今の時点で適応のための措置も必要となっています。
- 災害が襲う前に人々を守れるようにするための早期警戒システム
- 護岸の整備、マングローブの植林、砂丘の回復と、脅威にさらされた地域からの人々の秩序ある撤退
- データの改善:海面状態を基本的に把握できていない地域が多いため
- 国としての存立や領海の問題など、土地が水没した場合の法的側面に関する事項の明確化
開発途上国が適応に必要とする資金は年間3,100-3,650億ドルと見られますが、全世界の適応資金は2023年の時点で約260億ドルにすぎません。

結論として言えること
海面上昇は止めることの不可能な力と感じられるかもしれませんが、どれだけの被害が誰に及ぶかは人々やコミュニティー、政府が現時点で下す戦略に左右されるという点に変わりはありません。
結局のところ、人々の家や歴史、暮らし、アイデンティティを守るためには、適応資金を増額し、国の存立が海面上昇によって影響を受けないようにするとともに、海面上昇を恒久的な世界規模での優先課題として位置づけ、緊急性を認識することが必要です。
かつてない急激な上昇と国連報告書も警告
8月31日にパラオで開催された太平洋諸島フォーラム首脳会議で発表された国連報告書によると、海面水位はかつてない速さで上昇しており、「世界中の人々にとって最も深刻な脅威の一つ」になっています。
海面上昇がもたらす社会的、経済的、法的な影響と、これへの対応の仕方について検討する本報告書は、この問題に関する9月24の国連ハイレベル会合に先立ち、作成を委託されたものです。
記者会見に臨んだナビド・ハニフ国連経済社会局長は、集団的な対応を大規模に拡大することが緊急に必要だと強調しました。
局長は「海面は上昇しています。私たちのレジリエンス(強靭性)や対策資金、そして野心をそれ以上の速さで高めなければなりません」と述べました。
海面上昇に対する国連の取り組みについてさらに詳しくは、こちらをご覧ください(英語)。
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原文(English)はこちらをご覧ください。


